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サーヴァント・セイバーと、そのマスターである少年、空上彼方。
私は二階の書斎の窓から、帰りのリムジンに乗る二人の後ろ姿を眺めていた所。……その横から。
「考える猶予を与えるとは、優しいじゃねぇか」
私よりも大柄なサーヴァント・ライダー。彼は白い歯を覗かせて笑みを向けて来ました。
「ふふ、取引と言うものは焦ってはいけません。商売人でもある貴方も分かっているはずでしょう、ライダー」
「くくっ、違ぇねぇ。だが……お前さんの狙い通り、あいつらは提案に乗るのかよ?」
「当然です。あの少年は三日後には必ず、私に頭を垂れるでしょう」
自信はあるのです。私はライダーにこう解説をします。
「私がどうしてあの時二人を見逃して、その上協力を持ちかけたのか分かりますか?
……貴方なら理解しているとは思いますが敢えて教えましょう。
空上彼方……一目見て分かりましたよ、彼は聖杯戦争にかける『願い』も『覚悟』もない。言うなればただ流れでこの戦いに加わったにすぎない、未熟な少年です」
我ながら思わず、愉悦を感じずにはいられませんね。
「だからこそ利用しやすい。彼方君とそのサーヴァントはせいぜい、私達が聖杯戦争に勝利する為の道具として利用させて貰いましょう。
他のマスターとの戦いで存分に使い潰し、必要がなくなれば簡単に処分も出来ます。ふふふっ、まさにうってつけとは思いませんか?」
つい得意げな気分で話してしまう私。けれどライダーは自らの長い白髭を指先で弄り、何やら言いたい事があるかのような視線をこちらに向けて来ました。
……気に入りませんね。
「ライダー。言いたい事があるのでしたら言っていただけませんか? 私の考えに、何か不満でも?」
やや語気を強めた私の言葉に、髭を弄る指先が止まりました。そしてこちらに可笑しげな表情を向け、冗談でも言うかのような軽い調子で返事を。
「いやなに、マスターの考えには俺も同感だ。
自分の目的の為ならどんな手も使う! 何だって利用する! 大いに結構、異議はねぇさ! だがよ……」
ライダーは私を上から見下ろし……こんな事を言って来ました。
「あまり相手は見くびらねぇ方がいい。確かにセイバーのマスター……あの小僧は未熟だろうがよ、かと言って油断していると足元をすくわれかねねぇ。
──思いもよらない場面でな」
「……」
言ってくれますね。彼は随分と上からな態度のようですが、私も落ち着いた微笑みを投げかけて余裕を示します。
「十分に肝に命じておきますよ。
「──ふっ、その通りだ。
お前さんは俺のマスターであり、同じ場所を共に目指す相棒って思ってるんだぜ。
だからよ、これからもよろしく頼むぜぇ。俺にもたっぷり儲けさせてくれれば大満足ってもんよ」
私とライダーはともに笑い合う。傍から見れば信頼し合っている二人、ですが……。
(所詮は貴方も人間ではない存在、私が聖杯戦争を行う上での道具に過ぎません。用が済めばライダーも令呪を使って自害させれば済む話。
会社の業績に大きく貢献してくれた事には感謝しますが、儲けにまで大分手を出されるのは面白くありませんね。それに野心家である彼のことです、いつか会社そのものさえ奪いかねません。
早々に全てのサーヴァントを倒し、始末したいものです)
私の態度はあくまでも表向き。最も、それはライダーとて同じこと。
相棒とは言いますが、自分の利益の為に私を利用しているのでしょう。恐らくは私の本心さえとっくに気づいてもいるはず。にも関わらずに素振り一つ見せずにあんな小芝居を続けているのですから……大したものですよ。
(……まぁ、芝居を続けているのは私も同じこと。非難することはできませんが)
まぁいいでしょう。自分のサーヴァントに関しては終盤に考えても問題ありません。今はあのセイバーのマスター、空上彼方との協力関係を取り付ける方が先決です。
『私』の勝利のためには一手一手、着実にを進めて行きましょう。