Fate/Cosmic Light   作:双子烏丸

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第四節 アタイの歩む道

 ────

 

 ずっと力が欲しかった。

 自分の運命を切り開く、自由を得るための力を。

 

 

 

 親父は世界で名の知られた一流料理人だ。一人娘だったアタイは幼い頃から、跡を継がせたがっていた親父から料理を叩き込まれて育って来た。

 親に敷かれたレールってやつだ。厳しい教育は物心がついた時から続いて、始めはそれに疑問なんて覚える暇はなかった。けれど、成長するにつれて段々と分かって来た。……アタイの在り方は自由には程遠いと。

 それからは早い話、『グレちまった』んだ。不良として悪友とつるんで、暴走族の真似事までして。親父の望みなんて知ったこっちゃない、勝手にしてやる。そのつもりだった。

 

 

 

 ──でもアタイは気づいていた。

 この世の中はあまりにも出来る事が限られている。どの道社会に縛られ、職業や役割、立場……型にはめられた人生を送るしかない。

 だからこそ自由を、それを勝ち取る力を望んだ。それがアタイの欲であり、願い。

 願いが叶えばアタイだけの、本当の人生を歩めるはずだ。丁度、ハル曰く『適正』があったと言うことで聖杯戦争への誘いがあった。勝てばどんな願いでも叶うなんてファンタジー過ぎるけれど、唯一のチャンスだと思ったんだ。

 

 

 

 聖杯戦争に加わり、アタイのサーヴァントも手に入れた。──ベオウルフ、巨人殺しの逸話を持つ伝説の戦士と同時に王であった英霊。力を望んだアタイに相応しいパートナーだった。

 ワイルドで豪胆、勝手な性格であるけれど、とにかく強い。たまに憎まれ口は叩く奴だけれど、そんなあいつが気に入っていて、憧れていた。あいつとなら聖杯戦争を勝利して願いを叶えられると。

 ……そう信じていた。

 

 

 

 ────

 

「ッ! バーサーカー!!」

 

 

 セイバーの口元に咥えられた短刀の光刃が、バーサーカーの心臓を貫いていた。

 動きが止まり、その身体は後ろへと倒れる。アタイは彼のもとに駆け寄る。

 

「わりぃ、ヘマしちまった。期待に応えられずに……悪かった」

 

「……お前が謝るなよ。謝るのは、アタイの方だ」

 

 どうしようもなかったのは分かっていた。

 以前のセイバー戦で受けた傷、それにアーチャーの巨大ロボットとの戦いで受けた一撃。度重なる致命的なダメージで、とっくに消滅してもおかしくない程に霊基、霊核はボロボロだった。これ以上戦うだけでも限界だと分かっていたはずなのに。

 

「とんだ無能なマスターだ。自分の願いのために、無茶をさせちまうなんて」

 

 倒れたバーサーカーの元で膝をついて、項垂れる。

 

「……はは、何かと思えばそんな事か。

 俺は気になんてしてねぇよ。マスターに召喚されて存分に闘えたんだ、むしろ感謝してんだぜ」

 

「……」

 

 何も言うことが出来ない。そんなアタイに、バーサーカーは続ける。

 

「だとしても、やっぱ心残りはある。

 マスターの望み……何にも縛られないほどの力、くれてやれなくてすまねぇな……げほっ!」

 

 咳き込んで吐血する。

 無理をするな──そう言おうとした寸前、あいつはアタイの肩に手を乗せて告げる。

 

「……けどな、そんな力なんて聖杯に願うまでもねぇ。マスターなら大丈夫だ」

 

「何がだよ。……アタイは」

 

 聖杯への願い。力が欲しい、自由になりたい──だけどアタイ自身、本当は分かっていた。

 

「……アタイは勇気がなかっただけだ。自分では自分の道を見つけられなくて、それを周りの責任だと押し付けていた。バカだぜ……願い通り力を手にしても、無駄だって分かっていたのにな」

 

 こぼした本心に、バーサーカーは空を仰いでかすかな笑い声をあげる。

 

「ちげぇねえ。俺のマスターはとんだバカ野郎だ」

 

「ははっ、そこは慰める所だろ」

 

「俺に気遣いなんて求めんなよ。それにな、俺はバカだって言ったのは自分の事を変に卑下してっからだ。

 マスターはただ若いだけさ。とっくに自分の道を切り開く力も、勇気も持っている。……後は時間だけだ」

 

 バーサーカーの身体はほとんどが消失していた。

 最後の別れだと、そう実感したアタイは──

 

「──ありがとな、ベオウルフ。アタイのサーヴァントとして戦ってくれて。

 これからもアタイなりに頑張るからさ……一時でも共に過ごした、お前のマスターに相応しい大人になってやるよ」

 

 あいつの口元に、微笑みが浮かんだ。

 

「そうかい。せいぜい頑張りな」

 

 

 

 

 短い別れの言葉。それを伝えて満足したというように、バーサーカーは消滅した。

 

「──」

 

 あいつはもういない。振り返って彼方、そしてあいつのサーヴァントであるセイバーに向き直る。

 彼方のヤツ、一瞬申し訳なさそうな表情を浮かべたと思うと、気持ちを切り替えたのかアタイと向き合って言った。

 

「俺達の勝ちだ、アルス」

 

「……ふっ」

 

 下手な同情をされるよりずっとマシだった。

 アタイは笑みを向けて、こう答えてやった。

 

「ああ、アタイの負けだ。かえってスッキリした気分だぜ」

 

 ふっ、憑き物が落ちた感じだ。学ランのポケットに両手を突っ込み、彼方とセイバーの横を通り過ぎる。

 

「じゃあな二人とも。アタイのバーサーカーを破ったんだ、最後まで勝ち残らないと承知しないぜ」

 

 アタイの聖杯戦争は終いだ。

 けれど、一緒に戦ったあいつの存在は胸の中に刻まれている。

 

 ──進む道は、これから見つけてみせるさ。

 

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