ハイスクールD×D ~特別番外編~   作:さすらいの旅人

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第八話

 オーディン達が駒王町を来訪した翌日。夏休みの期間を終えたイッセー達は駒王学園へ登校していた。

 

 本当なら駒王学園の生徒である俺も登校したいのだが、この平行世界には兵藤隆誠(おれ)が存在してない為、仕方なく留守番するしかない。本音を言えば行きたかったけど、流石に学校でも聖書の神(わたし)がいたらリアス達の緊張は休まらないだろうから、敢えて踏み止まっている。

 

 イッセー達が学校へ行っている間、家にいる俺は予習をしている。時間の流れがどうなっているのかは分からないが、それでも元の世界にある駒王学園で欠席してる授業の分を補わないといけない。

 

 因みにこの家には俺以外にもう一人いる。その人物は――

 

「酷いです! こんなにオーディン様の為に頑張ってる私を置いていくなんて!」

 

 オーディンの付き人である戦乙女(ヴァルキリー)のロスヴァイセ。

 

 どうやら彼女は、この平行世界でもオーディンに置いてかれてしまったようだ。どちらの彼女も気の毒としか言えない。

 

「……まぁ、取り敢えず元気を出せ」

 

「うわああ~~~~ん!」

 

 ロスヴァイセの肩にポンポンと片手で軽く叩くも、彼女は未だに涙を流している。

 

「どうせ私なんかいなくてもどうでもいい女ですよ~! 勇者(かれし)いない=年齢の戦乙女(ヴァルキリー)ですよ~! 向こうの私は彼氏となった貴方とイチャコラしてたんでしょうけどね~!」

 

「だから何度も言っただろ? 一時的な彼氏役になっただけだって」

 

 昨日の夜、運悪くロスヴァイセに捕まってしまった俺は、向こうの彼女について根掘り葉掘り尋問される破目になってしまった。

 

 彼女から凄まじい剣幕で問い詰められた為、俺は仕方なく話すことにした。それを一通り聞いた後にロスヴァイセは……そこから先は少しばかり大変な事になったので、敢えて省略させて頂く。

 

 とまあ、そんなこんなで彼女は現在ゲストルームで暫し不貞寝している。その間に俺は別のゲストルームで予習中だ。

 

 そんな中、予習をしてる最中に来客が来た。不貞寝中のロスヴァイセに任せるわけにはいかないので、ここは俺が対応する事にした。兵藤邸に来た来客は――

 

「突然の来訪、申し訳ありません」

 

「お前か。護衛も付けずに一人だけで来るとは珍しいな。他の天使(こども)達には説明したのか?」

 

「事が事なだけに、貴方様にお会いするとなると他の天使達が総動員すると思いまして」

 

「ああ、それは確かに」

 

 天界のトップで熾天使(セラフ)ミカエルだった。しかも格好はいつものローブではなく、以前サーゼクスがプライベートで来た時のスーツ姿。俺から見ても凄く似合ってると断言出来る。

 

 ミカエルをリビングに招いてソファーに座らせ、俺は来客用に出す紅茶を出そうとする。

 

「っ! 神よ、そのような事をなさらなくても私が……!」

 

「今のお前は客人だから、座って待ってろ」

 

 俺の行動を見たミカエルが慌しそうな顔をしながら立ち上がるも、有無を言わさずに座らせた。

 

 こうして息子にお茶を淹れるのは久しぶりだ。前にやったのは確か……聖書の神(わたし)が転生する前の遥か昔だったか。

 

「確か紅茶が好きだったな。ストレートで良いか?」

 

「神が淹れてくれるのでしたら、何でも構いません」

 

 その返答は少し困るのだが……まぁ良いか。

 

 紅茶を淹れたカップを運んでミカエルの前に差し出す。だけど、向こうはすぐに手を付けようとはしない。

 

「早速だけど、今日此処に来た用件は何だ? 先に言っておくが、聖書の神(わたし)を天界へ連れていくと言う話なら却下だからな」

 

 近くにあるソファーに座りながら用件を尋ねる俺に、ミカエルは答えようとする。

 

「色々ありますが、聖書の神(ちちうえ)に再びお会いしたかった、と言うのが一番の目的です。平行世界と言えど、貴方様は我々の父ですから」

 

「……そうか。この世界での聖書の神(わたし)は既にいないが、他の天使(こども)達は今も元気にしてるか?」

 

「ええ。皆、父上の意思を継ぐ為に日々奮闘しております。ただ……」

 

「ただ?」

 

「その中でもガブリエルは時々、此方の亡き聖書の神(ちちうえ)を思い出して泣いてる事があります」

 

 どうやらこの世界のガブリエルも同じことをしているようだ。

 

 確か以前聖書の神(わたし)と再会した途端、涙を流しながら抱きついてきた。他の天使(むすめ)達にも言えることだけど、あの子が一番寂しがっていたのが今でも憶えている。

 

 因みに俺が女性天使たち(特にガブリエル)に抱き付かれていたことに、弟のイッセーから殺意を抱かれていた。アイツ曰く、『美女天使達に抱きつかれてるなんてハーレムじゃねぇか!』だと。聖書の神(わたし)がガブリエルや他の天使(むすめ)達をそんな風に見たら父親失格なんだが。

 

「むぅ……本当なら会いたいところだが、生憎そうはいかないからなぁ。ガブリエルには言わなかったのか? 俺はてっきり、あの子にだけは内緒で教えたと思ってたが」

 

「そうすればガブリエルは暫く聖書の神(ちちうえ)と一緒に居たがると思い、敢えて伏せました」

 

「……まぁ確かにあの子の事だから、仕事を放り出してまで私に会いに来そうだな」

 

 尤も、それは他の天使達にも言える事だが。

 

聖書の神(わたし)が元の世界へ戻った途端、あの子達にまた寂しい思いをさせてしまうから、仕方ないと言えば仕方ないが……」

 

 俺が後々の事を考えながら言って、ミカエルとの世間話が始まった。主に俺が向こうの世界でどうしているかについて。

 

 その間にミカエルは俺が淹れた紅茶を恐る恐る飲んでいたが、ちゃんと美味しいと言ってくれている。

 

聖書の神(ちちうえ)、少々お訊きしたいのですが」

 

「ん?」

 

 世間話をして一時間近く経つと、急に話題が分かるようにミカエルが真剣な顔をした。

 

「元の世界へ戻るまではこの世界に滞在すると仰っておりましたが、若しも………聖書の神(ちちうえ)が戻れなくなったと判明された場合、どうなさるおつもりですか?」

 

「……………」

 

 まるで何かを懇願するような質問をしてきた。

 

 聖書の神(わたし)が元の世界へ戻れなくなった場合、か。

 

「随分と悲観的な質問だな。それを訊くって事はつまり、お前は聖書の神(わたし)をこの世界へ束縛させようとでも考えてるのか?」

 

「い、いえ! そのようなことは!」

 

 眉を顰めながら声を低くして尋ねる俺に、ミカエルはハッとするように慌てながら否定する。

 

「悪いがミカエル、聖書の神(わたし)はこの世界に留まり続ける気は無い。最悪の場合、次元の狭間を使ってでも戻る気でいる」

 

「次元の狭間、ですか。確かにあそこは様々な世界の隙間に存在する『無の世界』ですが、いくら聖書の神(ちちうえ)と言えども……」

 

 心配そうに言うミカエルには悪いが、それは無用な気遣いだった。

 

「心配無用だよ。この世界の聖書の神(わたし)が次元の狭間に行ってたかどうかは知らないが、私は過去に何度も次元の狭間に行った事があるから、色々と対策は打てる。仮に聖書の神(わたし)が消滅したとしても、そこはお前達が気にする事じゃない」

 

「しかし――」

 

 ミカエルは俺の行動を考え直すように進言しようとするが――

 

 

 Piririririri!

 

 

 ――突然、携帯の着信音が響いた。音の発生源はミカエルからだ。

 

 と言うかミカエル、お前も携帯持ってたんだな。まぁ多分、その携帯は天界へ通信する為に使えるようになってると思うが。

 

「も、申し訳ありません。私とした事が……」

 

「気にしてないから、早く出たらどうだ?」

 

 どうぞどうぞと仕草をする俺を見たミカエルは、謝りながらも懐からスラフォを取り出した。よく見るとアレは最新のスラフォじゃないか。ミカエルも俺と同じく随分と人間界に馴染んでるんだな。

 

 電話に出たミカエルはある程度の会話をして数分後――

 

「申し訳ありません。急に仕事が入ってしまった為、勝手ながら天界へ戻らなければいけなくなりました」

 

 そう言って俺に頭を下げてきた。

 

「まぁ仕方ない。今のお前は天使のトップだからな。機会があったら、また来るといい。その時は今度、親子水入らずで食事でもしよう。勿論、他の天使達には内緒でお前と聖書の神(わたし)の二人きりで、な」

 

「………ありがとうございます。必ず、必ず時間を作って、再び神にお会いします」

 

 俺の食事の誘いにミカエルは一瞬感動していたが、すぐに気を引き締めるように礼を言う。

 

 すると、何かを思い出したようにミカエルは帰る前に告げようとする。

 

「それと聖書の神(ちちうえ)、言い忘れていたのですが、紫藤イリナが本日から駒王学園に入学しています」

 

「イリナが?」

 

「ええ。禍の団(カオス・ブリゲード)と言う敵対組織がある以上、堕天使と悪魔だけで駒王学園を守るのではバランスが悪いので、こちらからは彼女を派遣させたのです」

 

「成程な」

 

 時間の流れは異なってるが、紫藤イリナが駒王学園に来るのは元の世界でも変わらないようだ。となると、今のイリナはミカエルの祝福を受けて転生天使になっているか。御使い(ブレイブ・セイント)(エース)として。

 

「もしアザゼルから何かをされた時には、紫藤イリナに話してください。彼女を通じて私へ報告する事になっていますので」

 

「何故アザゼル限定なんだ?」

 

「そちらのアザゼルが聖書の神(ちちうえ)を利用した前科があるので、こちらのアザゼルも何かしらの事をやりかねないと思いまして」

 

「……そ、そうか」

 

 相変わらずアザゼル相手には厳しい奴だ。

 

 知ってはいたが、ここのミカエルとアザゼルも相当仲が悪いようだ。恐らく原因は幼少時代からだろう。

 

「まぁ仮に何かされたところで、私はアイツの弱みを握ってるから下手な事は出来ないよ」

 

「では次にお会いする際に教えてくれませんか?」

 

「いくらミカエルでも、流石に息子(アザゼル)のプライバシーを公表する訳にはいかないな」

 

「それは残念です。では神よ、またお会いしましょう」

 

「ああ。この世界にいるまでの間だが、いつ来ても構わないぞ」

 

 俺の言葉を聞いたミカエルは転移術を使って天界へと戻った。

 

 すると、不貞寝をしていたロスヴァイセがリビングにやってくる。

 

「す、すみませんでした、聖書の神。来客を迎えずに……」

 

「気にするな。それよりも、そろそろ昼食を作ろうと思うが、良かったら一緒に食べるか?」

 

「い、いえいえ! 聖書の神がそのようなことをなさらずとも私がやります!」

 

「まぁそう言うなって。オーディンの介護に疲れてる君には、聖書の神(わたし)が少しばかり癒してあげようと思ってるんだ」

 

 断ろうとするロスヴァイセに、俺はすぐに昼食を作ろうとする。

 

 メニューはちょっと豪勢に、クリームパスタとオニオンスープとシーザーサラダで、デザートはフルーツポンチだ。

 

 それらを作った俺は用意すると――

 

「さ、召し上がれ」

 

「ううう……オーディン様と違って、聖書の神がこんなにお優しい方だなんて……! 私は、仕えるべき主を間違えたんでしょうか……?」

 

「……ま、まぁアレでも一応神だから、何とも言えないが……取り敢えず、それを食べて元気出しな」

 

「お心遣い感謝します……うわぁぁ~ん! 凄く美味しいです~!」

 

 ロスヴァイセは感謝と同時に泣きながら食べ始める。

 

 やはりこの世界のオーディンもいい加減なところがあるなと、酷く痛感する聖書の神(わたし)であった。

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