ハイスクールD×D ~特別番外編~   作:さすらいの旅人

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第十話

 平行世界に滞在して一週間以上経つが、元の世界へ戻る手掛かりは何も見付からない状態だった。

 

 余りにも収穫が無かった為、この世界のアザゼルに転移装置でも作ってもらおうかと考えたが、当の本人は現在色々と忙しいみたいで無理だった。

 

 こうなったら内緒で次元の狭間へ言ってみようと思った矢先、俺はある事を思い出した。以前に俺のいた世界で、アーシアが旧魔王派のシャルバによって次元の狭間へ転送させられた事を。

 

 その原因の根本はディオドラ・アスタロト。奴が『レーティングゲーム』開始前にアーシアを我が物にする為に攫い、自ら禍の団(カオス・ブリゲード)に寝返ったと宣言したアレだ。

 

 アーシアを心体共に苦しめたのを知った時、自身を抑えられないほどの怒りと殺意の波動に目覚めてしまいそうだった。本当だったら聖書の神(わたし)が直々に天罰以上の極刑を下したかったが、ディオドラはイッセーにぶちのめされた挙句、仲間のシャルバによって殺されてしまった。もう終わったこととは言え、思い出すだけで(はらわた)が煮えくり返る。

 

 因みにこの平行世界のディオドラは未だに何の動きを見せてないので、もしかしたら禍の団(カオス・ブリゲード)に寝返ってないのかと考えかけたが、実はそうでもなかった。

 

 リアスから聞いた話だと、今日の放課後にオカ研が部室で、今後の『レーティングゲーム』をやる為に各若手悪魔達の戦力分析中にディオドラが現れたらしい。しかも来た理由は『僧侶(ビショップ)』のトレード、早い話アーシアを手に入れる為だ。それを知った俺は内心、『やはりこの世界のディオドラも寝返ってる』と結論に達した。俺のいる世界のディオドラも同様の行動をしていると。

 

 更には、次の『レーティングゲーム』でリアス・グレモリーVSディオドラ・アスタロトの試合をやる予定になったそうだ。しかもそのディオドラが絶対の自信を持ってるようで、イッセーに一騎打ちを申し込んだとか。

 

 この世界のディオドラは俺の世界と全く同じ行動をしてるから、話を聞いた聖書の神(わたし)は完全に確信した。奴は間違いなく真っ向勝負などせず、『レーティングゲーム』を行う前にアーシアを攫う行動に移るだろうと。

 

 本当ならこの事実をリアスやイッセー達に教えたいのは山々なのだが、それを出来ないのには勿論理由がある。

 

 ディオドラが禍の団(カオス・ブリゲード)に寝返ってる証拠が未だに無いだけでなく、いくら聖書の神(わたし)が証言しても無駄なのだ。話しが通じるサーゼクス達が良くても、他の悪魔上層部は絶対に信じない。それに加えてディオドラはアスタロト家の有望な若手悪魔の一人と称賛されている為、決定的な証拠がなければ上層部は絶対に動こうとしない。

 

 どうにか良い方法がないかと考えてる中、アザゼルから急遽呼び出しがあった。大事な話しがあるから、自分のマンションに来て欲しいと。

 

 

 

「よう、聖書の神(おやじ)。急に呼び出して悪いな」

 

「気にするな。それで、呼び出した理由はなんだ?」

 

「その前に一つ確認したい。聖書の神(おやじ)は若手悪魔の一人――ディオドラ・アスタロトについて知ってるよな?」

 

「……まぁ、一応な」

 

 真剣な顔で尋ねてくるアザゼルに、俺はすぐに気付いた。コイツはディオドラを疑っていると。

 

「そんな事を訊いてくるって事は、ソイツに何かしらの疑いでもあるのか?」

 

「まぁな。だから教えてくれ、聖書の神(おやじ)。そっちの世界にいるディオドラは『禍の団(カオス・ブリゲード)』と通じていたか?」

 

「………アザゼル、悪いがその質問には答えられない。お前も知っての通り、この世界と俺のいる世界は似て非なるものだ。必ずしも一緒とは限らない」

 

 すぐにでもイエスと答えたいところだが、平行世界にいる聖書の神(わたし)は異分子同然の存在。俺の世界で経験した事は、この平行世界にとっては未来に等しい為、不用意に答える訳にはいかない。

 

 この平行世界に干渉して何を今更だと思われるだろうが、これ以上は本来進む予定となっている歴史を変える訳にはいかない。

 

 本来であればロキとの戦いにも、聖書の神(わたし)は見守らなければならなかった。だが聖書の神(わたし)が参戦してしまった為に、この世界が進む予定である歴史のレールが変わってしまっている。それでも世界は元の歴史に戻そうと、少しずつ修正をしているが、な。

 

 もしも聖書の神(わたし)が『ディオドラ・アスタロトは禍の団(カオス・ブリゲード)に寝返ってる。今の内に拘束しろ』なんて言えば、アザゼルは疑う事無く実行に移すだろう。そうすれば進行する予定の歴史が再び変わってしまうどころか、場合によっては取り返しのつかない事態に陥る可能性もある。聖書の神(わたし)ですらも手に負えない程に、な。

 

「だが敢えて答えるなら、お前がこれからやろうとしてる事は間違っていない、とだけ言っておく」

 

「……そうか。それだけ聞ければ充分だ」

 

 満足な返答でないにも拘らず、アザゼルは確信を得たように笑みを浮かべた。

 

「本当なら他所の世界にいる聖書の神(おやじ)に聞いちゃダメなのは重々承知しているんだが、それでも万が一に備えて確認したかった。ありがとな」

 

「構わないさ」

 

 アザゼルも別世界の聖書の神(わたし)に頼ってはいけない事を理解してたようだ。それでもイッセー達の為と思って敢えて訊いたんだろう。

 

 嘗ての聖書の神(わたし)だったら絶対に答えないどころか、一切干渉しなかっただろう。だが人間に転生した為か、ダメだと分かっても我慢出来ずに手を差し伸べてしまう。これが人間の(さが)、というモノなんだろうか。

 

「返答を聞いた後はどうするつもりだ?」

 

「今からサーゼクスに通信をする。ディオドラ・アスタロトの件と、明日予定してる『レーティングゲーム』の事についてな」

 

「そこまでの事を考えてるんだったら、何も聖書の神(わたし)に訊かなくても良いだろうに」

 

「いや、それだけじゃない。実はもう一つ頼みたい事があってな。聖書の神(おやじ)が干渉できるギリギリの範囲内で」

 

「是非とも聞かせてくれ」

 

 アザゼルからの頼みに私は迷う事無く聞こうとした。

 

 

 

 

 

 

 翌日の放課後。

 

 俺はアザゼルに連れられて、イリナとロスヴァイセと一緒にオカ研の部室に来ていた。

 

「行ってらっしゃい」

 

「頑張ってね」

 

「ディオドラなんかに負けるなよ」

 

 部室に敷かれてる魔法陣でレーティングゲーム会場へ行こうとするリアス達に、ロスヴァイセとイリナと俺は見送りの挨拶をする。

 

「さて、俺達も行くか。聖書の神(おやじ)、準備は出来たか?」

 

「勿論」

 

 リアス達が転移したのを見たアザゼルが椅子に座っていた腰をあげながら俺に確認する。

 

 アザゼルと俺のやり取りを見て疑問を抱いてるのか、イリナが聞いてくる。

 

「ミカエルさまから、アザゼルさまと一緒に冥界へ行くようにと命じられたんですけど……」

 

「どうして皆に秘密なんですか? それにリューセーさん、準備とは一体?」

 

「何も起こらなかったら、サプライズで応援に来たと言えばいい。起こった時は……まぁ、俺が恨まれるだけだ」

 

「俺はアザゼルの頼みで、ちょっとした裏方をやる事になってるんだ。俺も俺で恨まれる事になるだろうが、な」

 

「「?」」

 

 アザゼルと俺の返答にイリナとロスヴァイセは益々分からないと首を傾げていた。

 

「ってな訳でアザゼル、俺はこれからオーディン殿と合流する」

 

「おう、頼むぜ」

 

 首を傾げてる二人を他所に、俺は用意された魔法陣を使って転移した。

 

 

 

 

「オーディン殿、お待たせしました」

 

「やっと来おったか。このワシを待たせるとはいい度胸しておるではないか、聖書の神(こぞう)

 

「これでもちゃんと合流時間前に来た筈なんですが」

 

 合流場所となってる待機室へ来て早々、オーディンが開口一番に文句を言ってきた。

 

 あの時のお詫びの件――『ガブリエルの水着写真』を貰えなかった事に、今も相当根に持っているかもしれない。

 

「アザゼルの小僧から聞いておろうが、ワシの後方支援を頼むぞ」

 

「とか言って、本当は全部俺にやらせる気じゃないですか?」

 

「安心せい。このところ運動不足じゃから、ワシもちゃんとやるつもりじゃ」

 

「そうですか。それは何より……お? どうやら向こうが動いたみたいですね」

 

「何じゃ、もうか。思っていたより早かったのう」

 

 待機室にある魔力映像で、『レーティングゲーム』の会場でリアスとグレモリー眷族達が禍の団(カオス・ブリゲード)に通じてる旧魔王派の悪魔達に取り囲まれていた。

 

 リアス達の実力なら倒せるだろうが、あんな雑兵共でも相応の実力を持ってるから突破するのは難しい。

 

「ではオーディン殿、ご自慢の北欧魔術でリアス達と合流する為の転移を頼みます」

 

聖書の神(こぞう)に言われんでも分かっとるわい。ほれ、さっさとワシの肩に掴まれ」

 

「了解しました、っと」

 

 オーディンに言われたとおり、俺は彼の肩の上に手を置く。

 

 その直後にオーディンは魔術を発動させ、一瞬でリアス達の下へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 オーディンの転移術でリアス達と合流出来たのは良いんだが――

 

「きゃあっ!」

 

「んー、良い尻じゃな。何よりも若さ故のハリが――」

 

「このスケベ爺。来て早々セクハラするな」

 

 

 スッパァァンッ!

 

 

「どわっ!」

 

 合流して早々にオーディンが朱乃のスカート捲りをしたので、俺が用意したハリセンで頭を少々強めにどつく事にした。

 

「爺さん!? それに、リューセーさんまで!?」

 

「お二人とも、いつの間に……!?」

 

 俺とオーディンの登場に驚くイッセーとリアス。何の話もなく俺達が現れた事に驚くのは当然だ。

 

「よう二人とも、さっきぶり」

 

「っ~~……こら聖書の神(こぞう)! 神であるワシの頭をどつくとは何事じゃ!? 罰当たりにも程があるぞ!」

 

「元とは言え、同じ神なら問題無いと思いましてね。ってか、来て早々セクハラ行動は止めて下さい」

 

 ハリセンで叩かれた後頭部に手で擦りながら言ってくるオーディンの睨みに、俺は涼しい顔をして淡々と答える。

 

「何で二人が此処に!?」

 

「ディオドラ・アスタロトが禍の団(カオス・ブリゲード)と手を組んでるのが分かってな。さぁオーディンさま、早く仕事をしましょう」

 

「おのれ聖書の神(こぞう)、後で覚えておれ。さて……ほれ! ワシは北欧の主神オーディンじゃぞ! 討ち取れば、名が上がるぞい!」

 

 旧魔王派の悪魔達に向かって言うオーディンに、向こうは少し戸惑っている様子。だがそれも束の間、敵は魔力弾の一斉射撃をしてきた。

 

 向こうの攻撃にオーディンは慌てずに左目を光らせ、持ってる杖を地面に突くと俺達を覆う結界が出現する。それは膨らむようにドンドン大きくなり、その結界に触れてしまった一部の旧魔王派の悪魔達は消滅する。

 

「話の途中だったが、この騒動を機にディオドラや旧魔王派の連中を一網打尽にしたいと、アザゼルに頼まれたんだ。尤も、俺はオーディン殿の支援として来ただけだがな」

 

「ではこのゲームは初めから……」

 

「私たちを囮に使った訳ね」

 

 気付いた朱乃とリアスが顔を顰める。まぁ、こうなる事を教えずに行かせたから怒るのは当然だ。

 

「色々言いたい事はあるだろうが、一先ず後にしてくれ。あの雑魚共は俺とオーディン殿で片付ける」

 

「ほれ、とっとと行かぬか。この爺が最前線で援護してやるんじゃから、めっけもんだと思え」

 

 俺とオーディンが任せろと言うも、リアス達はすぐに動こうとはしない。

 

「けど、リューセーさんと爺さんだけで、あんな大群相手に――」

 

 

 コツンッ!

 

 

「いてっ!」

 

「戯け。生まれて十数年の赤ん坊が、ワシ等を心配するなぞ千年早いわ!」

 

 イッセーが気遣う台詞にオーディンが心外と言わんばかりに、杖でイッセーの頭を軽く叩く。その行動に俺は思わず苦笑してしまう。

 

「お前に心配されるほど俺達は弱くないぞ、イッセー。さてオーディン殿、どちらから行きますか?」

 

「無論ワシからじゃ……グングニル!」

 

 襲い掛かってくる無数の悪魔達に慌てもせず、オーディンは自慢の武器――グングニルを召喚しようとする。

 

 何も無い空間から三叉の槍が現れると、オーディンはすぐに持ち構える。その直後、グングニルの穂先から強力な魔力が放たれた。

 

 その魔力波は襲い掛かってくる悪魔達を一瞬で消し飛ばし、大群の一部に穴が出来上がった。流石はオーディンと言うべきか。平行世界でも北欧主神の名は伊達じゃないな。

 

「お見事です、オーディン殿。では俺も」

 

 そう言いながら俺は両手にオーラを集中させ手で四角の形を作る。

 

「って、その構えってまさか天津丼の……!」

 

 あ、イッセーは気付いたな。やっぱりこの世界のイッセーもドラグ・ソボールを知ってるようだ。

 

 ならば見せよう。リアルに放たれる天津丼の技――閃光砲を!

 

「閃光砲!」

 

 

 カッッッッ!!!!

 

 

 俺が技名を言った瞬間、両手で作った四角の穴から凄まじい光と衝撃波が放たれた。悪魔達は避ける暇も無くソレを喰らうと消滅し、大群の一部に更にもう一つ大きな穴が出来上がる。

 

「ふうっ。ざっとこんなものか」

 

『……………』

 

「す、すっげぇ……。光円斬だけじゃなく、閃光砲もリアルで見ちまった……」

 

 敵味方の誰も驚いている中、俺が使った技を見たイッセーが信じられないように呟いてる。ドラグ・ソボールファンとしては当然の反応だろう。

 

「何じゃ聖書の神(こぞう)、お主にしては随分面白い技を身につけたではないか」

 

「人間に転生してから色々なモノを知って参考にしたんですよ。と言うわけでお前達、今の見て俺達の力を改めて理解しただろ? だからここは俺達に任せて、早く行け」

 

「……オーディンさま、リューセー。では、お言葉に甘えさせて頂きます」

 

 俺の一声にリアスは決意するように、この場を俺達に任せようとする。

 

「な~に、爺も偶には運動せんと、身体が訛るでな」

 

「俺も久しぶりに暴れたいと思ってたからな。っと、その前にイッセー。さっきから気付いてたが、アーシアがこの場にいないって事は、ディオドラに攫われたんだな?」

 

「っ……。すいません、俺……」

 

 俺の問いにイッセーは申し訳無さそうに謝ってくる。だが俺はすぐに渇を入れようとする。

 

「謝る前に先ずはアーシアを救ってからにしろ。もうついでにディオドラの愚か者をぶっ飛ばしてこい。一切の容赦無く徹底的に、な」

 

「っ! はい!」

 

 よし、イッセーの気合は充分のようだ。本当だったら俺がディオドラを徹底的に叩きのめしたいところだが、ここはイッセーに任せるしかない。

 

「それと、アーシアを助けたら直ぐにこの腕輪を付けさせろ。いいな? 直ぐにだぞ」

 

「は、はぁ……分かりました」

 

 準備で用意した腕輪をイッセーに渡した後、リアス達は目的地の神殿へと急いで向かった。

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