魔法世界の陰陽師   作:おにぎり41

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こっそり投稿


魔法先生ネギま!
魔法先生ネギま 第1廻


 初めましてになるだろう。

 

 僕の名前は高畑・T・タカミチ。

 

 よくオッサンと言われるが、それは過酷な修行によるものだ。実年齢では30歳前後、前後だ!そこのところを気を付けてほしい。

 

 自己紹介はこの程度で良いだろう……なんせ今僕の生涯は幕を下ろそうとしているのだから。

 

 「ちっちぇえな」

 

 赤い巨人の手が轟音と共に目の前の空間を削り取る。

 

 「少し待って頂けると大変嬉しいのですがッ!?」

 

 なんとか攻撃を回避しながら、懇願するが――

 

 「僕の知った事じゃないな」

 

 この人は相変わらず自己中だ……

 

 「タカミチ、今お前失礼な事を考えたな?」

 

 僕の心は見透かされているのだろうか?素敵な笑顔をこちらに向ける。

 

 こんなときは、決まってナギさんやラカンさんがボロボロされていた……

 

 「流石に言いがかりですよハオさん……」

 

 悟られないよう表情を作るが、背中から変な汗が噴き出していた。

 

 「燃えちゃえ」

 

 軽い口調で放たれた尋常ではない業火が頬を掠る。

 

 「うおぉう!?」

 

 今までの人生の中で出たことが無いような言葉が出た。

 

 誰か、僕を助けてほしい。

 

 

 

 

 シャーマンキングとして、普通の人間を学ぶためにこの世界に送り込まれ数十年が経っていた。

 

 思い返せばこの数十年、様々な事があった。普通の人間と言うにはかけ離れている生活が殆んどだ。

 

 だがやはり『旧世界』に居る時は安心して動けるな、治安が段違いだ……

 

 ウェールズ出たハオは日本、麻帆良学園に向かう。

 

 マントに、星のイヤリング、グローブとレゴブロックの様なブーツではなく、スーツ姿にポニーテール。

 

 『旧世界』にいる時は大体この様な格好だった。

 

 飛行機を降りると、外から冷たい風が髪を揺らす。

 

 イギリスとは異なる湿度の空気が絡みつき、ため息を漏らしながらも歩を進めた。

 

 空港から電車を使い、目的地へ到着するとそこには一つの都市のような場所であった。

 

 学園都市『麻帆良』――それを象徴するような巨大な木。

 

 あれが『世界樹』か……まるで魔力の塊だな。

 

 ふと、あの吸血鬼から過去に教わった事を思い出す。

 

 思い出に浸り目的地へ向かうと、目の前から本が歩いて来た。

 

 正確には大量の本を持つ生徒なのだが、本から出ているようにしか見えない手足は、正面から見ると完全に妖怪の類である。

 

 冬休み期間のハズだが部活なのだろう、多くの本を運んでいた。

 

 部活動、まぁそれも結構な事なのだが……あれは本で前が見えていないんじゃないのか?

 

 おぼつかない足取り、目の前にあるのは階段。

 

 まぁ落ちるだろうな……ホラ、言わんこっちゃない。

 

 気は乗らないが仕方がない。

 

 ため息をつきながら『入る』

 

 「キャアアアアアアアア!!」

 

 少女の悲鳴が聞こえた。

 

 一瞬で階段を駆け上がり、妖怪の類の背中に手を回し、抱きしめるように引き寄せた。

 

 「危ないだろ? 自分が持てる量にしろ」

 

 落下の衝撃に耐えるため固く目を瞑った少女が、ゆっくりと目を開ける。

 

 少女の目に映るのは吸い込まれそうな瞳、整った顔立ち、女性のような長い髪を束ねた人。

 

 「あ、ありがとうございます」

 

 少女の脈拍が上がって行くのが分かる。

 

 「あまり無茶をするんじゃないぞ?」

 

 普段通り立たされると、支えていた手は離れていった。

 

 「あっ……」

 

 「先を急ぐ、くれぐれも無茶はしないように」

 

 髪を尻尾のように揺らしながら去っていくハオを、前髪で目が隠れた少女が後ろから見つめていた。

 

 春休みにもかかわらず、よくもまぁここまで人が集まる。

 

 部活生としては当然なのかもしれないが、『あのバカ』は年中休み時間だったからな……

 

 この僕が、こんなことを考えるようになるとは……随分と丸くなったものだ。

 

 ハオは小さく鼻で笑った。

 

 グラウンドを歩きながら部活動を見ると、どの部活にも狂ったような性能の人間が混じっている。

 

 あくまでも一般人から見てと言う意味でなのだが、無意識の中で『気』を使っている者がいた。

 

 「また、とんでも無い所に来てしまったようだな……」

 

 学園長室にはまだ距離があった……

 

 

 

 

 「よく来てくれたな高畑君」

 

 「いきなり僕を呼び出して何のつもりですか、学園長」

 

 厳格な部屋でなされる40歳前後に見える男と、ぬらりひょんの様な生き物の会話であった。

 

 「『千の呪文の男』の息子がこの学園に来ると言う話は聞いていると思う」

 

 眉毛で見えなくなっていた目が開き、老人には見えない鷹のように鋭い眼光が射抜く。

 

 「ネギ君ですか……聞いていますよ?それが何か」

 

 高畑と呼ばれる男は動揺一つ見せずに対応した。

 

 「魔法使いとしてこれから成長して行く人間を育てられるのは、この『麻帆良』としても非常に嬉しい事じゃ……だがの、今回はオマケまでおる」

 

 「オマケとは?」

 

 「イギリスの魔法学院で教師をしていた者じゃ。言ってしまえばお目付け役だのう」

 

 ぬらりひょんからため息が漏れる。

 

 「その者の処遇と、多くの者から狙われるこの学園でどこまで戦えるかと言うことですか?」

 

 「さすが高畑君、鋭いのぅ。大戦期に『魔法世界』にいたという話なのだが、なにぶん『旧世界』での実績が少なすぎての……あちらの世界での調査報告が届く前に、本人が来日してしまった」

 

 「僕に実力を計れと言うことですか?」

 

 「スマンのぅ」

 

 頭を掻きながら答える高畑に、学園長が頭を下げた。

 

 「この学園の『一部』魔法関係者の前で、立ち回ってもらう事になりそうなのじゃが問題無いかの?」

 

 「いつもの事でしょう? 大戦期の人間であろうとも、僕も子供のままじゃ無いですしね。ガトウさん並とは言わないまでも、やれる自信は有りますよ?」

 

 高畑の顔に軽く笑みが浮かぶ。

 

 「さすがは『悠久の翼』じゃの」

 

 「過度な期待はしないでくださいね?」

 

 「幸い今宵は満月じゃ、彼女を呼ぶことも出来るが?」

 

 「流石にそれは必要ありません。一、魔法教員にそれはやり過ぎでしょう?僕が直々に手ほどきしてあげますよ」

 

 夕暮れ時に光る眼鏡。

 

 自信に満ち溢れた顔をする高畑は、学園長からしてみればこれほど頼もしい存在はいなかったと言う。

 

 学園長の目から鋭さが消えた。

 

 「助かる。では--「随分吹くようになったじゃないか!」」

 

 学園長の言葉に重ねられるように扉が蹴り飛ばされ、轟音と共に声が聞こえる。

 

 『魔王』のような声は僕が知っているものだった。

 

 「えぇ?タカミチィ……」

 

 心臓が握られるような悪寒――

 

 振り向こうとする首が固まっているのが分かる。

 

 体から寒気が収まらない。

 

 「初めましてになるな、近衛近右衛門。麻倉葉王だ、これから世話になる」

 

 頭の血が、全て足の方へ落ちたような感覚――

 

 ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい。

 

 脳内では警鐘が鳴り響く。

 

 「初めましてじゃの、ハオ先生。どこから聞いていましたかの?」

 

 困ったように話す学園長に――

 

 「全部だ」

 

 ハオは笑顔で対応した。

 

 「試すようなことを言ってスマンのう。だが『麻帆良』は多くの者から狙われておる。ここの警備のためにも、お主の力を正確に見極めなければならん……」

 

 「承知している。僕もこの学園随一の強者に対し、最大限の敬意を払い『全力』で対応させてもらう」

 

 目を合わせることすら出来ない……

 

 「僕に手ほどきしてくれるんだろう? よろしく頼むよ……高畑先生ぇ……」

 

 笑顔で手を差し伸べてくる少年に、僕はグッショリと濡れた手を差し出した。

 

 「もう夜になるの……試験場には皆の者を集めておる。移動するとしようかの」

 

 「学園長!! 僕が死ぬ前に彼女に応援を!!!」

 

 鬼のような形相は普段の彼からは考えられないだろう。

 

 「高畑君が死ぬ訳ないじゃろうて」

 

 何も知らないぬらりひょんが軽口を叩いて移動を始める。

 

 部屋の中の人物が移動を始めるが、僕の足は床に縫い付けられたように動かなくなっている……

 

 着ている物は戦闘前から汗だくだ。

 

 そんな中、少年が部屋を出る瞬間、小さく一言呟いた。

 

 「覚悟しろよ……」

 

 終わった、これは終わった、本当に終わった。

 

 震える足を無理やり前に出し、僕は処刑場へと向かう。

 

 

 

 

 「ハハハハハハ!! もう限界か!? タカミチィ……」

 

 少年が愉しそうな顔で攻撃してくるのを、何とか回避する。

 

 事の顛末は分かってくれただろう。僕だってこの人が出てくると分かっていたなら、丁重にお断りさせてもらう。

 

 上がりっぱなしの息、ポケットに手を入れ気の塊を飛ばすも――

 

 「見飽きたぞ! 馬鹿の一つ覚えだな!!」

 

 この一言である。

 

 恩師であるガトウさんの技を馬鹿にされるのは非常に頭に来るものがあるのだが、この人からすれば大したものでないことも分かっている。

 

 昔、『魔法世界』全てが敵だった頃『紅き翼』は何度かこの人と模擬戦をしていた。

 

 子供ながらに『紅き翼』の強さを知っていた僕は、6対1では余りにも酷いと抗議したことがある。

 

 しかし蓋を開けてみればどうだ?赤い巨人――スピリット・オブ・ファイアと言うらしいのだが、その状態で『千の呪文の男』と『千の刃』以外戦闘に付いて行くことが出来ず、『黒雛』が出てからは五分に見えた。

 

 最終決戦時に分かった事なのだが、ハオさんは『必殺技』のようなものをずっと封印した状態で戦っていたらしく、決戦のVTRで見せられた時にはあまりの火力に驚いたものだ。

 

 『必殺技』を縛った状態のハオさんに『紅き翼』が土を付けたことはなく、5戦全敗と言う結果のみが残った。

 

 それが目の前にいる相手だ。

 

 僕もかなり修行したつもりだ、もしかしたらガトウさんにも追いつけているかも知れない。

 

 それでもガトウさんだ……チートやバグの類である、あの二人の領域じゃない。

 

 人間との組手だと考えていたら、目の前に核弾頭が来たような感じだ……正直どうすれば良いかも分からないし、どうしようもない。

 

 被弾すれば命が消える攻撃を避けるのが精一杯。

 

 全力の『無音拳』ですら壁にもならない。

 

 何より問題なのは、見ている魔法関係者にはこちらの声は届かず、互角の戦いを繰り広げているようにしか見えない事だ。

 

 僕の『無音拳』が見える者はこの学園にはいない。

 

 だからこそ、ハオさんがスピリット・オブ・ファイアを傾けるだけで、まるで被弾したかのように見えてしまう。

 

 「ほらほら、しっかり避けないとヤケドしちゃうよ?」

 

 目の前に鋭い指が迫るのを、全力の『無音拳』で何とか弾く。

 

 チートやバグなら火傷で済むだろうが、僕は溶ける。間違いない。

 

 この人の基準はあの化け物二人が耐えられるなら、大体は耐えられるという謎の基準だ。

 

 「クッ……」

 

 「せっかく互角のように見せているんだ。お前が息を切らしていては意味がないだろう?」

 

 この人は相変わらずいい性格をいている……

 

 玉のように流れる汗をぬぐいながら返答する。

 

 「ならもう止めにしませんかね? 僕はもう限界なのですが……」

 

 頬から鮮血が飛び散る。

 

 「高畑先生が当たった!?」

 

 地上からはふざけた声が聞こえる。実力差が分からないからとはいえ、好き勝手言ってくれる。

 

 「修行の成果を試すんだろう? 馬鹿なこと言ったり、油断してると血ダルマになるよ」

 

 血ダルマで済むんですかねぇ?

 

 「返事がないな? 僕の話に答えないとはいい度胸だ。少し火力を上げよう」

 

 「ちょっ!? 流石にそれは!!」

 

 焦って返答するが時すでに遅し。

 

 「全力で受け止めてみろ!」

 

 少年の声と共に赤い巨人の手から、火柱が迫る。

 

 今までですら全力なのにこれ以上どうしようもない。

 

 あぁ、これは無理だ--

 

 「全力とはこういう事か!? ジジイ!!」

 

 凛とした声が夜空に響く。

 

 僕の目の前に青い塊が出現すると、火柱にぶつかり白い煙が月を覆う。

 

 煙の中で輝く金色の髪、白く透き通る肌。

 

 目の前には少女がいた。

 

 『闇の福音』『元賞金首』世界最強の生き物が、今の僕には女神にしか見えない。

 

 ガトウさん、僕は今日も無事に生きていました。

 

 「何故貴様がこんな所にいる!?」

 

 「それはこっちのセリフだ! 連絡もよこさずどこにいた!?」

 

 煙が晴れた瞬間口論が始まった。

 

 地上を見てみると、学園長がこちらを見ている。

 

 僕の置かれた状況を察知して彼女を呼んだのだろう。

 

 そうでなければ今頃僕は灰になっている。

 

 「何をふざけたことを言っているジジイ! リク ラク ラ ラック ライラック 掌握」

 

 「聞き分けのないのは貴様だババア、耳まで遠くなったか! 『マグマアッパー』!!」

 

 口論の間に不穏な言葉が聞こえる。

 

 「甘いな! お前がいない間にシャーマンの研究はしていた! 『こおるせかい』」

 

 「馬鹿な!? 溶岩が凍った!? だが研究を進めていたのは僕もだ!『黒雛』ァア!!」

 

 「ようやく出て来たな……望むところだ」

 

 妖精、お伽噺のように空を飛び回る二人。

 

 ハオさんが『黒雛』を出すのは、ナギさんやラカンさんと同じレベルにエヴァンジェリンがいると言うことだろう。

 

 踊るように飛び回る二人からは考えられないような攻撃が飛び交っている。

 

 魔法関係者もこのレベルの戦いになると、あまりの速さに何が起こっているか、どんな戦いかも分からないだろう。

 

 学園長がこの戦いを収め話し合いになるまで、僕はこの戦いをしっかりと見せてもらう。

 

 「お前も来い! このジジイ止まらないぞ!!」

 

 吸血鬼から声がかかる。

 

 えっ? 僕『黒雛』の前の段階で無理だったんですけど!?

 

 ハオさんの笑みが凶悪になる。

 

 猛獣の檻に赤ん坊が入るようなものだ、無理に決まって――

 

 「良く避けたな?」

 

 黒い腕が僕の顔を掠る。通り抜けた空間は、あまりの熱量に歪んでいる。

 

 ごめんなさいガトウさん、僕はここまででした。

 

 そして神様……いるなら助けてください。

 

 「うわあああああああああああああああああああああああ」

 

 こんなに叫んだ日は生まれて初めてだった。




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