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夜のハイウェイをバイクで疾走するアタイ。
身体に感じる風、スピード!
「カシラっ!! 今日は最高の爆走日和ですぜっ!」
一緒に走る仲間の一人がアタイに言う。
「イェア! 曇りのない夜空でベリーグッド! それにアタイ達のバイクも昔ながらのガソリンで走る本物のバイクだぜっ! あんなAエナジーなんかで動くチャチなものじゃない」
エンジンの強い駆動と響くガスの排気音、それらを全て感じてマシンと一体になって突っ走る感覚こそ……最大の
「野郎ども! このまま夜まで走り回ってやるぜ!」
「オオーっ!!」
アタイの後ろを仲間の野郎どももバイクで追従する。
天宙市外れの高速道路。ここは街が建てられる前のもので今は使われていない旧ハイウェイ。他に車も走らない、アタイ達だけがこの道を支配しているんだぜっ!
何者にも縛られない、この自由こそアタイの望むもの……。
(ルールに社会だとか、オトナの
アタイはハンドルを握る自分の右手の甲に浮かぶ、均等な三本線で描かれた円形のアザ……令呪。聖杯戦争の参加者としての証。
(グレイル・ウォー──聖杯戦争、勝ち残れば何だって願いが叶うと言っていた。だからアタイが勝利して、望む世界を作ってみせるぜ!)
アタイはアタイが望むものを叶えてみせる。そう思いながら野郎どもを引き連れてハイウェイを疾走る──その目前に。
「──!!」
他に誰もいないはずのハイウェイ。その道のド真ん中に……人間が一人立っていやがった。
「
急ブレーキをかけてバイクを止める。
ヘッドライトで照らしている人影は薄灰色のコート姿の、後ろに束ねた長い銀髪の男。年齢は三十代前半くらいで、一見身なりが良く礼儀正しそうな姿勢と、にこやかな笑みを顔に浮かべている。
だけどその笑みは上辺だけの笑みで、あの糸目と顔つき……まるで
(あんな無茶なチューン……あれじゃ車が可哀想だぜ。金は持っていても
「おうおうおう! 誰だか知らないがオッサン、ふざけんじゃねぇぞ!!」
「カシラのハシリを邪魔するなんざぁ、許せねぇな! オイ!」
アタイの仲間は男を取り囲んでメンチを切っている。あんなナメた真似、アタイだって
────けれど。
「……」
「オイっ! 黙ってないで何とか言ってみろ────っ!?」
仲間の一人が男の肩を掴もうとした、その瞬間。
ズドン!
「うあぁぁっ!!」
響く銃声の音。掴みかかろうとした仲間は右肩に傷を受けて倒れた。
「ガイっ!?」
アタイは撃たれた仲間、ガイに駆け寄って様子を確認する。幸い弾丸はかすっただけで傷は深くない。……が、血が出て痛々しい傷口だった。
「大丈夫かよっ、その傷……」
「ううっ……くそっ、何なんだよ」
「お前っ!!」
令呪にも反応を感じる。アタイの予感は正しかったみたいだ。
「──おいおい、いきなり乱暴な真似をするのはよくねぇよなぁ」
男の背後の暗闇から垣間見える、硝煙を上げる銃口。
「そこまでにしておきなさい、『ライダー』。けれど乱暴を働こうとしたのは貴方達なのですから、言うなれば正当防衛……ですよねぇ」
男は糸目と口角を上げた笑みを顔に浮かべながら、丁寧ではあるけれど、どこか嫌らしい口調でアタイらに言った。
そして男の右横の背後には……船乗りのような姿をした壮年の、もう一人の男。180センチと割と大柄で、白髪でやたら長い髭に、皺が深く彫られた、年を取ってもナイスミドルの部類に入る顔には不敵な笑みが浮かんでいる。
(やたら目立って立派な上着と、大きな帽子。ただの船長じゃあなくて──
現代ではない、かつて大昔に生きていた人間だった存在──あいつがサーヴァント、『ライダー』。サングラスの男はそのマスターと言うわけか)
「セイジっ! キョウコっ!」
私は仲間を二人呼びだす。
「……カシラっ」
「二人は怪我したガイを連れて行け! ──他の野郎どももここから逃げろっ!!
仲間に手を出したコイツは、アタイが落とし前をつけてやるよ!」
アタイの言葉に仲間たちはどよめき立つ。
「けど……カシラを一人置いて逃げるなんて……」
「アタイに任せば全て
仲間たちは心配しながらも、言われた通りガイを連れてバイクでこの場を去った。
……目の前には胡散臭い
「おやまぁ、仲間だと言うのに見捨てられてしまうとは。何とも可愛そうなお嬢ちゃんですねぇ」
「……
下品な言葉だが、思わず小声で呟いて拳を握ってしまう。
本当に、表向きは丁寧な言い回しな分嫌らしいぜ。奴のサーヴァント、ライダーも余裕を浮かべた様子でたしなめる。
「マスター……そんな言い方はよくねぇぜ。例え少女だろうといっぱしの度胸を持って俺たちに挑もうってんだ、その勇気は尊重してやろうじゃないか」
どっちも勝手な事ばかり言いやがる。アタイも奴らにニッと笑ってみせて──。
「アタイを舐めるなよ。アイツらとはいろんな修羅場を潜って来たんだ、置いて行ったんじゃない。アタイを信頼して任せてくれただけだっ!
なぁ──『バーサーカー』!!」
アタイは令呪を通じて自分のサーヴァントを喚び出した。
「──おうよ! ようやく戦いか! はははは、血が滾るってものだぜ」
霊体化していたサーヴァント、バーサーカーはアタイの傍で実体と化して現れる。
大柄なライダーよりも数センチ背が高い、筋骨隆々の大男。両肩から腕にかけて入れ墨が彫られて胸に大きな傷跡、歴戦の勇士を思わせる顔立ちだ。
「これがアタイのサーヴァントだ。目の前に現れたと言うことは、聖杯戦争らしく……
いいぜ……やってやろうじゃないか!」
アタイは後ろに下がって、代わりにバーサーカーが前に出る。
「魔力供給は任せな。だから思う存分戦え!」
「そんなこったぁ分かってる! 俺に任せなって」
バーサーカーは両手に握る、形状の異なる二本の剣を構えながらゆっくりと、力強い足取りでライダーに向かって進む。
「聖杯戦争、着実に一人ひとり潰して行きましょう。……行きなさいライダー。勝利の暁には報酬は弾みますよ」
「おうよ。バーサーカー相手なのは骨が折れるだろうが……是非はねぇさ」
ライダーも右手でサーベルを抜いて迫る。
向こうも戦う気だと。バーサーカーはそれを感じて笑みを浮かべるのが見える。そしてアイツは意気揚々として……。
「やっぱ、そう来ねぇとな。──行くぜっ!!」