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「……ここまで来れば大丈夫でしょう」
先程の場所から離れたところで揃ってみんなで休憩していた。
不良達が追ってくる様子も無さそうだし、多分大丈夫かな。
「ふむ……ここをかなり危険な場所だって認識してるんだね」
「えっと、そうですね。ブラックマーケットだけでも学園数個分の規模に匹敵しますし、連邦生徒会の手が及ばない場所ですから。それに、様々な『企業』がこの場所で違法な事柄を巡って利権争いをしているという話もありますし……ここ専用の金融機関とか、治安機関があるくらいですから……」
「銀行や警察があるってこと!? それってもちろん、認可されてない違法な団体だよね!?」
驚いた顔で聞き返すセリカさんにヒフミさんはゆっくりと頷く。
「はい、そうです。特に治安機関はとにかく避けたほうがいいです……といっても私の友達がここでパトロールしてる関係もあってたまにぶつかることもありますが……」
「ヒフミちゃんの友達はよくここに来てるんだ〜?」
「あはは……仕事なんですけどね……」
「ふむ、ヒフミちゃんもよく来るの〜?」
「えっと……たまに、ですかね?」
ヒフミさんは頬を掻きながら目を逸らす。
「じゃあここのことも詳しいんだ〜?」
「えっと、危ない場所ですし、今回は一人なので事前調査もしましたし、少しだけなら……?」
「うんうん、よし、決めた〜」
ぽんっと手を打つホシノさんにヒフミさんはきょとりと首を傾げた。
「助けてあげたお礼に、私達の探し物が手に入るまで一緒に行動してもらうね〜♪」
「ん、誘拐だね」
「はい!?」
「誘拐じゃなくて、案内をお願いしたいだけでしょ? もちろん、ヒフミさんが良ければだけど」
「そ、そういうことでしたら喜んで引き受けます」
シロコさんの誘拐発言に危うく誤解を招いてしまうところだったが、セリカさんのフォローもあって納得して貰えた。
「よーし、じゃあちょっとだけ同行頼むね〜」
「はー……しんど」
「かなりの時間歩きましたね……」
「いやぁ、流石におじさんも参ったな〜。腰も膝も悲鳴をあげてるよ〜」
あれからかなりの時間歩き回って調査を続けていたが、めぼしい情報は手に入らなかった。
ずっと歩き続けていたせいか、みんなにも少し疲れの色が見える。
「あら、あそこにたい焼き屋さんが!」
「あれ、ほんとだ〜。こんなところに屋台があるなんてね〜」
「ちょうどいいし、ここで一休みしようか」
「賛成です♪」
「んじゃ、先生の奢りだね〜」
「え、別にいいけど」
「さっすが先生〜♪」
こうしてみんなで一度休憩を取ることとなった。
近くの休憩スペースで皆に持ってもらい、屋台で人数分のたい焼きを購入する。
その後、皆の元に戻って買ったたい焼きを渡していく。
「はい、阿慈谷さんも」
「わ、私もですか? 申し訳ないですよ……」
「ほら、もう人数分買っちゃったし、阿慈谷さんだけ渡さないのも平等じゃないからね」
遠慮気味なヒフミさんに押し付けるようにたい焼きを差し出した。
「えと、それならありがたく頂きます。あと、ヒフミでいいですよ。みんなもそっちで呼んでくれてますから」
「わかったよ、ヒフミさん」
さて、僕も食べようかなと、席については一口たい焼きを咥える。
うん、美味しい。
久しぶりに食べたけどやっぱり良いよね、たい焼き。
みんなも美味しいそうに食べてくれてるし、買ってよかったと思う。
「帰ったらアヤネさんの分も渡すね」
『あはは、大丈夫ですよ先生。私はここでお菓子とかつまんでますし……』
とは言うものの、既にアヤネさんの分も買ってるので帰ったら渡そう。
「さて、じゃあここまでの成果をまとめよう」
「って言っても何も無いけどね〜」
実際その通りなんだけど。
「うーん……妙ですね。ここまで情報がないのもありえません」
ふとヒフミさんがそんなことを呟く。
ありえないとはどう言うことなのだろう?
「妙?」
「はい、お探しの戦車の情報、流通ルートから保管記録まで、まるで何者かが意図的に隠しているような……」
「そこまでおかしいことなの?」
「おかしいと言うよりは、普通ここまでやりますか? という感じですね。ここに集まる企業はある意味開き直って悪さをしてるので、逆に変に隠したりしないんです」
なるほど、違法な企業とか不良とかが集まってる場所だからこそ別に隠さなくてもいいってことね。
そんな場所だからこそ、ここまで徹底して隠していると逆に違和感が出てくる。
「例えば、あそこのビル。あれなブラックマーケットに名を馳せる闇銀行です」
「闇銀行?」
「ブラックマーケットで最も大きな銀行の一つです。聞いた話だと、キヴォトスで行われる犯罪の15%の盗品があそこに流されているそうです。犯罪によって得られたお金が違法な武器や兵器に変えられてまた別の犯罪に使われる……そんな悪循環が続いてるんです……」
「なるほど、ブラックマーケット……そこにある銀行もまた黒ってことか」
「はい……まさにここの銀行も犯罪組織なんです……」
なるほど、ここが今回銀行強盗しにいく場所と。
先生として考えるなら子供に犯罪させるのはってところだけど、今回は事情が事情だし仕方がない。
もちろん僕も参加するつもりである。
みんながやるって中自分だけ逃げるのも平等じゃない。
『お取り込み中失礼します! そちらに武装した集団が接近中!』
アヤネさんの警告に意識を戻すと、複数の車の音が聞こえてきた。
『気づかれた様子はありませんが、まずは身を潜めた方がいいと思います』
「あれは……マーケットガードですね」
「マーケットガード?」
聞き覚えのない単語にノノミさんが首を傾げる。
「先ほどお話した、ここの治安機関でも最上位の組織です、急ぎましょう」
ヒフミさんに連れられて近くの物陰に身を潜める。
「……パトロール? 護衛中のようですが……」
物陰から覗いてみると、武装した車がトラックを囲むようにして走っていた。
「あれ……あっちは……」
そのままトラックと武装した車は闇銀行の中に入っていき、入口付近で止まるとトラックの中から見覚えのある人物が出てきた。
その人物は闇銀行の銀行員らしき人物に銀色のケースを渡し、サインを書いている。
「あの人……」
「な、なんで!? あいつは毎月うちに来て利息を受け取っているあの銀行員……?」
「え!? えぇ……?」
確かに、言われてみれば今朝お金を受け取りに来た銀行員さんだ。道理で見覚えのあるわけだ。
『本当ですね……車もカイザーローンのものです! 今朝、利息を支払ったときのあの車と同じようですが……なぜそれがブラックマーケットに……!?』
「えっ、カイザーローンですか!?」
カイザーローンという言葉を聞いたヒフミさんが驚きの表情を見せる。
「ヒフミちゃん、知ってるの?」
「カイザーローンと言えば……かの有名なカイザーコーポレーションが運営する高利金融業者です」
「有名な……? マズいところなの?」
「いえ……カイザーグループ自体は犯罪を起こしてはいません……。しかし、合法と違法の間のグレーゾーンで上手く振る舞っている多角化企業でして……私たちトリニティの区画にも進出しているのですが、生徒達への悪影響を考慮し、『ティーパーティー』でも目を光らせているんです」
「ティーパーティー……あのトリニティの生徒会が、ね」
ティーパーティー、トリニティの生徒会はそんな名前なんだ。また、そっちのほうにも挨拶に行かないといけないね。
「ところで皆さんの借金とはもしかして……アビドスはカイザーローンから融資を……?」
「借りたのは私達じゃないんですけどね……」
「色々複雑な事情があってねぇ〜、話すと長くなっちゃうんだよ〜。アヤネちゃん、さっき入っていった現金輸送車の走行ルート、調べられる?」
『少々お待ちください……駄目ですね、全データをオフラインで管理しているようで、全くヒットしません』
「だろうねぇ〜」
ノノミさんが考えるような仕草をしながら話す。
「そういえば、支払いはいつも現金だけでしたよね……? それってつまり……」
「私達が支払った現金がブラックマーケットの闇銀行に流れていたってこと……?」
「それって……私達はブラックマーケットに犯罪資金を提供してたってこと!?」
単純に言ってしまえばそういうことなんだろう。
だからこそ、現金でしか支払いを受け付けなかった。
「ま、まだそうハッキリとは……証拠も足りてませんし……」
「……あ、さっきサインしてた集金確認の書類……。それを見れば証拠になりませんか?」
「お、いいアイデアだね〜ヒフミちゃん」
「あはは……言ってみたは良いものの、書類は銀行の中ですし、大事にするわけにもいかないので厳しいですね……」
ヒフミさんが苦笑いしながらそんなことを話す中、既に一人の生徒が動き出していた。
「ん、それならこうするしかない」
シロコさんは鞄の中から覆面を取り出し被りながらこう言った。
「銀行を襲う」
「はいぃ!?」
「うへ、やっぱりそうなるよね〜」
「それじゃあ、悪い銀行を退治しましょう☆」
ヒフミさんが困惑している中、アビドスメンバーは次々と覆面を被りだす。
「うぇ、マジでやんの? はぁ……やるならとことんやるしかないか!」
セリカさんも最初は困惑していたものの、覚悟を決めたようだ。
「ん、ごめん。ヒフミさんの分の覆面は用意してない」
「じゃあ全部トリニティのせいにするしかないね〜」
「それは可哀想ですよ〜。はい、これをどうぞ☆」
「え? え? 私も参加するんですか!?」
ノノミさんが先程のたい焼きの袋に穴を開けてヒフミさんに手渡した。シロコさんがさり気なく番号まで書き加えてる。
「ほら、さっき約束したじゃ〜ん? 今日は私達と一緒に行動するってさ〜」
「あ、あぅぅ……。でもあの子ならきっと参加する方を選びますし……バレなければ大丈夫……ですよね……?」
少し冷や汗を書きながらもヒフミさんも紙袋を被る。
「大丈夫大丈夫! 悪いのはあっち! だから襲うの!」
「多分、私の友達もそう言うと思います……」
「よし、じゃあ行こっか〜」
「覆面水着団、出撃です〜☆」
「いや、ネーミング!!」
プルルルッ
とある一室に電話の音が鳴り響く。
「くっ…………はい、便利屋68です」
電話を取ったアルは、その電話相手――カイザーPMCの理事にアビドス襲撃についての報告をした。
『ふむ、興味深い報告だ。で、実践はいつだ?』
「うぇ……!? あ、えっと、一週間以内には……はい」
「「!?」」
アルのその言葉にムツキとカヨコは驚く。
『そうか、しっかりと頼むよ』
「えぇ、お任せください」
――ガチャリ
電話を置いたアルは緊張が解けたかのようにため息をつく。
「社長、本気? せっかく先生が戦わくていいように手回ししてくれたのに……」
「……今回のクライアントは詳しく知らないけど、超大物なのよ。先生だって、『次の襲撃はしても構わない』って言ってたじゃない……」
「だからって……」
しかし、よく考えてみれば買収されたことを隠すという意味合いでは下手に断るよりは相手の要望に従ったほうが怪しまれずに済むのだろう、とカヨコは思考を回す。
「でもアルちゃんどうすんの? この前のでお金使い果たしちゃったじゃん。私達だけでやる? あっちにはあの『先生』がいるから、簡単に行くとは思えないけど……」
「先生の依頼分の報酬も報告して少し様子を見てからの成功報酬って話だから、まだ入ってこないし……」
「わ、私がバイトでもしてきましょうか?」
「その稼ぎで傭兵を雇うなら全員一年は働かないと……。こんな無駄に高いオフィス借りてるからお金がかかるんじゃ……」
「う、うるさい! ちゃんとした会社なら事務所は基本でしょ! その方が仕事の依頼だって増えるじゃない!」
カヨコの言葉を遮るようにアルが大声を出す。
「……融資を受けるわ」
「は? アルちゃんブラックリスト入りしてるじゃん」
「違うわよ!? あれは指名手配されて口座が凍結されただけ!」
「あ、そっか。風紀委員会にやられたんだっけ」
「そう、風紀委員会にここまで痛めつけられるとは思わなかったわ……。……じゃ、行くわよ」
アルは便利屋のみんなに目を配り、事務所を出ていく。
「中央銀行も門前払いだろーし、アルちゃんどうするつもりなんだろ」
少し心配そうな表情を浮かべながらも残りの3人も事務所を後にした。
「やつらのデータ自体は正確なものだったはず。あれで上手くいく計算だったのだが……。それに、偵察に向かわせていた兵が全員やられていた……。お陰でやつらの実践データが取れなかった。アビドスのデータについてはともかく、鼠が紛れ込んでるようだな」
カイザー理事が考え事をしてる中、何者かが部屋の中に入り、タンッ……タンッ……と、部屋にその人物の足音が響き渡る
「何かお困りごとのようですね」
「アビドスについては問題ない。少しエラーは生じたが、連中がデータより強かっただけのこと。だが、偵察に向かわせた兵を倒した人物、これに心当たりは?」
カイザー理事は振り向き、入ってきた人物『黒服』を見る。
「……いえ、残念ながら。しかし、アビドスについて、こちらはデータに不備はありません」
「……何?」
「これは単純に、アビドスがさらに強くなったと解釈するべきかと」
「それは一体……」
「アビドスにどのような変化があったのか調べてみましょう」
黒服はそう言い残してはカイザー理事の部屋を後にしていった。
カイザーの兵を薙ぎ倒したのは一体誰なんだ!?
ということで15話になります
原作のヒフミは銀行強盗に関して流されるように参加するようになってしまってましたが、今作のヒフミは自分の意志で参加することを選んでいます。
本人曰く、友達が自分の立場にいたら困った人は助けると迷わず参加することを選ぶだろうと、自分も同じ選択をしようということみたいです(尚犯罪なのでバレなければ)
原作よりヒフミには優しさだけでなく強さも備わっているみたいですが、一体どこで手に入れたのでしょう