Fate/Cosmic Light   作:双子烏丸

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第八節 闇夜を奔る高速剣

 ────

 

 対峙するセイバー、バーサーカー。

 人間である俺とアルスは戦いに巻き込まれないように離れて立つ。そして自分のサーヴァントに魔力を送る。

 

(ナノマシンの身体改造で自分の生体エネルギー──魔力をサーヴァントに送る事が出来るようになった。確か、自分の中にある生命力をセイバーに送るイメージで…………くっ!)

 

 自身の魔力をセイバーに送り込む、同時に身体が急に重くなる感覚と、疲労感。魔力供給は自身の体力を引き換えにするようだ。

 

「主さまの魔力を感じるであります。これなら……十分に戦えます!」

 

 セイバーは満足げに応えてくれる。対してアルスは。

 

ウップス(おっと)! 魔力供給一つでヘタっているとは情けないぜ。確かに体力は使いはするが、これくらいケーキ一切れ(ピースオブケーキ)──つまり朝飯前だぜっ!

 力の違いもみせてやるよっ! やっちまえバーサーカー!!」

 

「おう!」

 

 セイバーに向けて指差しして彼女は命じる。バーサーカーはそれに応えるかのように、鋼のような筋肉がついた脚に力を入れて──突進。

 その姿はまさに人の姿をした砲弾そのもの。

 

「猪突猛進でありますかっ!?」

 

 セイバーは突進を空に飛び退いて避けた。が、バーサーカーもそれを追うようにしてそれ以上の跳躍。奴はセイバーの頭上間近。そして脳天めがけて両手の剣を力一杯に振り下ろした。

 

「早速で悪りぃが、潰れっちまえ!」

 

「くうっ!」

 

 背のブースターで急加速させた刀身で攻撃を受け止める。

 

「ほう? からくりの刀ったぁ、おもしれぇ! 一体何の英霊だ、てめぇは!?」

 

「生憎秘密でありますよ! ……主さまにも話せていないくらいですからっ」

 

「なるほどな。まぁ、いいさ!」

 

 力は互角。互いに弾き飛ばされて大きく距離を離す。

 着地したセイバーは居合の構えをとる。そして向こうに佇むバーサーカーを見据えて、ギザっ歯を覗かせてニヤッと笑う。

 

「力は互角。それなら──ボクは負けません」

 

 強気な態度。対してバーサーカーは戦闘中と思えないような軽い様子で、右肩に剣を乗せたまま話す。

 

「確かに、機械仕掛けの刀のお陰かもしれねぇが、仮にもバーサーカークラスの俺と対等のパワーを扱えるとは、やるじゃねぇかよ。

 これなら存分に楽しめそうだ」

 

「気は合うであります。……けれど、楽しむ間もなくブッ殺すでありますよっ!」

 

 今度はセイバーの方からバーサーカーに迫る。

 刀のブースターを展開した高加速のスピード、それはバーサーカー以上でまたたく間に間合いを詰める。

 

「その刀ごと俺がぶっ飛ばしてやるぜ!」

 

 バーサーカーは両手の剣で応戦しようとする。……が、奴の剣はセイバーの残像に空振りする。本物のセイバーは姿勢を下げてすぐ真横、死角の位置に入り居合の一撃を繰り出す。

 

「自慢のブレードの一閃、その身で味わうであります!」

 

 一瞬、一直線──。セイバーはバーサーカーに太刀筋の軌跡を残して行った。

 

「ぐはっ!!」

 

 胸から左脇腹にかけて大きく斬られ、血を流すバーサーカー。これにアルスも不敵な態度を崩したらしく、叫んだ!

 

「バーサーカー!?」

 

「……ったく、そう叫ぶなよ。傷口は目立つが問題はねぇ。

 身体が丈夫な事には自信がある、安心しろって」

 

 傷口を押さえようともせず、相変わらず堂々と立ったままの姿勢で笑いながら応えるバーサーカー。奴の言うように、確かに大きい傷のわりには出血はまだ少ない。

 

「このボク本気の居合い斬りをうけて持ちこたえるなんて……いえ、致命傷に入る寸前に剣でいなしたわけですか」

 

 バーサーカーは左手に持つ剣を逆手に握り、脇横近くに構えたままだった。完全に防げはしなかったものの、あれで防御はとっていたわけらしい。

 

「そう言うこった。良い攻撃だが、それだけじゃあ俺は倒せねぇぜ」

 

 対してセイバーは両脚に力を込めるようにして、再度戦闘態勢に入る。

 

「倒れなかったことは褒めてやるであります! でもボクの勝ちは変わりません。何せスピードはボクが──上ですからっ!!」

 

 再び攻めるセイバー。太刀の背から放出されるブースターの輝きを夜闇の次々と残しながら、バーサーカーを攻め立てて行く。

 正面から一撃、瞬時にブースターの出力に任せて旋回、右横から二撃、更にはセイバー自身の跳躍力で上からも。バーサーカーを上回るスピードと機動で太刀の斬撃を次々と浴びせて追い詰める。武器の機能、そしてセイバーの身体能力の両方をかけ合わせた人間以上の……いや、多分他のサーヴァントさえも超えた速度かもしれない。

 

「ぐっ!」

 

 殆ど防戦に回るしかないバーサーカー。回避と両手に持つ二本の剣による防御で大きなダメージだけは防いでいる。けれど、それでも身体のあちこちに傷を受け、着実にダメージは蓄積されていた。

 俺のサーヴァントは……やっぱり強い。

 

 

 

 

「すごいな、セイバーは」

 

 そんな戦いを俺は眺めていた。

 マスターと大層な肩書はあるものの、いざ戦いとなれば戦いの中心はサーヴァント。俺は戦うための魔力を送り込み、殆ど見ているくらいしか出来ない。

 

(普通の人間ならまともに見る事が不可能なほどの、サーヴァント同士の高速戦闘。けれどマスターになった事で自分自身の五感、身体能力もある程度強化する手段を手に入れた。

 サーヴァントにするように魔力を己自身に向け……強化する箇所をイメージするだけで)

 

 俺をマスターとして登録する時に利用した、ナノマシンによる身体改造の一効果らしい。当然強化する箇所が増えれば魔力消費がかさむ。自分のサーヴァントに回す分もある、今は視覚だけを強化しセイバーの戦闘を注視している。

 

 ──戦闘で舞う土煙がスローモーションで見える一方、それでもセイバーは素早く、軽やかな動きで立ち回り太刀を振り回す。視覚強化しなければ残像さえも見えないだろう。強化してギリギリ、動きの影を確認するのがやっとだ。

 

 聖杯戦争は人間以上の力を持つサーヴァント同士の戦いで、マスターはずっと弱い人間に過ぎない、戦いに追従するためにもマスター自身にもある程度の力が必要だ。身体強化の術は普通に考えればすごいかもしれないけれど、サーヴァントの力を見ればそれさえ心もとない。

 今は互いにサーヴァントとサーヴァントで戦わせている。これがもしサーヴァントが直接俺に襲って来たのなら……考えただけでも背筋が凍る。

 

 

 

 そして今、戦いで優勢なのはセイバー。アルスのサーヴァントであるバーサーカーを追い詰め、ダメージを与え続けている。喜ぶべき事かもしれない……けれど。

 

「……っ! シット(くそっ)!」

 

 悔しそうにしているアルス、そしてセイバーに傷つけられ、血を流しているバーサーカー。

 

(こんな事をしないといけないのか。戦い合って……相手をこうして、傷つける必要が)

 

 聖杯戦争がそう言うものだと言うのは、ハルから聞いて頭では分かっていた。

 サーヴァントの戦う力も知っている。けれど……あれはテロリストの人型機体を倒して、安全を守ろうとしたからで。

 

(誰かを傷つけ、倒すための戦い。

 ……自分の願いを叶えられると言う報酬を手に入れるために。仕方なく参加した俺はそんなのは怪しいと思うし、第一自分で叶えるつもりだから必要もない)

 

 けれど彼女は、目の前にいるもう一人のマスター、アルスは違う。

 聖杯戦争に本気で、叶えたい願いがきっとあると言うことは内心感じていた。俺たちが勝てばその思いを犠牲にしてしまう。

 バーサーカーだってそうだ。倒すと言うことはきっと、『殺す』と言うこと。セイバーもそのつもりで戦っている。俺のために、そして戦わなければセイバーが倒されてしまうから。人の姿、意志を持ってはいても人間ではない、Aエナジーで形成された別存在だと言うのも分かっている。

 ──けれど彼には、サーヴァントにも人間と同じ意思がある。そんな相手にこんな事をしなければならない、なんて。

 

 

 迫るセイバーの太刀に、剣で防ぐようにしながらも……バーサーカーは。

 

「しゃらくさいぜっ!」

 

 僅かな隙を狙って反撃、剣を振るうもセイバーはそれさえも鋭敏な動きで避ける。

 

「……(つぅ)っ」

 

 身体に受けた幾つもの傷。やはり痛みは感じるようで、僅かに表情を歪めてよろめくバーサーカー。セイバーの太刀の刃も返り血で赤く染まっていた。

 

「ふふふっ、随分と傷だらけになったでありますね。そろそろトドメを刺してやりますよ」

 

 重そうな機械太刀を片手で軽々と持ち、右横に構えて迫る。

 

(これじゃあ、俺とセイバーが悪人みたいじゃないか。他に何か手があるはずだ)

 

 バーサーカーに止めを刺す気満々のセイバー。表情に浮かべる笑みは俺といる時に見せる懐っこくて愛らしいものではない。まるで人斬りのような凶暴さと、残忍さをあらわにする笑みで……。

 

「やめ──」

 

 俺は止めようと口を開きそうになる。その時に。

 

「中々やるな……てめぇ。くくく、楽しめたぜ」

 

 傷を幾つも受けながらも、バーサーカーは心底愉快そうに笑っていた。

 アルスはため息を吐きながら奴に言った。

 

「おい、そんな傷だらけで笑ってる場合かよ」

 

「悪ぃ悪ぃ。こんな風にやられる気分も、戦いって感じで悪くねぇ。そう思うと……な。

 ──だがよ、ここから俺も本気を出させて貰うぜ」

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