フルダイブVRMMOを遊んだら女の子にTSしてました! 女の子には染まりたくない、助けて。   作:えこだま

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25 いつも通りに!

 翌日、星奈に呼び出された。指定先は崖上の公園。何も言わずに来て欲しいとしか言われなかったが、わざわざあそこを指定するのなんて和希しか居ないからきっと和希も来てるだろう。

 思ったより体力が無い上に慣れないスカートのせいでしんどい思いをしながらなんとか辿り着くと、予想通り和希もそこに居た。

 

「はあ……思ったより……疲れた」

「大丈夫か?」

「なんとか。ここまで疲れるとは……」

 

 改めて体力が無くなった事を自覚する。思えば、これだけの階段を登ったのは初めてだ。

 

「で、星奈。きっと昨日の相談を聞いて和希を連れてきてくれたんだろ?」

「え? 俺が昨日星奈に頼んだんだが……」

 

 ……ん? なんか話がおかしくないか?

 

「あー、その、何というか」

「……もしかして2人揃って相談してた?」

「だってまさか同時に同じ事相談されると思ってなかったし……和希の話も聞いて一度2人で話した方が良いなーって思ったから」

「ちょっと待て、つまり俺と話す前から志月側の話は全部聞いてたって事か?」

 

 なるほど、話が見えてきた。まず俺が星奈に相談して、概ね同じような相談を和希も星奈にしたと。そしてそれを聞いて何も言わずに2人を集めた。そういう事か……

 

「いや、俺の気持ちを言ってくれれば良かったじゃん?」

「それじゃ意味無いでしょ。自分達で話さないと。ほらほら!」

 

 無理矢理星奈に押されて和希と向かい合う。……気まずい。どこから話したら良いのか。

 

「あー……その、さ。なんというか……ごめん!」

「え?」

「俺さ、自分が心の中まで女の子になっていくのが怖くて、自分がどうなるかって事だけ考えてて、和希がどう思ってるのかまで気が回らなかった。それなのに、勝手に距離を取られてると思い込んでて。すまん!」

 

 素直に謝る。今俺が言える事はこれしかない。こうしないと気が済まない。

 

「じゃあ、俺からも。素直に思ってる事を言えなくて、変に避けるようになってた。ごめん」

「そうか。……嫌いになった訳じゃないよな?」

「そんな訳無いだろ。そう簡単に嫌いになるかよ」

「良かった……」

 

 嫌われてる訳じゃなくて安心する。良かった。

 

「えっと、あと……」

「そうだな……」

 

 また口数が減ってしまう。

 

「あー、もう!」

「星奈!?」

「さっきから黙って見てれば遠慮ばっかで! お互い向き合って話すって決めたんでしょ! 特に和希!」

 

 星奈が痺れを切らしたように叫ぶ。

 

「和希?」

「……すまん、志月。今から話す事は、お前を傷つけるかもしれない。許してくれ」

「……分かったよ」

 

 和希がここまで苦渋に満ちた表情を見るのは初めてかもしれない。一体何を言おうとしているのか。唾を飲み込む。

 

「俺は……俺は、デパートで女の子らしいと思った時からずっと可愛いと思ってしまって……もちろんお前がそう思われるのが嫌なのは知ってる。けど、どうしてもそう思えてしまうから避けるようになってた」

「……そうか」

 

 なるほど、和希が言いづらい訳だ。だったら、俺がすべき事は。

 

「本当にごめん。今後は……」

「和希、聞いてくれ」

「なんだ?」

 

「別に、そう思っても大丈夫だ」

 

「……え? でも」

「でも、は無しだ。当事者の俺が決めた」

 

 考えてみれば単純な話だ。別に見た目やしぐさが可愛いと言われても、自分が自分のしたいようにするなら何も変わらない。

 

「なあ、和希。俺は思ったんだ。可愛くなろうがなんだろうが、俺は俺なんだって。だからお前が俺の事を可愛いと思ったとしても、"湊志月"の親友で居てもらえたら大丈夫だ」

「それでも、今まで通りに出来るかどうか……」

「あーもう、分かった! 今からゲーセン行くぞ!」

「は!?」

 

 和希の手を掴んだ後、星奈に声を掛ける。

 

「という訳ですまん、ちょっと和希とひと遊びしてくるわ!」

「分かったよ。またね」

 

 星奈に別れを告げて和希と一緒に駆け出す。

 

「ちょっ、志月待てって!」

「待たない! ほら、さっさと行くぞ!」

 

 そのまま手を引いてゲームセンターへ無理やり連れて行った。

 

 ◇

 

 1通り遊んだ後の帰り道。

 

「はあ……疲れた」

「そりゃ疲れるだろ。ゲームセンターの後に映画見てカラオケとか、俺でも疲れたぞ」

「ああ、でも楽しかった!」

「……まあな」

 

 いつものように、馬鹿みたいに遊んで。でも変わった事も無かった。けど、それで良い。

 

「ほら、いつも通りだったろ?」

「全く、俺が元気づけられてどうするんだか」

 

 そして1つの質問を投げかける。

 

「今でも俺の事を可愛いと思うか?」

「……正直、そう思う部分もあったのは否定できない。すまん」

「なら良かった!」

 

 和希が目を見開く。

 

「いや、良くないだろ! 可愛いって言われたくないって……」

「でも、いつも通り楽しかっただろ?」

「あ……」

「ほら、見た目とか仕草がどうとか、色々変わったっていつも通りに遊べるんだ。だったら何も問題無いだろ? だって、大事な部分は何も変わって無いんだからさ」

 

 これなら大丈夫。和希とは今まで通りやっていける。ああ、安心した。

 

「……ありがとうな、志月」

「ほら、もうそんなしょぼくれた顔すんなって! 飯でも食べて帰ろうぜ、俺は疲れて腹減ったよ。和希は?」

「そうだな。俺も腹が減った。どっかで食べて帰ろう、いつも通り」

 

 

 俺達は何も変わらず帰路に着いた。そう、いつも通りに!




お互い、気持ちを確かめて一歩先へ。
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