Fate/Cosmic Light   作:双子烏丸

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第一章 宙と星を繋ぐ場所
第一節 宇宙《そら》への夢


 

 目の前に広がっているのは、銀河の彼方に広がる宇宙。

 ──地球、太陽系と異なる別の宇宙、星々が瞬いて、星雲が浮かぶ壮大な景色がある。

 炎を拭き上げる恒星に光の軌跡を残して飛ぶ彗星、ガスの雲海で覆われた巨大なガス惑星と、一昔前のSF小説のように高度な文明が築かれた惑星の数々。

 

 

 そして星々を航行する、幾つもの巨大宇宙船。遥かに高い科学技術で作られた金属の船体、大きいものだと惑星規模の巨体で、本当にスペーズオペラの世界にいるみたいだった。

 きっと空想でもこんな世界は思いつかないような宇宙の光景に、誰かがいた。

 宇宙船の真上に──空気もないはずなのに、宇宙服もなしで──立って佇む後ろ姿があった。

 鞘に入ったハイテクな大太刀を斜めに背負って、和服のような……サイバーパンクのような服を纏ったショートカットの黒髪の剣士。すらっとした細身で少し小柄な、中性的な体格、少女のようにも少年のようにも見える。

 

 

 不思議な格好の人物で性別も分からないし、顔すら見えない。そのはずなのに、不思議とどこか……見覚えがあるような気がする。

 まるでずっと前から知っているような、そんな──

 

 

 

 ────

 

「アハハハっ! 何だよそれ!? 高校生になってまでそんな子供っぽい夢を見るのかよ、彼方(カナタ)

 

「別に笑うことないだろ。俺だって、好き好んで夢を見ているわけじゃないのに」

 

 土曜授業終わりの早めの放課後。俺と、学校で唯一出来た友達の弘明(ヒロアキ)と二人で街中を話しながら歩いていた。今の話の話題は、朝俺が見た不思議な夢について。薄々覚悟はしていたけれど案の定笑い話にされた。……でもあんなに笑うことはないだろ。

 

「本当に、不思議な話でさ。昔からたまに同じような夢を見るんだ。スペースオペラみたいな宇宙と……不思議な剣士の夢。

 確か七年くらい前から、だった気がする」

 

「七年前? となると、確かこの前彼方が話していた『記憶喪失』があった頃だろ? もしかしてそれと関係しているんじゃないか?」

 

「はは……かもね」

 

 弘明の言う記憶喪失。大した事ではないけれど、七年前……俺が九才くらいの頃に事故で頭をぶつけたせいで数ヶ月分の記憶を失くした事がある。髪に隠れてはいるけれどその時の傷も少し残っている。

 

(確かに俺が見る夢と記憶喪失……もしかすると関係があるかも。けれど俺自身、分からず終いだしな。ただ言えるのは──)

 

 記憶喪失からの俺は、宇宙に興味と憧れを持つようになっていつの日か、自分で宇宙に旅立つ事を夢見るようになった。

 その為にも勉学に打ち込んで、現在宇宙企業の最大手、『コズミック・セントラル』からの助成金を手にして──この天宙市にやって来た。

 

 

 

 高層の銀色のビルが立ち並ぶ街並み、建物、そして道路……街全体血管のように張り巡らされた青く輝く光のライン。これは電気などに代わる万能の新エネルギー、『Aエナジー』をくまなく行き渡らせるためのライン。例えではなく実際この街の血管、と言っても差し障りはない。

 他にも高精度なホログラムによる案内板に広告、同じくAエナジーで動き走る車両、それに自律AI搭載の汎用サポート人型ロボットが人々に混じって歩いている。

 

 

──そして目の前に見える街の中央、天の果てを超えて宇宙にまでそびえ立つ、巨大軌道エレベーター『アマノバシ』。コズミック・セントラルが成し遂げた功績の一つであり、地上から通じるアマノバシの先は上空500キロメートル、大気圏内の熱圏に浮かぶ宇宙港を兼ねた大規模の中継宇宙ステーションが存在する。月、アステロイドベルト、火星などから来る宇宙船が停泊してステーション、そしてアマノバシを通じて地球と宇宙の物資、そして人の行き交いを行う。宇宙開発において主要な拠点の一つだ。

 

 

 更に中継ステーションから200キロメートル先、アマノバシが繋がる最先端部は五十年前に発見された小惑星を運び、改造して作られた基地でありコズミック・セントラルの本社『マガハラ』がある。全てが一つの、巨大宇宙企業の技術力によるもので建てられ管理されている街で……地球上で最も宇宙に近い街。それがここ、天宙市。

 街の学校、天宙学園も会社が運営している事もあって、将来宇宙を目指すための内容、進路を重視した進学校になっている。学費も助成金で賄ってくれて……色々事情がある俺にとっては本当に、有り難かった。

  

「……」

 

「景色をぼーっと見て考えごとか? それよりも早く、宇宙技術展の会場に急ごうぜ。早くしないと人が混むかもだろ」

 

「あっと! ……そうかも」

 

 弘明に言われて俺ははっとして歩みを進める。こうして街を歩いているのは西暦2051年の今日、コズミック・セントラル設立七十周年を迎える事を記念して開催される宇宙技術展を観に行く為だった。

 

(これまでに開発されたテクノロジーが直接知れる良い機会だし、それに新技術の発表もあるって話もある。こうした所で知見を高めるのも……良い勉強だ。大きいイベントみたいで、普通に面白そうでもあるし)

 

 そんな時だった。ビルの壁に投映されている巨大ホログラム画面からのニュースが耳に入る。

 

『本日、コズミック・セントラル設立七十周年の記念日に合わせ反宇宙開発テロ組織、『ガイアス』からの抗議文が送られて来ました。 

 内容は人類全体に対する母なる地球、文明を捨て大いなる自然への回帰。及び人類を堕落させた科学文明、宇宙に対して無遠慮な拡大を続ける宇宙開発に対する非難、脅迫……。これに際し同日開催される宇宙技術展、会場となる天宙市西区中央広場周囲には都市治安警備部所属の対テロ部隊と人型機体は万一に備え警戒態勢を……』

 

「ガイアスか……昔から危険なグループみたいだし、心配になるな。

 今さら自然に還れだなんて、カルトも良いとこじゃないか」

 

 俺も頷く。ガイアスは十数年から活動する反科学文明、宇宙開発を掲げるテロ組織だ。宇宙港、施設の爆破、要人の誘拐など、現代文明と宇宙開発に対する妨害を繰り返して多くの犠牲者を出していた。

 実行犯を捕らえた事は幾度もあったけれど未だに上層部の尻尾は掴めていない……危険な組織だ。

 

「でも警備もしていると言うし、大丈夫じゃないか。大体心配しても始まらないだろ?」

 

「まぁ……そりゃあそうか」

 

 納得したような弘明。正直俺も心配だったけれど、それよりも宇宙技術展への楽しみが勝った。最も……この時はまだ知るよしもなかった。

 

 

 この後、何も危険な事はないと思っていた会場での出来事と、そして──ある運命との出会いも。

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