Fate/Cosmic Light   作:双子烏丸

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第十一節 再戦、セイバー対バーサーカー

 

 学校に通って、学生としての日常を送る俺。

 普通の授業を受けて、休み時間には友達の弘明と話をしたりの、何一つ問題ない…………そのはずだった。

 

 

 

 

「──ハロー、彼方。二人で来たことには褒めてやるぜ」

 

 時刻は夜。天宙市の外れにある山の採石場跡地で、俺とセイバーは離れた向かい側に立つアルス、そして彼女のサーヴァントであるバーサーカーと対峙していた。

 同じ天宙学園に通う一年先輩で、暴走族『激轟団』の女番長。時代錯誤な学ランと獅子のような金髪を夜風になびかせて、星のように輝く瞳で見据える。

 一枚の封筒を俺は取り出し、彼女に見せる。

 

「果し状だなんて、ずいぶんと古風な事をするじゃないかよ」

 

「こう言うのって形式が大事だろ。

 それにだ、彼方がランサーのマスターと手を組んだことも、ライダーを倒したことも知っている。別にランサーを連れて来ても良かったんだぜ?」

 

「セイバーさえいれば戦える。今更他のマスターやサーヴァントの助けは、必要ない」

 

 タケル、ランサーともあれから会っていない。同盟はもはや決裂と言ってもいい。

 だけどもう関係ない。聖杯戦争には俺達二人で勝ち抜いてみせる。戦う覚悟も……もう出来ている。

 

「セイバー!」

 

「分かりました、主さま!」

 

 俺は二画残る令呪がある右手を差し出し、呼応するようにセイバーは太刀を直線に構える。

 

「戦る気満々ってやつか。そう来なくちゃあ面白くねぇ」

 

 バーサーカーは前の戦いで失った右手の代わりに装備した、黒鉄色の義手を握る。

 

「この右手の代償……てめぇの命で贖わせてもらう」

 

「やれるものなら、やってみるといいでありますっ!」

 

 迫るセイバーと両足で地を踏み待ち受けるバーサーカー。

 放たれた青い軌跡、太刀による横薙ぎをその義手で受け止める。

 

「その剣筋、威力も前より上だな。てめぇの力か……それともマスターの成長か」

 

 バーサーカーは空いた左手を開き、手元に深紅色が染みた黒鉄の大剣を出現させる。

 

「!!」

 

 太刀は掴まれたまま。そんなセイバーに剣の剣先が貫こうと迫る。──が、セイバーは太刀の柄から手を離さず体操選手のように身体を跳躍回転し、バーサーカーの顎に蹴りを放つ。

 

「ぐうっ!?」

 

 一瞬義手の掴む力が弱まる。逃さずにセイバーは距離を取り太刀を振るう。今度はバーサーカーが剣で防ぐも。強力なブースター加速もプラスされた一撃、あいつさえも受け止めきれずによろめいてしまう。

 

「これがボクの本気であります! バーサーカー!」

 

 空いた左手で短刀を抜いて連撃。バーサーカーは義手の甲で防ぐも、斬撃の傷が入ってしまう。

 

「ほう──なるほど。だがっ!」

 

「ぐあっ!?」

 

 右足による猛烈な回し蹴り。とっさに身体を反らしてダメージを受け流したと言え胴体に攻撃が命中した。

 衝撃で身体ごと飛ばされたセイバーに追撃を仕掛けるバーサーカー。

 

 

 

 獣の爪か牙か、赤黒い剣の刃が敵を仕留めようと迫る。

 

「ならば俺も──本気だっ!」

 

 剣を凌いでも義手の拳、さらには足技が次々に繰り出される。

 

(前回の戦いではバーサーカーの体術に成すすべもなかった。けれど今は違う!)

 

「伊達にセイバーではないでありますっ! そっちがその気なら!!」

 

「おっと!」

 

 セイバーは手にした太刀を投擲した。バーサーカーは避け、太刀は岩壁に突き刺さる。

 

「てめぇの武器を捨てるなんてよ、何考えてんだ?」

 

「お前の相手はこれで十分です!」

 

 ビーム短刀を両手で持ち応戦するセイバー。短刀一本に集中した、研ぎ澄まされた刀捌きと、そして回避に専念した体術。

 太刀を扱っている時よりも小回り、立ち回りも格段に上がっていた。バーサーカーの剣と体術、その嵐のような猛攻を華麗にかいくぐってみせる。まるで大昔にあった弁慶と牛若丸の物語を思わせるような戦いぶりだ。

 

「ちょこまかとっ! この野郎……くうっ!」

 

 そして僅かな攻撃の合間を縫って、短刀の反撃。一太刀でバーサーカーの胸部に傷をつけ、再度反撃が来る前にひらりと飛び退く。

 

「一応は最強格と言われるセイバークラスだけはあるか。このままだとキリがねぇ」

 

 あいつは自身の剣を地面に突き刺し、徒手空拳の構えを取る。

 

「……そう来たか」

 

 前回の戦いと同じだ。バーサーカーの本領は肉弾戦、ああなった後にセイバーは敗北の一歩手前まで追い込まれた。

 

「叩き潰してやるぜっ!」

 

 奴の繰り出す格闘術。それさえもセイバーはことごとく避ける。

 最も短刀による攻撃をする暇はない。能力の百パーセントを回避に注ぎ込んだ逃げの一手。

 

「シット! 戦うって言いながら逃げるなってんだ! カワード〈腰抜けっ!〉」

 

「俺のセイバーをそんな風に言うな!」

 

 セイバーはバーサーカーの猛攻を採石場を駆け回って逃れる。

 

「カトンボみたいに鬱陶しいぜ!」

 

 岩壁の手前に立つセイバーに黒鉄の拳を撃ち込もうとするバーサーカー。けれど、それさえも逃れて代わりに拳の一撃は岩壁に大穴を開けた。

 

「相変わらずのバカ威力でありますね! ほとんど逃げるのがやっとの攻撃速度、まともに戦ってもボコられるのは目に見えてますから」

 

「ふっ! 肉弾戦こそ俺の本領。ウサギみたいに逃げるってんなら、追い詰めればいいだけよ!」

 

 バーサーカーの蹴りが大岩を粉砕する。飛び散る岩の破片が逃げたセイバーを襲い、身体に打ち付けられる。痛みで僅かに表情は歪み、更にバーサーカーは追い打ちを仕掛けに迫る。

 肉体その全てが武器の敵。一切反撃に転じる余裕もない、この状況、徐々に追い詰められているのはセイバーの方だ。

 

「……セイバーっ」

 

 追い詰められているのが目に見えて焦燥を感じる。一方でアルスは自分のサーヴァントの強さに得意げな笑みを見せている。

 そしてついに、岩場の突き当りに追いやられたセイバー。左右が高い岩壁に囲まれた突き当り。遠くから息を切らすセイバーと、バーサーカーの後ろ姿が見える。

 

「これで詰みだな。──覚悟してもらおうか!」

 

 やはりバーサーカーは強い。俺のセイバーを正面から追い詰めるそのパワー。真っ向勝負で勝ち目はない。

 ──だけれど。

 

「お前が強いであります、バーサーカー。けれど……正面からばかりが手じゃないでありますよ」

 

 言うと同時に、セイバーは短刀のビームの刃を細く、そして長く伸ばして数度振るった。

 

「はっ! 悪あがきのつもりか!? 全然傷一つついてなんて──」

 

 狙ったのはバーサーカーではない。両側にそびえる岩壁だ。

 刃で切られ、岩壁の一部に切断面が幾つも入りブロック状になった大岩が、下にいるバーサーカーめがけて押しつぶす。

 

「やったか!?」

 

 間違いなくあいつは岩の下敷きになった。俺もやったと思った……が。

 

「馬鹿めっ! こんなことで俺を倒せるかよ!」

 

 押しつぶした岩を突き上げた拳で壊し、瓦礫の中からバーサーカーは現れた。サーヴァント相手には無駄な事だったのか。

 

 

 

「バーサーカーっ!!」

 

「──あ、っ?」

 

 這い出たばかりのバーサーカーの背に、セイバーの太刀が突き刺さった。

 

「不意打ちでも致命的な一撃を与えられればボクの勝ちでありますから。乗っていなくても少しくらいなら誘導出来るんですよ、ボクのR2ブレードは」

 

 岩を落として見せたのもバーサーカーの気をそらし、隙を作る囮だった。

 俺と同じように後方から見て、航行形態で飛んで迫ったセイバーの太刀──R2ブレードが迫ることにアルスも気づき声を出しても間に合わなかった。直前に通常形態に戻った太刀にバーサーカーは貫かれて膝をつく。セイバーはその横を通り、突き刺さった太刀を引き抜き、振り返る。

 

「くそ……っ」

 

 口からは血を溢し、大量にこぼれ落ちる胸の傷口を抑えるバーサーカー。

 

「そんなっ! アタイのバーサーカーが、あんな奴にっ!」

 

 取り乱しそうになるアルス。けれどそんな彼女に、バーサーカーはなおも笑ってみせて言う。

 

「こりゃあ見事にやられちまったぜ。霊核にもヒビが入っちまってはいるが、俺はまだ……戦える」

 

 バーサーカーは出血する傷口を力を込めて膨張させた筋肉で止血し、立ち上がった。

 

「まだ立てるとは驚きでありますが、さっきのダメージではまともに戦えないはずです。

 だから、今度こそ終わらせてあげますよ」

 

「……面白いぜ。これぐらいのハンデ、丁度良い!」

 

 戦線復帰を果たし、拳を構えるバーサーカーと、今度は正面から太刀を構えるセイバー。あの傷なら直接戦っても勝機があると踏んでの判断、俺も勝利を確信した。

 

「その首、今度こそ────っ」

 

 

 

 ────

 

 

 その時、セイバーの背中に幾つもの赤い棘が突き刺さった。

 

「え?」

 

 理由も分からず、今度はセイバーがふらついて地面に手をつく。その背は血に染まって真紅に染まり、岸壁の真上から嘲笑う銀髪の淑女の姿。

 禍々しい貴族風のドレスと、目元で仮面で隠した……いうなれば女怪人という印象。

 

「ふふふ、血の色はサーヴァントでも鮮やかなものね。貴方もそうは思わない?」

 

「確かに、Aエナジー体であるサーヴァントがここまで人間を再現出来るのは興味深い。じっくり研究したいですが、貴方の目的は別でしょう、アサシン」

 

 その傍には長い緑髪の、白衣の女性がいた。アサシンと呼んだことから彼女はマスターで、女怪人はサーヴァントだ。

 サーヴァント・アサシンは上から見下ろしたまま言葉を続ける。

 

「そうね。私の願いを叶えるために、他のサーヴァントには消えて貰わなくてはいけないもの。

 バーサーカー、セイバー、どちらも深手を追っている今、綺麗に片付けてしまいましょうか」

 

 アサシンは岩壁から優雅に飛び降り、冷酷な笑みを口元に浮かべる。

 

 

「貴方達の悲鳴、どんなメロディを聞かせてくれるのか──楽しみだわ」

 

 

 

 

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