まさか
あ、今回ちょっとグロ表現とかあるので気をつけてください
「うーん、何か面白いものないかな」
私は現在パソコンを弄って最近の話題を眺めている。
今日は完全にオフなので自警部としての仕事もなく自由な時間を過ごせる。とはいっても自警部として活動してる時も基本的に自由に過ごしているが。
ただ、色んなことに手を出していきたい身として、自警部の仕事や友達から誘いがないときはこうやって自分の部屋にいることが増えてきた。
室内でできる趣味というものもたくさんある。絵を描いたり、小説を読んだりゲームをしたり、創作者としての趣味関連は基本的にこっち側が多いかもしれない。
創作者としての趣味と言っても執筆もプログラミングも作曲もかじる程度なので本格的に作品にできるレベルの能力は持ってない。本格的にやるにしても時間が足りないしね。
それを抜きにしてもネットから得られる情報というのも多いのでこういう時間は大切。
たまにデマが流れるので嘘を嘘だと見抜ける力がないと使いづらいところはあるけど、そこさえしっかりしていれば結構幅広く面白い情報がごろごろ転がってたりする。
やがて数分間、静寂の部屋にカタカタとキーボードの音と小鳥の寝息が響き渡る。
私の頭の上で器用に眠っているしぃちゃんを起こさないように、たまに撫でてほっこりとした時間を過ごしながらネットを漁っていると一つのゲームが目に入る。
「ふむ、『テイルズ・サガ・クロニクル』?」
どうやらミレニアムの子が作ったゲームのプロトタイプ版らしい。製作者はゲーム開発部所属のUZ……そのくらいしか製作者関連の情報はなかったけど、現状自分が知ってる限りゲーム開発部っていう部活自体記憶にない。去年まである部活動はある程度把握してるし、ということは今年出来た部活? それも1年生? ……うん、ともあれやってみよう。
そうして私はテイルズ・サガ・クロニクルを起動して進めていく。そして数時間プレイしてゲームは終了した。
まだプロトタイプだからボリュームは大きくはないみたい。そしてプレイした感想だけど……うん、いろんな意味で難易度が高いかもしれない。
試しにレビューを見てみると酷評の嵐だった。所々言い過ぎなところもあるけど、指摘部分については間違ってないところもある。操作性がよくないとか、システムが分かりづらいとか、私はそこまで大きく気にはしてなかったけどそう思うのもわかる部分もある。なんというか、上級者向けなシステムとか初心者にはハードルが高いところもあると思うし、改善できそうなところはある。
私も何か書いてあげようかな。こんな酷評ばかりなのもフェアじゃない。いいところだってあるし、みんなの酷評だって考え方を変えれば良いことと捉えられるものもある。
例えばこのイラスト。ドット絵でありながらも可愛い……いや、ドット絵だからこその味があるキャラが多い。
システム面に関しても、複雑で分かりづらいなんて声も多かったけど、レトロゲーをベースに作ったにしては出来ることが多く、それでいてバグとかもほぼないからプログラムとしては上手く作れてると思う。ただ、そこが操作性の悪さだったり全体的に難易度が上がってる要因にもなってる部分もあるからここは基本的なところはもっと簡単に、あともっと細かなプレイングマニュアルみたいなのがあるといいかも。
他には―――
色々と良いところを探しながら書いてたら結構長くなっちゃった。でも、これで少しは元気になるといいな。きっと、あれだけの酷評を見たら悲しんじゃうと思うから。
悲しみの感情はあまりわからないけれど、良くない感情だってことはわかる。だから、嬉しい感情を感じられるように……っと、これでよし。
投稿はしておいたから、これで少しは良くなってくれるかな。
ゲームをしてたら時間が結構経ってしまった。
最近の話題で他に気になるような記事はなし。『最近は地震が頻発してるので対策が必要』だとか『トリニティ周辺で何者かに襲撃され怪我人が出ている』とか、自警部の仕事として何かしら依頼が来そうな記事はあるけど、緊急の依頼は来てないのでひとまずはよさそう。
未確定の情報が多いと緊急依頼も出しづらいだろうから、そのうち調査とかは頼まれそうかな。
ずっと家の中にいるのもあれなので散歩にでも出かけようかなと、私は今日見た記事のことを頭の片隅に残しながらパソコンを閉じた。そして、出かける準備をして自宅をあとにした。
「今日もいい天気だな」
私はトリニティ近くの浜辺にまで来ていた。今日は珍しく誰もいなく、一人でのんびりと海の景色を楽しんでいる。
雲一つない晴天、太陽の光に照らされ輝く海、静かな世界に響く波の音、そんな景色を暫く眺めていると、後ろから足音が聞こえてきた。私と同じように散歩にでもしに来たのかな?
私は少し後ろを向いてちらりと足音の主を確かめる。
ボロボロの服に乱れた薄茶色の長い髪、焦点の合っていない瞳にだらんと垂れ下がった腕、一目で見て普通ではないのが分かる。
一体何があったのだろうか?
誰かからこんなになる程の仕打ちを受けたのだろうか? それとも、今朝記事で見た襲撃者にやられたのだろうか?
もし、それで助けを求めているのだとしたら、助けてあげなくちゃ。
「貴方、大丈―――っ!」
目の前の人物に近寄り声をかけようとした瞬間、嫌な予感がして後ろに飛び退く。その瞬間、ヒュンと先程まで私の顔があった場所を何かが通り過ぎる。
通り過ぎた物の正体を目で追うと、目の前の人物が大型のショットガンを薙ぎ払っていた。
その瞬間、私は察した。この人は襲撃された被害者じゃない。この人が襲撃の犯人なのだと。
即座に私はアサルトライフルを構え戦闘態勢に入る。
「貴方が最近この辺りで生徒を襲撃してる犯人? どうしてそんなことをするの?」
そんなことを問いかけても答えは沈黙、ショットガンを持った腕を垂れ下げたままこちらを見つめている。
そんなまるでゾンビのような姿の相手と対峙する。
私と同じ生徒のようにも見えるけど、良く見ればヘイローすらも見えない。
一体何者なのだろうか? そもそも、生きているかどうかすらも怪しく見えてしまう。疑問は増えていく一方だが、ただ一つ確実なのは、この人をこのまま放置するのは危険だということ。
少しの間様子を伺っていると、相手も本格的に戦闘態勢に入ったのか背中の後ろに光輪の様なものが現れる。
「っ……くっ!」
瞬時に距離を詰められ、振り下ろされるショットガンを後ろに飛んで避ける。
振り下ろされたショットガンはそのまま地面に触れ、砂を大きく舞い上がらせる。瞬間、大きな銃声と共に衝撃波が私に襲いかかってくる。
銃口は地面を向いていた為に散弾は当たらなかったが、それでもその凄まじい衝撃波は後ろに飛んで空中にいる私の身体を吹き飛ばす。
凄い威力だ、と相手の動きを見ながら体制を立て直しこちらも銃弾を撃ち込む。愛銃から撃ち出された銃弾は全て相手に命中する……も、大したダメージにはなっていないようだ。
「普通に撃ち込むだけじゃ駄目ってことか」
相手の攻撃をなんとか避けつつ次の手を考える。
振り下ろされるショットガンは飛んで避け、散弾は懐に潜り込んで避けつつ銃弾を叩き込む。先程の衝撃波は基本吹き飛ばされるだけで直接的なダメージはないみたいなので散弾が飛んでこないかだけ警戒すればいい。
どうやら、これが相手の基本の戦い方のようだ。
ショットガンを使った超近距離戦闘。散弾の範囲は狭く、一点集中型の火力に特化された銃で、そこに銃本体を打撃武器とした戦闘スタイル。そんな乱暴な使い方をしても銃には傷一つなく暴発すらもないのはそれ程までに銃本体が頑丈なのか、はたまた他に仕掛けがあるのか。
少なくとも、接近戦は特に気をつけて立ち回らないといけない。
幸い、動きはそこまで速くないので距離をとっていれば致命的なダメージは避けられるだろう。
ただ、これ以外にも手札がある可能性もあるので警戒はしなくてはいけない。
「まるで、ゲームみたい」
そう、これはまるでゲームの戦闘のよう。
相手は話が通じず、その行動に意思すらも感じられない。ただただ、本能のままに動いている、そんな感じがする。そして、そんな相手の行動パターンを分析して、攻略法を模索する。
さて、零距離での銃撃も効果がないのであれば、次の手を試そう。
相手は先程と同じようにショットガンで殴りかかってくる。それを最小限の動きで避け、回し蹴りの要領で相手のショットガンを思い切り蹴る。
タイミングとしてはばっちり。しかし、弾くことは出来ても銃を手放させることまでは出来なかった。やはり攻撃力が足りない。
私は距離を取るように後ろに飛ぶと同時に手榴弾のピンを外しその場に転がした。
相手は手榴弾に気付いたのか両腕をクロスさせて受け身の体制をとる。手榴弾はそのまま相手のすぐ目の前で爆発し、砂埃をまき散らす。
暫くして砂埃が薄れてくると、そこには誰もいなくなっていた。
「消えた……? いや、上かな」
上を見上げると、飛び上がって銃を構えている姿が見えた。
次は銃撃? それとも打撃?
どちらが来ても対応できるように様子を伺いながら構えていると、やがて相手はその手に持った銃を
「銃を……いや、これは……」
「ガァァァァ!!!」
素手で殴ってくる気だ、そう察知してすぐさま防御の構えをとる。恐らく避けるのは間に合わないので、銃を盾に構える。
そして、そのまま相手の拳が勢い良く振り下ろされ、防御体制の私をそのまま吹き飛ばす。
なんとか受け身を取り銃を構えようとするも腕が上手く動かない。
(これ、痺れてる……?)
なんとか体制を立て直そうとした瞬間、そのまま人とは思えない咆哮を上げながら拳を構えて突撃してくる相手が視界に入り、私は横に飛ぶ。
「グゥゥゥゥ!!!!!」
「わっ……と、っ……ぅっ……!!」
なんとか避けることが出来たものの、相手の拳が地面に触れた瞬間、大きな音と共に激しい地震が巻き起こる。
急な揺れに私は足を取られ、その隙を見逃さなかった相手の足が私を蹴り飛ばす。地面を何度か跳ねながらもなんとか体制を立て直し、お返しにとほんの一瞬、能力を使い神秘を込めて銃弾を撃ち込む。
身体中の最大限の神秘が込められた銃弾は相手の脇腹に吸い込まれるように向かい、そのまま大きくその身体を吹き飛ばした。
流石にこれはかなり効いてるはず。
そう思って吹き飛んだ相手を見ると、銃弾が命中した場所から血を流しながら立ち上がってくる様子が伺える。しかし、そこからが衝撃だった。
ぽた、ぽたと滴り落ちる血液。それは僅か数秒で止まり、傷口は塞がっていき、完全に治ってしまった。
「再生、してる?」
まさに、化け物と呼んでもいい相手だった。
つまり、今までずっと通用してないと思っていた攻撃は通用していないのではなく、ダメージを与えてもすぐさま再生されていただけ? それとも、通用しない上でこの再生力なのか。
少なくとも今わかるのは、今自分が対峙している相手は到底勝てるような相手ではない可能性が非常に高いということ。
だからと言って、逃げるわけにはいかない。
この化け物をこのまま放置すれば次は誰が襲われるかわからない。
同じ理由で助けを呼ぶことも難しい。
つまり、自分の力でなんとかするしかない。
なにか、なにか手があるはずだ。
相手は地面を揺らす程の攻撃力に半端な攻撃は意味のないレベルの防御力に加えて圧倒的な再生力を持つ相手。
そんな相手を、どうすれば倒せる?
「っ!!」
この化け物相手の対策を考えていると、急に嫌な予感に襲われ、本能のままに右側に飛ぶ。瞬間、閃光が私の左側をほんの一瞬通り過ぎた。
「これは……」
通り過ぎた閃光の後を視線で追うと、そこには大きな穴が空いていた。
それは、地面を抉り取ったなんていうレベルじゃない。閃光に触れた部分がそのまま消滅したと言う方が正しい、そのレベルの綺麗な穴が空いていた。地面も、木々も、金属でできた柵も、閃光が触れたであろう部分が綺麗に消え去っていた。
まだこんなとんでもないものを持っていたのか、そう思いながら化け物に視線を向けるとそこにはショットガン……ではなくマグナムのようなものを構えた化け物が立っていた。
あんな規格外の威力の銃がなぜ存在するのか……そんなことはどうでもいい。ただただ、この化け物を放っておいてはいけない理由が増えた。
こんなものを放置すれば危険なんて言葉じゃ済まされない。
そう考えて銃を再び構えようとした瞬間、違和感に気がつく。
(左手の感覚が…………ぁ……)
左手の感覚がない、どうしてだろう?
その違和感の正体を確かめるため左手に目線を向けると、
停止しそうな思考を無理矢理動かし、発煙弾を取り出しては投げる。
辺りが煙幕で包まれていく中、私は近くの岩場に身を隠す。
「ふぅ……は……っ……」
私は鞄の中から救急箱を取り出して左腕の止血を行う。
今のでかなり血を失ってしまったかな。
それにしても、キヴォトスの生徒の頑丈な身体をこうも簡単に壊してしまうなんて、やはり放置しなかった私の判断は正しかった。
もし、あれがみんなに向けられたとしたら……そんなことは考えたくもなかった。
「はぁ……フェアじゃないな……」
ついついそんな言葉が零れ出てしまった。
みんなを守るためにはこの規格外の相手をなんとしても倒さなくてはいけない。
あの閃光をまともに受けてしまえば私は死んでしまうかもしれない。それでも、やらないといけない。大切なみんなを守るために。
息を整えながら愛銃につけられたビッグ・ブラザーのキーホルダーに目を向ける。
「……ヒフミちゃん」
―――絶対守るよ―――
そう決意を固めた私の意思に反応するかのように鞄の中の何かが光を僅かに放ったような気がした。
えー、この作品ではお久しぶりになります
仕事と両立して他にも色々って話は幸箱呼んでくれてる人は把握して貰えてると思いますが、もう少し頻度を上げられるように頑張ります。
さて、今回からは今までの日常パートとは打って変わって少し物語を大きく動かす話を書いていきます。
ピンチなミソラちゃん、ここからどうなってしまうのでしょう?
無事に謎の化け物を倒し生還することができるのでしょうか?