Fate/Cosmic Light   作:双子烏丸

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第七節 ブラックアウト

 俺とセイバーは買い物ついでに市街地の散策をしていた。

 空は夕暮れ時で薄暗い。それでも建物や街頭の照明で、街の通りは昼間のように明るい。

 

「セイバーもすっかり体力も戻って、しばらく平和だな」

 

「そうですねー。戦いがなくても、主さまと一緒に過ごすだけでもボクは満足です。

 次はあそこのお店を見に行きましょう♪」

 

 気分上々のセイバー。相変わらず見ているだけで微笑ましい。

 聖杯戦争もこのまま立ち消えになってくれればいいけれど、多分そうはいかない。

 マスターとサーヴァント、最後の一組になるまで続く。ランサーとバーサーカーと、そのマスターについてはある程度動向は分かる。けれど、あと一組に関しては……。

 

(サーヴァント・アーチャーとマスターは今どうしているかが全く分からない。

 明らかに企みがあるはずなのに、前の施設襲撃以来何もない。逆に不気味だ)

 

 タケルも仇として追って、ハルも街の情報網を駆使して搜索を行っている。

 いまだ発見に至れていない。確か彼女の情報では……『魔術師』と言ったか。何かしらの超常的手段を用いれば、現代科学の目をかいくぐる事も不可能ではないと思う。

 

(一刻も早く何とかしたい。けれど、俺に出来るのは現状待っていることだけ。なんとも歯がゆいな)

 

「主さま? せっかくのお出かけなのに暗いでありますよ。何か考えごとがございましたらいつでも話してください」

 

 セイバーも俺の様子を察して声をかける。

 気恥ずかしくなりながらも、俺は今考えていたことを正直に話す。

 話を聞きながらセイバーはふむふむと頷いてみせて、自身も考える様子を見せて……それから。

 

「確かに気にはなる部分ではありますね。アーチャーとは二度戦いましたが、決して全力──資本来の力を見せていませんでした」

 

 考える所があったように呟くセイバー。

 

「サーヴァントの力も未知数なのは俺も感じた。確か能力は『兵器の強化』、扱う兵器しだいでは幾らでも強くなれる」

 

「それも厄介ですが、アーチャー自身、何を考えているかも気がかりです。

 彼のマスターは悪人で、考えてそうなことは大方想像もつきやすくて。……ですがアーチャーはそれとは全く違う事を企んでいるようであります」

 

 そこまで話すと、ハッとしたようにして慌てて言い直す。

 

「……いえ! 根拠はあるわけではなくて、あくまで直感として感じただけで。本当にそうかどうかはボクも分からなくて」

 

「いや、セイバーの言う通りだと俺も思う」

 

 アーチャーの一番得体の知れないとこは、そこだ。

 一見飄々とした好青年に見えるけれど、隠しきれない頭脳明晰さと野心を垣間見た。

 

「あのサーヴァントは特に底が知れない。マスターは彼を従えているつもりでも、本当はそうじゃなくて」

 

 

 

 俺が話していた時、急に周りが暗くなった。

 

「これは──停電か!?」

 

 今まで周囲を照らしていた建物、照明の光が一斉に消えた。

 それもこの区画だけじゃない。周り一面の暗闇からして、おそらくこの天宙市全域、全てのエネルギーがダウンしている。

 周りの動揺、セイバーも警戒しているようで。

 

「何事ですか!? 主さまはボクの傍から離れないでください。ただの停電騒ぎではありませんよ、これは!」

 

 周囲にいる人々の混乱はもちろん、原因不明の披露で壁に手をつく、座り込み……倒れる人もいた。俺自身も身体の力がゆっくりと吸われている感覚が確かにある。以前にも同じ事が──。

 

「魔力吸収、ランサーの固有結界でされた事と同じだけど、今回は都市丸ごと呑み込むほどの大規模だ。こんな事が出来るとするなら……ガイアスとアーチャーか!?」

 

 真っ先に思いついたのがその仮説だ。

 俺の通信端末に着信が入る。──相手はハル、この状況と関係があるはずだ。

 

「もしもし」

 

『彼方様、繋がって良かった』

 

「話はこの状況の事なのか? 分かっていることがあるなら教えてほしい」

 

 俺の言葉に、あるいは元々伝えるつもりだったのか、ハルは簡潔に答える。

 

『都市の大規模停電はガイアス、そしてその傘下にあるアーチャーの仕業です。天宙市全域からAエナジーと住民の生命力を吸収し、一箇所に集めつつあります。

 そしてガイアスの所在も突き止めました。貴方の力も必要なため、至急迎えに上がります。──詳細は後ほど』

 

 

 

 ────

 

 言葉通り、ハルの迎えが来たのは間もなくの事だった。

 

「……」

 

「マジかよ、早速この時が来るとは思わなかったぜ」

 

 護送用の大型車にはタケルとランサー、アルスとバーサーカーの姿もあった。先に招集されていたみたいだ。

 そしてハルも。俺達に向かって改めて状況を伝える。

 

「天宙市へのAエナジーの供給は遮断は大元から遮断しましたが、すでに大部分のエネルギーが吸われている上、市民に対する魔力吸収はなおも継続されています。

 効力の範囲外である都市外への避難は進めていますが、膨大な人口を退避させるには時間が足りません」

 

「てーことだから、アタイ達がガイアスってテロ組織と、アーチャーをブッ倒せばいいんだろ? サーヴァントもこれだけ揃ってるんだ、余裕だぜ!」

 

 ヘヘッとバーサーカーと笑い合って言うアルス。

 あの組は楽観的だ。俺は半分呆れながら抗議する。

 

「甘く見すぎだと思う。確かにサーヴァントはアーチャーだけでも、そのマスターが率いているテロ組織の兵力……それにもっとヤバい、何かも」

 

 街全てのAエナジー、そして住民の生命力を吸ったのもその何かのせいだ。

 あれ程の事が出来る、更にそれだけ膨大なエネルギーを行使するもの。どれだけの力を発揮するか考えたくもない。

 正体が全く不明なだけに、恐ろしくも思う。我慢しているけれど今にも身震いしそうだ。

 

 

 

 そしてタケルは──

 

「だとしても戦うしかない。ついに居場所も分かったんだろ」

 

 最近では少し人間らしくなったけれど、今は以前のような雰囲気の戻っていた。

 復讐に駆られてまたあの頃に逆戻りなんてならないか心配だ。そんな気持ちに気づいたのか、タケルは俺に小声で呟く。

 

「……大丈夫。この前のように我を失うなんてことはしない」

 

 良かった。ちゃんと冷静な心は残っているみたいだ。

 

「都市全域のAエナジーを奪われましたが、大規模なエネルギーの流れにより本拠地が判明したのも事実。 

 この作戦が事実上の対ガイアス、及びアーチャーとの決戦となる筈です」

 

 そんなハルの言葉。

 タケルは彼女に視線を向けて、決意を伝える。

 

「分かっている。これ以上は誰の被害も出させない。ガイアスは必ず止める、僕たちの手で」

 

「ふふ、『僕たち』ね。いい事言うじゃない」

 

 ランサーの言うように、前までなら『僕』と言ったはず。それに被害を出さないために戦う意思を見せて、本当にタケルは前と変わっていることがわかる。

 

「今のアイツなら、ボクも安心して背中を任せられそうではありますね」

 

 隣のセイバーが言った言葉に、俺も頷く。以前のように復讐心に奔ることは、きっとない。

 バーサーカーは腕を組み、にやりとしながら。

 

「その覚悟気に入ったぜ、坊主。──うちのマスターは平気かい?」

 

 自分のマスター、アルスに声をかける。

 

「はっ! 問題ないっての。ランサーの暴走の時だって命がけだったんだ、願いを叶えるためならそんなリスク、アタイも承知の上だ」

 

 彼女も一切動じてはいない。

 

「聖杯戦争で一番の脅威がアーチャーなら、倒さなきゃアタイの願いは叶えられない。

 ならやるしかないだろ。ガイアスの野望を止めて、アーチャーをブッ倒す!」

 

「……だったら文句はねぇ。俺はたっぷりと大暴れするだけよ、頼んだぜマスター」

 

 戦意は十分みたいだ。

 アルス、タケル、胸に秘める思いは異なっても、本気で戦おうとする意志がある。

 俺は──

 

「俺とセイバーも力を貸す。この決着が避けて通れないなら、戦うしかない。

 力を合わせた方が勝率だって上がるはずだ。」

 

 タケルのように自分の宿命に決着をつけるわけでもなく、アルスのように願いのために全てを賭けるような思いもあるわけじゃない。

 だとしても、俺だって覚悟をしてここまで聖杯戦争を続けて来た。今更退くつもりさえ毛頭ない。

 

(望んだことでなくても俺はこの場にいる。だから出来ることがあるのなら全うしたい)

 

 それが俺の決めたことだ。

 半端かもしれなくても、きっと、思いそのものに間違いはないから。

 

 

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