Fate/Cosmic Light   作:双子烏丸

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第十八節 ──分かっていたことなのに(side タケル)

 ────

 

 どれだけ意識を失っていたのかはわからない。

 けれど目を覚ました今、僕は誰かの背負われていることに気づく。

 

「……意識が戻ったのか」

 

 僕を背負って運ぶ誰かが振り向く。その顔には見覚えがある。

 

「キョウスケさん? 貴方が、どうして?」

 

「覚えてないのか。アサシンとの戦いで君のサーヴァント、ランサーはおかしくなった。

 君を気絶させて連れて行こうとしたのを僕とキャスターが救出した。あのままでは何をされるか分からなかった、だから」

 

 僕も覚えている。ランサーのその変貌と狂気は。

 

(ランサーがおかしくなった……か)

 

 彼はそう言ったけれど、実際は違う。

 彼女の真名、元になった過去の人物。『あれ』がランサーと言う英霊の本来の性質だと、僕は知っている。

 

 

 

 

 彼女は今まで僕のサーヴァントとして戦ってくれた。望む願いが叶えられる報酬、聖杯のためではなく、僕個人の復讐を果たす存在として。

 ランサーにとって何の対価もない戦い。それでも力を貸してくれた理由は……罪滅ぼしの為。

 英霊として刻まれた罪、『怪物』としての汚名。決して消えることのない罪過、無意味だとしても彼女は自分の宿命に抗おうとしていた。

 

(本当はずっと前から気づいていた。なのに、僕はランサーの気持ちを無視し続けていた)

 

 一度でも、たった一度でも話していれば。ランサーもあんな事にならなかったかもしれない。

 僕は家族の復讐の為に全てなげうって来た。今更自分の命さえ惜しくない、彼女も目的の為の道具としてしか考えていなかった。

 

「僕は……」

 

 それはただ復讐に呑まれていたに過ぎなかった。

 例え大切なものを奪われて──もう、自分の命さえ限られていたとしても、ただ復讐に堕ちればただの外道だ。

 あの時彼方を、他人さえ巻き込もうとし手段を選ぼうともしなかった。そんな人間は…………それこそ。

 

「……だから、ランサーは力を貸してくれたのか」

 

 本当に今更だった。

 僕はキョウスケの背から自力で降りた。

 

「タケル!?」

 

 意識を失っていただけに過ぎない、今ならすぐにでも引き返せる。

 僕は目指す先に駆け出そうとした瞬間……キョウスケが手を掴んで制止する。

 

「駄目だ。君のサーヴァントはもう前までとは違う。もし戻れば、今度こそ」

 

 危険な事は分かっている。

 

「それでもランサーに会いたい。彼女を『怪物』になんてさせたくはない」

 

 彼は手を離さずに僕を見据える。何かを思う所があるように沈黙した後、ようやく手を離して言った。

 

「止めても無駄なのか」

 

「ああ。ランサーの事はマスターである僕の問題だ、彼女に説得を試すくらいの資格はある。──もし本当に言葉が通じなければ、令呪で」

 

 僕は自分の右手に刻まれた令呪に目を向けた。サーヴァントへの絶対的命令の行使権、これでランサーを自害させられる。

 最後の手段。けれど、僕が知っている彼女ならそれを望むはずだ。

 

「分かった。なら僕も同行しよう。

 ……僕もキャスターを残して来た。手遅れかもしれないけれど、せめて確かめたい」

 

 彼もまた、自分のサーヴァントを気にかけていた。

 僕も断る理由はない。キョウスケとともに来た道を引き返す。

 

 進む先の遠くから聞こえる戦闘音。

 ──戦いはまだ終わってはいない。

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