Fate/Cosmic Light   作:双子烏丸

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第三節 決着、セイバー対バーサーカー

 日没間近の夕暮れ時。

 俺とランマルは指定された場所へと向かっていた。

 

「来たかよ」

 

 都市外れの海辺にある、寂れた広場。

 ほとんど人が寄らなくなったと思われるこの場所で、バーサーカーを伴って待ち受けていた。

 アルスは今までに無いほど真剣で、突き刺すような鋭い視線を俺達に向ける。

 

「約束は守る。どの道、決着はつけるしかないのは分かっているから」

 

 俺の隣にはランマルがいる。

 

「……彼方さま」

 

「分かっている、ランマル。俺たちが必ず勝つ」

 

 その言葉を聞いたのか、アルスに並んで立つバーサーカーは面白げに笑う。

 

「ははっ、どうやら随分な変わりようだ。この前の戦いを経ての成長なのか、それとも──」

 

「バーサーカーっ!!」

 

 彼の言葉をアルスが阻止する。

 

「相手は敵なんだ。無駄話なんか必要ない、ただ倒すだけだぜ」

 

 それから俺を指さした彼女。

 

「彼方、お前たちがどう変わったって関係ない。アタイはアタイの願いのために戦ってんだ、もう邪魔はさせない……勝つのはアタイだっ!」

 

「──」

 

 

 

 そうだ、アルスはこの聖杯戦争で特に本気だった。

 願いを叶えると言う目的のため、他のマスターを蹴落とし、サーヴァントを消すことを当然とする。

 俺だってとっくに分かりきっている。だからこそ、これ以上の言葉は必要ない。

 

 

 俺とアルスは後ろに退き、互いのサーヴァントが前に出て戦闘態勢に入る。そして──

 

「はあっ!!」

 

 先に動いたのはバーサーカー。前回のアラハバキとの戦いで残った剣さえも失い、己の身体そのものを武器とした肉弾戦を仕掛けてきた。

 剛腕な左腕の拳。ランマルは飛び退いて回避する。

 

「逃さねぇよ!」

 

 続けて更に距離を縮め、今度は回し蹴りを繰り出す。

 蹴りの一撃、姿勢を屈めて避けると同時に太刀による横薙ぎで反撃を仕掛ける……が、義手になった右手の甲で防がれる。

 

「防ぎましたか! ……ですがっ!」

 

「ぐっ…!?」

 

 機械太刀に備えたブースターで勢いと威力を乗せる。

 両脚に力を込めて踏ん張るバーサーカー。けれど、勢いに負けて弾き飛ばされた。

 

「やるじゃねぇか。俺の義手にヒビを入れるとはな」

 

「何をしてるんだバーサーカーっ! あんな奴らなんて大したことないだろ、お前が負けるはず……ないんだ!」

 

 一時遅れを取ったバーサーカーに対してアルスは怒鳴る。

 

「アタイたちは勝たなきゃいけないんだ。こんなところで、負けるわけにいかないんだよ」

 

「心配すんなって。まだ始まったばかりだってのに、勝負はこれからだぜ」

 

「……ちいっ」

 

 明らかに苛立ちを隠しきれてないアルス。彼女の態度はやっぱりいつもと違う。

 俺の疑念とは無関係に戦闘はまだ始まったばかりだ。バーサーカーは再び攻勢に、両拳による連撃を繰り出す。

 迫る拳を避けるランマルだけれど、バーサーカーの肉弾戦の強さは最初の戦いで知っている。

 強靭な肉体にものを言わせた、速度と威力を兼ね備えたラッシュ、ランマルは回避しながら後退し、海辺の広場から浜辺の方へと移った。

 

「逃げるしかないってか! そろそろ一撃をお見舞いしてやるぜっ!」 

 

 振り下ろされた拳は避けられ、空振った拳は砂浜に叩きつけられて砂塵が辺りを舞う。

 視界悪化の中でバーサーカーは影を捉えて拳を放った。けれどそれは深々と突き刺さったランマルの太刀、本物は背後に回り込んで短刀を抜き放ち首元狙いの一撃を──

 

「そう来ると思ったぜ! 甘ぇんだ」

 

 直前、バーサーカーの振り向きと同時に蹴りが襲った。

 ランマルは左腕で防ぐ。けれど勢いで海面を石蹴りのように弾き飛ばされ、高い水飛沫を上げて海中に消える。

 

「……はっ」

 

 アルスは乾いた笑い声を上げる。

 

「アタイのバーサーカーが、負けるわけが……ない」

 

 一方でバーサーカーは冷静にランマルが水没した方向に目をやっていた。そして──

 

 

 

「やってくれたでありますねっ!!」

 

 海面を突き破って姿を現したランマル。短刀の柄から発せられる光刃で真っ先にバーサーカーに斬り込みにかかった。

 

「やっぱ簡単には行かねぇよな!」

 

 彼は横に飛び退くと同時に、突き刺さったままのランマルの太刀を引き抜いて構える。

 

「この得物、使わせてもらうぜ」

 

 太刀を大振りし、斬撃を繰り出すバーサーカー。ランマルも警戒しながら短刀による一撃離脱を繰り返す。

 斬撃を受け止め、時にまた大振りして強烈な一閃を放つ。戦いはサーヴァント同士の刀と刀による戦いに移行する。

 

「バーサーカーにしては悪くない剣裁きでありますね」

 

「そりゃあ俺だって王であると同時に戦士、そして魔剣を扱う剣士でもあった。別の聖杯戦争でならセイバーとして喚ばれた可能性もあったかもな!」

 

 戦いの中で砂浜や付近の岩場にも斬撃の跡が残る。

 

「楽しい戦いでありますね」

 

 セイバーは笑った。けれどその笑みはどこか寂しそうで。

 

「……ですけれど、それももうすぐ終わりです」

 

 思わせぶりな言葉。

 

「はぁ? 勝負の最中にシラケたことを言うなんてな」

 

「霊基の強度と言い、攻撃の威力の低下……自分でも分かっているはず。

 ──この前のアーチャーとの戦いのせいですか」

 

「く……っ」

 

 アルスが顔を背ける。どうやら言ったことは図星らしい。

 

「ボクと二度目の戦いで霊核に傷を受け、更にあの巨大兵器アラハバキの拳を直接受けたダメージ。本来なら砕けてもおかしくないはず。前の半分程度の力しか出せていないなんて、あなたは……」

 

「ふっ、ハハハハッ!」

 

 豪快に笑うバーサーカー。勢いよく太刀を地面に突き刺し、両手を鳴らしながら歩みを進める。

 

「だからどうした! 俺はこうして立っている、戦士なら………命が尽きない限り、負けじゃねぇ!!」

 

 ランマルは再度刀を手に、切っ先をバーサーカーに向けた。

 

「分かりました。ボクも一人の剣士として、引導を渡してあげます」

 

「おうとも。じゃあ最後まで、やり合おうじゃないか!」

 

 

 

 バーサーカーとランマル、何度目かになる接戦。猛烈な拳と剣戟が交錯する中で互いに拮抗し、勝負は互角に思えた。

 

「おらおらッ! すぐ終わる勝負じゃなかったのかよ!」

 

 鋭い拳をランマルの腹部に命中させるバーサーカー。

 

「くは……っ!」

 

 ダメージは入り吐血するランマル。同時に、短刀による斬撃がバーサーカーの右肩を抉った。それでも猛攻は止むことがない。

 まるで己の命を燃やし尽くすような勢い。放たれる拳、肉弾技は獲物を捉えた猛獣の牙と爪そのもの。ランマルさえも回避しきれずに防御に回る。

 

「こんな力が、まだ残って……」

 

 バーサーカーがランマルから奪い、砂浜に突き刺したままにしていた太刀を回収。間髪入れず迫る蹴りをその頑強な刀身でガードする。

 一撃は防げたものの、即座に真横に迫っての拳による連撃。ランマルは急所へのダメージを避けるため再度左腕で……受けてしまった。

 

「仕留めたぜっ!」

 

「!!?」

 

 例え敵が弱体化していたとしても同じ箇所への二撃目には耐えられなかった。

 左腕がへし折れてあらぬ方向にねじ曲がる。それを見たアルスは安堵の笑みを見せる。

 

「セイバーを倒せば残りはマスターがいないも同然のランサーだけ。……見たか、やっぱりアタイたちが勝つんだ」

 

 そして残り一画の令呪が刻まれた手をかざし、自身のサーヴァントに命令を告げる。

 

「やれ、バーサーカー! 全力の宝具で決着をつけてしまえっ!」

 

 アルスの令呪が輝き、バーサーカーの魔力が急上昇する。

 令呪を上乗せした必殺の一撃──宝具で終わらせる気だ。俺は自分に刻まれた令呪に目をやる。彼女同様に残りは一画、相手が令呪を使用するのなら俺だって。

 そう思っていた時にランマルと目が合った。

 

「……」

 

 言葉にしなくても伝わる意思。

 かざそうとした手を降ろす。セイバーがしようとする事、それを信じ可能な限りの魔力を回す。令呪を使わなくても今の俺達──ランマルなら。

 

赤原猟犬(フルンディング)鉄槌蛇潰(ネイリング)、俺の剣が両方破壊されてようやく使えるとっておきだ。必殺の技を今から喰らわせてやるよ」

 

 ランマルも受けて立つと言うように太刀を構える。片腕が折れたことで右手だけで武器を持ち、バーサーカーを見据える。

 

「お前との戦いも、これが終いだ。

 俺の宝具、巨人殺しの一撃……源流闘争(グレンデル・バスター)っ!!」

 

 地面を抉る勢いで突撃するバーサーカー。

 肉体そのものが高圧縮された魔力であり兵器、今この瞬間は宝具そのもの。それをランマルは──片手で握る太刀で受け止めた。

 

「その宝具、受けきります!!」

 

 太刀も最高出力、眩い光を放つブースターでバーサーカーの拳を押し留める。

 

「面白いカラクリの刀だが、俺は止められねえ! ましてや片腕だけではなっ!」

 

 拳に更なる力が加えられ、ついにはランマルが握る太刀を吹き飛ばした。

 もう手元には武器がない。勝利を確信して止めを入れようとした。……そう、正面勝負に競り勝ちサーヴァント本体への攻撃に移ろうとした瞬間だった。

 

 

 

「が──っ」

 

 バーサーカーの胸、丁度心臓の位置が光刃で貫かれていた。

 確かにランマルは両手に武器はなかった。けれどその口には、短刀の柄が咥えられている。

 

「……」

 

「してやられた……か。身体も動きやしねぇ、完全に燃え尽きちまった」

 

 そして自分のマスター、愕然としたアルスに目線を向けて呟く。

 

 

 

「──すまねぇな、マスター」

 

 

 

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