Fate/Cosmic Light   作:双子烏丸

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第二十一節 幻想の姫(Side タケル)

 僕とキョウスケはランサー達が戦っている地点へと向かっていた。

 

「……キャスターは逃げるよう言ったのに、裏切るなんて」

 

 小さく彼がそう呟くのを聞いた。

 

「僕だって無茶をしているのは自覚している。キョウスケさんが無理に付き合う必要はない」

 

 僕の言葉にキョウスケは安心させるように視線を向けて言った。

 

「確かに彼女の言葉に背いている。けれど、ここで逃げたままだと僕も後悔する。

 ……同じだよ、君と」

 

 彼の言おうとしている言葉は、僕にも分かる。

 自分でも不思議な感じだ。今まで復讐のためにガイアスを追い続けていた。なのに、今はランサーを救いたいと言う別の動機のために命を賭けている。

 もちろんガイアス、総帥である男とそのサーヴァント、アーチャーと戦うために彼女の力が必要なのも当然ある。……でもそれとは別の思いから行動している自覚も同時にある。

 

 

 

 

 

 

 目的の地点にはしばらくしてたどり着いた。

 地面や木々に抉れ、裂け目のある戦闘の形跡。けれどランサーとキャスターの姿はどこにもない。

 

「どこにいるんだ、ランサー」

 

 気配を感じない。正直違和感はあった。追っている最中も彼女の気配、魔力の形跡を感じないままだったのを。

 まるでこの世界から忽然と消えたような。普通ならあり得ない。けれど前例を体験した事が一度だけある。

 

「もしかして、キャスターの固有結界にいるのか? キョウスケさん」

 

「──いや、それはない」

 

 僕の問いに即座に返答したキョウスケ。

 彼を見ると、その両腕にボロボロの布に覆われた何かを抱えていた。

 半壊した人形。……彼のサーヴァント、キャスターだった。

 

「やっぱり、置いていくべきではなかった」

 

「マスターこそ……どうして戻って来たの。……逃げるように言ったのに」

 

 キャスターのか細くながら責める言葉に、僕が代わりに答える。

 

「彼は悪くない。ランサーを正気に戻したいと、僕が無理を言ったせいだ」

 

 彼女は残った片目をこっちに向けて、瞳を閉じると。

 

「そう。やっぱり優しい人ね。

 今の彼女にあなたの言葉が届くか分からないのに……それでも彼女のために危険を冒すの?」

 

 決断は既にしている。キャスターもすぐに察したようだった。

 

「……分かったわ。

 あなたの救いたいランサーは、セイバーとバーサーカーと戦っている。……危険な状態よ。サーヴァントとそのマスター達を固有結界に閉じ込めて、今頃は……」

 

「──なんだって?」

 

 セイバーとバーサーカー、そのマスター達──彼方とアルスだ。まさか捕まっていた僕を助けに来たのか。だとするなら……。

 

「なら尚更向かわなければいけない。

 お願いだ、キャスター。僕達に力を貸してくれないか」

 

 さっきまでの彼女の物言い、何か手立てがあるはずだと思った。

 キャスターはそうね、と小さく呟いてキョウスケを見上げる。

 

「……マスター、最後の令呪を私に頂戴。

 ランサーとの戦いで霊基はもちろん……霊核まで壊れかけ、どの道長くは保たないわ」

 

 そして申し訳ないように目を伏せる。

 

「ごめんなさい。マスターの願い、叶えることは出来なくて」

 

 後ろ姿なせいでキョウスケの表情は見えない。

 ただ、彼女の謝罪に数秒の沈黙。その後彼は──。

 

「令呪を以て命じる。君の力でみんなを──救ってほしい」

 

 

 キョウスケの令呪が輝き、最後の一画が消失する。

 同時にキャスターの身体が彼の腕から離れ、宙へと浮かぶ。全身が白い光に覆われてその姿形を変貌させる。

 

(これが令呪の力……だけではないと思う)

 

 上手くは言えない。根拠さえないけれど、彼女に注がれる力はもっと別の、マスターであるキョウスケの想いさえも力にしていると感じた。

 

(サーヴァント・キャスター。彼女はマスターの在り方に大きく影響を受ける、特殊なサーヴァントかもしれない。

 まるで読み手によって感じ方、捉え方が異なる物語のように)

 

 人形くらいの大きさしかなかったキャスターは人間大となり、そのシルエットも変貌を遂げる。

 

「──」

 

 目を開ける。キャスターの姿はドレス姿の人間の少女へと変わっていた。

 人形の時には幼女姿だった彼女が成長したような容姿。

 長い白髪には銀色のクラウンを載せ、黒く絢爛なドレスは異国の姫君を思わせて。──その姿は、まるで。

 

「そうか……その姿、やはり君は……」

 

 悟ったように呟くキョウスケ。

 キャスターは決意の色を瞳に浮かべて、言った。

 

「ぐずぐずしていられないわ。マスター、あなたの命令通り──みんなを救ってみせる」

 

 宙に手をかざす。

 何もない場所に裂け目が現れ、別の空間への口を開く。

 その先にあったのは──。

 

 

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