ハイスクールD×D ~特別番外編~   作:さすらいの旅人

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第一話

「うっ、ぐっ! この空間、俺を一体何処へ連れていく気だ……!?」

 

 俺の目の前には辺り一面青と白が入り混じった何もない空間がある。見ているだけで気分が悪くなりそうな感じで、思わず眩暈がしそうな程だ。

 

 つい先程青白い空間に吸い込まれた俺は自分の意思に関係なく、身体に纏っている光の粒の所為で滅茶苦茶な方向へと進む破目になっている。何処へ向かっているかなんて訊かれたところで、俺には全く見当が付かない。

 

「くそっ。やはりこの空間の中では無意味か……」

 

 一応進行を阻止する為に何度も聖書の神(わたし)能力(ちから)を発動させているのだが、そうしても全く無意味でどうにもならない。下手に抵抗したところでオーラの無駄使いになると悟った俺は、もう諦めて身を任せる事にした。

 

 今のところは身体が消滅するような死に瀕する事態にはなってないから諦める事にした。尤も、本気で不味いと思ったら聖書の神(わたし)能力(ちから)をフルに使って強制的に脱出させてもらうが。

 

「あ~あ。こんな事態になるんだったら、初めから断ればよかったなぁ……今更だけど」

 

 平行世界に行って見たい欲望に駆られてアザゼルの手伝いをした事が失敗だった。元とは言え、聖書の神(わたし)ともあろう者がこうなるとは、本当に無様もいいところだ。

 

 あっ、そう言えば今夜はミカエルが俺の家に訪問して夕飯を食べる約束してたんだった。不味い。アイツは俺が行方不明だと知った途端、セラフや部下の天使達を総動員してまで捜索するかもしれない。

 

 そうなる事を見越してアザゼルに上手く誤魔化しておけって言ったのだが……大丈夫かな? と言うか、行方不明の原因がアザゼルだと判明した瞬間、悪魔を無視した天使と堕天使の戦争にならなければ良いことを切に願う。

 

「取り敢えずは、何とか帰る方法を見つけないと……ん?」

 

 どの位の時間が経ったのかは分からないが、俺を誘導している光の粒に異変が起き始めた。今はピカピカと点滅している。

 

 すると奥の方から何やら黒く丸い穴があった。しかもそこへ向かうよう一直線に進んでいる。

 

「成程。どうやらアレが平行世界への扉か」

 

 本当なら一旦止まって確認したいところだが、能力(ちから)を発動させてもさっきと同じく無意味だった。もうこのまま進むしか選択肢は無い。

 

 こうなったらもう自棄だ。あの扉の先が聖書の神(わたし)の知らない天国だろうが地獄だろうが、何が何でも生き残って元の世界に戻る!

 

「さぁ来い平行世界! 聖書の神(わたし)に未知の世界を見せてみろ!!」

 

 そう言った直後、俺は抵抗する事無く黒い穴へと吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

 

「って、此処はどう見たって冥界じゃないか!!」

 

 黒い穴から追い出されたように飛び出た俺が覚悟して周囲を見回すと、そこは以前から何度も訪れている冥界だった。しかもこの辺りは俺がイッセーの修行の時に利用した岩場でもある。

 

 何でよりにもよってこんな所なんだよ……。ついさっきまで覚悟を決めてたついで、ほんの少しだけ楽しみにしてたと言うのに……!

 

 俺はてっきり悪魔・天使・堕天使が存在しない世界、もしくは同じ人間界でも聖書の神(わたし)が全く知らない人間界って言うのを想像したんだが……大外れだよ畜生ッッ!!

 

「ったく、アザゼルの奴! 何が平行世界の転移装置だ! ただ単に冥界に移動するだけの便利装置じゃないか!」

 

 取り敢えず人間界へ転移して駒王学園に戻った後、アザゼルに色々文句言わなければ気が済まない。人の期待を裏切ったアイツには、思い切ってあの黒歴史を学園に公開して――

 

 

 ドゴォンッ!!

 

 

「ん、何だ?」

 

 突然遠くから何かが破壊されるような音が聞こえたので、転移の陣を展開していた俺は反応してすぐに振り向いた。

 

 同時に激しいオーラのぶつかり合いらしきモノも感じた俺は、発生源を確認しようと転移の術を一旦解除し、すぐに向かう為に飛翔術で移動する。

 

 ある程度のスピードを出して飛んでいると音が次第に大きくなっていく。そして数秒後、発生源と思われる場所に付いて浮いたまま急停止すると――

 

「なっ、あれは……!?」

 

 何故かそこには信じられない者達がいた。五大竜王の一角『ミドガルズオルム』、神喰狼(フェンリル)、そして北欧の神『ロキ』。

 

 更には人間界にいる筈のイッセーだけでなく、リアスに朱乃、祐斗、小猫、ゼノヴィア、ソーナ、匙、椿姫、イリナ、ロスヴァイセが何故かロキ達と戦っている。

 

「い、一体、どう言う事だ? ロキ達は前に人間界で捕縛した筈なんだが……」

 

 しかも俺の目の前にいるロキが妙だ。以前会った時はオーディンと似たような黒いローブを身に纏っていた筈なんだが、今は真っ白な服装だ。何だか俺の知っているロキとは違うような気がする。

 

 そして極め付けは――

 

「イッセーの方も変だな。余りにも闘気(オーラ)が低すぎる」

 

 フェンリルと交戦しているイッセーが全身鎧を纏った禁手化(バランス・ブレイカー)――『赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)』だった。しかも戦い方が素人丸出しどころか、フェンリル相手にもかなり苦戦している。まぁ小猫がフォローしてくれたお陰で何とか倒せたが。

 

 俺が知ってる弟のイッセーはそれなりに戦っていたから、決してあそこまで弱くはない筈なんだが………これは本当に一体どう言う事なんだ? と言うより何でアイツ、(スーパー)赤龍帝にならないんだろうか。

 

 あの狡猾な悪神(ロキ)に出し惜しみするような相手では……いや、ちょっと待て。さっきまでアザゼルに対する怒りの所為で失念していたが、もしかしたら此処は本当に平行世界なのかもしれない。

 

 あそこにいるロキは明らかに俺の知ってるロキじゃない上に、イッセーも別人と思うほどに弱過ぎる。俺が直々に鍛えたイッセーとは天と地の差があるほどに。尤も、実力の低さに関してはリアス達にも言える事だが。

 

 だとしても、何故あそこまで弱いんだ? イッセーだけに限らず、リアスや眷族の朱乃達は多少と言えども。俺がある程度鍛えて強くさせた筈なのに……あっ、そうか。もしかしたら今いる平行世界に俺――兵藤隆誠がいないかもしれない。正確に言えば聖書の神(わたし)が、な。まだ確証は無いが、そう考えればアイツ等の実力に納得出来る。

 

 因みに俺が鍛えた弟は、以前のレーティングゲームでサイラオーグ・バアルと戦った際、空孫悟VS究極体デルみたいな超高速戦闘のガチンコバトルをやっていた。端から見れば、最上級悪魔同士の戦いと思えるほどの、な。

 

 それがあそこにいるアイツ等と比べるとちょっとなぁ……いっその事、俺が鍛えようかな?

 

「賢しい悪魔とドラゴンだ!!」

 

 そう思っていると、ロキが何やら痺れを切らしたかのように、身体全体から途轍もない力の波動を放出した。その所為でさっきまで匙に腕を掴まれていた神器(セイクリッド・ギア)が外れる。

 

「ロキ様、なりません! そのような事をすれば、冥界だけでなく全ての神話世界に境界が!」

 

神々の黄昏(ラグナロク)が早まるだけに過ぎん!」

 

 おいおいロキの奴、冥界(ここ)に来てまで神々の黄昏(ラグナロク)をやる気か。何処の平行世界でもアイツのやる事は変わらないみたいだ。

 

 ロキが神の力を放出した事により、ロキの周囲からは途轍もない嵐が吹き荒れるだけでなく、時空を破断されようとしている。

 

 正直言ってこれは非常に不味い。あんな恐ろしい力を、あそこにいるイッセー達がまともに喰らったら一溜まりも無いだろう。

 

 本当なら部外者である聖書の神(わたし)が干渉する気は無かったんだが、そうも言ってられない。今気付いたが、祐斗とゼノヴィアで抑えていたと思われるフェンリルが動き始めてる。

 

神々の黄昏(ラグナロク)を待たずして、我が子に食われるが良い。雑魚に相応しい最後だ」

 

 そう言ってロキは両手を前に出して、複数の魔法陣を展開して力を放とうとする。

 

 だが――

 

「全く。本当に悪趣味な事ばかり考えてるな、ロキ」

 

「っ!!」

 

 

 ドンドンドンドンドンッ!!

 

 

 俺が声を発した直後にパチンッと指を鳴らした瞬間、数本の光の剣と光の槍が襲い掛かった事に、ロキはすぐさまギリギリで躱した。突然の展開に地上にいるイッセー達も驚いているようだ。

 

「誰だ! 私の邪魔をしたのは! 何処にいる!?」

 

「ここだ」

 

「何っ!?」

 

 ロキが光の剣と光の槍を意識してる隙に一瞬で背後を取った俺は気軽に声をかける。そしてロキが驚いて振り向いた瞬間――

 

「隙ありぃ!」

 

 

 ドゴォッ!

 

 

「ぐっ!!」

 

 即座に右回し蹴りをすると、脇腹をモロに喰らったロキはダメージを受けながらも、すぐに俺から距離を取った。

 

「誰だ貴様は? いや、そもそも何故此処に人間がいる?」

 

「やぁロキ、久しぶりだな。本当にお前はどの世界でも碌な事をしないようだ。加えて未だに神々の黄昏(ラグナロク)を成就させるだなんて、お前は何時まで時代遅れな古臭い戦争に拘っているんだよ」

 

「何だと?」

 

 ロキの問いを無視する俺はフレンドリーな感じで挨拶をしながら皮肉を込めると、予想通りと言うかロキはすぐに顔を顰める。

 

「たかが人間風情が神を愚弄するか」

 

「事実を言ったまでだ。お前の下らない遊戯の所為で、世界が滅ぼされるなど堪ったものではない。例えこの世界が俺と無関係でも、な」

 

「……何を言ってるのか全く理解出来ぬが、貴様は余程死を望んでいると見える。フェンリル! この人間(おろかもの)を喰らい尽くせ!!」

 

 

 オオオオオオオォォォォォォオオオンッッッッ!!!

 

 

 ロキの指示に一匹のフェンリルが俺目掛けて口を大きく開きながら襲い掛かってくる。

 

 流石に神喰狼(フェンリル)の牙を喰らいたくないので、俺は即行で更に上空へと飛んで避けた。

 

「取り敢えずお前はご退場願おうか、フェンリル」

 

 そう言って俺は片手を開いたまま空に向けると――

 

 

 ブゥゥゥゥンッ!

 

 

「っ! お、おい、まさかアレって……!」

 

 手の上から円盤状の光を出した事に、地上にいるイッセーが気付いた。

 

 どうやらこの世界のイッセーも知っているようだな。コレの技を。

 

光円斬(こうえんざん)! とうっ!」

 

 

 ギャンッ!

 

 

 俺は技名を言いながら、その光をフェンリル目掛けて投げつける。

 

 光円斬。光を回転する円盤状のカッターのように練り上げ、それを投げつけて対象を切り裂き、『ドラグ・ソボール』でツリリンが使う代表的な技。

 

 フェンリルは咄嗟に躱して難を逃れるも、俺がすぐに戻るように操作すると――

 

 

 ザンッ!!

 

 

 背中に命中し、光円斬はそのまま進行すると、フェンリルの身体が見事真っ二つに割れた。言うまでもなく絶命している。

 

「ば、バカな!?」

 

 予想だにしない展開だったのか、ロキは死んだフェンリルの惨状を見て驚愕を露にする。

 

「よし、これで残りは一匹か」

 

 三匹のフェンリルの内、残りが一匹になった。

 

 そう言えば俺がいた世界でヴァーリの奴がフェンリルを一匹確保したんだが、こっちでも確保するんだろうか。そうであるなら残りの一匹は残しておいた方が良いような気がするんだが。

 

「何でツリリンの技を使ってやがるんだよ!? つーかアイツは一体誰なんだよ!?」

 

 そして俺がフェンリルを一撃で倒した事にリアス達が驚愕してる中、イッセーだけが俺に向かって叫んでいた。




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