お兄ちゃんはおしまい!in私に天使が舞い降りた!   作:朋也

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お待たせしました。後編スタートです!

後、誤字ってたら教えてください。多分やってるんで。








みやことまひろ(後編)

「……」

「……」

 

 リビングで向かい合って座っている二人の間には沈黙が横たわっていた。

 

(うぅ……気まずい)

 

 沈黙の原因であるみやこは、己の愚かさを反省していた。

 チラチラと目の前に座る少女を覗き見る。きょろきょろと辺りを見渡していて、みやこの視線に気が付くと、気まずそうに視線を逸らす。

 

(あぁー、やってしまった……)

 

 顔を抑えて打ちひしがれる。完全に『不審者の変態』だと思われている。

 愕然とするみやこ。一体どうしてこんな事なったのかと、改めて思い返す。

 

 自分のせいで不必要な恥とクリーニングの手間を負わせてしまった少女に、身体を綺麗にする場所と、替えの服を用意する為、自宅に案内した。

 この時点で、初対面の少女を自宅に連れ込む形になっている為完全にアウト。だが、名誉を挽回する為にみやこは止まらない。

 

 少女をバスルームに案内し、その間に着替えを用意する事になったのだが……。

 

(私の服なんてダサすぎて貸せないし、サイズも合わない。ひなたの服ならと思ったけど、ひなたより少し身長大きそうだし、一番体格が近そうだったのがノアちゃんだから―――)

 

 今にして思えば、普通にひなたの服で良かったのだが、何故かこの時は少しでもサイズに合った服を用意しなければならないという、服作りをする者としてのこだわりが発揮されてしまっていた。完全に正常な判断能力は失われていた。

 

(ノアちゃんに作った『コスプレ衣装』を用意したんだけど……)

 

 みやこが少女に用意したのは、以前にノアの為に作ったコスプレ衣装。比較的普段着に近いものを用意したが、それでもノアの趣味に沿った可愛い系の衣装になった。

 そして、その衣装を着たまひろを見たみやこはつい、いつもの『悪癖』で騒ぎまくった事で今に至る。

 

(こんな時、どうすれば……そうだ!)

 

 思い立ったみやこはそそくさと台所へ行き、昨日作ったクッキーを持ってくる。

 

「……お菓子、食べる?」

 

 みやこ唯一の『子供』とのコミュニケーションの取り方である。

 

「……変なもの入ってないですよね?」

「入ってないよぉ!?」

 

 訝しむ少女に涙目で抗議すると、少女はくすりと笑う。

 

「すみません。冗談です」

 

 そう言いながら、差し出されたクッキーを一つ食べる。

 

「! 美味い!」

「そ、そう? よ、よかった~」

 

 ほっと胸を撫で下ろす。暫くクッキーを食べ、一息ついた所で、改めて二人は向き直る。

 

「えっと……緒山まひろです」

「ほ、星野みやこ。よ、よろしくね」

 

 お互いに自己紹介をして、改めてお菓子を食べる。それから、取り留めのない会話が暫く続いた。

 

「―――でね、リリキュアの映画観に行きたいんだけど、周りに人がいるのがどうしてもね~」

「分かるなー。映画館ってショッピングモールの中にあるから、陽の気が強くて行きたくないよなー。ネット配信待つ派だなぁ」

「そうそう! もう最初からネットでも観れる様にして欲しいよぉ~」

 

 雑談は大いに盛り上がっていた。漫画やアニメ、ゲームの趣味に共通点が多く、最初はそれで話が弾み、段々とお互いの性格や行動原理に似通っている部分が多いと感じ始めた。

 まひろは砕けた話し方に。みやこも挙動不審さがなくなり、数分間とは思えない程、お互いの距離は縮まっていた。

 

(まひろちゃん、すごく話しやすい。私が話す話題大体知っているし、『何故か』昔観てたテレビとか流行ってたものも知ってるし。もしかして、上にお兄さんかお姉さんがいるのかな?)

(みやこちゃん、話が合っていいな。学校では漫画の話は男共とも出来るけど、アニメ、特にニチアサ系は話しできる人が周りにいないからなぁ。それに、観てたテレビとか、昔流行ってたものがオレと同じって事は、もしかして同い年か?)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「まひろちゃんって、兄弟いる?」

「うん。妹がいるよ」

「そっかぁ。私も妹がいるんだー。ひなたって言うんだけど―――」

 

「昔はわたしに後ろついて来てたのに、いつの間にか成長しやがってよー」

「ふふ、分かるなぁ。まぁ、うちのは今でもついてくる、とうか突進してくるけど……」

 

「上には兄弟居ないの? お兄さんとか、お姉さんとか」

「え? なんで?」

「まひろちゃん、歳離れてるのに私と話が合うから、上の兄姉の影響かなって」

「……あ、―――えーっと、……お、お兄ちゃんがいるんだよね~」

「やっぱり~、そうだよね。通りで話が合うなって思ったよ~」

「ははは、……はは」

 

「へぇー、服作るの趣味なんだ」

「そうなんだ。コスプレ衣装だけどね? 妹とかその友達に着てもらってるんだぁ」

「コスプレ……」

「……もしかして、興味ある?」

「え!? い、いやー、そういう訳じゃ―――」

「……」

「―――ちょっとだけ」

「っ!! ならしてみようか!? コスプレ!」

「へ?」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 場所を移動してみやこの部屋。普段は花やひなた、ノア達の撮影をしてるこの場所は、今日は新しいお客さんを迎えていた。

 

「いいよぉー、可愛いよぉー、まひろちゃーん!!」

 

 パシャパシャとカメラのシャッターを下ろすみやこ。興奮しながら鼻息を荒くする。

 

「……そ、そうかぁ?」

 

 歓声を受けながら撮影されているまひろは、まんざらでもない表情をしながらポーズを取っている。

 

「目線こっちちょうだーい」

「こ、こう?」

「そうそう!! いいよー!」

 

 ノリノリのみやこに、恥ずかしがりながらも指示通りにするまひろ。しまいには、自分からポーズを取る様になった。その積極性にみやこも更にテンションを上げ、撮影会は大いに盛り上がった。

 

「ふぅー、満足満足」

 

 袖で額の汗を拭う。一通りの撮影を終えて一息つくみやこ。

 

(そろそろひなた達も帰って来るし、切り上げるか)

 

 時計を確認する。ひなた達小学生組が帰宅する時間が迫っている。ひなた達が帰ってきたら、撮影会セカンドが開催される為、時間的にも体力的にもここら辺が限界だろう。

 

「ありがとうまひろちゃん。大満足だよ。今度写真渡すねー」

「……」

「どうしたの?」

「……え? いや、その」

 

 着ている服を見ながら上の空のまひろ。みやこには何やら物足りなさそうに見えた。

 

「まだ撮り足りない?」

「そ、そうじゃなんだけど……」

「?」

「コスプレって、もっと派手なのもあるのかと思ってて」

「派手……」

 

 そのワードに、みやこは不穏なものを感じ取る。しかし、幸か不幸か、それは彼女の探究心を刺激する。

 まひろの考えが手に取る様に伝わってきたみやこは、口元を三日月にしながら、

 

「つまり、エッチなやつ、だね?」

「い、いや~、まぁ、端的に言えば」

「成程。ふむふむ」

 

 暫く考え込み、指を一本立ててみせるみやこ。

 

「……実は、もうちょっとエッチなのもあるんだけど、どう?」

「……」

 

(本当は花ちゃんに来て欲しくて作ったんだけど、勢い余って過激になっちゃったやつ。まひろちゃんは理解あるし、もしかしたら……ごくり)

(エッチってどんなんだろう。みやこちゃんの趣向オレに近いし、その人がエッチと言うなら……ごくり)

 

 生唾を飲む二人。視線が合うと、お互いに小さく頷き、みやこは押し入れの奥から衣装を取り出す。取り出した衣装をまひろに渡して部屋を出る。

 数分後、部屋からまひろの声が掛かり、先程渡した衣装を身に纏ったまひろと対面する。

 

 

 

 

 

「お、おぉ……」

 

 語彙力の喪失した感想。目の前の『ちょっとエッチ』なコスプレをしているまひろ。少し頬を赤らめて、斜め下を見ながらもじもじしている姿を見て、みやこは言葉にならない言葉を発していた。

 渡した衣装は、魔法少女系アニメの変身ヒロイン。その敵で後に仲間になるヒロインの衣装。黒髪でクールな感じのキャラで、最初は主人公達を嫌っていたが会話を交わしていく内に和解し、最終的には仲間になる王道展開。

 

 みやこ的には、最初はツンツンしてたけど、次第に仲良くなっていく過程が花を想起させたとか、見た目が花に似ていたとか、そういった建前で花に着てもらおうとしていた。

 本音は少し過激な衣装を着た花が見たかっただけだったので、流石のみやこも一線を踏み外す事はせず、作ったはいいが押し入れの肥やしになっていた。そんな一品。

 自分の欲望が普段以上にふんだんに盛り込まれた呪具。それを美少女が着ている現状に、みやこの心には、言葉では言い表せない様な感情が渦巻いていた。これを例えるなら、そう―――。

 

(―――興奮する感情。あの時に似てる……っ!?)

 

 初めて自分の作ったコスプレ衣装を花が着ているのを見た時の様な、嬉しくて恥ずかしくて、それ以上に、込み上げてくる激情。まさに興奮の吐露が今、みやこに再び訪れていた。

 

(普段のコスプレとは違う。いけない事をしている様な背徳感。……マズイ。こんな気持ちを覚えちゃったら、戻ってこれなくなりそう)

 

 興奮と同時に、名状し難い恐怖すら覚える。私は花ちゃんにこんな衣装を着せようとしていたのかと、一周回って冷静になる自分もいた。

 

(―――これはダメだ。踏み込んではいけない領域だ!)

 

 思わずその場でたじろぐ。目の前に大きな沼がある。一度踏み込んでしまったら、沈むまで抜け出せない、深い深い沼。

 我に返ったみやこは、今にもシャッターを切りそうだったカメラを置く。

 

「い、いや~、ごめんねまひろちゃん。ちょっとその……エッチ過ぎたよね!?」

 

 『子供』に対して何というワードを使っているのかと思うが、それ以外に的確な語句が思いつかない。

 

「わたし出てるから、直ぐに着替えちゃって!」

「え?」

「え?」

 

 まひろの返答と全く同じ返答をするみやこ。

 

「撮らないの?」

「……え?」

 

 またしても同じような反応を繰り返してしまう。

 

「と、撮る?」

「……せっかく着替えたんだし」

 

 そう言いながら、短めのスカートの両端を摘み上げて、ポーズをとる。さながら、パンツを見せようとしているその恰好は、漫画やアニメではよく見るが、現実で見るとこんなにも性癖を刺激し、理性の壁を破壊するのかと、みやこは思った。

 

「……ほ、本当に、いいの?」

「……うん」

 

 恥ずかしそうなのに、何処か座った目をしているまひろに、みやこは机に置いたカメラを持ち直し、正面から構える。

 

「と、撮るよ?」

「……」

 

 無言を肯定と受け、カメラレンズを覗き込む。理性の箍が外れたみやこは、本能のままに、シャッターボタンに手を掛けた。

 

 そして―――。

 

 

 

 

 

 着替えを終え、みやこに『ちょっとエッチ』な衣装を見られているまひろは、最初は恥ずかしかったが、次第に慣れてきてこんな事を思い始めた。

 

(……想像よりエッチじゃないな)

 

 身に纏っている服は、まひろも見ている魔法少女物のアニメに出てくる敵キャラの衣装。確かに多少は過激だが、あくまで全年齢作品なのでその域は出ておらず、作品内でエロいという程度。R18を無数に見てきた自宅警備員のまひろからすれば、物足りなさを感じてしまう。何だったら、このキャラの18禁同人誌を持っているほどである。

 段々違和感が無くなってくると、短めのスカートをひらひらさせてみたり、その場で一回転してみたり、跳ねてみたり。衣装の出来は良くて、本当に自分がキャラクターになった気さえし始める。

 

(そう言えば、あの同人誌はどんな話だったかな……?)

 

 以前買ったコスプレ元のキャラクターが題材の18禁同人誌の内容を思い出そうとしていると、みやこが慌てた様子で、

 

「い、いや~、ごめんねまひろちゃん。ちょっとその……エッチ過ぎたよね!?」

 

 両手をバタバタと振って、顔を赤くしている。

 

「わたし出てるから、直ぐに着替えちゃって!」

「え?」

「え?」

 

 みやこの言葉に声が出てしまう。

 

「撮らないの?」

「……え?」

 

 撮られるものだと思っていたまひろは、思わずといった感じで言ってしまう。しかし、よく考えてみれば、過激だと分かっている上で撮影したいなど、みやこから提案する訳ないし、本当にお試で着るだけという認識だったのかも知れない。

 これではまるで、まひろが撮って欲しいと思っているみたいじゃないか? そう思い至ると、顔から蒸気が噴き出す程恥ずかしくなる。

 

(何言ってんだオレ!? これじゃまるで、撮って欲しいみたいじゃないか!? 確かにさっきまでのコスプレは撮って欲しいと思ってなくもなかったけど、エロい恰好なら話が違うだろ! ……まぁでも? 写真は見てみたいかも……?)

 

「と、撮る?」

「……せっかく着替えたんだし」

 

 勘違いしていた恥ずかしさからの逃避なのか、もうどうにでもなれという投げやりな感なのか、まひろは、思い出した同人誌で見てポーズをとってみる。

 スカートの両裾を持ち上げて、正面から見えるか見ないかといった高さで固定する。

 

「……ほ、本当にいいの?」

「……うん」

 

 色々な要素を含んだ恥ずかしさで我を忘れているまひろは、自分が踏み込んではいけない一線。沼に片足を入れようとしている事に気が付いていない。

 

「と、撮るよ?」

「……」

 

 こくりと頷く。カメラを向けているみやこの方は見られない。斜め下を見ながら、顔を真っ赤にする。

 

(や、ヤバい。なんかすんごくヤバい事してる気がするっ……!!)

 

 気付かぬまま踏み込んだ領域は、まひろの足を掴んで離さない。完全に場の空気に飲まれている。だが、その空気を作りだしたのも、まひろ本人なのだ。

 何も考えられなくなったまひろは、その時が来るのを待つしかなかった。シャッター音が鳴るその時を。

 

 そして―――。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「みゃー姉ただいまー!!」

「おじゃまします」

「ミャーさん遊びにきたよー!」

 

 

 

「「あ」」

 

 

 

「「「え」」」

 

 

 

 みやこ&まひろ「「……」」

 

 ひなた&花&ノア「「「……」」」

 

 

 

 スカートをたくし上げ、顔を真っ赤に染めているまひろ。こちらも顔を真っ赤にしてカメラを構えるみやこ。

 

 響くシャッター音。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「……ナニしてるの? ミャーさん」

 

 耐えきれずノアが問う。子供たちの視線がみやこに突き刺さる。

 割と理解があって察しのいいノアでも、変質者を見る目を向けている。ひなたはわなわな震えているし、花は既にスマホを取り出し臨戦態勢。

 ここで回答を誤れば、人生が終わる。そんな予感がみやこを襲う。

 

「……ち、違うよ? 私が無理矢理連れ込んだとか、無理矢理コスプレさせたとか、有り得ないからね!?」

「有り得なくないと思うナ」

「みゃー姉。また妹増やしたのか……っ!」

「とりあえず通報しますね」

「ちょっと待って! 特に花ちゃん! 私は何もやましい事はしてないから! ほ、ほら! まひろちゃんも何か言って―――」

 

 そう言ってまひろの方を振り向くと、その瞳に涙を溜めて、その場にへたり込んでしまった。

 

「うぅ……」

「ちょっとまひろちゃん!? この状況で泣くのは反則―――!!」

 

「流石に弁護できないよ。ミャーさん……」

「もしもし、警察ですか? 誘拐事件です」

「ちょっ!? ま、待ってー!?!?」

 

 本気で犯罪者を見る目を向けている花とノアに必死に弁解する。数十分に渡る釈明の末、何とか一命を取り留めたみやこ。その間、ひなたがずっとまひろを慰めていたのを、ノアが恨めしそうに睨んでいた。

 

 

 

 

 

 




まひろは二十歳。みやこは十九~二十歳くらいと思ってください。
ほぼ同世代って事ですね。みやこはともかく、まひろには同世代の友達とか居たのでしょうか?
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