お兄ちゃんはおしまい!in私に天使が舞い降りた!   作:朋也

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わたてん見てたら書きたくなりました。

きっかけは、ひなたとなゆたんが同じ『星形のサングラス』を買ってるのを見た時です。








みやことまひろ(前編)

「はぁ、疲れた」

 

 重たい足取りでとぼとぼと歩く。大学帰りの星野みやこは憂鬱だった。

 単位獲得に必要最小限の授業しか受けていないので、大学に赴く機会は一般の大学生より少ないのだが、人見知りで集団が苦手な彼女にとって、一回の講義も疲労感も倍なのだ。

 

「―――早く帰らなきゃ!」

 

 身体に溜まった疲労感が、先程まで憂鬱が、徐々に高揚に変わっていく。

 何故なら今日はみやこの人生にとって『生き甲斐』と言っても過言ではない。そんな一日。

 

(今日は花ちゃんが家に来る日。花ちゃんに来て欲しい服が多過ぎていっぱい服作っちゃった~)

 

 みやこの妹で『小学生』の星野ひなたの同級生である白咲花に、みやこが作成した服を着せて写真を撮る。

 それがみやこの人生の生き甲斐である。

 

(ハァ、ハァ、早く花ちゃんのコスプレが見たい……! 写真撮りたい……ふへへ)

 

 荒い気を吐きながら歩くみやこを通りかかる人たちは何事かと、心配、或いは胡乱なものを見る様な視線を送っていたが、興奮状態のみやこは気が付かない。

 欲望のままに妄想を膨らませていると、不意に目に飛び込んできた光景に足を止める。

 

(何だろう……あれ)

 

 曲がり角を曲がった道の先に、股を抑えながらゆっくり歩く女の子が居た。

 内股で俯き気味に歩く姿が、みやこの視線を釘付けにする。

 

(なにあれ。どうしたんだろう……。―――もしかして、体調が悪いのかな?)

 

 よく見ると少し震えている事に気が付き、体調不良を心配する。本当にそうなら何かしらの手助けをする必要がある。しかし、知らない人に話しかける勇気がみやこには無い。

 

(だ、誰か……)

 

 周囲を見渡すが、通行人は自分しかいなかった。目の前の少女を救える立場にいるのはみやこだけ。

 どうすればとオドオドしている間も、震える少女はゆっくりと歩みを進めている。

 

(ど、どうしよう。話しかけた方がいいなか? でも、実は具合が悪い訳じゃない可能性もあるし、もう自宅が目と鼻の先かもだし、話しかけたら『逆に』迷惑かもだし……)

 

 グルグルと都合のいい言い訳を並べ立てるみやこ。散々悩んだ挙句、溜息を吐きながら頭を抱える。

 

(……こんなんでどうするの? 私)

 

 目の前の困っている人を助けない事を正当化しようと策を巡らせる。そんな自分に嫌気がさす。自分にとって最高の場合を考えるのではなく、相手にとって最悪の場合を考えなければならない。

 

(もし、本当に体調が悪くて困ってるなら……。よし!)

 

 気合を入れる。震える少女と同じくらい足をガタガタと震わせながら、恐る恐る近付く。

 少女の後ろまでそっと近づき、震える声で話しかける。

 

「あ、あのぉ!!」

「ひゃいっ!?」

 

 思ったよりボリュームも大きく裏返った声に、話しかけられた少女はびくりと身体を震わせてその場にへたり込む。

 

「あ、ああ、あの、大丈夫……!?」

「……へ?」

 

 涙目で少女が振り返ると、あたふたしながら顔色を悪くするみやこがいた。

 

「ご、ごめんね!? 私のせいで、その……ごめんなさい!!」

 

 土下座する勢いのみやこに対し、力が抜けた笑顔で応える少女。

 

「えっと、その、本当に大丈夫? 体調悪かったりとか」

「はは、大丈夫……です」

「ほ、本当に?」

「はい。突然話しかけられて、びっくりしただけです」

「そ、そっかぁ。よかった~」

 

 胸を撫で下ろすみやこ。どうやら体調不良ではなかったらしい。

 

「あ、いきなり話しかけてごめんね!? 驚かせたよね」

 

 慌てて手を差し伸べる。少女はその手を掴み、ゆっくりと立ち上がる。

 

(……この子)

 

 改めて少女を見る。小柄な体格に愛くるしい瞳。長めのまつ毛に綺麗な髪。白を基調とした洋服が映える可憐な美少女。

 

(可愛いなぁ……)

 

 思わずドキドキする胸を抑えながら、

 

「体調悪いのかなと思って話しかけたんだけど」

「……実はその、トイレ我慢してて」

 

 後頭部を掻きながら情けなく笑う少女。みやこはその理由を聞いてなるほどと納得する。

 

(だから股を抑えて前のめり……)

 

 合点のいったみやこは、自分の早とちりが急に恥ずかしくなってくる。最悪の事態ではなかったのは良かったのだが、それはそれとして、結果的に空回りしただけのみやこ。

 慣れないことはするもんじゃないと思いながらも、少女の無事に安堵する。

 

「いや~、良かった。体調悪い訳じゃなかったんだね。本当にごめんね? 驚かせちゃって」

「……」

「?」

 

 視線を逸らして頬を赤くする少女。何かを言いづらそうにしながら口籠っている。

 

「どうかしたの?」

「……えっと、体調は悪くないんですけど、その……さっきの衝撃で―――」

 

 そう言いながら、ワンピース型の服のスカートを少しだけたくし上げる。露わになった素足の根元から伝っている水分は、間違いなく『あれ』だと分かる。

 

「―――出ちゃって」

「―――っ!!」

 

 涙目で恥ずかしがる少女。その姿に、場違いながらも心惹かれる可愛さを感じながら、みやこは叫ぶ。

 

「ご……、ごめんなさーいっ!!」

 

 今度こそ本当に土下座する。人の往来がある道端だろうが関係ない。誠心誠意の謝罪をするしか、みやこには出来なかった。

 

 

 

 緒山まひろは、休日に妹である緒山みはりからお使いを頼まれて、仕方なく外出中だった。

 せっかく休日にも関わらず妹の小間使いになる事に反発したが、両親が海外に居て、家で兄妹二人の生活で、炊事家事の全てをこなしているみはりに意見できるはずもなく、嫌々ながらも買い物に出かけた。

 本来なら、今頃は帰宅して、夕飯が出来るまで漫画やらゲームやらに興じていたはずのまひろだが、どういう訳か今、まひろは知らない人の家でシャワーを浴びている。

 

 経緯をざっくり説明すると、スーパーの帰り道で尿意が襲ってきて家まで我慢しながら歩いていたら、いきなり後ろから話しかけられたことにびっくりして、その場でお漏らししてしまった。その際にへたり込んでしまい、下着やら服やら汚れてしまったので、たまたま通りかかって珍妙な歩き方をしていたまひろを心配して声を掛けてくれた『お姉さん』の自宅のシャワーをお借りている。

 

「―――我ながら情けない話だ」

 

 シャワーを浴びながら、自身の醜態に羞恥を通り越して呆れかえる。幾ら尿意が限界ギリギリだったとは言え、話しかけられ拍子に出てしまうとは。

 未だに女の子の身体の加減が分からないまひろ。もしかして、漏らし癖でもあるのか? 子犬じゃあるまいに。

 

 若干落ち込み気味でバスルームを出る。洗面所を見渡すと、洗濯機の上にお姉さんが用意してくれたらしい『着替え』があった。まひろがバスルームに入って暫くした時に、控えめな声色で話しかけてきた。

 

「着替え着替え~。……こ、これは―――?」

 

 用意された着替えを手に取る。服……なのだが。何と言うか、いささかファンシーさが増し増しというか。普段着と言うより、コスプレの衣装の近い気がするのだが……。

 

「……ん?」

 

 ここでまひろに嫌な予感が過る。考えてみれば、知らない人についていってのこのこ家に上がってシャワーを浴びているこの状況は、余りにも危機管理能力が低くないだろうか。もし、あのお姉さんに『邪な』感情があるとしたら……。

 ごくりと生唾を飲むまひろ。今更ながらに自分が置かれている状況を理解し、背筋に嫌な汗が流れる。

 

「……取りあえず、着るか。これしか着る物ないし」

 

 ぎこちなく着替える。警戒心を強めながら洗面所を出る。廊下の道は片方はリビングに繋がり、もう片方は玄関に繋がっている。

 もうこのまま家を飛び出した方がいいかと、摺り足で玄関に近付いていた時、背後のリビングの扉が開き先程のお姉さんが出てくる。

 

「お?」

「あ」

 

 振り返ると目が合い、思わず声が出る。風呂上がりだと言うのに全身から汗が噴き出る感覚に襲われ、思わず後退りしてしまう。

 

「……えっと」

 

 何か言わなければと必死に脳を回転させるが、まひろが発言する前にお姉さんが『咆える』。

 

「―――っ!! 可愛いね!!」

「!?!?」

「やっぱり似合うよぉ! 一目見た時から可愛い子だなぁとは思ってたけんだけど。―――うんうん、私の目に狂いはなかったぁ!」

「やっぱり変態だぁ!!」

 

 ひぃと更に下がるまひろに鼻息を荒くしながら更に近付いてくるみやこの構図は、明らかに不審者と被害者の構図だった。

 

 数分後、冷静さを取り戻したみやこが、まひろの誤解を解くのに更に数分の時間を要した。

 

 

 

 

 

 




三人の中だと、ノアが一番身長高かったので。(まひろと一センチ違い)

やはり、まひろは小学生……?
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