Fate/Cosmic Light   作:双子烏丸

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第十節 アタイ自慢のバーサーカー!(Side アルスandバーサーカー)

 ────

 

「……オーマイ」

 

 アタイは目の前の光景に思わず呟いた。

 バーサーカーが放った魔剣の一撃は正面の森の木々を尽く真っ二つにし、一区画だけ大規模伐採されたように切り株が並んだ不自然な地形を作り出した。さすが宝具と言うべきか。たったの一撃でこの破壊力だ。

 

「ははっ、参ったな……こりゃ」

 

 こっちに振り返り苦笑い混じりで言うバーサーカー。

 

「この威力ならボロボロのセイバーは真っ二つになったはずだ。なのに、その姿さえ見当たらねぇ」

 

「忘れたのかマスター。俺たちサーヴァントは、やられちまえば跡形も残さずに消滅するぜ。何せ身体を構成しているのはエーテル……この世界ではAエナジーって呼ばれてるんだっけか、まぁエネルギーみたいなもので形作られているわけだしな。

 現に俺の斬られちまった右手はとっくに消失しちまって、影も形もない。片腕がないってぇのはやっぱ不便しそうだ」

 

 バーサーカーの指摘に、アタイはその事実を思い出しながらも言葉を続ける。

 

「……だったな。

 けれどセイバーだけじゃない。攻撃圏外の向こうにいたマスター、彼方の姿もロスト(消失)しちまっている。もし倒せていたのなら今頃、ショックで膝を崩して項垂れている筈だ。……甘ちゃんだからな。

 どう考えてもお前の宝具から逃れたセイバーを追って、マスターも離脱したって考えるべきだ。第一、彼方が令呪に命じたのはバーサーカーに対抗する事じゃない。ただ『全力でこの場から逃げろ』と、そう命じたんだぜ?」

 

 それを聞いて、バーサーカーはバツの悪そうな表情を浮かべた。やっぱり図星だったかよ。

 

「そうさな、確かにその通りだ。俺の宝具の射程圏から一気に逃れ、東の方角に飛んで行っちまった。あのスピードは……やっぱ侮れねぇぜ。

 追おうにも今の一撃で大分魔力を使っちまった。それに、もう一つ」

 

 途端、何か厄介に思うような様子に変わり、セイバーと彼方が逃げた東の方向を見据えて言う。

 

「……あの時のサーヴァントの気配もする。野郎、俺たちの戦いに気づいてやって来たのか?」

 

「あの時の? まさかライダーか?」

 

 セイバーの前に戦った老船長のサーヴァント、ライダー。あいつまで来ているなんて……と言うことは必然的に、胡散臭いキツネ面したマスターも一緒だろう。

 

「冗談じゃない。こっちは戦いで消耗してんだ、今襲われでもしたらひとたまりもないだろ」

 

「安心しな。ライダーの気配はセイバーが逃げた方向だ。もし襲おうとするなら先に向こうの方だろうよ。

 せっかく俺から逃げたってのに、可哀想な話だぜ」

 

「……かもな」

 

 腕を斬られ、右手を奪われたのは悔しくはある。だがあいつらがライダーに狙われるとなれば今度こそおしまいだ。

 これ以上手を煩わせる事もない。それよりも……だ。

 

「急いでこの場から離れるぞ、バーサーカー。モタモタして今度はアタイらにアタック(攻撃)を仕掛けられたらたまらない」

 

「了解だ。……だが、その前に」

 

 バーサーカーは左手に持っていた剣を置き、向こうに落ちていたもう一本の、棍棒のような形の剣を拾う。

 斬られた右手に持っていた剣、こっちは消失せずに残っていたらしい。

 

「そんな物拾ってどうすんだよ? 右手が無いんじゃ持って行ってもしょうがないだろ」

 

「いいから見てなって。まずは──っと!」

 

 柄ではなく何故か剣身の方を鷲掴みにし、あいつは握る左手に力を込めて……自ら剣を砕いた。

 

ホワッツ(何でだ)!?」 

 

 意味が分からない。確かにもう使い道がないと言え、捨てちまえば済む話だ。わざわざ壊す必要なんて……。

 アタイの驚愕にバーサーカーはふっと笑みをこぼして横目を向ける。

 

「見てなって言ったろ? 右腕がこんなんじゃこの先困るしな。

 俺は魔法の類はからっきしだが、それでもこの剣、『鉄槌蛇潰(ネイリング)』だって俺の宝具だ。……砕いて破片にしたとしても魔力を帯びたシロモノで、サーヴァントである俺の一部みてぇなもんだ。だから少し弄ってやれば──」

 

 あいつはしゃがみ込み、砕いて落ちた剣の破片を掬い取ると……それを右腕の傷口に押し付けた

 右手を切り落とされた箇所に押しあてられた破片は光を放ち、別の形の再構築される。

 

「──この通りだ。完全な右手の代わりとしちゃあ少し物足りねぇが、慣れない真似に割には上出来だ」

 

 バーサーカーの右腕先に装備された、黒鉄色の新たな右手。その動きを確認するように鋼の手を開いたり、閉じたりしながら満足げにニヤッとした。

 

「自分で義手まで作るなんて、本当にバーサーカーかよ。

 まぁいいか。まだ聖杯戦争は続いているんだ、ちゃんと両手は使えた方がいい。それにそっちの義手の方が……何か結構強そうだしな!」

 

 そう言ったアタイに、バーサーカーは丈夫な歯を口元に覗かせて笑う。

 

「かつて一国の王でもあったこの俺に、生意気言うじゃねぇか。ま、それでこそ俺のマスターだがな」

 

 全く……アタイらも手酷くやられて、その上令呪を一つ無駄にしちまった。戦いの最中は苛ついたりもしたが、いざ終わってあの笑みを見ると、不思議とどうでもよくなっちまう。

 

「昔はだったかもだが今はアタイのサーヴァントだろ?

 さ、いい加減グズグズしないで行こうぜ。────ベオウルフ」

 

 アタイはバーサーカーの本当の名前──真名で呼んだ。

 

 他のサーヴァントだって手強い相手だろうな。けれど、聖杯戦争って言ってもようは喧嘩みたいなもんだろ。

 

(だったらアタイは負けねぇ。アタイ自慢のサーヴァントとともに勝ち抜いて、望む願いを叶えてみせる。

 何にも、誰にも縛られることもない程の──力。絶対に手に入れてやる)

 

 そして一人、自らの願いを胸に秘めて、アタイは誓う。

 

 

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