Fate/Cosmic Light   作:双子烏丸

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第十節 復讐の決着(Side タケル&ランサー)

 

 彼方、セイバーと隔たれてからすぐに、アルスとバーサーカーとも分断された。

 前回と同様に、各個分断は敵の術中と考えていい。だとしても僕たちのやることは変わらない。

 僕はランサーと共にガイアス本拠地の奥へと進んでいた。

 そんな最中──ある相手と再会することになる。

 

 

 

「くくくっ、これもまた吾輩の鋳造したオートマタ。

 名付けるとするなら、『セイバー・マキナ』と『バーサーカー・マキナ』と呼ぶべきか」

 

 空間にある二つの大型モニターに映っているのは、セイバーとバーサーカー、互いに別の地点で戦っている映像だった。

 どちらも一対一、戦う相手は二人に類似した人型の機械。太刀で戦う小柄なオートマタと、格闘と大剣で戦闘する大柄のオートマタだ。

 

「……やっぱり待っていたか」

 

 そして今、この場にはコズミック・セントラルの施設襲撃に現れた禿頭でモノクルをかけた魔術師、レルケン卿がいた。

 彼の隣にはあの時、ランサーが戦ったオートマタ、アルビ・マキナの姿がある。

 

「いずれここに来るとは思ってはいたのでな。

 前回の戦闘後、吾輩もアルビ・マキナの更なる改良に努めたのだ。サーヴァント戦のデータを元に更なる戦闘向上。セイバー・マキナ、バーサーカー・マキナは言わばその副産物として鋳造したもの」

 

 映像ではほぼ互角の戦いが、どちらでも繰り広げられていた。

 

「最も、幾ら真似したとは言っても限界はある。セイバー、バーサーカーとは良い戦いに持ち込めるだろうが、時間稼ぎが関の山。いずれ敗北するだろう……が」

 

 アルビ・マキナのバイザーが輝き、起動する。

 

「──このアルビ・マキナは別格だ。今度こそ、確実にサーヴァントさえも上回る戦闘能力に仕上げた。

 ガイアスの目的など、総帥の野望もただ利用している手段に過ぎない。吾輩の目的は始めからただ一つ、究極のオートマタを作り出すことなのだからな」

 

「面白いわね。ようはアタシに挑戦したいってコトでしょ? 受けて立ってあげるわ」

 

 セイバーは槍を器用に手元で二回転させ、構えを取った。

 

「そうとも。魔術世界で最強の使い魔であるサーヴァントを打ち砕くことで、証明してみせるのだ。──悪く思うなランサー、そして少年!」

 

「グズグズしてられないし、ソッコーで終わらせてあげる!」

 

 駆けるランサー、オートマタも両腕を長い槍剣へと変形させて同時に迫る。 

 最初の一撃を放とうとするランサー。けれど一方の剣でいなすと同時に、もう片方の剣による突きを放つ。

 

「っ!?」

 

 両腕の剣を用いた防御に次ぐ攻撃、ランサーもアルビ・マキナの戦い方は覚えていた。

 それでも前回と比べて動作も早い。回避が遅れ腕に傷を受ける。

 

「言ったであろう! サーヴァントを上回ると!」

 

 傷を受けながらも構え直した瞬間、絶え間なく連撃が繰り出される。

 右腕、左腕の剣を巧みに操り戦闘を行うオートマタ。前以上の戦闘能力にランサーは圧されている。

 

「……僕にできることは、ないのか」

 

 幾ら魔力で身体能力を上げられても、あの戦闘に入るなんて足手まといにしかならない事は僕でも分かる。レルケン卿は自分のオートマタにほくそ笑んでいる様子で。

 

「ふふふ、君も目に焼き付けるといい。吾輩による傑作の圧倒的優秀さを」

 

 ランサーの攻撃も、敵に有効打を与えられることも出来ないでいた。

 しびれを切らした彼女は距離を離し、態勢を整えようとした。しかし、それと同時にオートマタは一気に距離を詰めて来た。

 即座に右腕の剣の一撃、ランサーが防ぐや否や左腕の剣で無防備な反対側へ斬撃を放つ。

 彼女からして右側面を狙っての一撃、彼女は尻尾を使い防御する。……が、即座にオートマタは強烈な蹴り上げを空いた胴体に放った。

 

「がはっ!?」

 

 速度だけでなく威力も強烈で、ランサーは高い天井に叩きつけられる。

 

「吾輩のオートマタはついにサーヴァントさえも上回ったか。……ふっ、余裕であるな」

 

 レルケン卿が含み笑いをして呟く。

 その言葉通り、前以上にオートマタは強化されている。けれど僕のサーヴァントが負けるはずがない。

 天井に叩きつけられたランサーはきっと顔を上げて口を開く。

 

「────!!」

 

 真上から浴びせる強力な音波。範囲を下にいるオートマタに絞り、収縮し威力を上げたブレスで薙ぎ払いを仕掛けた。

 オートマタはブレスに吹き飛ばされ壁に衝突する。好機を逃さずに翼を広げ、追撃を仕掛けるランサー。

 

「しゃらくさいわっ!」

 

 槍の上薙ぎ。オートマタの装甲に傷が付くが、大きなダメージには至ってはいない。

 代わりに槍を両手で強く握られ、固定させられる。ランサーは抜こうとするけれど出来ないでいた。そんな中……オートマタの頭部、上半分と下半分で開き、大きく開口するように変形する。

 

「新たに武装追加も行った。サーヴァントの霊基さえも容易に消し飛ばす一撃、喰らってみるかね?」

 

 変形し現れた砲口。蓄えられるエネルギーの輝きに、ランサーははっとする。

 この一撃は危険だと。しかし、槍が掴まれて身動きが取れない。そして──その時が訪れた。

 

 

 

 

 アルビ・マキナの頭部から放たれる大口径のエネルギー。一筋の煌きが瞬いた瞬間、破壊の光が空間ごと引き裂いた。

 眩しさで目が眩み、届いた衝撃で吹き飛ばされそうになる。

 

「ほう。天井までも突き破る威力とは」

 

 レルケン卿の言うように、大出力のビームは部屋の天井に風穴を開け、はるか頭上には外の夜空が覗いていた。

 オートマタの頭部は元に戻る。その手にはまだ槍を握ったまま、しかしランサー本人の姿がない。

 

「まさか一撃で消し飛ばしてしまったか。案外、他愛のないものだな」

 

 そんな中、立っていたままの背後に人影が実体化し、出現する。

 

「終わるわけ──ないでしょ!」

 

 ランサーは巨大化させた尾を振るい、思いっきり叩きつけた。

 彼女は槍を手放して攻撃を回避、加えて霊体化して潜み、奇襲を仕掛けたみたいだ。

 オートマタが大きな一撃を放った直後の隙、直撃を受けてぐらついた敵の手元にあった槍を奪い、間髪入れずに右肩に突き刺す。

 

「何だと!?」

 

 自らのオートマタが大ダメージを受けたことに、驚きを見せるレルケン卿。

 

「強化のために余計な火力を入れたのが仇になったわねっ!」

 

 そのまま槍に力を入れ、オートマタの装甲を引き裂く。肩は裂け、右腕が剥がれ落ちる。それでもまだ動けるようで、残った左腕の剣で反撃に出た。

 再び、剣と槍による打ち合い。けれど腕一本失った分、攻撃の苛烈さはどうしても半減する。今度はランサーが優勢をかける。

 

「おのれっ、吾輩としたことが」

 

 勝負はほぼ互角。ランサーも無傷ではなく、ダメージを負いながらもオートマタに肉薄する。

 

「負けないでくれ……ランサー」

 

「安心してマスター! すぐにブッ倒してみせるからっ!」

 

「……まだだっ! アルビ・マキナ! リミッターを解除するのだっ!」

 

 レルケン卿の命令に呼応するように、装甲が赤く変化した。

 同時にオートマタの攻撃速度が上昇し、威力も上がる。

 

「せっかく腕を奪ったのに! 性能が倍に膨れ上がってない!?」

 

 さっきまで優勢だったランサーは瞬く間に圧される。

 槍の一突き。瞬間で見切られるとともに、死角を狙っての反撃。とっさの防御に更なる連撃を、失った腕の代わりに機械の尾で繰り出す。

 先端にエネルギーの槍先を纏った突き。腕の剣以上の速度、貫通力を持つそれを防ぐのは難しく、主に回避するしかない。

 

「せめて……大きなダメージを与えられるチャンスがあればっ!」

 

 剣の猛攻を凌ぎ、僅かな隙でも見出そうとするランサー。

 けれど決定打は入れられないでいた。腕を奪う事が出来たのが、必殺の一撃直後に生じた隙を利用した、唯一のチャンスのおかげ。

 

(もうあんな機会はない。ランサーが勝つためには……)

 

 僕が思案していた中、自身のオートマタを眺めているレルケン卿に焦りの色を見た。性能が上がり、今もランサーを追い詰めているはずなのに、その様子はあまりにも不自然だ。

 その理由は、直後に分かるようになる。

 

 

 剣を構え迫るオートマタ。

 凄まじい速度、とっさに反応が難しい程の攻勢が迫る寸前、左脚がガクリと力を失い、膝をつく。すぐにまた立ち上がるけれど、左の肘からは黒い煙がかすかに立ち上っている。

 

「これはっ!?」

 

「ランサー、あのオートマタはもう限界だ! 無理に性能以上の力を出した反動のせいで」

 

 これがレルケン卿の焦燥の理由なんだ。

 彼はオートマタの『リミッター解除』を行った。そのために性能が格段に上昇し、今ランサーは追い詰められ、苦戦を強いられている。

 

(でも、ここまで強化が出来るのならもっと早く使ってもいいはず。リミッターの解除は最終手段であって、両刃の剣。恐らく性能を上げる代償に本体に多大の負担をかけてしまう。

 脚部の煙はそのため。……戦い続ければ自壊していくはずだ)

 

「……アルビ・マキナっ!」

 

 目を見開いてレルケン卿は命令する。

 

「あと一歩なのだ! 身体が保つうちに一刻も早くサーヴァントを仕留めろっ!」

 

 再びアルビ・マキナが迫る。衰えない猛攻、ランサーは全力で攻撃を防ごうと試みる。

 

「そろそろ……無理かもっ」

 

 一方でランサーも疲労していた。

 そんな中でも彼女は戦い続ける。オートマタの限界も近づいていて、戦闘の最中でも各部位から煙が上がりはじめる。

 

「──そこだわ!」

 

 性能さえも低下し出している敵。好機を逃さずにランサーは攻めに入る。

 槍の一突きはオートマタの装甲の一部を引き剥がす。続けて二撃目を繰り出そうと薙ぎを放つ。

 けれどアルビ・マキナの腕の剣で塞がれる。力量は今では互角だ。

 

 

 

 オートマタは残った片腕で、ランサーは槍を握る両手の力で対抗する。

 片腕だけでもまだオートマタは強力なまま。最初は圧していた──けれど、腕関節までも煙を上げて火を噴かせる。

 

「いい加減、終わらせてあげるっ!!」

 

 ついに自壊した腕にトドメを刺した。槍で腕ごと引き裂き飛ばした。

 

「バカなっ!?」

 

 最後の抵抗とばかりに、再度頭部を展開しビームを放とうとする。

 充填されるエネルギー。最後の一撃に賭けようと撃ち放とうと、砲口をランサーに向けて──

 

「──ガガ、ッ」

 

 寸前、アルビ・マキナは一瞬固まったかと思うと、砲口に充填されたはずのエネルギーが霧散する。その胴体は硬い鱗と爪の生えた竜の腕に貫かれて、赤く発光する炉心が引き抜かれ、手に握り掴まれていた。

 

「手強かったけど……アタシの勝ちだわ」

 

 片腕を竜に変化させて、トドメを刺したランサー。

 彼女は炉心を掴んだまま身体から引きずり出すと、一思いに握り砕く。自分の心臓部を失ったオートマタは完全に沈黙して、動かなくなった。

 

「……」

 

 自分のオートマタが倒され、レルケン卿は沈黙する。

 

「どう? ご自慢のオートマタはアタシが倒したわよ。残るはアナタだけだけど、まだやるのなら容赦しないわ」

 

 ランサーは彼に言い放つ。

 レルケン卿の口は閉ざされていた。……けれど、次の瞬間に含み笑いをして。

 

「くくく……ははは、はっ!」

 

「何よ!?」

 

 急な笑いを見せる魔術師。

 彼は自分が作り出したオートマタに自信を持っていた。それが敗北した今、何故笑うのか理解が出来ない。から笑いか、それとも彼の心がおかしくなったのかと思った。

 

「どうして……笑っているんだ」

 

「ははは。これはこれは、失敬」

 

 レルケン卿は穏やかな様子で、笑いを止めると僕達に言う。

 

「吾輩が神秘なる聖遺物──現世に遺された唯一の純血竜であるアルビオンの遺骸、その欠片を炉心に組み込んでまで鋳造したアルビ・マキナの敗北、か。

 魔術師として、技師としてまだまだ甘い……と言うことだな。かえってせいぜいした」

 

 そして僕と、ランサーに視線を向けて、彼は続ける。

 

「オートマタの最高傑作だと自負はしていたが、敗北もまた成果である。

 この件で得た成果を元に、更なるオートマタの研鑽を行おう。ランサー、そしてマスター君、礼を言うとも」

 

 レルケン卿は魔術師としての自負があるのと同じくらい、技術者としての面が強いようで。

 戦いが終わった後、これ以上敵意を向けることはなさそうだった。

 

「もう戦うつもりは、ないと言うことか」

 

「──ガイアスに対して尽くす義理も、既に無いのでな」

 

 彼は僕達の元から立ち去ってゆく。

 

「さらばだ。アルビ・マキナを破ったのだ、この先の戦いの健闘も……祈らせて貰おう」

 

 

 

 オートマタ、そしてレルケン卿との決着も終えた。

 

「後は進むだけだ、先を急ごう」

 

 ランサーの方を見ると、握りつぶした炉心の欠片から、何か古い骨片──化石のようなものを手に取っていた。

 

「そうね。とにかく今は──っ」

 

 その時、手に乗せていた化石が自然に砕け、ランサーの手のひらに吸収された。

 

「──この力は」

 

 あの骨片、レルケン卿が話していた『聖遺物』だと分かった。

 ランサーはそれを吸収したみたいで、一見何も変わっていないように見えるけれど……。

 

「ランサー、身体には異常ないか?」

 

 僕の言葉に彼女は少し戸惑ってはいたものの、問題ないと言うように平静に答えた。

 

「大丈夫よ。むしろさっきの戦いで消耗した分、体力が多少回復した気がするわ」

 

 問題がないのなら良い。僕はランサーを連れて奥へと進む。

 

 

 

「向こうから強力な魔力を感じるわ。──ゴールまであと少し、覚悟はいい」

 

 僕たちは先に進んで、巨大工場を思わせる区画にたどり着いていた。

 今は稼働が停止しているけれど、何かを組み立て、製造していた形跡が残されている。

 

(僕達が戦っていた機体の製造か? ……それとも別の)

 

 周囲の製造ラインを見渡し、そう考えていた時に別方向から現れた彼方たちと合流する。

 

「タケルか!? 合流が出来て良かった」

 

 彼方とセイバー、それにアルスとバーサーカーも一緒だ。

 

「アタイらは自分のサーヴァントそっくりの機械人形と戦ってたんだ。おかげで手間取っちまったけれどな」

 

 これでまた全員が集まった。彼方のサーヴァントであるセイバーは、ある方向を見て僕たちに言う。

 

「向こうにボクたちとは別のサーヴァント──アーチャーの気配がします」

 

 そこには厳重に閉ざされた黒い扉、先に何かがあると直感する。

 サーヴァントの力で突破するつもりだった。けれど、扉に近づくと音もなく、僕たちが何もすることなく自動で開く。

 

「どう言うことだ?」

 

 警戒して呟く彼方。アルスも、そして僕も同じ気持ちだ。

 アルビ・マキナとの戦い以降、何の敵の妨害もなくここまで来れた。強い違和感を覚えているのは僕も、そして他のマスタ、サーヴァントも同じ。

 

「やっぱり異質です。奥まで来ているのに、こんなにも静かなんて。それに気づいたでありますか? 都市規模で続いていた魔力吸収が止まっていることに」

 

 つまり……敵の目的は既に終えている。

 故に兵隊で時間稼ぎをする必要もなく、奥に迎え入れる程に余裕がある。僕たちは相手にならないと思えるほどの『何か』があると言うこと。

 

 

 開いた扉の前で一度立ち止まる。

 けれど、僕たちはすぐに歩みを進めた。

 ──戦う覚悟は既にあるのだから。

 

 

 

 

 赤い照明で照らされた通路を、歩いて進む。

 一直線の道。やがて扉に行き当たる。

 

「──基地の司令室、か」

 

 終点は広い司令室。

 奥の椅子に座っているのは、ガイアスの総帥ただ一人。

 

「やっと、ここまで来れた」

 

 僕はランサーを連れて前に出る。

 

「……」

 

 仮面で表情も見えず、沈黙を続ける総帥。

 更に近づく。後ろからは『気をつけろ』と彼方が言う声がする。

 

「僕の家族……大勢の人間が犠牲になった。その罪、償ってもらう」

 

 殺すつもりはない、全員と強力して生きたまま捕まえ、しかる所に引き渡すつもりだ。

 怒りも、憎しみもあるけれど冷静だ。一定まで近づいて足を止める。最低限の距離は取って警戒も忘れていない。

 それでも、総帥は何も言わず、微動だにしない。

 

「今、ここで捕まえる」

 

「その必要はないわ、マスター」

 

 ランサーは一人で総帥の側に近づく。

 何かに気がづいた様子で、言葉を続けた。

 

「セイバー、バーサーカーは察しているかもしれないけれど、この男からは一切の魔力、生命が感じられない」

 

 座ったままの総帥に触れる。

 途端、その身体は倒れ、拍子でごとりと首が落ちた。

 足元に転がる、仮面を被ったままの老人の生首。僕が予想しなかった光景に彼女は告げた

 

 

「つまり、彼はとっくに──殺されているのよ」

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