1話 始まりの夢/存在しない夢
―我々は望む、七つの嘆きを―
―我々は覚えている、ジェリコの古則を―
―――……私のミスでした―――
どこからか声が聞こえる。
聞いたことのないはずなのにどこか聞いたことがあるような声が。
―――私の選択、そしてそれによって招かれたこの全ての状況―――
―――結局、この結果にたどり着いて初めて、あなたの方が正しかったことを悟るなんて―――
これは夢なのだろうか?でも、この状況を見たことがあるような気がする。目の前で自分に語りかける人物を知っているような気がする。
それは、前世の自分が体験した話というよりは一つの物語の中の一幕として知っているような、そんな感覚。
そこで一つの疑問が浮かんだ。
(あれ……、なんで『前世』なんて考えたんだろう?)
―――……今更図々しいですが、お願いします―――
―――大智先生、きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それでも構いません―――
そんな疑問を考えてる中、目の前の人物は話を続ける。そういえば、ここがどこなのかもわからない。白い車内、窓の外には透き通るような青い空、そして眩しいほどに輝く太陽に照らされながら、僕と彼女は座っている。
―――何も思い出せなくても、恐らくあなたは同じ状況で、同じ選択をされるでしょうから……―――
―――ですから……大事なのは経験ではなく、選択。あなたにしかできない選択の数々―――
自分がどんな選択をしたのか、全く覚えがない。そもそも、物語として知っているのだとすれば、ここにいるのは本来、僕じゃない誰かということになる。
―――責任を負う者について、話したことがありましたね―――
―――あの時の私にはわかりませんでしたが……。今なら理解できます―――
―――大人としての、責任と義務。そして、その延長線上にあった、あなたの選択。それが意味する心延えも―――
そうだった、ここはそういう世界なんだった。大人としての責任、義務。きっと目が覚めれば、僕がこの世界でそれらを果たすことになるのだろう。ここで、一人の大人として。そして、みんなの幸せを願う者として。
―――ですから、先生―――
……ジジッ
ここで突如、この夢なのか現実なのかわからない世界にノイズが走り出した。それと同時に、2つの声が重なって聞こえてきた。
―――私が信じられる大人であるあなたになら、
この物語はこんな始まり方だっただろうか。
自分の見える視界の中には確かに、頬に赤い血を滲ませながら自分に語りかけてくる彼女がいる。それなのに、目の前の椅子には誰も居なく、彼女とは違う、誰とも分からない声が脳内に語りかけてくる。窓の外には透き通る青空に、自分たちを照らすように輝く太陽があるのに、どうしてか終焉を迎えるかのような紅い空に、それをさらに実感させるような不気味に黒く輝く太陽がある。そんな矛盾した2つの光景がノイズと共に重なって見えてしまう。
しかし、そんなノイズもほんの少し時間が経てばなくなり、元々見えていた世界だけが視界には残っていた。
―――そこへつながる選択肢は……きっと見つかるはずです―――
―――だから先生、どうか……―――