魔法世界の陰陽師   作:おにぎり41

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シャーマンキング 幕間下

 ハオが『旧世界』での異常に気付いたのは、さらに十年後を経過した時の事だった。

 

 『始まりの魔法使い』が動いている様子が魂を通じて伝わるが、それは僕に対して大した問題ではない。

 

 例え『完全なる世界』に殺されようが、毎日起きる殺人を僕が止めれる訳でもないし、僕からすれば毎日出てしまう世界中の死者は自然の摂理でしかない。

 

 問題はこっちだ……

 

 『完全なる世界の』被害に合い、亡くなった女性の『魂』の中に異変を感じ取る。

 

 脳裏に浮かぶとある雑誌。この世の全てを網羅する中でも、最も忌々しい知識。

 

 バカな!?――この雑誌は!?

 

 突如ハオが顔を青くする。

 

 詳しく魂の経験値を見てみると、人種はイギリス人、住んでいた所はイギリスのウェールズ。

 

 「冗談じゃないぞ……何故こんな物が旧世界に……」

 

 気が付けば、額から玉の汗を流しながら呟いていた。

 

 『旧世界』では、帝国の者がいないため僕の知名度はナギと比べて低い。

 

 今のナギは『偉大な魔法使い』と呼ばれ、魔法関係者からは尋常ではない支持を集めている。

 

 一方、僕は帝国図書館に十年以上引きこもり魔法の研究中だ。

 

 何より『旧世界』では魔法関係者の人数が絶対的に少ない。

 

 しかし相手にするのは『あの組織』

 

 大戦期『連合』には恐れられていた僕に支持が集まることはないと考えていたが、連合でも嫌な意味で知名度が高まり、『あの組織』が浸食してしまった事は記憶に新しい。

 

 この経験を踏まえるに、早急に手を打たねば『旧世界』までもが浸食される。

 

 「急ぐか――」

 

 ハオは迅速に準備を始めた。

 

 皇女の執務室の扉が勢いよく開かれる。

 

 「テオドラ!!」

 

 「どうしたのじゃ……?」

 

 いつもと違うスーツ姿、髪を纏めたポニーテール状態は現世でも教員をしていた時以来であった。

 

 焦りを隠しきれないハオの様子にテオドラが目を見開く。

 

 「突然ですまないが『旧世界』に行くことになった」

 

 「な、何を……」

 

 「しばらくこちらに戻って来ることはないだろう」

 

 「突然何を言っておるのじゃ! お主は妾の騎士ぞ!? 勝手な事を許せる訳が無かろう!!」

 

 テオドラが声を荒げた。

 

 「じゃあ、騎士を解任しろ!」

 

 切羽詰まったハオを落ち着かせるためにテオドラが尋ねる。

 

 「何があったのかは、また聞かせてはくれんのか……?」

 

 「ああ」

 

 ハオは本気だ――本気でここを去るつもりじゃ……

 

 何時もの事であった……大戦期からこの者はずっと変わっていない。

 

 テオドラの中に怒りと悲しみの感情が渦まく。

 

 「妾はこれでも、主が引きこもっている間に多くの事を学んできた……少しでも主に追いつくためじゃ!」

 

 「知っている」

 

 「『森羅万象の男』の隣に立つために……ここまで学んで成長した……」

 

 テオドラの声が掠れる。

 

 「分かっている」

 

 「それでもなお、昔のように妾には何一つ伝えては貰えぬのか……?」

 

 成長はしたが主としての信頼を得れていないと言われたようなものだ。

 

 テオから雫が零れ落ちる。

 

 一方ハオも言える訳がない。目的が『あの雑誌』だと言うことを。

 

 下手をすれば皇女まで、あの組織の一員になってしまう可能性だってある。

 

 全知全能とは片腹痛い話だが、少年の目の前にいる女性こそ悩みの種の幹部であった。

 

 「これは僕一人の問題だ、僕が何とかする」

 

 「妾にも……何か……出来る事は……」

 

 泣いているが知ったことではない。

 

 僕からすれば死活問題だ。時は一刻を争う。

 

 誠心誠意「すまない」と伝えると――

 

 「主は妾の騎士じゃ……」

 

 「ああ」

 

 「いつでも戻って来るがよい」

 

 「助かる」

 

 「それと、連絡だけはしてくれ……」

 

 小さい声でテオドラが答えた。

 

 「もちろんだ」

 

 これ以上に無い真剣な表情で答える。

 

 テオドラの表情に少し笑みが出てきた。

 

 「やはり……お主は卑怯者じゃ……」

 

 「何がだ?」

 

 本気で聞き返すハオにテオドラは頭を振った。

 

 「何でもない……急ぐのじゃろう?ならば、早う行け」

 

 「世話になったな」

 

 振り返り執務室を後にするハオ。

 

 後ろ姿を見つめるテオドラの脳裏には十数年間の思い出が蘇る。

 

 大戦期は『紅き翼』に土をつけ、真の敵を倒した『帝国の剣』

 

 妾の悩み事を吹き飛ばしてくれた、あの笑顔。

 

 停戦後には、式典に出席することもせず様々な事務処理を行い、魔力の少ない者でも使えるようなオリジナルスペルを多々開発した。

 

 行ってほしくはない――ずっとそばに居たい――引き留めたい。

 

 そんな感情が出て来そうになるが、テオドラは押し殺す。

 

 ダメだの……このような事で挫けていては、いつまでたってもハオの主にはなれぬ!!

 

 「次会う時には、何でも言えるような素晴らしい人間に成長して見せる!!」

 

 テオドラの目標は遠く高い所にあった。

 

 目に強い闘志の炎を燃やした彼女はそれでも進んで行くだろう。

 

 どんなに困難な道であったとしても――

 

 

 

 

 荷物をまとめ転移ゲートに来たハオに、係員の声が掛けられる。

 

 「ハオ様、テオドラ皇女殿下より承っておりました。すぐにでも『旧世界』へ飛べるようなっております」

 

 あのじゃじゃ馬め……

 

 最後の最後まで迷惑を掛けたみたいだな――テオドラ。

 

 「ならすぐに頼むよ……一刻を争うんだ」

 

 「場所は?」

 

 「イギリスのウェールズだ、あそこに転移ゲートが有るはずだよね?繋いで飛ばしてくれ」

 

 「畏まりました」

 

 ハオの体が光に包まれる。

 

 目を開くと景色が切り替わっていた……

 

 !? ……なんだこれは!?

 

 転移が終わった瞬間に、勢いよく蛇口が開かれたように流れ込んでくる多くの魂……

 

 目の裏側に直接映像が流れ込んでくる感覚がある……これは悪魔か?

 

 映像を見ながら判断する。

 

 燃え上がる町、石化された人々。

 

 悪魔が『旧世界』に侵攻している?

 

 ため息が漏れる。

 

 「普段ならこんな事では動かないんだけどね――」

 

 死にゆく人間に興味はない。だが、中々死なない悪魔どもの魂を回収するにはいい機会だ。

 

 「スピリット・オブ・ファイア」

 

 赤い巨人が燃え盛る炎の中から出現する。

 

 「目的地は分かっているね?」

 

 赤い巨人が頷き、次の瞬間には赤い流れ星となった。

 

 

 

 

 「僕があんなこと思ったから……!」

 

 泣きながら震える赤毛の子供の前には巨大な悪魔が立っていた。

 

 羊のような角に、下顎から上に向かって伸びる二本の牙、肥大化した上半身には不相応な細い足。

 

 岩のような巨大な拳が子供に振り下ろされる。

 

 「お父さん……お父さん……お父さん」

 

 自分では対応することが出来ない子供は、両手を顔で隠す。

 

 しかし、いくら待っても体を襲う感覚は来ない。

 

 そっと手を開いてみると、悪魔は止まっていた。

 

 「ちっちぇえな」

 

 声と共に、子供の前に立っていた悪魔が燃える。

 

 崩れ去る体を、赤い手が燃やし続けていた。

 

 「お父さん……?」

 

 影が出来て顔は見えないが、尻尾のような長い髪の毛が風で揺れている。

 

 「残念ながら僕は君のお父さんじゃない」

 

 子供が残念そうな顔になった。

 

 「そこでジッとしているんだよ?」

 

 黒髪の少年が子供をあやす様に、優しい顔で言う。

 

 「こんな子供に手を上げたんだ……やられる覚悟もしているんだろう?」

 

 串刺しにしていた悪魔を完全に灰にし、ハオが睨む。

 

 「貴重な悪魔の知識だ、少しは残しておくか……それ以外は喰って良いぞ」

 

 赤い巨人が手を開き、歓喜の咆哮を上げる。

 

 一方、悪魔も怯むことは無かった。

 

 後方にいた指揮官のような悪魔が手を挙げると、黒い津波が押し寄せる。

 

 黒の波を赤い巨人が薙ぎ払うと、最初に突撃した来た悪魔が叫びながら灰になっていく。

 

 殴られただけで灰になり、魂だけになった悪魔が還る所へも還れない。

 

 ただただ、悲鳴を上げながら赤い巨人に捕食されていった。

 

 凄惨な光景に悪魔が怯むその一瞬の隙を、ハオが見逃す訳がない。

 

 スピリット・オブ・ファイアが地面に手を当てると、街を包んでいた炎が消え去った。

 

 「自業自得、因果応報、やったらやり返される。自分たちが着けた炎で燃えるがいい」

 

 余りの異常事態に悪魔が周囲を見渡すと、地面が噴火した。

 

 割れた地面に飲み込まれ溶岩に落ちる者、マグマの雨に当たり消滅していく者。

 

 消えた悪魔の軍勢の魂がイルミネーションのように空に漂う。

 

 天に昇っていく魂たちの動きが止まる。

 

 「逃がすと思ったか?」

 

 ハオが天に手をかざすと、浮いていた魂たちが赤い巨人の前に集められる。

 

 「ごちそうだ……」

 

 赤い巨人が歓喜の声を上げた。

 

 声にならない悲鳴が、町に木霊する。

 

 巨人が捕食するのを後目に、赤毛の子供に振り返り手を差し伸べ尋ねた。

 

 「怪我は無いかい?」

 

 子供が震えながら頷いた。

 

 「それは良かった」

 

 優しい顔で微笑むハオに黒い影が襲い掛かる。

 

 「てめぇ! 俺の息子に何してくれてんじゃあああああああああああああ!!!」

 

 顔に食い込むのはドロップキック。

 

 鼻の奥が鋭い痛みが走り、吹き飛ばされた。

 

 血液が橋を描いていた。

 

 

 

 

 『魔法世界の英雄』は全てを知っている。

 

 上級悪魔が人に近い姿に変身することを――

 

 英雄の視界に入ったのは、ポニーテールのスーツ姿。

 

 顔は夜の町影で見えないが、俺の息子の命を刈り取るように手を伸ばしていた。

 

 あれから十年近く経ってさらに成長した俺様は素早い。

 

 『縮地』で目の前の悪魔に距離を詰める。

 

 声を上げながら突撃すると、顔が一瞬こっちを向いた気がしなくもないが、そんなものはどうでもいい。

 

 俺様の息子の危機だ!

 

 『縮地』の推進力を全て力に変え飛び上る。

 

 ――手応え有りだぜ!!!

 

 自分でもこれほどまでに綺麗にドロップキックを決めたことは無かった。

 

 ドヤ顔で息子の方に振り返るが、あまりにも突然な事に驚いた息子は逃げだしている。

 

 逃げる息子の目の前には倒しきれなかった悪魔が迫るが、ネカネとスタンが盾となり封印した。

 

 二人の体の石化は余りにも深刻だ。

 

 ネカネはまだ間に合うがスタンはもう……

 

 動かなくなったスタンと苦しむネカネに語り掛ける息子に近づくと――

 

 「すまない、来るのが遅すぎた」

 

 息子は俺に杖を向けていた。

 

 「お前……そうか、お前がネギか……お姉ちゃんを守っているつもりか?」

 

 さらに近づくと目を閉じ、杖を向けたまま震えている。

 

 流石は俺の息子だ、勇ましい。

 

 「大きくなったな……お、そうだお前にこの杖をやろう。俺の形見だ」

 

 頭をなでると目を見開き尋ねる。

 

 「お……父さん……?」

 

 杖を渡されよろめくネギ。

 

 「ハハハ、重すぎたか。もう時間が無い」

 

 別れが辛いが今の俺にできる事はこれぐらいだ。本当にすまない……

 

 「なぁにが形見だ!鳥頭ぁあああああああああああ!!!」

 

 大声と共に、先ほど吹き飛ばした悪魔だと思っていたもののドロップキックが顔面に突き刺さる。

 

 速ッ――!?

 

 顔面に当たった直後に螺旋回転が付け加えられた一発……重い!!

 

 鼻と口の中が切れた感触がする。

 

 鼻血が虹のように大量に噴き出した。

 

 だがこのままやられる俺じゃない!

 

 吹き飛ばされている間に敵の顔を確認してみれば――見知った顔だった。

 

 「え? ちょ……兄さん!?」

 

 いや、俺はハオ兄さんがあんな顔になったところを知らない。

 

 初めて兄さんに殴りかかった時の数万倍……例えるなら悪魔のような顔をしていた。

 

 「終わった……」

 

 ナギの口から諦めの言葉が出てくる。

 

 吹き飛ばされた先でマウントを取られ、殴られ続けて5分が経つ。先ほどまで勇気を振り絞っていた息子も、余りにも凄惨な光景に、小鹿のように足を震わせていた。

 

 「もヴ……びばんばばい(時間が無い)

 

 気を取り直して、風船のように顔を晴らしたナギが息子に語り掛ける。

 

 「ネガネの……ぜきがばぼべば(石化は止めた)、後でゆっくり治してもらえ」

 

 自分の顔に『治癒』の呪文をかけながら、ナギが言う。

 

 ハオは、ナギを敵を見るように睨み付けている。

 

 霊体のスペシャリストは既に異変を感じ取っていた。

 

 ナギの体に違和感を感じる……

 

 例えるなら一つの入れ物に二つの魂が入ったような状態だ。

 

 「お前……まさか?」

 

 「やっぱり兄さんにはバレたか……相変わらずの化け物だな……」

 

 「お父さん?」

 

 ネギが首を傾げる……

 

 「兄さんお願いが――「分かっている」」

 

 有無を言わさず返事が聞こえる。

 

 ため息交じりだったが。

 

 「頼みます」

 

 ナギがハオに頭を下げた。

 

 「ネギ……この人は俺の師匠でもある人だ、絶対に逆らったりしようとするんじゃないぞ?」

 

 ネギの脳裏に父がマウントを取られ、ボコボコにされる凄惨な光景がよみがえる。

 

 高速で首を上下させるネギに、続けて言う。

 

 「悪ぃな……お前には何もしてやれなくて……」

 

 ナギの体が宙に舞う。

 

 「お父さん!」

 

 ネギが追いかけるが、追いつくことは出来ない。

 

 「こんなこと言えた義理じゃないが……元気に育てよ。幸せにな……」

 

 悲しそうな顔で言うナギにハオが声を掛けた。

 

 「らしくない顔をするんじゃない。僕が全て何とかしてやる。それまで耐えろ」

 

 「ハッ! 相変わらず頼りになるよ……『先生』!!」

 

 「じゃあな……ネギ」

 

 「お父さあーーーーーーーーーーーーん!!」

 

 少年の声が田舎町に響いた。

 

 泣き崩れるネギを抱え、石化した老人に手を当て呪文を解析するが、やはり僕では何もできない。

 

 課題は増える一方だな……ナギとの約束、例の組織の壊滅、そして『始まりの魔法使い』の存在。

 

 「前途多難だな……」

 

 ハオの腕の中で眠る子供を見下ろしながら言った。

 

 

 

 

 それから三日後、ネカネとネギはウェールズに移り住んだ。

 

 魔法学校に入学し、先生もやっているハオと三人仲良く住んでいた。

 

 未成年のネカネにネギの世話を全てさせる訳にもいかず、苦肉の策でハオがとった手段である。

 

 ある程度の補償金が出るとは言え、余りにも無理がある。

 

 一方のネギはと言うと親の愛情が恋しい年ごろにもかかわらず、ネギ少年の心はそれを押し込め、心を別の方向に向けていた。

 

 「村の人はどうなったの?」

 

 ネギが村の魔法使いに聞いて回るが、何も分からない村の住人は――

 

 「大丈夫だよ、心配ない」

 

 と返す事しか出来ない。

 

 大分聞いて回って疲れてしまったのであろう、少年は草原の中で膝を抱えていた。

 

 「どうしたんだい?」

 

 太陽のような暖かい笑顔に、ネギが尋ねる。

 

 「村の人はどうなったの?」

 

 この村の魔法使いが誰も教えてくれない答えを――

 

 「石化の呪文をかけられた。死んではいないよ、石のまま眠っているだけだ」

 

 父さんの『師匠』である『ハオ先生』だけは知っていた。

 

 「治せないの?」

 

 「あの馬鹿――いや君のお父さん並の魔力を持った『治癒士』がいれば可能だろうね」

 

 ネギの顔に一瞬元気が戻るが、現状がどれほど厳しい状態か理解している聡明な少年の声は再び沈んでしまう。

 

 「僕には出来ないの?」

 

 「それは分からないけど、どちらかと言えばネギ君に『治癒』は向かないかも知れない」

 

 「……」

 

 現実を知り落ち込む少年にハオが語りかけた。

 

 「でも『魔法』の練習をしてナギのようになった君が、皆に『助けてほしい』と言ったら多くの人が協力してくれるハズだ」

 

 ネギの目が開く。

 

 「僕がその内の一人だからね」

 

 優しく頭をなでるハオに、ネギは嬉しそうな顔をしていた。

 

 「お父さんの様になるのは簡単な事じゃない、それでも頑張るかい?」

 

 「うん!」

 

 少年の目には強く激しい炎が灯っていた。

 

 「それじゃあ、そろそろ戻ろうか。早く戻らないとネカネに怒られちゃうからね」

 

 優しい笑顔にネギも笑顔で返事をした。

 

 家に帰れば、ネカネがご飯を作っていてくれる。

 

 ご飯の時間には、ハオ先生が大好きなお父さんの昔話をしてくれる。

 

 何時も話を聞くたびに、お父さんがスゴイと思う反面、想像と違う部分が出てくる。

 

 違うというか、助けに来てくれたお父さんとはまるで別人のようだ。

 

 でもハオ先生言っている。

 

 「馬鹿で、阿呆で、ウザったくて、人の話を聞こうともしない奴だ……だが信念を貫き通せるだけのブレない心を持った素晴らしい人間だ」

 

 と。

 

 父さんに追いつくためには、ハオ先生の言うとおり沢山勉強するしかない。

 

 けれども分からないところも丁寧に教えてくれる先生がいる。

 

 基本呪文のコツや呪文の改良まで教えてくれる優しい先生。

 

 多くの人の『英雄』で僕の『ヒーロー』のお父さん。

 

 二人の影は遠く手が届かないところにだけれども、何時かは追いついてみたい。

 

 ネギの目標は遠かった。

 

 

 

 

 「卒業証書授与――この七年間よく頑張って来た、だが修行の本番はこれからだ。気を抜くでないぞ」

 

 「ネギ・スプリングフィールド君」

 

 「はい!」

 

 赤毛の子供が元気よく嬉しそうに答えた。

 

 一方、別のところではハオが家にあった私物をまとめている。

 

 「転勤……日本の麻帆良学園ねぇ……ネギのサポートをしてくれとは言われたけれども……」

 

 「あら?ハオさんもネギと一緒なんですか?」

 

 後ろから突然ネカネの声がした。

 

 「驚くじゃないか」

 

 「全然驚いてませんよ?」

 

 「気のせいだ」

 

 「そうですか……それにしてもこの家から二人も居なくなるなんて、寂しくなりますね」

 

 「まぁ、連絡くらいはするよ」

 

 「本当ですか?」

 

 「もちろんだ」

 

 「楽しみにしてますね!」

 

 花が咲いたような顔でネカネが返事をした。

 

 「じゃあ僕はそろそろ行くよ」

 

 「ネギと一緒じゃないんですか?」

 

 「ネギ君がやれないから、僕が広域指導員をやることになってね。実力を計るためということで、先に呼び出されているんだ」

 

 「まぁ! ごめんなさいね……」

 

 「君が謝ることじゃないだろう? 子供に先生をやらせる方がどうかしている」

 

 「そうですね、フフフ」

 

 「麻帆良で待っているとネギ君にも伝えてくれ」

 

 「分かりました、ネギがご迷惑をおかけします」

 

 ネカネが深々と頭を下げた。

 

 「あの鳥頭から頼まれているんだ、約束くらい守るさ」

 

 「頼もしいですわ」

 

 優しい顔をしたネカネが返す。

 

 「世話になったな」

 

 「何時でもいらして下さい。家族でしょう?」

 

 「ああ」

 

 ハオが手を挙げ去っていく。

 

 ネカネも応えるように手を振った。

 

 これから始まるのは、魔法先生の物語――

 

 大切なものを多く失った赤髪の子供、ネギ・スプリングフィールドの冒険が今始まる。

 




戦争編いらなかったと半ば本気で思う

ネギま編になったらもう少し描写が丁寧になる…………ハズ………
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