―――次の日
朝早くから起きた僕は、散歩がてらアビドスを見て回っていた。
アビドスの住宅街を歩いていると、ふと見覚えのある少女を見つけた。
「うっ……な、なに……!?」
目が合ったセリカさんは顔をしかめる。
「おはよう、セリカさん」
「な、なにがおはようよ! 馴れ馴れしくしないでくれる? 私、まだ先生のこと認めてないから!」
「あはは……」
セリカさんの反抗的な態度に僕は苦笑いを浮かべる。
まだ出会って二日目、信頼関係もまだ築けていない今は仕方ないだろうと思う。
これから少しずつ信頼関係を築いていけばきっと受け入れてくれるようになるだろう。
「まったく、朝っぱらからのんびりうろついちゃって。いいご身分だこと」
「セリカさんはこれから学校かな?」
「わ、私が何しようと先生とは関係ないでしょ? 朝っぱらからこんなところをうろちょろしてたら、ダメな大人の見本みたいにおもわれるわよ? じゃあね! 私は忙しいの。先生はせいぜいのんびりしてれば?」
「まぁまぁ、せっかくだし学校に行くなら一緒にどうかなって」
「あのね、何で私があんたと仲良く学校に行かなきゃいけないわけ? それに悪いけど今日は自由登校日だから、学校にいかなくてもいいんだけど?」
うーん、と僕は顎に手を当てて考える。
信頼関係を築くためにも少しでも距離を縮めれればなと思って誘ってみたはいいものの、なかなか上手くはいかない。
積極的に仲良くしにいくのは中々難しいなと僕は心の中で感じていた。
それにしても、学校に行かないならどこに行くのだろう?
このあたりは人がほぼいないのもあって遊べるような場所はほとんどない。それ以前に、こういうタイプの子が遊びに行くで『忙しい』なんて言葉は使わないだろう。
となるとあと考えられるとするなら……
「もういい? 私は行くところがあるから」
「もしかしてバイトとか?」
バイトという単語が聞こえた瞬間ギクッと効果音が鳴りそうなほどにセリカさんの身体が震える。
「な、なんだっていいでしょ!? 先生には関係ないから! じゃあ私もう行くから、ついてこないでね、バイバイ!」
セリカさんは砂埃を立てながら逃げるようにしてその場を立ち去っていってしまった。
先程の反応からして図星ではあったようだ。
アビドスの借金のこともあるし、少しでも多く返済できるように必死で頑張っているのだろう。
すごく、頑張り屋でいい子だと思う。一つ、セリカさんのいいところを知れた気がする。
とはいえ、どこでバイトをしているのだろう?
危ないこととかしてないといいけど……
「他の子達なら知ってるかな?」
そんなことを考えながら僕は学校に戻っていった。
「いらっしゃいませ! 柴関ラーメンです! 何名様ですか? 空いてるお席にご案内いたしますね!」
とあるラーメン屋、そこでセリカは慣れた手つきで接客をしていた。
そこに、さらにガラガラっと店の扉が開き、新たな客が入ってくる。
「いらっしゃいませ! 柴関ラーメンで……げっ」
「あの〜☆ 5人なんですけど〜!」
「あ、あはは……セリカちゃんお疲れ……」
「ん、お疲れ」
「み、みんな……どうしてここを……!?」
店に入ってきたのはアビドスのみんなと先生の5人。
セリカは驚いた表情を見せながら5人を見る。
「うへ、やっぱここだと思った」
「頑張ってるね、セリカさん」
「先生まで……もしかしてつけてきて……」
「先生は悪くないよ〜。セリカちゃんのバイト先といえば、やっぱここしかないじゃ〜ん? だから来てみたの」
「ホシノ先輩かっ……!! ううっ……!」
先生のストーカー疑惑を浮かばせながら先生のことをジト目で見るセリカの言葉をホシノが否定する。
実際のところ、先生が学校に戻ってセリカのバイトのことをアビドスの子に聞いてみたところ、最終的にせっかくだから行ってみようということになり、今に至る。
「アビドスの生徒さんか。セリカちゃん、おしゃべりはそれくらいにして、注文受けてくれな」
「あ、うぅ……はい、大将。それでは、広い席にご案内します……こちらへどうぞ……」
大将に注意されたセリカはしゅんとして、その耳を垂らしながら接客を続けた。
アビドス一行も案内されるままに席に座る。
「はい、先生はこちらへ! 私の隣、空いてます!」
「……ん、私の隣も空いてる」
ノノミとシロコの二人からお誘いを受ける。
先生としてはどちらでもいいのでとりあえず近い方のシロコの隣に座っておいた。
「ふむ……」
シロコは少し考えるような仕草をすると、ずいっと先生との距離を詰めに行った。
「狭すぎ! シロコ先輩、そんなにくっついてたら先生が窮屈でしょ! もっとこっちに寄って!」
「いや、私は平気。ね、先生?」
そこで自分に振るのか、と先生は心の中で突っ込んだ。
確かに別に離れたいと思うほど窮屈と感じているわけでもないのだが。
「何でそこで遠慮するの!? 空いてる席たくさんあるじゃん! ちゃんと座ってよ!」
「わ、わかった……」
シロコはしゅんと耳を垂らしては少し不満気に反対側に寄った。
「セリカちゃん、バイトのユニフォームとっても可愛いですね☆」
「いやぁ〜、セリカちゃんってそっち系か。ユニフォームでバイト決めちゃうタイプ?」
「ち、ち、ち、違うって! 関係ないし! こ、ここは行きつけのお店だったし……」
明らかに動揺している。そのことは先程の反応と泳がせてるその瞳から簡単に分かってしまう。
ユニフォームで選んだんだね。
「ユニフォーム姿のセリカちゃん、写真撮っとけば一儲けできそうだね〜。どう? 一枚買わない、先生?」
「変な副業はやめてください、先輩……」
「バイトはいつから始めたの?」
「い、一週間前ぐらいから……」
「そうだったんですね☆ 時々姿を消していたのは、バイトだったということですか!」
学校でみんなにセリカのことを聞いていたときか感じていたことだが、セリカがバイトしてることはみんなには隠していたようだ。
最も、ホシノはなんとなく察していたようだが。
「も、もういいでしょ! ご注文は!?」
「『ご注文はお決まりですか』でしょ〜? セリカちゃ〜ん、お客様には笑顔で親切に接客しなくちゃ〜?」
「あぅぅ……ご、ご注文は、お決まりですか……」
「私は、チャーシュー麺をお願いします!」
「私は塩」
「えっと……私は味噌で……」
「私はね~、特性味噌ラーメン! 炙りチャーシュートッピングで! ほら、先生も遠慮しないで頼んでね〜。 この店、めちゃくちゃ美味しいんだよー! アビドス名物、柴関ラーメン!」
「んじゃ、僕は定番の醤油ラーメンにしようかな」
セリカはそれぞれの注文をメモして大将に注文を伝える。
そして、少し時間が経つと全員分のラーメンが運ばれてくる。
みんなでそれぞれのラーメンを食べていると、ふとセリカが口を開く。
「……ところで、みんなお金は大丈夫なの? もしかして、またノノミ先輩に奢って貰うつもり?」
「はい、私はそれでも大丈夫ですよ☆ このカードなら、限度額までまだ余裕ありますし」
そう言ってノノミは懐から金色に輝くカードを見せる。
もしかしてこの子はいいところの子なのだろうか、と先生はそのカードを見て思う。
「いやいや、またご馳走になるわけにはいかないよ〜。 きっと先生が奢ってくれるはずだよね、先生?」
「え、僕? まぁ、僕は全然いいけれど」
「さっすが先生〜♪ 太っ腹〜♪」
「先輩、もしかして最初からこうするつもりで私達も誘ってくれたんですか……?」
「うへへ、まっさか〜」
先生として生徒に払わせるというのもあれなので軽く了承しておく。
アビドスの子達も借金返済で頑張ってるみたいだし、使わなくていいところで使う必要もないだろう。
先生としても、特段お金に困ってないのでこれくらい全くの苦にならない。
何故か前世で持ってたお金がこっちのお金としてカード内に入ってたし、先生としての仕事の中でも定期的に給付されてくる。
仕事での必要経費は申請すればシャーレのお金で払えてしまうし、プライベートでお金を使うことは現状基本的に飲食くらいでしか使わないので貯まる一方になっている。
そういうことなので、ノノミからこっそりこれでとゴールドカードを差し出されていたがそれも断っておいた。
そんなこんなで楽しく雑談しながらも食事を終え、会計を済ませる。
「いや〜! ゴチでした〜、先生!」
「ご馳走様でした〜☆」
「うん、お陰様でお腹いっぱい」
「早く出てって! 二度と来ないで! 仕事の邪魔だから!」
「あ、あはは……セリカちゃん、また明日ね……」
「ホント嫌い!! みんな死んじゃえー!!」
「あはは、相変わらずツンデレだね〜♪」
「ツンデレって言うな!!」
「はは……じゃあ、僕たちは先に戻るから、残りのバイトも頑張ってね」
先生は苦笑いを浮かべながらも、アビドス一行を連れて学校まで戻っていった。
―――その夜
「はぁ……やっと終わった……。目まぐるしい一日だったわ」
セリカは一日の仕事を終え、帰路についていた。
そして薄暗い道を歩きながら今日の出来事を思い返していた。
「みんなで来るなんて……騒がしいったらありゃしない。人が働いているってのに、先生先生ってチヤホヤしちゃって。ホント迷惑、何なのアレ。ホシノ先輩、昨日のことがあったからってわざと先生を連れてきたに違いないわ!」
別に、バイトをしてることを知られたこと自体に何かを思ってる訳では無い。
バイト自体、校則で禁止されてる訳でもなく、みんなに隠していたのは、ただ単に自分の頑張る姿を自分の口から伝えるのが恥ずかしかっただけ。
それなら何がそんなに不満なのか。それは、先生の存在。
まだ先生を信頼していないセリカからすれば、自分が頑張ってる中で他のアビドス生からチヤホヤされている姿を見せつけられるのは不愉快でしかなかった。
別に先生が嫌いというわけではない。
ただ、今までの大人が見向きもしなかった借金問題。先生が話を聞いてくれたからといって、『どうせ返済なんてできない』なんて言って他の大人同様に離れていってしまうのではないか、そんな不安があった。
今まで、アビドスのみんなだけで頑張ってきた。ノノミのゴールドカードすら拒んで、自分達の力だけで必死に頑張ってきた。
それなのに今更部外者の先生が首を突っ込んできて、それで簡単に解決してしまったら、結局自分達は無力だったって証明されるような気がして……今までの頑張りが無駄だったと思わされるような気がして……。
そんなの納得できるはずがなかった。
「……ふざけないで。私がそう簡単に折れると思ったら大間違いなんだから」
そのままセリカはバイトで疲れたその足で帰路を進んでいく。
「……そういえば、この辺も結構人がいなくなったなぁ。前はここまでじゃなかったのに……。治安も悪くなったみたいだし……」
セリカは首を振って続ける。
「このままじゃだめだ。私達が頑張らないと……そして学校を建て直さないと……。とりあえずバイト代が入ったら、利息の返済に充てて……っ!?」
帰り道を歩いていると、突然建物の角から複数の足音とともにカタカタヘルメット団が姿を表す。
唐突なことにセリカも驚いてしまう。
「……カタカタヘルメット団?あんたたち、まだこの辺をうろついてんの?」
「黒見セリカ……だな?」
「なんでもいいけどちょうど良かった。虫の居所が悪かったの。二度とこの辺りに足を踏み入れられないようにしてやるわ……!」
カチャッと音を立ててセリカは自らの愛銃を手に持つ。
そして構えようとした瞬間、複数の銃声とともに背中に大きな衝撃が走った。
(っ……くぅ……!! 後ろにも敵!? ……こいつら、もしかして最初から私を……)
「捕らえろ!」
セリカは急な銃撃にふらついた身体を立て直すが、カタカタヘルメット団のリーダーらしき人物の合図により、どこからか砲撃の音が聞こえ、それから間もなくセリカのすぐ近くで大きな爆発音と共に、先程の銃撃とは比べ物にならない程の大きな衝撃がセリカの身体を襲う。
「っ……うぁ……!?」
セリカは為す術もなくその衝撃に吹き飛ばされ地面を転がる。
「っ……つぅ……ぅ……」
(対空砲……? ち、ちがう……この爆発音は、Flak41改……?)
身体の痛みに耐えながら何が起こったのか必死に頭を回す。
その間も起き上がろうと身体を動かそうとするが、自らの身体がその意思に反応することはなかった。
(火力支援……? どこから…………いや、違う……これ……まさか……)
徐々に薄れゆく意識の中、自らの身に起こったことを考えるが、それも長くは続かず
(こ……いつら…………ハンパじゃない…………やば……いしき…………が……)
とうとうセリカはその意識を手放してしまった。
気絶したセリカの元にヘルメット団が近付く。
「……続けますか?」
「いや、生かさなければ意味がない。その程度でいいだろう。車に乗せろ、ランデブーポイントに向かう。」
ヘルメット団は気絶したセリカを車の中に運び込み、完了するとそのまま車に乗って走り去っていった。
「そっか……間に合わなかったか……」
嫌な予感がした先生は急いで駆けつけてきたが、駆けつけてきた先には、既に複数の空薬莢と戦車による砲撃の跡しか残っていなかった。
今回に関してはほぼ原作と変わらなかったですね
変更部分としては先生がセリカが襲撃されることを察知して助けに行こうとしたくらいですかね
結局間に合わなかったんですけど
でも間に合わなかった理由がございまして、そのあたりは後々明かされますね
あ、盛大な改変がありましたね
『先生はお金をプライベートでほぼ使ってない』
……ユウカのメモロビとかどーなるんですかね
こら、どーでもいいとかいわないの
ユウカ嫁願望の人たちにすり潰されちゃうゾ☆
では最後に一言
セリカはツンデレなくらいがちょうどいい