学校で最近、ある儀式が流行っている。
儀式の名前はペルソナ様と言い。
教室などの隅に人間がひとりずつ立って、「ペルソナ様、ペルソナ様、おいでください」と唱えながら、一人が隅に立っている人に向かって歩き、肩を叩く。
肩を叩かれた人が、今度は呪文を唱えながら歩き、同じ行動を繰り返す。
これを人数分続けると、その場に超常現象が起きたり、自分の願いがかなったりするという。
何処かで聞いた事のある話だ。主に前世のゲームなんかで。
さて、何故唐突に儀式の話をしているかと言うと。
「おい。ペルソナ様の参加者はこれで全員か?」
「委員長や部活に行ってる皆は参加しないらしいから全員じゃない?」
「まあ、数会わせに帰宅部とオタクを釣ってきたしこれでいいっしょ」
「でもさぁ、数会わせとは言えオタクくんを連れてくる必要あった?」
「えぇ~?良いじゃ~ん。一応、他のオタクと違って彼ってちゃんと身嗜みを整えてて不快にならないから呼んだんですけど~」
「いや、そういう意味じゃなくて・・・・・・はあ、もういいや。ねえ、さっさとペルソナ様?てやつやろうよ」
「ん・・・・・・よし!そんじゃ始めるか!!」
学校での授業が終わった放課後。
空き教室で件のペルソナ様をする為、陽キャグループによって呼び出されたからだ。
オタク呼びされている俺は空き教室へ着くまでに陽キャグループの女子に聞いていたから心の準備が出来ていたが、他の先に集められた生徒達は何の事なのか聞かされていないのか困惑しているようだ。
・・・・・・しゃあない、一肌脱ぐか。
「なあ、ちょっと質問いいか」
「あん?何だよ、え~っと?」
「ヒビキ。
「おう。んで質問ってなに」
「ここに来る途中に聞いたんだけど、これからやるのってのはペルソナ様の事?」
「ああ、そうだぞ」
「ペルソナ様ってあれだろ?部屋の隅に一人ずつ立って『ペルソナ様、ペルソナ様、おいでください』って唱えながら隅に立っている人に向かって歩いて肩を叩くのを人数分繰り返した後、フィレモンを名乗る人物に自分の名前を答えられたらペルソナ様を呼ぶ事が出来るようになるってやつ」
「何言ってんだお前。途中まではあってるけどフィレモンって誰だよ」
「何って、女神異聞録ペルソナって名前のゲームに出てきたペルソナ様の真似をするんでしょ?ゲームで儀式に参加した人数も部屋の中に居る数と同じだし」
俺がそこまで言うと、ピシリと凍ったかの様に教室の温度が下がった気がする。
「へぇ、ペルソナ様ってゲームが発祥なんだ?」
「うん。ペルソナは心理学用語からとってるらしいけど、儀式は多分オリジナルなんじゃないかな」
「心理学かぁ、ちょっと興味あるかも」
「・・・・・・」
「それで、え~っと足立君?だったかな。これからペルソナ様をするって事でいいんだよね?」
「・・・・・・せぇ」
あ(察し)
「うるせぇ!ご高説垂れてんじゃねぇぞクソオタク!!」
「足立!?」
恥をかかされたと思ったのか顔を赤くした陽キャのリーダー格らしい足立に殴り倒され、腹を蹴られる。
「足立!あんた一般人にいきなり暴力振るうとか何やってんの!?」
「分家のテメエが俺に指図すんじゃねぇ、黙ってろ!!」
ウーン、また何か間違えたかな。
まだ若干理性が残ってるのか、最初の一発以外は服で目立たない所を蹴られながら、俺はそんなことを考える。
「クソッ!クソが!!お前のせいで恥をかいたじゃねえか、どうしてくれんだ?」
「・・・・・・」
「黙ってないでなんとか言ったらどうなんだ。ええ?」
「・・・・・・ちっちぇえな」
「あ゙?」
「事前に下調べもせず指摘されたら暴力に頼るなんて、器の底がしれてちっちぇえな」
「っ!」
格好つけてみた俺が最後に見たのは理性が飛んで顔を踏みつけようとする足立のシューズの底にとめようと慌てる女と観察する女。
そして、何処からから入って来たのか金色の蝶が飛んでいて──。
俺の意識は闇に飲まれた。
???
「──驚いた。まさかベルベットルームではなく此処へ来る者がいるとは。だけどすまない、私はもう人にペルソナを与えるつもりはないんだ」
「だが、折角此処まで来たのにタダで返すというのもしのびない。それに、此処で私に出会うのもまた人間の可能性ゆえか」
「ならば、私も君に切っ掛けを与えてみるべきだろう」
「改めてようこそ、意識と無意識の狭間へ・・・・・・私の名はフィレモン。異世界からの来訪者よ、君の名前を聞かせてくれないか」
仮面を着けた体の透けている男から名前を訊ねられる。
「俺は──」
見切り発車なので続かない。