魔法世界の陰陽師   作:おにぎり41

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大戦期
シャーマンキング1


 真っ白に開けた空間にある一つの椅子、玉座という表現がピタリと当てはまるその椅子には一つの少年が座っていた。

 

 多くの者と戦い、殺し合い、その過酷な試練を乗り越えた唯一人の人間のみに座る事の許された神の椅子に座っているのは、二十歳にも満たない少年であった。

 

 「クソッ、僕の統治の何が気に入らないと言うんだ。500年前のシャーマンキングごときが出る幕では無いだろう! 大体500年前は葉賢とマタムネが居たからから運良くシャーマンキングになれただけだろうが」

 

 シャーマンキング――それは壮絶な戦いを勝ち抜いた者のみが辿り着ける神の境地。霊体をその身体に憑依させ、また何かしらの媒介に宿す事の出来るシャーマン達が目指すべき最高の称号である。

 

 この称号を得た者は、この世の生きとし生けるもの全ての還る場所であるグレート・スピリッツを持霊とし、全ての魂が得た経験値を我が物とすることにより、その魂は全知全能――つまりは神へと昇華する。

 

 その少年が、手で顔を覆いながらこのような悪態をついているのには理由があった。

 

 500年に一度開かれるこの大会で勝利を得るために転生を繰り返し、3度目の参加により神となったのである。

 

 1000年前の平安時代には自分の実力が足りておらず、500年前には自分の子孫に因縁を付けられ敗北していた。

 

 ようやくの思いで神となったからには、現代を思うがまま変えて行こうとしたが、この少年はそこへ至るまでの素行が悪すぎた。長い時を経てこの少年は多くの者を殺め、魂さえも持霊のエサと変えていた事もあったが、なにより歴代シャーマンキングのうち二人は過去の自身と敵対関係にあった者達である、そのため上手く統治を行う事が出来なくなってしまっていた。

 

誰一人として立ち入ることのできない魂の世界の中で、『大陰陽師』『シャーマンキング』麻倉葉王は考えていた。

 

 「それを身から出た錆と言うのです」

 

 後ろから突如声がした。体を反転させ、大きな声が出てしまう。

 

 「母上何故ここに!? ここはシャーマンキングのみが入ることが出来るコミューンなのですよ!?」

 

 「そのような事は百も承知です。だからこのお二人に連れてきていただきました」

 

 後ろから出てきたのは、頭を丸めたオッサンと、髭を蓄えたモジャモジャ頭のオッサンであった。

 

 「おのれ……貴様ら……」

 

 オッサン二人を少年は睨み付けるが母の話には何も関係は無かった。

 

 「あなたは何も成長していませんね? 人間が成長したら滅ぼすのを止めるとは何事ですか? しかもその行く末を葉君一人に押し付けて、自分は世界を漂うだけとは……短い間でしたが、母はそのように育てた覚えはありません」

 

 「は、母上?」

 

 「本当に成長したと言うなら、自分の望みは自分で叶えなさい! 仮にもあなたは兄でしょう? 自らの不都合を弟一人に押し付けるとは何事ですか!?」

 

 「それは……アイツも納得したことでして……」

 

 「お黙りなさい!」

 

 「はい……」

 

 「良いですか? 人は成長を続ける生き物です。後ろにいるお二人も、人が正しい方向へと進めるよう導いていたそうです。では何故あなたは自分の力で滅ぼそうとする前に、変えて行こうと考えなかったのですか?」

 

 「そ、それは……」

 

 「あなたが長い時間をかけてでも、世界を変えて行こうという誠意を見せれば少なくとも後ろの二人は力になってくれたでしょう……ですよね?」

 

 後ろを振り向かずに放たれた言葉に、二人の男性は勢いよく縦に首を振る。

 

 「あの猫さんから聞きました。あなたは人の心を読むことが出来たと」

 

 「マタムネめ……余計な事を……」

 

 「返事は?」

 

 「はい」

 

 「ですが今は読めない……アンナちゃんから聞きましたよ?」

 

 『クッソ、どいつもこいつ余計な事ばかり』

 

 内心悪態をついていると――

 

 「返事は!?」

 

 母から厳しい声がする。

 

 「はいッ!!」

 

 「では、今一度現世へ戻りなさい」

 

 は、母上は一体何を……どういう……全く意味が分からない……

 

 「そ、それは一体どういう……」

 

 「人の心を読めてしまうというのならば、確かにそのような性格になってしまうでしょう。人の汚い部分が見えてしまう事が、さぞ多かったはずです。ですが、人はそれだけの生き物ではありません」

 

 「……」

 

 「あなたに殺された方々からは、『甘い』『ふざけるな』と罵声を浴びせられる事でしょう。しかし母は、そこにお前の性格が歪んでしまう一端が有ったと、考えずにはいられません。これは小さいお前を残して先だってしまった母の責任でもあるでしょう」

 

 「そのようなことは決して……」

 

 「あるのです。色々なものを感じる事が出来た、素直で幼いお前を置いていってしまった私の責任です。だからこそ後ろのお二人にお願いし、もう一度あなたに人の世を経験してもらう事にしたのです。少しでも良き王に成る為ならばとお二人も喜んで協力してくれました」

 

 二人組のオッサンの眼には光が灯されていない。

 

 「私の魂は転生も出来ません。ですから、この中でお前の一生をゆっくりと見ていようと思います。次の一生ではお前がこちらに来ることも、私が話掛けることも出来ないでしょう。ですが私はお前を常に見守っています」

 

 「母上……」

 

 1000年近く経って気づく母という存在の大きさ、母の愛という存在に声が上擦る。

 

 「『ぐれえと・すぴりっつ』さんの中で私は常に隣にいることが出来ますし、何より500年も一緒に居たという『ふぁいあ』ちゃんも居るのです。心配することは何もありませんよ」

 

 頭から出る鳥居のような枝に丸い目が二つの赤い球体を笑顔で撫で母は言う。

 

 『スピリット・オブ・ファイアまで手懐けられるとは……』

 

 スピリット・オブ・ファイア――地球に存在するありとあらゆる炎、マグマを操る五大精霊の一角だ。火という破壊の力、500年前に転生した一族からハオが奪い取ったものであった。

 

 「それでは釈迦さん、キリストさんよろしくお願いします」

 

 「「御意!!」」

 

 声が聞こえると軍隊のように統率のとれた二人が前に出る。

 

 「ちょっ……母う……」

 

 次の瞬間ハオの目の前から光が消えた。

 

 「まずは、立派な人間になりなさい……」

 

 そんな声が聞こえた気がした。




母は強し。

ってなわけで「魔法世界の陰陽師」ひっそりと再開します。

にじファン時には大戦期すら書ききれなかったので、今回は大戦期を終わらせるのが目標です。

目標が低い?知った事ではないのであるwww
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