Fate/Cosmic Light   作:双子烏丸

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第八節 海辺での甘いひととき

 ────

 

 歩道から見渡せる白い砂浜に、海。

 観光客向けに整備されているだけあって綺麗で景観の良いビーチ、水着で泳いでいる人も割と目に入る。

 

(始めて来てはみたけれど、良い景色だ。こうして歩いて眺めるだけでも……何かスッキリする気分と言うか)

 

 青い空に太陽。天気予報では今日から数日晴れているらしく、良い外出日和と言える。

 

「主さまとのデート、嬉しいであります!」

 

「別にそう言うわけじゃないだろ? ただの散歩だよ」

 

「……むぅ、つれないでありますよ」

 

 実体化したセイバーと一緒に。傍から見ても少し変わった格好をした普通の人間にしか見えない、俺も誰かと一緒に話しながら歩いていた方が……気分が紛れる。

 

(ライダーとそのマスターとの同盟を結ぶ提案……俺もまだ悩んでいる。

 だけど、こう言う時だからこそ気分転換が大事だと思う)

 

 そのために天宙市のリゾート区に訪れて、俺とセイバーは散歩をしているわけだ。……決してデートと言うわけじゃない。

 

「主さまっ! そこのカフェにも行ってみましょう!

 食べているパフェもカワイイくて美味しそうで、食べてみたいでありますっ!」

 

 道路を挟んで向かい側にあるオシャレなカフェ。その屋外の座席には数人の女の子がパフェを食べているのも見える。……セイバーはあれに興味を持ったのか。

 

(明らかに若い女性向けの店って感じで、俺一人なら絶対行かない所だな。……けど)

 

 傍にいるセイバーは子犬みたいに俺を見つめている。とても断れないじゃないか。

 

「……わかったよ。せっかくだし、少し食べに行くか?」

 

「ありがとうございます! 主さまっ、大好きであります!!」

 

 そう言うと急に飛びついてハグをするセイバー。

 

「ちょっ! 嬉しいのは分かったから、そんなにしなくても!?」

 

 周りの視線が気になって焦る俺。……全く、仕方ないな。

 

 

 

 そうして俺とセイバーはカフェに来て、注文をした。

 

「えっと……この『ハートフルチョコレートパフェ』、二つお願いします」

 

 ……やっぱり注文するだけでも結構気恥ずかしい。俺にとっては初めての経験だ。

 屋外席に座って、一緒に頼んだパフェを待つ。セイバーも目に見えてワクワクしているのが分かる。そして注文が届くと。

 

「──わあっ♡」

 

 大きなグラス一杯に入った、白い生クリームに二つのチョコアイス、カラフルなチョコチップでデコレーションされたパフェ。

 中身もチョコムースとシリアル、ソースが詰まった食べごたえがありそうな一皿。これにはセイバーもスプーン片手に満面の笑顔を見せている。

 

「良かったな、セイバー」

 

「はい! じゃあ早速、いただくであります!」

 

 パフェをすくって一口。セイバーの感想は……。

 

「とっても甘くて、美味しいです! 主さまも食べてみてくださいっ!」

 

 言われて俺も続けて一口食べる。たしかに美味しい、けれど……。

 

「……少し甘すぎないか? 糖分も結構高そうな気がする」

 

 つい思ったままの感想をこぼしてしまう。

 

「そんなに甘口でありますか? ──でもボクには丁度いい味でありますよ」

 

 セイバーはとりわけ気にすることもなく二口目に。変わらず凄く美味しそうな表情で、左手で頬をおさえながら。

 

「うーん! やっぱりこの味です! 頬っぺたが落ちちゃいそうであります!」

 

 俺もまたスプーンでパフェをすくい、食べる。たしかに甘すぎとは思うけれど、美味しいことは……まぁ美味しいからいいか。

 

 

 

 ────

 

 それからも俺とセイバーは観光区画を色々と周った。

 サンフランシスコを思わせるカラフルでレトロな坂沿いの町を路面電車で巡ったり、土産屋に寄って買い物もしたりなんかもした。

 そして今は……

 

 

 

「何だかんだ良い息抜きになった。後は明日一日かけて、改めてどうするか考えよう」

 

「明日の事は明日で大丈夫です。そんなことよりボクも、今日は楽しかったであります。

 連れてきてくれてありがとうございます、主さま!」

 

 可憐な笑顔を向けるセイバー。そんな顔を向けて言われたら、誰だって照れてしまう。

 

「まだ夕方までは時間があるし、幾らかはここを周れる。……次はどこに行こうかゆっくりしながら考えよう」

 

 

 

 

 リゾート区の海辺へと戻っていた俺たちは、ヨットハーバーの傍を通りかかっていた。

 すぐ近くにはベンチのある小さな空き地があって、俺たちはそこで一休みをしていた。

 

「ふふっ! 主さまとお揃いでありますね」

 

 一休み中、セイバーが見せたのは少し前に立ち寄った土産屋で買った小さい白猫のアクセサリー。それを胸元につけて得意げなセイバー。俺も同じアクセサリーを買ってズボンの右脇にぶら下げていた。

 

「せっかく来たから土産くらいは欲しかったしな。セイバーが選んでくれたこれも、結構良いと思う」

 

 指元で少しアクセサリーを撫でながら、俺は呟く。セイバーも嬉しげに微笑むと、ぶら下げていたアクセサリーを取り外して差し出す。

 

「気に入っていたんじゃなかったのか?」

 

「もちろんであります。だからこそ戦いの最中に壊されたり、なくしたりしてしまうのは困ります。

 主さま、ボクの分も預かって頂けないでしょうか?」

 

 確かに、これからサーヴァント同士での戦いになれば簡単に壊されてしまいそうだ。言うとおりに俺は預かっていた方が、たしかに良いのだろう。

 

「構わない。セイバーのは俺が大事に預かっておく」

 

「助かるであります。ボクだと思って大切にしてくださいね……たとえボクがいなくなっても」

 

 そこまで言ったセイバーは急に口をつぐんで、押黙る。数秒後くらいに改まるように照れ笑いを浮かべて、恥ずかしそうに頬をかきながら言った。

 

「──なーんて、冗談でありますよ! さっきの事はどうか気にしないでくださいであります!」

 

 気にするな。──そう言われて本当に気にせずにいられるわけがない。それにセイバーが何を言おうとしたのかは、うっすらだけど想像はつく。

 

「……そっか」

 

 俺も今はそれくらいしか返せない。こうして遊びに出てはいるけれど、今の状況、自信持って大丈夫とは言えないからだ。

 

「それでも、俺も最善は尽くしたい。だからセイバー……その」

 

 けど思わず何か言おうと口から出てしまう。

 

「主さま?」

 

「いや……俺の方も、何でも無い。ただ口が滑っただけだ」

 

 セイバーと全く同じ事を俺はしてしまった。

 少し気まずくなって視線を外してヨットハーバーに停泊するヨットを眺める。お金持ちとかが所有しているのか、一軒家くらいの大きさの立派で綺麗なヨットがいくつも見える。今は少し時期じゃないのか人の姿は見えない。辺りは静かだった。

 

「……」

 

 ちらっと横を見るとセイバーも同じようにしてヨットを眺めていた。

 やっぱり気まずい。ここは俺から何か言ってどうにか……。丁度そう思っていた時に、セイバーが。

 

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