快活だった幼馴染が、久しぶりに会ったら様変わりしてた   作:ジョク・カノサ

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第一話

 高校二年の冬休み、俺は中二まで住んでいた地元に帰ってきていた。理由はシンプルで久しぶりに地元の空気を吸いたかったからってのと、今住んでる家から長期間離れるチャンスだったから。

 

 そんで帰省初日の夕方。懐かしい街並みを味合うように歩いていた俺は、そいつとバッタリ遭遇したんだ。

 

「え……海、斗?」

 

 俺の知る頃とはまるで違う、幼馴染に。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 俺が高村華と初めて出会ったのは小学校に上がった直後の話だ。近所の公園、その隅の方の砂場で一人で遊んでいた俺に、華は話しかけてきた。

 

「いっしょに遊ぼ!」

 

 やんちゃ小僧みたいに泥が頬に付いた笑顔でそう言ったかと思えば、次の瞬間には手を引っ張られ、俺は強引に華が中心の子ども達の輪に入った。俺が輪に入った時のアイツらの微妙そうな顔は今でも覚えてる。

 

 それからまあ、華との縁は続いた。公園の縁は小学校へ、小学校から中学へ。家が隣とかではないが、幼馴染と呼べる関係だったと思う。

 

「海斗ー!今日放課後サッカーねー!」

 

 小学校中学校と、華は一貫して活発な子どもだった。

 

 小学校の頃は男に間違えられるくらいの短髪に半袖短パン。足に絆創膏が貼られてなかった時なんて無いんじゃないかってほど。

 

「海斗!私、陸上に決めた!海斗はどうすんの?」

 

 中学校の頃には髪型も服装も流石に少しは落ち着いたが、それでも活発さは変わらない。

 

 よく喋り、よく笑い、よく動く。部活での活躍を聞く限り運動の才能があったようだった。

 

 クラスでも当たり前のように中心に居て、教室内では浮き気味だった俺にも頻度は減りはしたが相変わらず話しかけてくれたし、たまには遊んだ。叱られる時もあったが。

 

 そして中二の冬。都合で地元を離れる事になった俺を、華は律儀に見送ってくれた。

 

「海斗!……またね!」

 

 いつも通り屈託無く笑って見送ってくれた華を見て、俺は安心して前を向けた。

 

 ともかく華はそういうヤツだった。俺が引っ越した後も高校に進学して、得意の陸上か他の運動部にでも入って、汗を流してる。

 

 そういう人生を送ってると思ってた。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

「何頼む」

 

「……バニラアイス」  

 

「分かった。すんませーん」

 

 俺達が住んでいた辺りにあった小さな喫茶店。中学の時に何度か行ったそこに、今俺達はテーブルを挟んで向かい合っている。

 

「……」

 

 正直、最初見た時は華だと分からなかった。名前を呼ばれなきゃ気づけたかどうか怪しい。それくらいの変化だ。

 

 邪魔だからと常に保っていた短髪は肩口まで届くほど伸びていて、色が茶色に染まっていた。

 

 常に真っ直ぐだった視線は前髪が邪魔をして、何かに怯えるような頼りのないモノに。そして声からは覇気が無くなっている。

 

 唯一変わりがないと思えたのは服装ぐらいか。中学の頃によく見たジャージ姿だ。

 

 総じて言うと、俺の幼馴染は様変わりしていた。しかも何というか、ネガティブな空気を感じる方へ。

 

「バニラアイス、まだ好きなんだな」

 

「……うん」

 

「覚えてるか?夏にあさがお公園でさ、山ほどアイス買って来て食べたよな。そん時お前がバニラアイスばっか食っててさ」

 

「う、うん。覚えてる」

 

「それがなんか、おかしくってさ。そういやあの後、お互い思いっきり腹壊して――」

 

 小学校の頃の話をし始めると暗い雰囲気は幾らかマシになって、会話もそこそこに弾んでいく。

 

 何があった?率直にそう聞きたい気持ちはある。

 

 けど、聞くべきじゃない。少なくとも今は。華の雰囲気はそう言ってるし、何より詮索じみたことはしたくない。

 

 久しぶりの再会を、ただ噛み締めたかった。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

「……」

 

「あっ、華ちゃん。おかえり」

 

「……うん」

 

 母親の出迎えに小さく返し、華はそそくさと靴を脱ぎ二階の自室に向かう。

 

 明かりを付けた自室の隅にある勉強机。そこに飾られた表彰状とトロフィーを一目見た後、華はベッドの上に座り込んだ。

 

『冬休みの間はここに居るから。ま、暇だったら集まってなんかしようぜ。……じゃ、またな』

 

 別れ際の言葉をリフレインさせ、華は自身のスマホのメッセージアプリを開く。

 

 そのまっさらな画面の中に一つ、先程交換したばかりの連絡先が載っている。

 

「……えへ、へ」

 

 漏れ出すような笑いを浮かべて、華はその液晶画面を静かに濡らした。

 

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