彼方さまの想いをボクは受け取りました。
ここまで来たのです、だから……絶対に勝ってみせます!
地を蹴って、R2ブレードを振りかぶり先手を打つのはボクの方。
容赦はしません。完全にランサーを真っ二つにする勢いの一撃、彼女は上空に飛んで避けました。
「甘いわねっ! アナタの手の内は十分に分かってるわ」
思えばランサーと共闘する事も多かったですから、ボクの戦い方を知っているのは当然のこと。
「それはお互い様です!」
ボクは斬り上げの一撃でランサーを追撃します。彼女は瞬時に翼を広げて飛び、旋回し横に回り込んだと思った瞬間、突撃を仕掛けて来ました。
「……つぅ!?」
身体をきりもみ回転しながらの突撃、避けたつもりでしたが翼の先も刃の如く鋭利で、左腕に三筋の切り傷を受けてしまいます。
彼女もまた幾つもの修羅場を潜って来たのでしょう、分かっている手の内以上の戦法をとるのは当然のこと。攻撃を回避されたランサーは再度旋回して追撃、同様に回転させながらの突撃を繰り出しました。
(翼による広い当たり判定は厄介、避けるならこのタイミングで)
さっきよりも早いタイミングでの回避、ですが──ランサーは突撃を中断し、急な方向転換でボクに迫ります。
同じ攻撃と思わせて、回避行動を取った瞬間に合わせて狙う二段構えの攻勢。槍による横薙ぎを繰り出そうとするランサー。こうなれば正面から、受けて立つであります!
迫るランサーにR2ブレードの一太刀、互いの攻撃が衝突します。
「くうっ!」
「ちいっ!?」
威力は互角、弾かれて大きく距離が離れました。ランサーはその距離のまま構えると……
「ならコレを喰らいなさい!!」
息を吸い込む仕草、強力なブレスを放つと思いましたけれど、攻撃はそれを応用したものでした。放たれた一撃、それはブレスを高収束させて放つ音波の弾丸。範囲は狭めた分、威力を上げた訳ですか。
ボクはR2ブレードを飛行ボード型の航行形態へ変形させ、飛び乗ります。ランサーが放つ音波を躱し、エーテル短刀を抜き光の刃で続けての音弾を切り払い、そのまま空中のランサーに迫ります。
互いに空中戦。ボードに乗ったボクによるエーテル刃の斬撃と、ランサーの禍々しい槍先が幾度も交錯する戦況。
「……っ、やはり手強い」
ボクと同様、聖杯戦争に最後まで残ったサーヴァント。戦闘によって培われた経験値は馬鹿にならない、と言うことですか。
槍の一撃を防がれ、後ろに飛び退き距離を取ったかと思うと、巨大化させた尾を振り上げボクに叩きつけて来ます。
「!?」
尾はボードに衝突し、ボクは宙に弾き飛ばされました。
「もらったわ!」
「それくらいで、冗談じゃありません!」
太刀に再変形させたR2ブレードを手に握り、隙を見せたランサーに一薙。彼女の身体を切り裂き、同時にボクの右肩に槍が突き刺さります。致命傷のはずなのに何処にそんな力が、激痛の仲、ランサーの腹部が硬い鱗で覆われているのが見えました。
成る程、直前に身体の一部を竜化して防ぎましたか。ですが全くのノーダメージではありません。
「まだ……負けないわよ」
腹部の鱗の合間から滲む血液、大きな傷は与えたようですが、ボクの肩に突き刺さっている槍も相当に、痛い。
「……この、っ!」
これ以上深く刺されると本当に危険です。とっさに傷を受けた彼女の腹部を狙って蹴りを放ちました。
「ぐうっ!?」
突き刺さる槍の力が弱まり、引き離す事に成功です。そのまま落下、同じくランサーも下に降り立ち、空中戦から通常戦に引き継がれます。
変わらずの槍捌き、赤い軌跡が絶え間なくボクを襲います。傷は浅くないはずなのに一切の衰えがないのも敵ながらあっぱれと言うべきか。
(……さっきの肩の傷がキツいですね)
太刀を振るうたびに肩が痛みます。けれど戦闘の最中、傷を気遣う余裕はありません。恐らくはランサーも同様に。
ボクもまた太刀と短刀を駆使し、攻める事を止めません。
「これでも食らうであります!」
短刀のエーテル刃を伸ばし鞭のように振るいます。二度目のバーサーカー戦で使用した技。自在に伸縮し、曲線を描いて襲う攻撃。
攻撃はランサーを掠めます。ですが彼女は多少のダメージを覚悟で、うねる光の刃の中ボクへと向かって来ます。
「攻撃ってのは、こう言うものよっ!」
魔力を貯め、それを槍先に込めた強烈な一撃。大薙とともに、押し寄せる津波を思わせる紅い剣気が放たれます。
宝具にさえ並ぶ程の魔力を込めた攻撃、ならば同じだけの一撃で正面からぶつかるまでの事。
(そう言えばバーサーカーとの決戦も、最後は大技のぶつけ合いでした。強敵との戦いとは往々にしてそう言うもの……是非もなし、ですね)
R2ブレードに魔力を充填、そのまま出力全開で一閃を繰り出しました。
巨大な剣気と衝突する太刀の刃。受け止め、潰されるほどの威力をブースターで押しかえします。
「……くぅ……っ」
じりじりと、踏ん張る身体ごと後ろに下がります。それでもR2ブレードの最大威力で、ランサーの剣気に打ち勝ち、消し飛ばしました。
霧散する赤いエネルギー。けれどそれを放った本人、ランサーはいませんでした。
「──!!」
同時に背後から突き刺さる殺意。
振り返ったら目の前に、至近距離にまで迫るランサーの姿が。手に持つ槍はボクの心臓、霊核に狙いを付けられていて。
(やられるっ!? いや、まだ──)
すぐさま短刀のエーテル刃を煌めかせ、彼女に狙いをつけます。
最悪、相打ちさえ覚悟した……いえ、彼方さまの為にも生きて、勝ち残ってみせます!
「はああぁっ!!」
刀と槍、致命的な互いの刃が迫ります。けれど刹那、そう、ほんの刹那でした。ランサーの槍先が寸前で静止し、彼女と目が合います。映っていた表情は、自らの運命を受け入れたもので。
(ランサー、貴方は……)
ボクの一閃は本気の勢いのままにランサーの身体を裂き、彼女のドレスや槍よりも真っ赤な血の花を咲かせます。刀に斃れ、ボクは返り血を浴びて佇んでいました。
タケル──ランサーのマスターだった少年が彼女を呼ぶ声が響きます。
振り返ると彼方さまと目が合いました。ボクを見てすぐに悟ったようで、複雑なご様子でした。
(……とんだ嘘つきです。本気で戦うなどと、最初からその気はなかったと言うのに)