でもモチベがあるときに書かないと良いものは作れないんじゃないかと
「ん、ここが私達の学校、アビドス高等学校だよ」
シロコさんの後をついていき、着いた先には大きな校舎がたくさん見える。
シロコさんと会った場所ははずれの方だったのかあまり建物は見えなかったが、市街地に入っていけば建物も多くなっていた。
すぐそことは言っていたが、ここまでそれなりの距離を歩いたようにも感じる。そして、それだけの距離の中視界には、多くの家が集まる住宅街がひたすら映り込んでいた。それこそ、道を覚えてなければ簡単に迷子になってしまいそうなほどに。
目の前に見えているアビドス高等学校もかなり大きい。大きな校舎がいくつもあって、ぱっと見ただけでも前世の学校と比べて雲泥の差と言ってもいいほどの規模なのがわかる。これだけの規模があるなら、アロナが言っていた街中で遭難者が出てくるほど大きな自治区という情報もきっと誇張表現ではないのだろう。
残念なのは、これだけ大きな自治区でありながら、これだけ多くの建物がありながら、そのほとんどが砂に埋もれていて、明らかに機能していないということ。大きな自治区『だった』というのもまた、嘘ではないのだろう。
シロコさんに連れられ、数ある校舎の中の一つに入っていく。
この校舎の廊下は他の校舎に比べてかなり綺麗に掃除されているようだ。換気用にと思われる開けられた窓には、砂が入ってこないようにフィルターが張られてある。それでも多少は入ってきているが定期的に掃除はしているのだろう。
他の校舎の様子も軽く窓から覗き込む程度には確認していたが、どこにも人の姿は見えず、廊下にも大量の砂が入り込んでいた。先程の住宅街の状況も然り、このアビドスにはほとんど人が残っていない。それでも、この瞳に映っているこの廊下から、残った子達がどれだけ頑張っているのかが伝わってくる。
そう、アビドスの子たちが極限の状態の中で、それでもこの学校を守ろうとどれだけ頑張っているのかも、僕は知っている。だからこの子達の為にも……
そんなことを考えながら進んでいるうちに一つの教室から話し声が聞こえてきた。
シロコさんはその教室の扉をガラガラガラっと開き中に入る。先生もそれについていくように中に入っていった。
中に入ると、そこにいたシロコさんと同じ制服を着た3人の少女の視線がこちらへと注がれる。
「ただいま」
「おかえりシロコせんぱ……い……ってうわ!?その後ろの人誰!?」
「わぁ、シロコちゃんが大人を拉致してきました!」
「拉致!?もしかしてついに犯罪に手を……!!」
「ええっと、どうしよう……! こ、ここまでやっちゃったなら身代金とか要求するべき……?」
酷い言われようである。
というか、ついに犯罪にってこの子の日常って……。と心の中で思いながらシロコさんのほうをちらっと見るとこちらも微妙な顔をしていた。
「いや……普通にお客さんだから。うちの学校に用があるんだって」
「え、拉致してきたんじゃなくて……」
「お客さん?」
「ん、そうみたい……」
とりあえず誤解は解けたようだ。
しかし、アビドスが大変なことになっていること自体はシャーレに送られてきた手紙から、そして映像としても理解はしていたが、実際にこうやってこういうのを見てしまうと、その原因の一端を垣間見てしまったようにも感じる。
お客さんが来た可能性より拉致した可能性のほうが先に来てしまうとは。大人の助けもない中この子達だけで頑張ってきたのだろう。
この子達のことは知ってる、だが一人一人のことをよく知っているわけじゃない。原作知識を手に入れたとはいっても、あらすじを知っているようなもので、全てを知っているわけじゃない。故に、これから関わっていく中で一人一人のことを知っていかなくてはならない。
とりあえず、第一印象は大事とも言うし、挨拶はしないとね
「こんにちは、アビドスの生徒さん。シャーレから来た大智です。気軽に先生って呼んでね」
「……え、えぇ!?シャーレの先生!?」
「わぁ☆ということは支援要請が受理されたんですね!よかったですね、アヤネちゃん!」
「はい!これで弾薬や補給品の援助が受けられます。ホシノ先輩にも知らせないと……あれ、ホシノ先輩は?」
「隣の部屋で寝てる。私、起こしてくる」
そうして猫耳ツインテールの子、セリカさんがホシノさんを起こしにと部屋を出ていく。
ホシノさんを待っている間、補給物資の準備をしようとタブレットに目を向けたその瞬間――
ダダダダッ!! と外から何発もの銃声が鳴り響いてきた。
「じゅ、銃声!?」
「っ!!」
それぞれ窓から撃たれないように身を隠しつつ、外の様子を確認する。
銃声の先を見ると、そこにはヘルメットを被った子達が威嚇するかのように空に銃を乱射しながらこちらに向かってきていた。
「ひゃーっはっはっは!」
「攻撃だ!! 奴らの弾薬の補給口は既に絶たれている! 学校を占領するぞ!」
数としてはざっと見て20数、彼女達もまた不良生徒なのだろう。彼女達の話を聞く限り、ここ襲撃するつもりのようだ。
「武装集団が学校に接近しています! カタカタヘルメット団のようです!」
「あいつら……!! 性懲りもなく!」
カタカタヘルメット団ってなんか可愛いな、とつい思ってしまったが、その思考は振り切り迎撃の準備に入る。
本音を言えば、不良といえど生徒と争うことはしたくない。だが、ここでこちらが負けるとアビドスのみんなが辛い思いをすることになる。
そもそも日常的に銃弾が飛び交うような世界で平和的解決も中々に難しい。
『二兎を追うものは一兎も得ず』、まずはアビドスという大きな問題の解決に集中しなくてはいけない。不良生徒達のことは終わってから考えればいい。
さて、思考を戻して現状をどう切り抜けるか考える。
アヤネさんとシロコさんの2人の反応を見るに、カタカタヘルメット団が襲撃してくるのはこれが初めてというわけでもなさそうだ。
だが、何度か攻められて来ているだろう中でこの学校を少ない人数でも守りきれてるということはカタカタヘルメット団の実力はそこまででもないようだ。この子達が優秀なだけかもしれないが。
「アロナ、クラフトチェンバーの準備は出来てる?」
『はい!いつでも転送可能です!』
「よし、それなら……」
準備していた補給品の転送をしようとしたところで、セリカさんが戻って来る。一緒に桃色の長い髪に眠そうな顔をした少女、ホシノさんも一緒に入ってくる。
「ホシノ先輩を連れてきたよ! ほら先輩 !寝ぼけてないで起きて!」
「むにゃ……まだ起きる時間じゃないよぉ~」
「ホシノ先輩! カタカタヘルメット団が再び襲撃に! あ、こちらはシャーレの先生です」
「ありゃ〜そりゃ大変だね……先生? うん、よろしくね〜」
ホシノさんはこちらの方をちらっと見ると眠そうな姿なまま挨拶を返してくる。
でも、眠そうな姿のままではあったが、ほんの一瞬だけ、こちらを見たときの雰囲気がほんの少し変わったような気がする。
(なるほど、やっぱり……)
ホシノさんのことは少し知っている。アビドスを守るために昔から頑張ってきていることも、……その過程で大切な人を失っていることも。
本音を言うならもっと前の時間に転生して助けてあげたかった気持ちもあるが、今はそれどころじゃない。それに、失ってしまったものはもう戻ってこない。
だから、二度と失わないように頑張らなくてはいけない。それは、失って尚アビドスを守ろうとし続けているホシノさんだけでない、自分自身にも言えること。
―――もう二度と、間違いを犯さないように―――
「……っかりして! 出勤だよ! ほら、装備持って! 学校を守らないと!」
セリカさんがホシノさんに装備を差し出しては声を掛ける。思考に浸りかけていた自分も、その声を聞いて現実に戻される。
最近は、色んなことを考え込んでしまっていけない。こんなことでは救えるものも救えない。
「ふぁぁ……むにゃ……。おちおち昼寝も出来ないじゃないかぁ〜、ヘルメット団め〜」
僕も心の中で自分に喝を入れ、行動に移る。
「アロナ、補給品の転送お願い」
『わかりました! クラフトチェンバー転送待機状態解除。座標、アビドス高等学校、先生のいる教室を指定、転送まで3・2・1、行きます!』
「みんなちょっとだけ離れてね」
アロナの掛け声と共に先生達のいる教室の空きスペースに次々と補給品が転送されていき、山が形成される。
補給品にはそれぞれの弾薬に救急箱、普段の生活に使う日用品まで様々なものが入っている。
「おぉ〜、これだけあれば当分は持ち堪えれそ〜」
「ん、すぐに出よう」
「は〜い、みんな出撃です☆」
それぞれが弾薬や必要な物資を回収し、武器を持って迎撃のために外に出る。
「私がオペレーターを担当します、先生はこちらでサポートをお願いします!」
「うん、わかったよ」
シッテムの箱の画面を撫でるように手を添えては、小さな声でアロナを呼ぶ。それに応えるかのように画面は戦術指揮モードに切り替わる。
「今からみんなに敵の情報を送るね。とりあえずは好きに動いてくれて構わないよ。必要があれば指示を出すから」
「情報を送るって一体どうや……っ!?」
画面に当てた指をフリックするように動かすと、それぞれのヘイローを介して様々な情報が送られていく。敵の数や位置、銃の射線や戦場の情報まで戦闘に必要な情報が多く詰め込まれている。
これがアロナだからこそできる技術であり、先生にとっての最大の武器となる。正直これだけで先生の指揮なんてなくてもある程度は戦える。それほどにこのシッテムの箱は優秀な端末となっている。
「ん、これはいい」
「はい♪ これで安心して戦闘ができますね☆」
最初は慣れない形の情報を大量に送り込まれ驚きの表情を見せていたが、すぐに理解したようで、今や自信に満ち溢れた声に変わっている。流石、適応力のある子達だ。
「それじゃあ、いこっか」
アビドスとは初の戦闘、そしてキヴォトスの先生としての本当の初陣となる。
実際はサンクトゥムタワー奪還の時も合わせれば二回目の指揮にはなるが、あのときとは違って本領発揮出来る状況が整っている。
その違いは2つ、シッテムの箱があるかないか、そして前世の自分を覚えているか否かだ。
前者に関しては言わずもがな。アロナがいるかいないかで得られる情報の量は格段に変わってくる。
戦闘において情報というのはとてつもなく大事な要素となる。情報があるからこそできる作戦というものがある、情報があるからこそ適切な行動がわかる。逆に言えば情報がないということ自体が負けに繋がる要素の一つになり得る。それほどに情報は大切なのだ。
そして後者、前世の記憶。
この世界に来たばかりの頃は右も左もわからない中とにかく目の前の事を解決しようと動いた。
あのときは自分のことはあまり覚えていなかった。
この世界のことはなんとなく覚えていた、だからサンクトゥムタワー奪還は原作通りに進められた。でも、自分がいた世界のことはほとんど覚えていなかった。
だから、あのときの戦術指揮は何故か分かるものを使うなんて自分のものじゃない力を扱っているような感覚だった。
それに比べ今は自分のやり方がわかる。自分には何ができて何ができないのががわかる。
そして、これが先生のやり方。みんなに好きに動いて貰って、自分は必要なときにサポートする。
そもそも、先生は戦術指揮が得意というわけじゃない。手札の一つとして、それなりレベルに覚えているだけ。敵を倒すための式をすぐに出せる能力なんてものはない。だから、自分は自分のやり方でやる。
それに、今回に関しては自由にやらせる理由は他にもある。だから少なくとも今回はこれでいい。
――――――さぁ、僕の指揮を始めよう――――――
おまたせしました。
ほんとはカタカタヘルメット団との戦闘が終わるまで書こうかと思ったんですけど、色んなことしながら並行で作ってるとさらに期間が空いちゃいそうなのでここで止めちゃいました。
余裕ができてきたらペースが上がるかと思います。
さて、ここで少しだけ解説を
先生の原作知識についてです。
プロローグ時点での原作知識は、プロローグとアビドス編を少し読んだ程度の知識となっていました。
そして現在はそれにあらすじ程度の知識がプラスされた程度になっています。この辺りは書いてるのでわかると思います。
でも、実際のところはあらすじよりは知ってるくらいだったりします。
誰が何をして何が起こったかとか、どんな結末を迎えたかとかあらすじの部分と、あらすじに含まれない部分に関しても部分部分で知っていたりします。
今回に関してはユメ先輩のことを知っているあたりその部分に当たるでしょうか。あと、それぞれの生徒の出来ることに関しても、アロナサポート込みで大体わかっています。といってもここらへんは作者のフィーリングですし、原作知識はあるけど結構穴があるんだな程度に考えていてください。
ちなみにブルアカ転生ものだと原作崩壊とかバタフライエフェクトを気にしてるような作品がかなりありますが、この作品の先生はあまり気にしていません。
その辺りは追々明かしていこうかと思います。