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「セイバー、本当に……行けるのか」
心配してくれる主さまの言葉。ボクは笑顔で答えます。
「もちろんであります。主さまのおかげで元気百倍! 存分に戦えます!」
撃たれた傷口からは血が止まって、何とか歩いて動けるようにはなりました。
けれど、本当はまだズキズキ痛いし……急所に近い位置のダメージ。消耗が激しいことに変わりません。だからこそ──。
「本当に……今度こそ速攻で決めてみせますから。──ライダーっ!!」
向こうからも見える位置に立ち、ボクは言ってみせます。
「ようやく出てきたか。待ちくたびれたぜ……いや、そこまで待ったわけでもねぇか」
ライダーの戦意に呼応するように、あいつの魔力で作られた錨が鎖ごとうねります。
「面白え! ならやってみるがいいさ! その傷でマジで戦えんならよっ!」
「はっ! 思い知らせてありますよ!
そして主さまも見ていてほしいです、ボクの戦いも──このブレードのもう一つの姿も!」
僕はヨットから宙へと跳躍。同時に自分の太刀であるレプリカ『 』ブレード、略して『R2ブレード』の変形機構をオンにします。
刀身は縦真っ二つに開いて、マシンのパーツが組変わって別の物へと変形。刀から──ボードの形状に。ボクはそれに飛び乗りました。
「刀から……サーフボードに変形したのか?」
主さまもいきなりの事で驚いていました。ボクは得意げに答えるであります。
「形は似ていますが、ちょっとだけ違うでありますよ。
サーフボードは波に乗って海を駆けますが、ボクのR2ブレードはっ!!」
ボード後部に備わったスラスターからエーテル粒子を開放、ボクを乗せて空中を高速飛翔であります!
これこそR2ブレード航行形態の性能。オリジナル同様に宙に浮いて空だって飛べますし、何なら……。
「この! マジかよっ!」
ライダーの宝具『サンタ・マリア号』から繋がる多数の錨は、攻撃目標をボクに定めて襲って来ます。けれど──遅いっ!
高速飛行で錨と鎖の合間をかいくぐって、懐からエーテル短刀を抜いて数閃、ブッた斬りますっ! ついでにランサーを縛っていた鎖も!
「きゃっ!」
「一つ貸しにしておくでありますよ、ランサー!」
「やるじゃねぇかよ。ならこっちも本気……全身全霊の宝具で対抗してやるぜ。
全砲門開放! 飛び回るセイバーを撃ち落とせぇ!」
ライダーの船が回頭。側面部の砲門を開き……一斉砲撃! ボクへと砲弾が向かって来ます。当然飛んで避けますよ!
「ふふん♪ たかが骨董品のような船の砲撃。真っ直ぐ飛ぶだけの砲弾で仕留めようだなんて、甘いでありますね」
「甘いのはてめぇの方だ。確かに時代遅れの外見かもしれねぇが、このサンタ・マリアは俺の宝具……具現化された力そのものだ!
錨だって自在に動かせるんだ、砲弾だってよぉ!」
飛び避けて後ろに飛んで行ったはずの砲弾、その気配がまた迫って来るのを感じます。振り返るとUターンして再度ボクに襲って来ます。
今度は真上、上空高くに飛翔であります! けれど、砲弾も追跡を止めずに上へと……。
「自動追尾式の砲弾だ! スピードもそれなりにはあるぜ……更にっ!!」
複数の砲弾がそれぞれ別方向から迫り、内一つの砲弾がかなり近い距離にまで来ていました。当然これくらいならまだいくらでも避けられると……思っていた瞬間に、砲弾が急に膨れ上がって爆発を!
「くぅ──っ!?」
「爆発だってこの通り。
いくら力を取り戻しても、例え素早く空を飛べたとしても……この一斉攻撃の前にはどうしようもねぇだろ!」
更に続けて放たれる多数の砲弾……加えて錨まで!
(この数……捌き切るなんて!? これではライダーの元にたどり着くより前に……!)
自分が無事でいられる保証もありません。だけど、覚悟を決めなくては。
ボクは迫る攻撃の正面から突撃し、ライダーを狙って一直線に──!
「邪魔ですっ!」
行く手を阻む錨は、繋がる鎖部分から次々と切断。道を切り開きます!
けれど砲弾に関しては……。
(近づいて爆発に巻き込まれたらたまりません。砲弾は回避するしかっ!)
上手く高速飛行で掻い潜って。雲を突き抜け──目の前にライダーがいる船が見えます。もう少しでっ!
「──!?」
さっき回避した砲弾が旋回して次々とまた迫って来ています。背後だけでなく、左右後ろ、横方向からも。
船の方からもさらなる砲撃。前からの砲弾と、続けて生成される魔力の錨。ずいぶんぶった斬ったのにまだ作り出せるなんて……船が健在の限りいくらでもって訳でありますかっ。
(背後、前方、左右からの挟み撃ち。……それも多数の砲弾と錨による、ボクの回避能力を上回る飽和攻撃。
覚悟してはいたと言え、これでは……)
あまりにも多数、迫る攻撃。 本当に不味いです……主さまっ!
(申し訳ありません。せっかく血まで頂けたと言うのに、駄目かもしれません)
でも、主さまはボクが無事に戻って来てくれるのを信じていますから。──だから最後まで諦めません!
「──
下の別方向から放たれた音波攻撃が、ボクの周りにあった砲弾を薙ぎ飛ばし、爆発させました。錨も別方向に吹き飛んでライダーの攻撃は全て無効化。
それはランサーの仕業……彼女はボクを見上げて言いました。
「これで貸し借りはナシ! セイバー、今度こそ決めなさいよ!」
「悔しいけれど礼を言うであります!
賭けになるでありますが……ボクの残る力を一撃にかけて──っ」
航行形態のR2ブレードに立ち、エーテル短刀のグリップに持てる魔力のほぼ全てを注ぎ込みます。
青いエネルギーの刀身は短刀サイズから格段に大きくなり、通常形態のR2ブレードの二倍にまで膨れ上がる巨大な刃へと。
「この一太刀は主さまのために、立ちはだかる敵は一刀両断! 行くでありますよっ!
──オーキッド、ラウンズっ……セイバー!!」
『オーキッドラウンズ・セイバー』、主さまのセイバーとして発現させるボクの宝具。
航行形態、最大速度のR2ブレードの加速に乗り、エーテル短刀のフル出力の巨大刃で一刀両断する必殺技。
「!!」
刃を振り下ろす刹那、ライダーは驚愕の表情を浮かべていました。──そして悟ったようにしてかすかな苦笑いを浮かべると。
「ったく──しょうがねぇな」
ボクの一撃は船ごとライダーをぶった斬りました。
大出力エーテルの刃で横真っ二つに粉砕される帆船。ライダーの体も右肩から両断され、サーヴァントのコアになる霊核も確実に粉砕であります。
「坊主、それとも嬢ちゃんか? まぁどっちでもいいか。この俺を倒すなんざ、やるじゃねぇか」
「……」
二つに切り裂かれたライダーの体は光の粒子へと変換されて消滅しつつありました。無念げな様子は見せているものの、敗北を喫してさっぱりしているようにも見えて。
消えゆく中、ライダーは最後に呟く声を聞きました。
「俺にチャンスをくれたってのに、すまねぇ……神様。次の召喚こそ……俺は、夢を叶えてみせる……からよ」
それを言い終わると同時に、ライダーの身体はエーテルとして霧散し完全消失しました。
ライダーのサンタ・マリア号も彼の最後に伴って消滅、戦いは完全に終わりであります。ボクは近くの足場に着地、ボード型の航行形態になっていたR2ブレードも元の太刀型──通常形態に戻して背中にかけようと……その前に。
「はっ!」
ボクは振り向きざまにR2ブレードを振るい、背後からのビーム射撃を弾きます。
「さすがに二度も同じ手は食わないでありますよ、ライダーのマスターどの」
「……ライダーは私の手に余る所はありました。しかし、せっかくのビジネスチャンスを潰されたのは許せませんね……貴方だけでも!」
ライダーのマスター、黄龍とか言いましたか。敗れて逆恨みして銃を向けているみたいですが、全く情けないですね。主さまと大違いであります。
「敗者は敗者らしく大人しくしていて欲しいでありますよ。ですが主さまを利用して、傷つけた罪、ボクとしても許せないでありますし」
「──ひっ!」
ボクは太刀を握りながら黄龍へと迫ります。あいつってば途端に怯えて、銃を落として膝をつきました。
「す……すみません、ついカッとなってしまい。彼方君にも謝罪しますので、どうか……命だけは」
「えー、どうしたものでしょうか? ボクとしては万死に値する罪ですし、でも──」
「がはっ!」
太刀の柄であいつの腹部をドツきました。ショックで白目を剥いた黄龍はそのまま倒れて、気絶します。
「──これくらいで勘弁してやるでありますよ。せいぜい眠っていてください」
完全に気を失った事を確認して、ボクは駆け寄って来る主様の方へと。
「セイバー! 無事か!?」
ボクの大切な主様の声。それを聞いただけでも嬉しくて、笑顔で応えるのであります。
「もちろんであります! ボクと主さまの大勝利ですっ!」