ブルーアーカイブ 〜欠片の物語〜   作:眠り狐のK

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仕事納めは今日の筈でした


19話 不穏の影、そして再会

「ん、んん……」

 

 私は眠い目を擦って目覚める。そこは見慣れた私の部屋。

 セイアさんとアズサちゃんとの一件についてはあの後、駆けつけてきたミネ団長に協力してもらって事態は収まった。

 セイアさんの身体はミネ団長が安全な場所に隠して、私はアリウスにバレない程度にアズサちゃんが逃げられるように手助けした。

 念の為姿を隠せるようにお面とかフードとか用意してきててよかった。あれがなければアリウスと鉢合わせた時点で戦闘は回避できなかっただろう。

 正体を隠してのもあって少し怪しまれはしたけど、アズサちゃんに味方してたってことで戦闘にはならず無事アズサちゃんを引き渡せた。

 私はアリウスにまでは行けないからアズサちゃんはアズサちゃんで上手くやってくれてるといいんだけど。

 私も、もっと強くならなきゃ。

 

 私はいつも通り学校に行く準備をする。

 いつものように着替えて、いつものように朝ごはんを食べて、いつものように教材を準備して、いつものように――

 

「――あれ?」

 

 ふと、机の上に何かがあることに気づく。

 見覚えのない何かを手にとってよく見てみる。それは黒いカードだった。

 少し分厚く、横から見るとカードが2枚重なっているようにも見える。しかし、それは見えるだけで実際に重なっているわけではなさそうだ。軽く剥がそうとしてみてもびくともしない。恐らくそういうデザインなのだろう。

 カードの表面には番号が書かれていたり、裏面には小さなチップみたいなものが埋め込まれている。その見た目はクレジットカードに似ている。しかし、カード見た目だけでどこで作ったものなのか判別はできない。

 

「うーん、忘れてるだけかな」

 

 実際のところ、色々な場所に行ったり色んなお店に行ったりしている関係上、こういうカードが増えていくのは必然。となればいつ作ったのかわからないカードとか、そもそも作ったことすら忘れてしまったカードというのも出てくるだろう。

 きっと、このカードも作ったことを忘れているだけで、どこかで作ったのだろう。私はそう判断して黒いカードをカードケースの中にしまい、近くの座布団に目を向ける。

 黒いカードが置いてあった机の上、座布団の上には白い小鳥が眠っている。

 

「おはよう、しぃちゃん」

 

 私は、その小鳥を起こさないように優しく撫でながら話しかける。

 しぃちゃんというのは、私が付けたニックネーム。

 この子の本当の名前は知らない。だから、私が呼びやすいようにニックネームを付けた。

 シマエナガだから、しぃちゃん。

 アズサちゃんとの一件のとき、セイアさんに託された子。セイアさんが眠っている間、私がこの子のお世話をすることになった。

 小鳥を飼うのは初めてのことだったけど、ハクアちゃんに色々と聞きながらもこの子とは仲良く過ごせていると思う。

 ハクアちゃんはセイアさんと知り合いだったみたいだけど、しぃちゃんが私のところにいることについては何も聞かれなかった。

 表ではセイアさんのことは入院中ということで伝わってるから、その間私が世話をしているってことで納得してくれてるのかな?

 ハクアちゃんに色々教えてもらいながらこの子と過ごす日々は楽しい。ハクアちゃんが鳥が好きって言ってるのも改めて理解できた気がする。

 そんなことを思い返しながらしぃちゃんを撫でていると、気がつけば出発の時間が近づいていた。

 

「そろそろ行かなきゃ。行ってくるね、しぃちゃん」

 

 私は座布団の上で眠るしぃちゃんに手を振って家から出た。

 

 

 

 


 

「今日もいい天気だな」

 

 私はいつも通りの道を歩いて登校していた。

 時間的にはまだまだ余裕がある。いつも少し早めに家を出発してるから遅刻することはほとんどない。

 早めに家を出ている理由はこの道を散歩気分で歩くことが一つの楽しみになっているからというのが大きいかもしれない。

 散歩をしていると、偶に思いがけないイベントに遭遇することがある。

 例えば、猫と仲良くなったり、友達と会って一緒に登校したり。トラブルに巻き込まれてちょっと遅れちゃうこともあるけど、そういうのは特別自警部の活動ってことで不問になることがほとんど。

 今日はどんなイベントがあるのか、それとものんびり散歩して終わるのか。

 

「そこのお嬢さん、少しよろしいでしょうか?」

「私?」

「はい、貴方ですよ」

 

 誰かに声をかけられて振り向く。

 振り向いた先にいたのはフードを被った背の高い人。フードの影に隠れて顔は見えないけど、大人の人、なのかな?

 その人は鞄の中から一枚の紙を取り出してこちらに見せる。

 

「このお方をご存知ないでしょうか?」

「この人を?」

 

 向けられた紙を見てみると、そこには男の人の似顔絵が描かれていた。黒いショートの髪に黒の瞳、見た目の年齢は大人っぽくもあるけど、私と同じくらいと言われても納得出来るくらいには若く見える。

 しかし、記憶を辿ってみてもこの似顔絵の人と会った記憶も見かけた記憶もない。

 でも、なんでだろう? 

 会ったことも見たこともないはずなのに、私はこの人を知っているような気もする。

 

「私の古い友人でしてね、この辺りにいるという情報を聞いて来たのですが……」

「うーん、わからないかも……」

 

 知っているような気もしたが、少し考えても思い出せないので知らないということにした。

 それに、知っていたとしてもこういう人には言わないほうがいいのだろう。怪しい人には気を付けてってイチカちゃんにも言われてるしね。

 少なくとも、この人の言ってる情報に関しては嘘。

 私は自警部として色んなところに行っているけど、この似顔絵の人に関する情報も顔も見たことがない。

 

「そうですか……ここに来れば会えると思ったのですが……」

 

 フードを被った人は残念そうな声色で呟く。

 でも、なんだろう。この人と話している間ずっと視線を感じている。

 誰かに見られているとか、そういうのではない。

 視線の正体は確実に目の前の人物。

 会話のために目を合わせるとかではない。話している間、自らをじっくりと観察されているような、そんな視線。

 目の前の人物の顔はフードの影に隠れて見えない。当然、目元も見えず目線がどこを向いているのかわからない。なのに、自分が観察されているとはっきりわかるほどの視線を感じている。

 そして、その視線を意識すれば意識する程、自らの本能がこう語りかけてくる。

 

 

 

 

 

『一刻も早くこの人物から離れるべき』だと

 

 

 

 

 

そして、『この人物の居場所を先生に伝えるべき』だと。

 

 

 

 

 

 私は、逃げ出すようにその場を後にした。

 

 

 

 

 


 

 今日の学校の時間が終わった。

 でも、授業の内容は頭に入ってこなかった。朝出会った人物のことがずっと頭から離れなかった。

 何故、私はここまであの人のことを警戒しているのだろう?

 このとき、私は初めて危機感という感情を知った。

 誰かに気をつけないといけないと言われたから気をつける、そんないつものレベルなんかじゃない。初めて私が心の底から危険だと認識した。

 何故、会ったこともない人を相手にそんな事を感じたのかはわからない。どうして頭の中から離れていってくれないのか。そんな今までにない感覚に私は戸惑っていた。

 

 ふと、後ろからドンっと、衝撃とともに誰かに抱きつかれる。

 振り向くと、そこに見えたのは明るい黄緑色の髪に木を円が囲むような特徴的なヘイロー、雲のようにふわふわな小さな羽根に壮大な自然を思い浮かばせる爽やかな香り、感じられるのは太陽のような温もり。

 その人物の正体は――

 

「久しぶり、メリーちゃん」

「うん、久しぶりお姉さん……♪」

 

 本居メリー、妹みたいな存在であり友人でもある存在だ。

 セイアさんとの件があったあと、色々忙しくて遊びに行ったりは出来てなかったから少し久しぶりだ。

 久しぶりの友人の顔を見ているといつの間にか先ほど感じていた感情は綺麗さっぱりなくなっていた。

 この子と一緒にいるといつも心が落ち着く。そんな素敵な能力を持ってるんじゃないかと錯覚してしまうくらいに、私の心を癒してくれる。

 

「メリーちゃんもトリニティに来たんだ」

「うん、お姉さんがいるから……」

 

 そういえば今日は入学式の日でもあったなと考えを巡らせる。

 そっか、今年はメリーちゃんとも一緒に過ごせるんだ、嬉しいな。

 

「ミソラちゃーん!」

 

 ふと、私を呼ぶ声が聞こえた。

 呼ばれた方向に目を向けてみると、ヒフミちゃんとセリナちゃんが走ってきていた。

 

「ミソラちゃん、今日は入学祝いのペロロ様グッズ発売日で……って、メリーちゃん、お久しぶりですね♪」

「メリーちゃん、お久しぶりです♪ あれから元気に過ごせていましたか?」

「あ、お久しぶりです……ヒフミさん、セリナさん……♪ はい、お姉さんも一緒でしたし、元気ですよ……♪」

 

 私とメリーちゃん、そこにヒフミちゃんとセリナちゃんを加えて雑談を交わす。

 

「メリーちゃんもトリニティに入学したんですね?」

「うん、お姉さんとか、ヒフミさんもセリナさんもいるから……♪」

 

 その言葉にヒフミちゃんとセリナちゃんは嬉しそうに笑顔になる。

 

「あ、よかったらこれからみんなでお出かけしませんか? 元々三人で遊びに行こうって話をしてたんです!」

「私も、いいの……?」

 

 身長差があるが故に見上げる形でこちらを見つめてくるメリーちゃんに私は優しく頷いた。

 

「うん、もちろん」

「えっと、それじゃあ……よろしくお願いします」

 

 メリーちゃんはヒフミちゃんとセリナちゃんに向き直りぺこりと頭を下げた。

 

「ふふ、そんなにかしこまらなくてもいいですよ? 怪我にだけ気を付けてみんなで楽しみましょう♪」

 

 そんなセリナちゃんの言葉を聞いたメリーちゃんも笑顔の二人に釣られるように優しい笑みをこぼす。

 

「そうですね♪ それでは早速行きましょうか♪ 最初は予定通りペロロ様のイベントからいいですか?」

「うん、いこう」

「モモフレンズ……あんまりわからないけど、お姉さんとヒフミさんが好きなものなら……」

「確か、ウェーブキャットさんのグッズもありましたよね? ミネ団長にプレゼントしたら喜ぶでしょうか?」

 

 こうして私達は今日という日を楽しく遊び尽くした。




今回出てきた謎の人物に関しては今後この作品で出てくるかは未定です。
一定の時期を越えると出せなくなることもあって難しいところではありますが。

そんなことはどうでもいいですね
ヒフミとセリナは原作での絡みはほとんどなかった気がしますがこの作品ではミソラ繋がりで結構仲良しになってます。
でもヒフミとセリナの二人で遊ぶよりヒフミセリナミソラの三人で遊びに行くパターンが多いですね。
こっちのほうが大事。
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