「ふぅ、受け取ってもらえてよかった」
無事に銃を預けられた僕は、アビドスのみんなと合流してみんなでアビドスまで帰っていた。
銃をホシノに渡した理由は2つ、1つは信用を得るため。
武器を持ってる相手と持ってない相手なら、どちらのほうがが警戒しなくなるかは言うまでもない。
ホシノさんの過去のことは少しだけだけど知っている。だから、信頼できる大人になるために、まずは命を預けるところから。
ほんとは、銃をシャーレとかに置いてきてもよかったが、いつ必要になってくるかはわからない。だから、もしものときを考えて近くには置いておきたかった。
そして、もう一つは『自分は生徒みんなの味方になる』と、自分自身に意思表明するため。
これが表に出ることはないが、今までの自分と決別するという意味も込めてある。
その理由は、前世での死因に関係する。
簡単に言ってしまえば、前世の自分は殺されたのだ。
自分は、ずっと第三者だった。敵を作らず常に平等であった。
こう言えば聞こえは良いかもしれない。だが、それはある人にとっての敵に対しても、一般的に悪人に分類される人間に対しても平等に接しているということ。たとえ罪人であっても、その対応は変えていなかった。
だから、殺された。
ある人には、悪を許容する自分も悪だと言われた。
自分のことを友人と呼んでくれた人は、その人に対する嫌がらせに関して否定しなかった自分に不信感を募らせ、離れていった。
とある人は、悪を否定しない自分を利用し、悪行を続けて破滅した。
そして、最終的には自分自身も……
その後も、自分は同じ過ちを犯し続けていたことを知った。過ちを犯し続けた自分は例外なくバッドエンドルートを進んでいた。
きっと、自分は多くのことを間違えていた。誰に対しても平等であること自体は悪いことじゃない。
それでも、純粋な悪までもを許すべきではなかった。
善悪の区別がつかなかったわけじゃない。一般的に考えて悪いことだと分かってて、それでも他と同じ扱いをしていた。だから利用され、悪人と同類にされた。
自分が信頼されなかったのも、その人に対して味方であるという感情を持ったことがなかったから。だから裏切り者の烙印を押された。
良くも悪くも平等すぎた……いや、自分の平等を押し付けていたと言ったほうが正しいのか。
平等の基準は人によって違う。その人にとっての平等が誰かにとっては不平等であることもある。
平等の枠に不平等を入れてしまったら、平等が崩れてしまうのは当然のこと。それに気付けなかったのが自らの罪。
罪を犯した自分は、全てを取ろうとして全てを取りこぼした。
皆を同じ土台に立たせることは一つの平等の形なのかもしれない。でも、それが正解だとは限らない。
だから、自分はこの世界では生徒の味方となって、それぞれの土台で寄り添うことに決めた。そのほうが、皆を平等に幸せにする近道なのだと知ったから。
別に、誰かの敵になろうとする必要はない。
それでも、間違っているものは間違っていると言わなければならない。
平等を壊そうとする人間を許してはいけない。
だから、これはみんなを平等に扱う自分からみんなに寄り添う自分になるための決意表明なのだ。
「僕も頑張らないとね、色々と」
生徒たちの後ろ姿を眺めながらぼそりと、そんなことを呟いた。
「お帰りなさい。皆さん、お疲れ様でした」
「ただいま〜」
教室に戻ると、アビドスでオペーレーターとして動いていたアヤネさんが迎えてくれた。
「アヤネちゃんもオペーレーターお疲れ」
「火急の案件だったカタカタヘルメット団の件が片付きましたね。これで一息つけそうです」
「先生も、無事で良かったです。みんなと一緒に現場に行くって言ったときは少し驚いちゃいましたけど……」
アヤネさんの言う通りに、実は今回の作戦ではアヤネさんはアビドスからオペーレーター、僕は現場について行き、少し離れたところからのサポートという役割で動いていた。
「まぁ、現場で見たほうが戦術指揮しやすい場合もあるからね」
「そ、そういうものなのでしょうか……?」
もちろん、建前である。
ほんとは、ホシノさんと例の話をするために二人きりになれるタイミングを作るためである。
建前部分も臨機応変な動きがすぐに取れるという意味で言ってしまえば間違ってはないのだが、今回の敵に関してはそこまで心配しないといけないほどの相手ではない。
つまり、指揮に関してだけで言えば今回はアヤネさんと一緒にアビドスから無線で指示を飛ばすでもよかったのだ。
「ん、ともあれ、これでやっと重大な問題に集中できるね」
「うん! 先生のおかげで心置きなく借金返済に取り掛かれるわ!」
「借金?」
「え?……あっ!」
「そ、それは……」
「待ってアヤネちゃん、それ以上は!」
借金のことに触れると、セリカさんはしまったという顔で自らの口を押さえる。
そのまま、少し言い辛そうにしながらアヤネさんが説明をしようとするが、セリカさんが焦りながら止める。
「いいんじゃない、セリカちゃん。隠すようなことでもあるまいし」
「か、かといって、わざわざ話すようなことでもないでしょ!」
「別に罪を犯したとかじゃないでしょ〜? それに先生は私達を助けてくれた大人でしょ〜?」
「ホシノ先輩の言う通りだよ、セリカ。先生は信頼していいと思う」
借金について話すことに反対するセリカさんに、ホシノさんとシロコさんが説得に入る。
正確な金額までは覚えていないが、借金がある事自体は知っている。
「そ、そりゃそうだけど……先生だって結局部外者だし!」
「確かに先生がパパっと解決してくれるような問題じゃないかもしれないけどさ、この問題に耳を傾けてくれるような大人は先生くらいしかいないじゃ〜ん?」
この言葉で、ホシノさんからほんの少しでも信頼を得られたのだと僕は認識する。
あのときのあの行動は間違いではなかったのだと、ほんの少し安堵する。
「悩みを打ち明けてみたら何か解決法が見つかるかもよ〜? それとも何か他にいい方法があるのかな〜、セリカちゃん?」
「で、でも、さっき来たばっかりの大人でしょ! 今までの大人たちが、この学校がどうなるかなんて気に留めたことなんてあった!? この学校の問題は、ずっと私達だけでどうにかしてきたじゃん! なのに今更、大人が首を突っ込んでくるなんて……私は認めない!!」
「セリカちゃん!?」
ホシノさんの説得にセリカさんは言いたいことだけ言って部屋を飛び出していってしまう。
「私、様子を見てきます」
セリカさんを追いかける形でノノミさんも教室を後にする。
部屋を出ていった二人の足音が聞こえなくなったところで、ホシノさんが言いづらそうにしながら口を開く。
「……えっと、簡単に説明するとね……この学校、借金があるんだ〜。まぁ、ありふれた話だけどさ……問題はその金額でね……9億くらいあるんだよねぇ〜」
「……正確には9億6235万円です。アビドス……いえ、私達『対策委員会』が返済しなくてはならない金額です」
どう考えても、子供5人で返せるような金額じゃない。
それでも、この子達はこのアビドスを守るために必死に返そうとしている。
「……これが返済できないと、学校は銀行の手に渡り、廃校手続きを取らざるを得なくなります。ですが、実際に完済できる可能性は0%に近く……ほとんどの生徒は諦めて、この学校を捨てて去ってしまいました……」
この手に渡る場所というのがカイザーコーポレーション。
この子達は銀行のものになるという認識しかしてないが、その銀行自体がカイザーの管轄内にあるため、最終的に行き着く場所がカイザーとなる。
借金自体は仕方ないとしても、ここまでの金額にまで膨れ上がったのはカイザーの策略のせい。
アビドスを手に入れる為に子供相手にここまでやるなんて、そんな不平等なことあってはならない。
「学校が廃校の危機に追いやられたのも、生徒がいなくなったのも、街がゴーストタウンになりつつあるのも、実は全てこの借金のせいなんです」
「そっか……どうして借金をすることに?」
ここについては僕は知らない。
僕が知っているのはアビドスに借金があることと、借金が莫大な量にまで膨れ上がってしまったことにカタカタヘルメット団がアビドスを占領しようと襲撃していることの裏にカイザーがいるということだけ。
アビドスの子達がいい子なのは知っているので、何か理由があるのだろうとは思っている。
「それは……数十年前、この学区の郊外にある砂漠で、砂嵐が起きたのです」
僕の疑問に答えるようにアヤネさんが事情を説明しだす。
「この地域では以前から頻繁に砂嵐が起きていたのですが、その時の砂嵐は想像を絶する規模のものでした。学区の至る所が砂に埋もれ、砂嵐が去ってからも砂が溜まり続けてしまい、その自然災害を克服するために我が校は多額の資金を投入せざるを得ませんでした……」
「なるほど……だからその資金を調達するために……」
「はい……しかし、このような片田舎の学校に巨額の融資をしてくれる銀行は中々見つからず……」
「結局、悪徳金融業者に頼るしかなかった」
「はい……最初のうちはすぐに返済できる算段だったと思うのですが……その後も、毎年更に巨大な規模で発生し……学校の努力も虚しく、学区の状況は手が付けられないほどの悪化の一途をたどりました……」
「それで、ここまで借金が膨れ上がったってことなんだね」
「そうなんです……」
正直、生徒達をここまで苦しめたことについて物申したいところもなくはないが、自然災害に文句を言っても仕方ない。そこはどうしようもないものとして受け入れるしかない。
「私達の力だけでは、毎月の利息を返済するので精一杯で……弾薬も補給品も、底をついてしまっています」
「セリカがあそこまで神経質になってるのは、これまで誰もこの問題にまともに向き合わなかったから。話を聞いてくれたのは先生が初めて」
「……ま、そういうつまらない話だよ〜。んで、先生のおかげでヘルメット団っていう厄介な問題が解決したから、これからは借金返済に全力投球できるようになったってわけ〜」
根本的には解決していない。
どちらも、裏でカイザーが手を引いているのだから。
さらに、その裏にはゲマトリアも絡んでいるだろう。
生徒達の幸せを考えればすぐにでも何とかしてあげたいところだが、ゲマトリアのほうはともかく、カイザーをなんとかするためにはブラックマーケットで証拠を回収する必要がある。
……先生としては正直あのやり方は選ばないほうがいいんだろうけど、そこは目を瞑るとしよう。これは必要なことだから。
黒服と交渉して何とかして貰うことも考えたが、現状はホシノさんを連れ戻すのが限界、カイザーまで何とかさせるなら今の手札だと自らがゲマトリア側になる他ないだろう。その選択は生徒達のことを考えれば選ぶわけにはいかない。
というよりも前提から考えて黒服の居場所を知らないのでその選択をするにしてもまずは居場所を特定するところから始めなくてはいけない。
「もし、この委員会の顧問になってくれるとしても借金のことは気にしなくていいからね~。話を聞いてくれただけでもありがたいし〜」
「そうだね、先生はもう十分力になってくれた。これ以上、迷惑はかけられない」
こうは言ってくれているが、もちろん僕の選ぶ選択は一つ――
「僕も、対策委員会の一員として一緒に頑張るよ」
「そ、それって……ぁ、はい! よろしくお願いします、先生!」
「うへ、先生も変わり者だね~。こんな面倒なことに自分から首を突っ込もうなんて」
当然、今の僕は先生なのだから、生徒達を誰一人として見捨てるわけがない。先生じゃなくとも……ね
「よかった……シャーレが力になってくれるなんて……これで私達も希望を持っていいんですよね?」
「そうだね、希望が見えてくるかもしれない」
ホシノさんは既に黒服にあの話を持ちかけられているのだろうか。
先を知ってるが故に、ホシノさんにあの選択をさせてしまうのは少し抵抗はある。
でも、必要なことだから呑み込むしかない。
すぐになんとかするにも黒服の居場所を特定するのに時間がかかるし、そんなことをしてればあの件についても弊害が出る。
だから、あれは必要なこと。
黒服の居場所を知るために、ホシノを助けるために
―――キヴォトスを救うために
そういえば原作でホシノが黒服と契約した後で先生が黒服に会いに行く話がありましたが、あのとき先生はどうやって黒服の居場所を知ったのでしょう?
何か調べられる手段があるとしたら、裏で黒服が動いてることを知ってる現時点で既に黒服に会いに行くことも可能そうですよね。
どこかのタイミングでホシノから聞いたのでしょうか?
もしそうだとしたら現時点で黒服の場所聞いちゃったら黒服の存在を知ってることとかホシノが黒服を知ってることを知ってることとか色々疑問点が出てきて怪しさ満点になっちゃうんですけどね
ここからも途中までは原作通りに進んではいくのですが、所々原作と違うところとか、とある部分の伏線があったりとかしますので色々探してみてください
コンセプトに関わる重要な伏線ですね
ネタバラシするまでに答えにたどり着く人がいるのかわくわくしながら書き進めていこうかと思います。