「おのれぇぇ!! 人間風情がよくも我が愛しき息子を!! 貴様だけは楽に殺さん!!」
完全に激昂してるロキは再び神の力を全身から放出し、両手から複数の魔法陣を展開させて俺に向けてくる。
「やれるもんならやってみな!」
俺がパチンッと指を鳴らした瞬間――
ドドドドドドドドドドドドドドッ!!!
「何っ!?」
背後から何も無い筈の空間より出現した夥しい光の剣と光の槍が一斉にロキに襲い掛かる。
砲撃を放とうとしていたロキは躱しきれないと判断したのか、俺の攻撃を防ぐ為に自分の周囲に強固な結界を張った。
「ぐぅっ! これほど高密度な光の武器を放つとは……貴様、何者だ! まさか天使か!?」
防御するも予想以上に攻撃力が高かったのか結界に罅が入る事に、ロキは俺を天使かと問う。
確かに光の力を武器として扱うのは基本的に天使勢しかいないから、そう疑うのは無理もないだろう。
だが例外だってある。人間でありながらも行使出来る存在がいるのだ。人間に転生した
「いいや。俺はただ運悪く冥界に迷い込んだ不幸な人間だよ」
「ほざけ! 人間がそれ程の力を持っているわけが無かろう!」
俺の軽いジョークをロキは声高に否定しながら、再び魔法陣から新たな砲撃を放とうとする。しかもリアス達と相手していた時とは違って、かなりの威力が込められた物だ。
生半可な防御では防ぎきれない威力である為、俺は咄嗟に
「光よっ!」
目の前から光の楯を展開すると、ロキから放たれた神の力も加えた砲撃は楯に激突して消えていく。消えると言うより相殺していると言った方が正しい。
「ば、バカな! 人間が神の力を相殺するなど断じてあり得ん!」
「そう驚くなよ。別に人間だってその気になれば、神の力を防ぐことぐらい出来るよ。神が造り出した
さてどうしようか。咄嗟に
北欧の悪神が本気でやれば、いくら
ドクンッ! ドクンッ! ドクンッ!
「ぐっ!」
突然俺の心臓が強く脈打つように激しく鼓動したので、すぐに片手で左胸を抑えようとする。
くそっ、こんな時にどうして……! っ! まさかコレは!!
「? 何だ?」
俺の行動を見たロキが不審な表情をしていたが、途端に不敵な笑みを浮かべた。
「貴様の身に何が起こっているのかは知らんが、このロキを前にして余所見とはな。その驕りと我が息子を手にかけた罪、貴様の死で償ってもらおう!!」
そう言ったロキは両手を前に出すと、俺の周囲から無数の魔法陣が展開された。
「愚かな人間よ、我が神罰をその身に刻むがいい!!」
「いけませんロキ様!」
銀髪の女性――ロスヴァイセが止めようとするも一足遅く、俺を包囲してる無数の魔法陣から一斉に砲撃が放たれる。
「ぐっ、くそっ……」
未だに苦しんでる俺は防御出来ずに受ける事となってしまい、砲撃が俺に触れた瞬間には大爆発が起きた。
☆
「ろ、ロキの野郎、殺りやがった……!」
「なんて事を……」
知らない男がロキの攻撃を受け、煙で覆われたまま地上へ落下し、そのまま岩場に激突する。それを見た一誠とリアスは驚きと悲しみに満ちた顔をする。
(何でだ? 俺は初対面の筈なのに……何で……何でこんな悲しい気持ちになってんだ?)
特に一誠はその男が殺されたと分かった瞬間、途端に自分の胸が突然苦しくなった。どうしてこんな感情を抱いているのかが自分には全く分からないと一誠は更に戸惑う。
「ロキ様、人間相手になんて事をなさるのですか!?」
「アレは愚かにも私を攻撃しただけでなく、我が息子のフェンリルにも手を掛けた。殺すには充分な理由だ」
ロスヴァイセの抗議を如何でも良いように言い返すロキは、再び一誠達へと視線を向ける。
自分の脅威と呼べる相手がいなくなったのか、先程までと違って余裕な笑みを見せながら再び神の力を放出し始める。
「さて、とんだ邪魔が入ったが、今これより
ゴウッ!!
「きゃあっ!」
「部長!」
ロキから放たれる吹き荒れる力の嵐に、一誠とリアスは吹き飛ばされそうになる。けれど一誠は必死に踏ん張り、自分の主であるリアスを守ろうと覆い被さる。
一誠やリアスだけでなく、他の面々も吹き飛ばされそうになるも何とか堪えていた。
今のロキは神の力を解放している事で、もう止められない状態ではなくなっている。例え堕天使総督アザゼル、天使長ミカエル、魔王サーゼクス、そして北欧の主神オーディンが援軍として来たところで、簡単に止める事は出来ないだろう。
「さあ雑魚共よ、遊びはもう終わりだ。今から選択権を与えよう。このまま大人しく我が子に食われるか、
神の力を全て解放しようと、ロキは両手を天に向けようとすると――
「『終末の光』よ」
カッ!!
「何っ!! ぐっ、ぐああああ~~~~!!!」
突如背後から声が聞こえたと同時に、自分に向けて襲い掛かってくる光を見たロキは咄嗟に躱そうとするも左腕に当たった。その瞬間ロキが苦しい悲鳴をあげる。
「ぶ、部長! ロキの腕が……!」
「い、一体何が……?」
そして光が消えると、光を受けたロキの左腕が初めから存在していないかのように消されている。その光景に一誠達は驚愕し、何が起きたのだと戸惑っていた。
当然それはロキの息子である残ったフェンリルやミドガルズオルムも、
「わ、私の腕がぁ! おのれぇ!」
自分の大事な片腕が無くなった事に怒り狂うロキは、痛みに耐えながらも光を放ったと思われる犯人に無数の砲撃を放つ。
ドォォォンッ!!
その砲撃は地上の岩場へと当たって爆発が起きるが、突如そこから噴き出る煙からボンッと何かが飛び出る。それはロキと同じ位置まで浮くが、未だに煙が晴れないままだった。
ロキは煙を気にしてないのか、自分と同じ位置に浮いている何かを射殺すように睨んでいる。
「よくも、よくも私の腕を……! 何処の誰かは知らんが、生きて帰れると思うな!!」
「おやおや、ロキともあろう狡猾な神が頭に血が上るとは。いつもの余裕な振る舞いは何処へ行ってしまったんだ?」
「っ! そ、その声は……!」
大昔に聞いた憶えのある声を耳にした事で、先程まで激昂していた筈のロキは突如冷や水を差されたかのように静まる。腕の痛みはあっても、今のロキにそれを気にする余裕が全く無いのだ。
そして煙が完全に霧散して姿を確認すると――
「なっ、バカな! 貴様は……!?」
「取り敢えずもう一度挨拶をしておこうか。久しぶりだな、ロキ。(この世界で)私がお前と会ったのは、遥か昔に訪れたアースガルズ以来だな」
「答えろ! 何故、嘗ての大戦で死んだ筈の貴様が生きている!? 『聖書の神』!」
白いローブを身に纏い、金の王冠をかぶった、金髪碧眼の端整な顔立ちをした男を見たロキは驚愕しながらそう叫んだ。
『えっ………ええ~~~~~~~~!!??』
ロキの叫びに地上にいる一誠達が仰天して声をあげながら、聖書の神と呼ばれる男を見る。
「せ、聖書の神って、確か死んだ筈じゃ……!?」
「い、一体どう言うことなの!?」
悪魔の一誠とリアスは戸惑っており――
「あ、あれが、聖書の神……?」
「ど、どういう、ことだ……? しゅ、主が、い、生きておられた……のか?」
「あ、あのお方が、我らの主、なの……?」
特に元教会出身である悪魔の木場祐斗とゼノヴィア、そして転生天使の紫藤イリナや他の面々も酷く動揺していた。
三大勢力が起こした戦争で死んだ筈の聖書の神が、自分達の眼前に現れている事で、一誠達はどうすればいいのか完全に混乱している。
☆
思った通り、か。ロキや一誠達の反応を見る限り、やはりこの平行世界で
こんな事になるなら、やられたフリしてさっさと退散すれば良かった。そうすれば自分の存在に気付かれる事なく……いや、無理だな。もしそんな事をしたら、
平行世界とは言え、イッセーやリアス達を見殺しになんか出来ない。特に弟のイッセーが見殺しにするなど俺には耐えられない。家族愛と言う者を真に理解した今の自分には、な。
他にもミスを犯している。予想外な出来事と対面してたとは言え、今日が元の姿へと強制的に戻る日だった事を完全に忘れていたのだ。俺が元の姿へと戻る理由はオーフィスのお陰なのだが、それを語ると色々と長くなるので、ここは敢えて省略させてもらう。
取り敢えず真の姿に戻ってしまった以上、さっさとロキを倒すとしよう。力が完全に戻ってないとは言え、今のままでもロキを倒すのは充分可能だ。
「私が生きている理由など如何でもいいだろう。それよりもロキ、そろそろ自分の身を心配したらどうだ? 片腕を失った今のお前が、私を倒せるとは思えんが」
「っ! 我が息子達よ! 今すぐに聖書の神を始末しろ!」
俺の問いに自分が不利だと分かったロキは、すぐにミドガルズオルムやフェンリルに自分を襲わせるよう指示する。
指示を聞いたロキの息子達は、一斉に口を開けながら俺に襲い掛かってきた。
「生憎だが、いくら私でもソイツ等に食われる趣味は無い」
俺がパチンッと指を鳴らした瞬間、ミドガルズオルムとフェンリルの頭上から夥しい光の剣と光の槍が降り注ぐ。
ロキの息子達はそれに気づいて何とか逃れようとするが、ミドガルズオルムだけが串刺しとなって絶命する。フェンリルだけは辛うじて回避するも、唸り声をあげながら憎々しげに俺を睨んでくる。
「おのれぇぇ~~~!!」
再び自分の息子が殺された事に、ロキは片腕を失った事も気にせず神の力を放出し片手で砲撃を放とうとする。
「遅い」
「なっ!」
俺は超スピードでロキの懐に入り――
ドゴッ!
「があっ!!」
腹部に抉りこむように渾身のストレートを食らわす。それを直撃したロキは身体がくの字のように曲がる。
ダメージを受けて怯んでいるロキに俺は空かさずロキの右腕を掴み、ジャイアントスイングの要領で勢いよく振り回す。
「はぁぁぁぁぁ~~~!!!」
ブンブンブンブンブンブンブンッ!!
「き、貴様何を……!」
「そらぁっ!!」
「あああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
最大限にロキを振り回した俺は地面に向けて投げ捨てる。勢いが強い所為でロキはまともに身動きを取る事が出来ず、そのまま岩場へと激突して粉塵が吹き荒れた。
「これはおまけだ、ロキ」
そう言って俺は右人差し指の先から小さな光の玉を出し、それを俺の頭上まで浮かせた瞬間に直径数十メートルまで巨大化する。
「そこにいる悪魔達と天使とヴァルキリーに告げる。巻き添えを喰らいたくなければ、今すぐ防御結界を張っておくように」
『ッ!』
此方の警告に、さっきまで唖然としていたリアス達はすぐに集結して防御結界を展開しようとする。
懸命な判断だと思いながら、俺はロキが激突した地表に向かって右人差し指をクイッと折ると――
ゴォォォオオオオオオオオオッッッッ!!
巨大な光の玉はまるで巨大隕石の如く降っていき、そのまま瓦礫に埋まってるロキの方角に向かって激突した直後――
ドガァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッッッッッッッッッ!!!
凄まじい爆発と爆風がこの周囲一体に吹き荒れると同時に地震が発生する。
因みに瓦礫に埋まってるロキをフェンリルが助けに行こうとしていたが、一足遅く爆発と爆風の被害を真っ先に受けている。
「ふむ。フリーズの『ウルトラノヴァ』を真似てみたが、こんなところか」
爆発と爆風がある程度収まったのを確認した俺はそう呟く。
さっき使ったのは『ドラグ・ソボール』極悪人キャラのフリーズが使っていた『ウルトラノヴァ』。人差し指の先に小さな光の玉を宿し、それを巨大化させて対象に投げつけると言う一種の大技。アレには
「取り敢えず…………おお、いたいた」
爆発が発生した地点にある煙が漸く晴れて確認してみると、巨大なクレーターの中心にはロキが仰向けになって倒れていた。今の奴は全身ズタボロ状態で気絶しているが、な。ついでに巻き添えを食らったフェンリルも、ロキと同様に気絶して重傷とも言える状態だ。
それを確認した俺はすぐに向かおうと、ストンと地上に両足を付ける。そしてスタスタと歩き、気絶しているロキの胸倉を掴んで持ち上げる。
「おい、生きてるか?」
「あ……ぐ……」
グラグラと軽く揺らすと、ロキは未だ意識が無くてもちゃんと生きていた。
ロキをここまで瀕死状態にしておけば、後はこの世界のイッセー達に任せておけば大丈夫だろう。それでも念の為に抵抗出来ないよう、私が持ってる縄でグルグル巻きにしておくが。
ジャララララララッ!!
「ん?」
突如鎖らしき音がした為に俺が振り向くと、
「やはりそうきたか」
黒歌が最大限に警戒している中、アーサーは礼節を持って接しようとする。
「お初にお目に掛かります、聖書の神よ。私はヴァーリチームに所属する、アーサー・ペンドラゴンと申します。先の大戦でお亡くなりになられた筈の貴殿が何故ご存命なのかは不明ですが、こうして神々しい御姿を拝見出来るとは光栄至極に存じます」
「ご挨拶どうも。それで? お前達が此処に来てフェンリルを捕まえたのは、白龍皇の指示か?」
「ご慧眼恐れ入ります。貴殿の仰る通り、神すら砕くフェンリルの牙をロキ様から奪ってこいとヴァーリより指示されました。貴殿に対して無礼は承知の上ですが、このフェンリルは我々が頂戴致します」
俺からの問いに、アーサーは嘘偽りなく返答していた。
やはり此方の平行世界でもヴァーリはフェンリルを欲しがっていたか。
「ほう。随分あっさりと答えてくれるんだな」
「聖書の神である貴殿相手に一切の嘘は申しません」
「そうか。…………まあいい、好きにしろ」
「聖書の神からの御慈悲に感謝致します。それでは」
そしてアーサーと一切喋らなかった黒歌は、拘束中のフェンリルと一緒に転移して完全に姿を消した。
多分あの二人の事だからヴァーリに報告する気だろう。そして
俺は元の世界でもヴァーリに絡まれてる身だから、アイツのやろうとする事は手に取るように分かる。
まぁ良いか。取り敢えず目的は果たしたから、この場をさっさと退散――
「どこへ行くつもりなのかしら?」
「……あらら」
――しようと思っていたが、いつの間にかリアス達が来ていたようだ。
まぁ、今更退散しても意味が無いのは分かっていた。何しろ今の俺は堂々とリアス達の前に姿を晒してしまったから。
仮にここで転移して逃げたとしても、多分リアス達の事だから、帰還して早々サーゼクス達に報告するだろう。そしてミカエルも俺を捜そうと、天界にいる天使達を総動員するのも目に見えている。
だったらいっその事、元の世界に戻るまでの間、リアス達と行動を共にするのが最善かもしれない。当然、向こうが了承してくれればの話だが、な。
俺がそう結論してると、皆が警戒するように見ているが、突然ゼノヴィアとイリナが此方へ近づいてくる。
「あ、あの、あの! た、大変失礼ですが、あ、貴方様は……!」
「わ、我らの心の支え! 世界の中心! あらゆるものの父である、せ、せ、聖書の神なのでしょうか!?」
この二人を見ると、自分がいた世界の二人を思い出す。正体を知った途端にガチガチとなって、改めて
またあの時みたいな事になるかと予想しながらも、物凄く緊張してるゼノヴィアとイリナの問いに――
「いかにも。私は正真正銘、嘗て天界を治めていた長――『聖書の神』だ。それでも信じられないのであれば、後でミカエルに確認すればいい。私の姿を見れば、すぐに本物だと分かる」
「「……………はふぅ」」
バタンッ!×2
「お、おいゼノヴィア!?」
「イリナさん!?」
あっさり答える俺に、二人は緊張の糸が切れたように倒れて失神してしまった。
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