感想もまとめて返しますので暫しお待ちを…
これは一体どういうことだ……?
宮殿に到着したハオが驚きを隠せなかった。
両手を失ったジャック・ラカン、立つことも出来ない青山詠春、魔力が枯渇し原始的な治療しかできないアルビレオ・イマ。
「遅すぎですよ、ハオ……」
アルビレオが言った。
「何が起きた?」
「黒いローブの奴が突然出てきたと思ったらこの有様だ……」
ハオの問いにラカンが答える。
奴か――
「ナギとゼクトはどうした?」
「奴を追って中へ行きました」
「チッ……少し遅れたか……後は僕に任せてそこで寝ていろ」
「頼みましたよ……」
アルビレオが頼んだ時には、ハオは既に最奥部に向かい始めている。
一方、最奥部では宮殿を全て壊すような戦いが繰り広げられたいた。
見たことも無いような、黒い魔方陣。
どのような呪文かすらも分からない黒い光線。
頑丈な障壁にナギが食らいつく。
詠春が庇ったとはいえ、ナギも重症。
息を切らし、大量の血液を流しながらも攻撃の手を休めない。
ローブの男が言った。
「ははははは、甘い、甘いぞ人の子よ」
「クソッ……しぶてぇ奴だ」
「すべてを満たす解はない、いずれ彼らにも絶望の帳が降りる。貴様のようにだ!!」
「グダグダ……うるせえええ!!」
ナギの拳が黒い光線と激突する。
「たとえ明日世界が滅ぶとも、諦めねぇのが人間ってモンだろうが!!」
光線を薙ぎ払い、隙間が空いたところを狙い、赤毛の少年の手に出現した雷の槍が投擲される。
「貴様も生きていれば、私の語る『永遠』こそが『全て』の『魂』を救いうる次善策と分かったものだろうがな……残念だ」
『始まりの魔法使い』と呼ばれていた者の前に、黒い多重魔法障壁が現れる。
「人間を……なめんじゃねぇえええ!!!」
雷の槍が黒い壁にぶつかった。
「おらあああああああああああ!! ブチ抜けええええええええええええ!!!」
「愚かだな人間」
雷の槍が多くの魔法障壁を貫通するが、全ての壁を砕く前に霧散した。
「届かなかっ……た……?」
ナギの膝が崩れ落ちる。
「消えろ」
黒い光線が再度ナギに飛来する。
皆……ごめんな……
迫りくる光線にナギの足は動かない。
「人の可能性、しかと見届けさせてもらった」
聞き覚えのある声が聞こえる。
凶暴で恐怖の塊にしか見えないような、黒く大きい鋭い手がこれ程優しく見える。
兄さん……カッコ付けすぎだぜ……
「そこで回復していろ、この場は僕が預かる」
長い髪が熱風で逆立ち、黒い鎧を着た少年がナギの前に立つ。
「遅刻だぜ……兄さん」
「まだ余裕があるようでなりよりだ……それにしても、お前にそのセリフを吐かれるとはな。教師を辞職した後で良かったよ」
ナギの台詞に皮肉を交えて返事をする。
「後は貴様を消せば終わりだな」
『始まりの魔法使い』が言った。
「ハハハハハ……やってみろ!」
渇いた笑い声が響いた後、ハオの眼光が鋭くなる。
『大陰陽師』から神へ上り詰めた者と、『魔法使い』から一つの世界の神となった者が激突する。
最初に動いたのはハオだった。
空へ向かって一気に距離を縮める。
応戦するのは『始まりの魔法使い』、ナギを襲っていた黒い光線が逃げ場を埋め尽くすように放たれる。
「巫門遁甲」
魔力の流れを読み取るぐらい訳はない。見えた道に『黒雛』の腕を押し付け、黒い光を反らし前進する。
間合いに入った――
「『黒雛ァ』!!」
ハオの叫びに呼応するように、黒い腕が伸びる。
「貴様の力はもう見切った!」
紙一重で黒い腕を回避し、『始まりの魔法使い』によって放たれた複数の巨大な黒い球体がハオを飲み込む。
「チッ――」
防ぎきれないな……
膨張しさらに巨大化する黒い弾に飲み込まれるハオに、ナギが声を上げる。
「兄さん!!」
ナギが焦った一瞬の内に、黒い弾に罅が入り、隙間からは炎が噴き出す。
『砕けろ』
燃え盛る黒い弾の中からハオが現れる。
その額と口からは血液が流れていた。
「よくもやってくれたな……」
口から血の塊を吐き捨て、ハオが言った。
「これで殺せるとは思ってない」
「生意気だな」
不敵に笑う二人の会話を聞いている、ナギが固まった。
いや、今の攻撃でジャックも詠春も戦闘不能になったんですけど!?
動けないナギを他所に二人の会話は続く。
「この僕に血を流させたんだ……覚悟は出来ているんだろうな?」
「これから消える者に持ち合わせる覚悟などない」
「いい度胸だ!!」
ハオが再び飛び上る。
鋭い爪が魔法使いの眼前に迫った。
「もう見切ったと言っただろう」
黒い多重魔法障壁が突如そこに出現する。
「チッ……!!」
魔法障壁が前回のように砕けない。
攻撃速度を上げ、見えないようなラッシュが魔法使いに飛ぶが、黒い魔法障壁が完封した。
「無駄だ」
腕が掴まれ、黒い球体がハオの腹部に当てられる。
スピリット・オブ・ファイア顔をした黒い鎧が防ぎきれなかったダメージが、衝撃波となり少年の内臓を掻き回す。
口から鮮血が飛び散った。
しかしハオは止まらない。
シャーマンは肉体よりも心を鍛え上げる。
防ぎきれない攻撃をされた程度で動揺していれば、オーバー・ソウルの持続は困難だ。
ゆえに少年の心は、これほどのダメージを受けていても揺るがない。
「これならどうだ?」
掴まれた腕を利用し、背後のブースターが魔法使いの顔面に向けられる。
「ゼロ距離だ」
ハオが笑う。
「『鬼火』!!」
超高温の炎弾が、繰り出される多重魔法障壁を叩き割る。
手を離し回避する魔法使いを追撃する。
鋭い爪の攻撃は先ほどよりも強くなっている。
多重魔法障壁を割れ始め、炎弾が顔を掠めた。
「長期戦は不利か」
今の攻撃から魔法使いは判断した。無数の黒い光線がハオに襲い掛かる。
「なるほど、これは避けきれないな……」
腕を前に出し、巨大化させた。
まるで盾のように。
しかし、黒い光線の勢いは下がらない。
『黒雛』が悲鳴を上げる。
甲縛式オーバー・ソウルの腕に亀裂が入った。
マズいな……
ハオがそう思った瞬間、黒い腕が砕ける。
巨大な光線がハオを飲み込んだ。
「兄さん!!」
ヤバい!直撃だ!!
ナギの悲痛な声が響く。
マントもボロボロになり、黒い鎧もしていないハオが地面に落下した。
「哀れだな人の子よ」
「クソッ! 兄さんまで……てめぇ、許さねえぞ!!」
地面への落下の衝撃を和らげるため、ナギがハオを回収する。
「最大の障害だと思っていたシャーマンも消えた、貴様の魔力も枯渇している……一体何が出来ると言うのだ?」
無数の魔方陣がハオを抱えるナギに向けられた。
「人間の可能性をなめんじゃねぇ……」
ハオを丁寧に寝かせ、生まれたての小鹿のように足を震わしながらナギが立ち上がった。
「一足先へ夢の世界へ旅立つが良い『千の呪文の男』よ」
巨大な黒い光線が、ナギを消そうと迫る。
ナギの頭が白くなる。
もう何も考えることは出来なかった。
悪ぃな……ジャック、決着付けれなかったぜ。
アル、詠春……俺に託してくれたのにゴメンな。
師匠、兄さん――俺がもっと強よければ、こんな事にはならなかったのに。
姫さん……ごめんな……先に逝くわ。
ゆっくりとナギが瞼を下した。
『ちっちぇえな』
戦場に音が響く。
ナギの体に不可視の壁が当たった。
何かによって弾きだされた感覚がナギを襲う。
気が付けば目の前にはドームのような結界が貼られていた。
全身から血を噴き出しながら、ゆらりと立ち上がる死体のような男の前に、黒い光線が向かう。
「邪魔だ」
ハオが一言呟くと、光線は消えた。
「心が揺れたぞ? どうした? 黒いの……」
一歩後ずさる『敵』に対し、笑う少年が言い放った。
「随分時間が掛かってしまった……お前にバレないように結界を張るのは苦労したぞ」
「何?」
魔法使いの声が低くなった。
「兄さん、何考えてんだよ!!」
結界を叩きながらナギが言う。
「ハハハ……僕には魔力が存在しなくてね……魔法陣に巫力を流して代用させて小さな結界を作ることは出来ていたんだ……だがここまで大きなな結界を張るには苦労したよ。おかげで『黒雛』も消えてしまった……オーバー・ソウルを強制解除されるのは結構堪えるんだ」
独り言を続けるハオに、魔法使いが声を荒げた。
「そんな状態の貴様に何が出来ると言うんだ!?」
嗤いながらハオは答える。
「僕が本気で戦おうと思ったら、消えてしまうものが余りにも多いんだよ。だから外に影響がないようにした」
「兄さん、何考えて……」
「二人きりの特別空間だ。精々楽しもうじゃないか……なぁ」
猛禽類の様な目で、ハオが睨み付けると空気が変わる。
『始まりの魔法使い』とナギが固まった。
「こっちに来てから初めて使うんだ、光栄なことだろう」
ハオの手に白い光が圧縮され集まる。
「よくもここまでやってくれたな……覚悟は良いな?」
死にかけの男がする目ではない。
「オーバー・ソウル、グレート・スピリッツ」
光が結界内を覆い尽くし――霧散した。
背中から生える二本の柱。機械的な手足は数十メートルを軽く超える。
体の部分に鎧はないが、あまりの神々しさにナギは言葉を失った。
神様が使う武器があるとすれば、こんな形をしているのだろう……
目の前に居るのが神様だ、と言われてしまえば信用する。
「スッ……ゲェ……」
思考停止したナギの言葉が出てきた。
「これは何だ……」
余りにも衝撃的なものに、『始まりの魔法使い』すらも停止する。
「さぁ、僕を楽しませてくれよ!!」
ハオの一言に魔法使いが構える。
轟音をたてグレート・スピリッツの二本の柱の間に、膨大な熱を持った塊が作られていく。
スピリット・オブ・ファイアが地球の炎だとすれば、グレート・スピリッツは宇宙の炎。
全てを照らし出すその光は――
「太……陽……?」
ナギが呟くと共にハオが動く。
「ハハハハハ!!水素爆弾1億の威力、超濃度の放射能…『
太陽の周りから発生した磁気嵐に、魔法使いが飲み込まれる。
今まで展開されていた多重魔法障壁は、宇宙の力の前になすすべもなく砕ける。
受け身すら取れず吹き飛ばされる魔法使いに声がかかる。
「誰が寝て良いと言った!? 次は直接受けてみろ……太陽表面から数万kmまで立ち上る真紅のガス柱『
二本の柱の間にある恒星から炎が吹きあがる。
6000℃の炎が焼き尽くした。
「アアアアアアアアアアアアア!!」
焼かれる魔法使いから声がする。
笑顔のハオは止まらない。
「まだいくぞ――今度は物理攻撃だ……ガスと氷からなる凶兆のほうき星『
星一つの生態系を吹き飛ばし、フレアの20倍の威力を持った物理攻撃が直撃する。
「まだだ! まだ消えるんじゃないぞ!」
結界内での爆発を殺しきれずに、衝撃波に結界が震える。
何だ……これ……?
初めて全力を出すハオの姿にナギは戸惑いを隠せない。
ふと脳裏をある言葉がよぎった。
『なあなあ、そんな兄さんが本気出したらどれ位強いんだ!?』
『そうだな……太陽系位は消せるな』
『タイヨーケー?』
『宇宙の事だ、勉強しろ馬鹿』
昔の……俺がまだ魔法学校にいた頃の会話だった。
目の前にいた兄さんは確かに化け物のように強かった……でも、そんな人でも星一つどころか宇宙をぶっ飛ばすとは思えなかった。
だが、今ならあの会話の真偽が分かる。
「マジかよ……」
結界の外で、ナギの額から汗が流れていた。
「ダメ押しだ……燃やし尽くせぬ天よりの使者」
ハオの機械的な手足が開く。
「『
死体のように何も抵抗をしない、魔法使いに流星群が襲い掛かる。
『私の語る永遠こそが唯一の魂の救済――努々、忘れるな……』
戦場に魔法使いの言葉が響く。
「負け惜しみか? ならば覚えておけ、魂を自由にして良いのは僕だけだ。お前にその資格はないんだよ」
ハオが嘲笑する。
「それに僕をここまで痛めつけたんだ、何よりもそれが気に入らない」
ゆっくりと細くなった目が開かれた。
「もう、いい。消えろ。星の進化の最終段階……銀河に及ぶ大爆発『
結界内が光る。
ハオの張った結界ですらその威力に耐える事は出来ず、悲鳴を上げる。
『我は不滅――人間は度がし難い、貴様もそれを知れ』
まだ奴の声が聞こえる。
このまま完全に消してやりたいところだが、結界が持たない。
僕の予想通りこの魂の流れから考えて、次の宿主は見つけているようだな……
だが奴は多くの魔力を失った、暫くは動けないだろうが気に入らない。
星が消えた後に残るのは高重力場、全てを飲み込むが……この世界も消えてしまう。
まぁ良い、切り札は最後まで取っておくものだ……次会う時には、完全に消滅させてやる。
「それよりも、結界の強度を上げるのが最優先だな」
ハオ以外何も残っていない空間でオーバー・ソウルを解除し結界を解く。
「兄さん!!」
地上に降りると見知った馬鹿面が近づいてきた。
「寄るんじゃない! 鬱陶しい!!」
抱き着こうとするナギを手で押しのける。
「ゼクトはどうした?」
「師匠はどこかに連れて……」
「やはりな」
「兄さん何か知って「言うだけ無駄だろう?お前の鳥頭ではな!」」
ゼクトを選んだな……
「なんだとおおおおおおおお!?」
後ろで騒ぐナギを相手にもせず考える。
魂を他の肉体に侵入させ不死を語るとは片腹痛い。
だがグレート・スピリッツの姿を直視しても魂を引き抜く事が出来なかった。
結界を挟んで見ているなら未だしも、直接見てこれとは……魔法の知識を集めねばな。
グレート・スピリッツを使い禁人呪殺をするのが正解だったろうな……あの攻撃で心が折れないのでは仕方ない。
次は、禁人呪殺から高重力場で完全消滅させてやる。
人体実験を繰り返すような科学者に近い笑いを、ハオは浮かべていた。
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術式を完成させていた『始まりの魔法使い』の力が世界を飲み込み始めるが、後方で待機していたオスティアの姫が封印を行う。
こうして姫と騎士二人の活躍により、世界は滅亡を免れた。
世界を救った英雄『千の呪文の男』ナギ・スプリングフィールド。
『災厄の女王』アリカ・アナルキア・エンテオフュシア。
この二人の名は全世界に響いた。
陰陽師 対 魔法使い――最終決戦の詳細を細かく知る者は少ない。
この作品にはハオの精神を崩壊させるレベルの本が有るらしい…
とりあえず魔法世界編はこれで終わりです。
幕間はさんでネギま!編になるので、更新は遅くなります。
もう少々お待ち下さい。