夜を疾走るアタイたち!
「ヒャッホウ! さすがだぜバーサーカー、もう乗りこなすなんてさっ!」
アタイの大型バイクを走らせるのはバーサーカーだ。その後ろにアタイは乗って
(あいつらと一緒につるむのも悪くない、けれど今夜は自分のサーヴァントと走りたい……そんな気分だった)
別に変な気持ちがあるわけじゃない。
ただ、大昔の英雄ベオウルフ──アタイのサーヴァント、バーサーカーに、アタイの抱く気持ちを共有したいと何となく思った。
聖杯戦争も折り返しに差し掛かった気もする。
自分のサーヴァントともいつ別れは来てもおかしくない。
もちろん負けるつもりなんてない。けれど、それでも……何となく、今のうちにとは思った。
「感謝しろよ。激轟団のあいつらにだって、アタイのバイクは運転させたことはないんだ。
アタイのために戦って来た礼さ、特別だからな」
そんな呟きに、二イっと白い歯を見せて笑うバーサーカーの口元が、鏡越しに見えた。
「気持ちは受け取っておくぜ。
でも確かに良い乗り物だ、マスターがハマるのも分かる。俺の時代にはこんなイケてるのはなかったからな。このスピード、堪らねぇ!」
「だろ、バーサーカー! 分かってるじゃないか」
バーサーカーなら分かってくれると思ったぜ。
天宙市の高速道路、高層ビルの合間を突き抜けて街の景色、昼間のように明るい道路のライトがまたたく間に通り過ぎて流れる。
何ていうか幻想的で、非日常な、そんな感じもアタイは好きだ。
(今いる現実、くだらないリアルだって忘れられる。だから──)
「──このスピード、好きなんだ。現実だって気にしないでいい、『自由』って感じがする」
つい呟いてしまう本音。
それが聞こえていたのか、いなかったのか。バーサーカーはこんな事を独りごちる。
「ただ、決まった道しか走れねぇのは、ちっとガッカリだ。
確かにスピードは早いかもしれねぇが、やっぱ好きなように道は進みてぇ。……俺はそう思う」
郊外のサービスエリアにバイクを留めた。
アタイとバーサーカーは降りて展望台から景色を眺める。
「ほんと、俺の時代とは大違いだ」
見えるのは街の摩天楼。中央から夜空に伸びる軌道エレベーター、アマノバシだって輝いて見える。
「ずっと科学や文明が進んで……あの長いヤツ、軌道エレベーターって言うんだったか。
宇宙にまであんな風に届いてよ、大きな船だと月や火星にだって行けるんだろ。信じらんねぇくれぇだ」
そう言って景色を眺めるあいつの横顔。確かに驚愕はしてはいる、けれどあまり嬉しそうではなく。
「けどよ、その分だけ人間は組み込まれちまう。
高度に社会が発展すると管理の手だって広がる。バイクや車に乗るには資格は必要で、走らせるにも規則が必要で破れば罰せられる。今の時代はルールが沢山だ」
「そう、だな」
子どもから決められた教育、学校に規則。進む将来だって決められちまうことだってある。
「無論、俺の時代にだって国や社会はあったし、ルールもないわけじゃねぇ。
──それでも世界はずっと広いと思った。果てしない草原に、鬱蒼とした暗い森、広大な海を冒険で見て来た。巨人に竜、人知を超えた存在も相手に戦いもした
人間の手が届ききらない神秘が……世界があの時代にはあった。今では世の中は全て知り尽くされて、社会だって世界規模だ。
管理が行き届いて矮小化された世界……狭く感じてしまうのも無理はねぇ」
「……アタイもそんなのは御免だ」
アタイにとっても社会なんて束縛そのものだ。
小さい頃からずっと、世の中はこうだった。自由になれるのなら……何にだって賭ける。
「だからこそアタイ達が勝ち残る。誰にも譲るものか」
「相変わらずだな。だがそれでこそ、俺のマスターだ」
バーサーカーの言葉にアタイも笑う。
「当然だろ、全く。最も──」
ある事を思い出す。
願いなんてない、中途半端な覚悟でアタイの前に現れた一人のマスター。
どうも気に入らなかった。二度目の戦いでも多少変わりはしたようだ、けれど……。
(せめて一度、会って話すか)
そう心に決めた後、アタイはバーサーカーの背を軽く叩き、言った。
「──っと、まだ時間がある。後少し、一緒にひとっ走りしようぜ」
まだ夜はある。
今日この夜は、好きなだけ走りたい。そう思ったのだから。