ハイスクールD×D ~特別番外編~   作:さすらいの旅人

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第十二話

 リアス達は完全に予想外と言うように言葉を失っていた。それは当然と言えよう。向こうで覇龍化してるイッセーとは別に、もう一人のイッセーが現れたのだから。

 

「驚いた。まさかお前が平行世界(こっち)へやってくるとは予想外だったぞ。ひょっとして向こうのアザゼルが、新しい転移装置を完成させたのか?」

 

「あ、ああ……。アザゼル先生が急ピッチで作ったんだ。んで、その装置使って転移出来るのは一人だけだったから俺が行こうと……って! そんな事より、何で兄貴が冥界にいるんだよ!? 平行世界に行ってたんじゃなかったのか!? 何でか分かんないけどリアス達までいるし!」

 

 イッセーの台詞に俺は向こうの様子を粗方察した。

 

 思ったとおり、向こうのアザゼルは聖書の神(わたし)を救出する為に転移装置を急いで作り直したか。こっちの世界と向こうの世界の時間差がどれくらいあるのかは知らないが、それでも短い期間で作り上げるのは、流石我が息子だと賞賛すべきかもしれない。

 

 転移装置を起動させる聖書の神(わたし)の力がなければ無理だとアザゼルは言ってたが、悪魔に転生したイッセーが行けるようにしたのは予想外だった。恐らく聖書の神(わたし)の力がなくても改良して行けるようになったんだろう。尤も、転移出来るのは一人だけのようだが。

 

「悪いが今はお前の質問に答えてる暇はない。あそこにいるイッセーをどうにかしないといけないからな。見てみろ」

 

「はぁ? 俺をどうにかするって、何訳の分かんない事を……え?」

 

 俺が指した方へイッセーが見ると、禍々しい姿となって覇龍化してるイッセーを見て目が点になった。

 

「な、何なんだよ、あの禍々しい力を持ったドラゴンは……? けど何か、俺と同じ闘気(オーラ)のような気が……」

 

「あそこにいるのは、もう一人の兵藤一誠(おまえ)だ。正確に言えば、俺の弟じゃない平行世界の兵藤一誠(おまえ)と言えば分かるか?」

 

「……アレが平行世界の俺? って事は此処って……マジで平行世界なのか?」

 

 段々と此処が平行世界だと理解し始めているイッセーだが、俺はすぐに指示を出そうとする。

 

「さ、理解したところで早速手伝ってもらうぞ、イッセー。今すぐ暴れてるアイツと戦って大人しくさせてこい」

 

「ちょ、ちょっと待てよ! 理解したって言っても、俺、まだ状況が完全に呑み込めて――」

 

 更に詳しい情報を求めるイッセーに俺は一刻の猶予もないのでこう言い放つ。

 

「後でゆっくり説明するから、今は早く行ってくれ! アイツを倒して元の世界に戻った後、以前入手出来なかった限定版のDVDをローズさん経由で頼むから!」

 

「え、マジか!? じゃあちょっくら行ってくらぁ!」

 

 

 ドゥンッ!

 

 

 褒美が与えられると分かった途端、イッセーは物凄くやる気を出して、覇龍化イッセーの元へ猛スピードで飛んでいった。

 

 それにしても、まさか弟のイッセーが平行世界にやってきたとは思いもよらない誤算だ。今の状況を打破するのには嬉しい誤算だが、な。

 

 さて、イッセーが覇龍化イッセーと戦うから、こっちも準備を進めないと。『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』を完全停止させる為に、より強力な『神器無効化(セイクリッド・ギア・キャンセラー)』の力を溜める準備を。

 

「ちょ、ちょっとリューセー、どういうこと!? どうして向こうにいる筈のイッセーが此処に現れたの!?」

 

 先程まで呆然と見ていたリアスだったが、漸く意識を取り戻したかのように俺を問い詰めてきた。

 

「前に教えた筈だぞ、リアス。聖書の神(わたし)は平行世界からやってきたって。つまりあそこにいるイッセーも、聖書の神(わたし)と同様に平行世界からやってきた、兵藤隆誠(おれ)の弟――兵藤一誠だ」

 

『……え……えええええぇぇぇぇぇ!?』

 

 覇龍化したイッセーとは別である事を教えると、リアスだけでなく朱乃達も信じられないように驚きの声を上げていた。

 

 

 

 

 

 

 ゴァァァァァァァァッッッッッッ!!!

 

 

「さて、来たのは良いが……間近で見るとやっぱデケェな」

 

 破壊された神殿らしき物の中央に佇んで咆哮を上げてるドラゴンを見て、近くに降り立った俺――兵藤一誠は少しばかり身震いした。

 

 目の前にいるのは赤い鎧で作られた巨大なドラゴンで、巨大な翼が生え、両手両足から爪のようなものが伸び、兜から鋭い角のようなものがいくつもある。正にドラゴンそのものだ。

 

「なぁドライグ。俺は見たことないんだが、アレはマジでもう一人の俺が覇龍化してるのか?」

 

『それは間違いない。俺もまさかもう一人の相棒と対面するとは思いもよらなかったがな。尤も、アレは不完全な「覇龍(ジャガーノート・ドライブ)」だが』

 

「不完全?」

 

 ドラゴンそのものの姿になってるアレが不完全って、一体どう言う事だ?

 

『禍々しい姿になってるだけでなく、一切制御出来ず完全に暴走している時点で不完全だ。以前にも教えたが、アレを使えば生命力を著しく削り続けて最悪死ぬ恐れがある、とな。あんな状態のままでは、向こうの相棒の命が無くなるまで暴走し続ける。今は悪魔になってるようだが、それでもあと数十分が限界だな』

 

 数十分!? 永遠に近い生命を持ってる悪魔でもか!?

 

『それだけ「覇龍(ジャガーノート・ドライブ)」の消耗が激しいという事だ。早く向こうの相棒を止めないと死んでしまうぞ』

 

「そう言う大事な事は先に言えよ!」

 

 兄貴が早く行けと指示したのはこういう事だったのか!

 

 だとしたら、さっさとケリをつけないと不味い。初めて会った奴とは言え、アイツは平行世界の俺なんだ。ここで死なれでもしたら、向こうにいるリアス達が悲しんじまうからな。

 

「おいそこの俺! いつまでも喚いてないでコッチ見やがれ!」

 

 俺の声に反応したのか、ドラゴンが咆哮を止めてコッチを見てきた。

 

 けど――

 

 

 ゴァァァァァァァァッッッッッッ!!!

 

 

 すぐさま咆哮をあげながら魔力弾をぶっ放しやがった!

 

「おわっ!」

 

 

 ドガァァァンッッ!!

 

 

 咄嗟に超スピードで躱すと、地面に激突した魔力弾は大きい爆発を起こす。

 

 あの野郎、コッチ見た瞬間にぶっ放しやがって! 危ねぇだろうが!

 

『相棒、今のアイツは暴走してるんだ。自分から声をかけようとする相棒もどうかと思うが……』

 

 …………あ、そういやそうだった。俺を見れば少しばかり動揺するかと思ったんだが、やっぱ無理か。

 

『当たり前だ。それよりさっさと本気になれ。不完全とは言え、覇龍化した向こうの相棒相手じゃ、そのままの状態では勝てないぞ』

 

「わぁってるって。さっきの一撃を見ただけで、ノーマル状態じゃ勝てないってのがよく分かった」

 

 禁手(バランス・ブレイカー)にならなければ勝てないって事もな。

 

 それじゃ、始めるか!

 

「はぁぁぁぁああああ~~~~!!!!」

 

 

 ドンッッッ!!!!!  グゴゴゴゴゴゴッッッッッッ!!!!

 

 

『ッ!』

 

 俺が両手を握り締めながら構えて声をあげると、全身から赤い闘気(オーラ)が噴き出る。それと同時に周囲が呼応するように地響きも起きる。

 

 ドラゴンは突然の事に驚いているのか動きを止めていた。

 

「だぁぁぁああああああ~~~~~!!!!」

 

Welsh(ウェルシュ) Dragon(ドラゴン) Barance(バランス) Breaker(ブレイカー)!!!!!』

 

 宝玉に光が発し、それどころか、質量の赤い膨大な闘気(オーラ)を解き放ち始めた。その闘気(オーラ)は俺の全身を包み込もうとする。

 

 全身を覆うオーラは何も変化せずに俺の周囲に留まっている。何の変化はないと思われるだろうが、変わってる場所はある。それは俺の髪だ。さっきまで茶髪だった俺の髪が徐々に真紅へ変化すると同時に逆立っていく。

 

 早い話、俺は『ドラグ・ソボール』の空孫悟が使う変身――(スーパー)ヤサイ人になってるようなもんだ。

 

 

 

 

 

 

『……………………』

 

 イッセーが力を解放した事にリアスと眷属達は言葉を失っていた。

 

「な、何なの……あの力は……? 本当にイッセー、なの?」

 

「……私たちが知っているイッセーくんとは思えない桁違いのオーラですわ……」

 

 リアスと朱乃は信じられないように弟のイッセーを見ており――

 

「凄い……! 僕たちなんかとは比べ物にならないほどの力を感じる……!」

 

「……姿は一緒でも、力の方は完全に別人です……」

 

「信じられない……私は、夢でも見てるのか?」

 

「僕、もう何がなんだが分からないですぅ!」

 

 祐斗、小猫、ゼノヴィア、ギャスパーは、向こうのイッセーと余りに差があり過ぎる為に若干現実逃避しかけている。

 

「いきなり(スーパー)赤龍帝か。ま、覇龍化したアイツと戦うのだから、当然と言えば当然か」

 

 因みに俺は力を溜めながら状況を見守ってる中、リアス達と違って驚いてはいない。もう見慣れてる光景である為に。

 

 そんな俺の台詞が聞こえたのか、リアスはこっちを見てくる。

 

(スーパー)赤龍帝? それって一体……?」

 

「ん? ああ。それは禁手(バランス・ブレイカー)の事だ。弟のイッセーが使う禁手(バランス・ブレイカー)の正式名称は『赤龍帝の闘気(ブーステッド・ギア・ドラゴニックオーラ)』。ちょっとばかり長ったらしい名称だから、分かり易く『(スーパー)赤龍帝』と呼んでいる」

 

 本当の理由は『ドラグ・ソボール』の空孫悟と同じ変身をしてるから、俺の方で『(スーパー)赤龍帝』と名付けた。イッセー本人もその名称を了承したどころか、実はかなり気に入っている。因みにドライグだけは正式名称で呼んで欲しいと言ってたが、俺とイッセーは完全にスルーだ。

 

「そちらのイッセーはオーラを鎧に変化させる禁手(バランス・ブレイカー)だけど、こっちのイッセーは闘気(オーラ)を周囲に留めて髪だけしか変化しない。ほら、髪の色が闘気(オーラ)と同様にリアスの髪みたいな色になってるだろ?」

 

「私と、同じ色のオーラと髪色……綺麗」

 

 イッセーの闘気(オーラ)と髪を見たリアスが徐々に惹かれるような顔をしていく。どうやら向こうのリアスと同じ反応をしてるようだ。

 

 非常に如何でもいいのだが、弟のイッセーに惹かれてる平行世界(こっち)のリアスが、聖書の神(わたし)のいる世界のリアスが知ったらどんな反応をするんだろうか。『いくら平行世界の私でも、私のイッセーは絶対渡さないわよ!』とでも言いそうな気がする。

 

「しかし、イッセーくん――リューセーさんの弟くんが強くても、髪だけ変化した禁手(バランス・ブレイカー)では勝ち目がないのではありませんか? まだ鎧を纏ってるイッセーくんの方が強そうに見えるんですが」

 

「普通に考えれば確かにそうだろうな。ま、見てれば分かる」

 

 祐斗の疑問を大して気にしないように、俺は戦いを見るように促す。

 

 禁手(バランス・ブレイカー)の変身が完了したイッセーが構えると、覇龍化イッセーは途端に警戒するように動きを止めた。暴走状態になってるとは言え、流石に相手の力量は分かるようだ。

 

 そして――

 

 

 バキィッ!!!! ドガァァンッ!!!!

 

 

 一瞬で接近したイッセーが、覇龍化イッセーの顔面を拳で当てた。それを受けた覇龍化イッセーは吹っ飛んで瓦礫に激突する。

 

「……え? い、今、何が起きたの……?」

 

 イッセーのスピードが全く見えてなかったのか、リアスは何が起きたのか全く分からなかったようだ。

 

「因みに『騎士(ナイト)』の祐斗は見えたか?」

 

「……いえ、僕も部長と同じく……全く見えませんでした」

 

 あれま、祐斗も見えなかったのか。それだけウチのイッセーと、ここの祐斗では実力差があり過ぎると言う証拠になる。

 

 因みにリアスや祐斗だけでなく、朱乃達も同様だった。揃って目が点になっている程に、な。

 

「ここから先はよく見ておくといい、リアス・グレモリーと眷属達よ。今も聖書の神(わたし)が鍛え続けている赤龍帝、いや、拳龍帝(ファイタードラゴン)の実力をな」

 

 もうついでに、さっきから俺達の後ろで、弟のイッセーを大変興味深そうに覗き見ているヴァーリ達にも言っておくとしよう。

 

 

 

 

 

 

「おいおい、こりゃどういうことだ!? 赤龍帝が二人いるだけじゃなく、髪が変化した赤龍帝の方が物凄く強くぜぃ!」

 

「信じられませんね。私では彼のスピードを目で追うのがやっとです。ヴァーリ、貴方はどうでしたか?」

 

「……お前と同じだよ、アーサー」

 

「ヴァーリ、まさかとは思うけど、もしかしてあの赤龍帝と戦いたいとか思ってる?」

 

「ああ。美猴の言うとおり、今すぐにでも戦いたいよ。あんなに強い赤龍帝が俺のライバルなら尚更な。だが状況がいまいち分からん。何故、兵藤一誠が二人いるのかが」

 

「それは聖書の神に尋ねた方が宜しいでしょうね。あのお方は既に我々の存在に気付いて見てるだけでなく、此方へ来いと言ってますよ?」

 

「どうするヴァーリ? 誘いに乗る気がねぇなら一旦退くかい?」

 

「いや、聖書の神には色々訊きたい事がある。ここは奴の誘いに乗ろうじゃないか」




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