魔法世界の陰陽師   作:おにぎり41

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魔法先生ネギま 第5廻~幕間~

 ――図書館島とある一室――

 

 「明日は早いのにこんなことをしている場合ではないでしょう、ハオ?」

 

 長髪の青年、アルビレオに語り掛けられたハオは、ティーカップからゆっくりと口を離し答えた。

 

 「何、どうって事はない。準備は出来ている」

 

 「フフ、これは失礼。しかしながら時間が経過するのはあっという間ですね」

 

 「全くだ……」

 

 ハオがゆっくりと大きな溜息を吐き出した。

 

 「いつも笑い話を提供してくれる貴方には頭が上がりませんよ。退屈しなくて助かります」

 

 笑顔を向けるアルビレオに、ジットリとした目で返答する。

 

 「笑い事じゃない……ここ数カ月でどれだけの出来事があったと思っている?」

 

 指を折りながらハオが続ける。

 

 「バカレンジャーの進級試験騒動、宮崎のどかは敢えて赤点を取る始末だ」

 

 「モテモテじゃないですか」

 

 嬉しそうに喋るアルビレオに対し、ハオはため息が止まらない。

 

 「教師の仕事は何だ?未成年にモテることか!?違うだろ……しかも本来成績上位者にも入れる生徒が、意図的に赤点を取るんだぞ?」

 

 額に手を当て、更に深いため息が出る。

 

 「ハオの授業が受けたくてやった事でしょう?教師冥利に尽きるじゃないですか」

 

 「教師冥利だと……?冗談じゃない」

 

 「でもそのおかげで、図書館島に来ることになったのでは?だからこうして毎週あなたの愚痴を聞いている訳ですが」

 

 笑顔で答えるアルビレオに対し、ハオの言葉が一瞬詰まった。

 

 「あの進級試験もだ……ネギ君への課題だったが、僕がいなければどうだ?『相坂さよ』は確実に進級できていない。地縛霊だぞ?」

 

 「その地縛霊はあなたが魔改造したんでしょう?昔のあなたなら放っておいたものを……随分丸くなりましたね」

 

 「うるさい!」

 

 ハオが声を荒げる。

 

 「そういうのを『旧世界』ではツンデレというのですよ?」

 

 声を荒げようと何のその、アルビレオは飄々としている。

 

 「調子に乗るなよ?燃やすぞエロ本」

 

 「フフ、怖い怖い。でも地縛霊化を解くにしても、精霊にするのはやりすぎでしょう?」

 

 「グッ!?あ、あれは力加減を間違ったというか……久しぶりに地縛霊を見てテンションが上がったと言うか……」

 

 「それにしてもです。下位どころか中位精霊級はやりすぎでしょう?」

 

 「だからだ!ちゃんと力も封印した。僕の許可なしで暴走しないようにだ!!」

 

 「無能耄碌ジジイ」

 

 甲高い女性の声が聞こえる。

 

 「オイ、ロリババア。今何と言った?死にたいのか?」

 

 ソファの上で寝転がりせんべいを齧るエヴァンジェリンを睨み付けるが、本人は左足の指で右足のふくらはぎを掻いていた。

 

 「さぁな?聞き取れないなら絡むんじゃない、何にでも噛みつくとは……犬かお前は?」

 

 「チッ、大体お前もお前だ!何が吸血鬼騒動だ。傍から見れば唯の傷害罪じゃないか!犯罪だぞ犯罪。馬鹿か馬鹿なのか!?」

 

 「あれは近衛門が言うからしょうがなくだな……坊やの成長のため一役かったんだ、寧ろお礼くらい言うのが筋じゃないか?それに何かあっても近衛門がモミ消して終了だ、いいじゃないか」

 

 「良い訳無いだろう、どんな学園だ!?」

 

 ヘラヘラと答えるエヴァンジェリンにハオが声を荒げた。

 

 「それにしても追い込まれたとは言え、坊やが『パクティオー』するとはな!」

 

 「10歳の教師が14歳の教え子とキスだぞ?何の冗談だ……意味が分からない……考えれば考えるほど意味不明な構図だ」

 

 ハオが頭を抱え更に深いため息を吐き出す。動かなくなったハオに流石にやり過ぎたかとエヴァンジェリンがフォローを入れた。

 

 「10年後ならあり得る光景だと割り切るしかないな」

 

 ハオが何かを思い出したように、疲れ切った顔を上げた。

 

 「『パクティオー』で思い出したが、あのエロオコジョは最近おとなしくしているのか?」

 

 「している訳がないだろう?私独自の情報網によると今月4件発生した下着泥棒事件、全て犯人はアイツだ」

 

 テレビを見ながら足をバタつかせたエヴァが答えた。

 

 「週一ペースじゃないか……やはり殺処分しておくべきだったか。ネギ君が珍しく我が儘を言ったからつい見逃してしまったが」

 

 「坊やの数少ない友達なんだろう?そんなことをしてみろ、確実に会話すらしてもらえなくなるぞ」

 

 「殺すのは止めておく……ストーカー事件の時と同様に制裁は加えるがな」

 

 「なんだそれは、私は何も知らんぞ?」

 

 首をかしげるエヴァとは正反対に、アルビレオが思い出したと口を開く。

 

 「ネットアイドルの事件ですね」

 

 「そうだ」

 

 「あれも面白い事件でしたね?」

 

 クスクスと笑うアルビレオに、ハオが答えた。

 

 「あれを面白いで片付けるつもりか?生徒が犯罪に巻き込まれたんだぞ」

 

 「これは失言でした。面白いのはその後でしたね」

 

 「僕からすれば冗談じゃない。下手をすれば『麻帆良』から去る羽目になるんだ」

 

 「アル、私にも聞かせろ」

 

 話そうかとハオに視線を移したが、当の本人は不貞腐れてしまったようだ。

 

 これは少しイジり過ぎたかも知れませんね……まぁ、それもそれで面白いのですが!

 

 「では先ずこちらを見ていただきましょう」

 

 喜々揚々とアルビレオがとあるホームページを開く。

 

 「ほぅ。これはウチのクラスの生徒じゃないか……」

 

 確か名は『長谷川千雨』だったか……?

 

 「流石ですね。理解が早い」

 

 「成程な……大方ネットに自分を晒したせいでストーカーに追われたってところか?」

 

 勝ち誇ったような顔で呟いた。

 

 「大正解です!」

 

 「話の流れから察するに、それを救ったのがそこのジジイだとすれば、唯の美談じゃないか……つまらん」

 

 呆れ返るエヴァンジェリンにアルビレオが答える。

 

 「だから先ほども言ったでしょう?話はその後ですよ……」

 

 「ほぅ?」

 

 「まぁ、ハオに男性の大切な部分のみを焼かれた男の末路を語るのも良いのですが、貴女は興味が無いでしょうから割愛しますね。その少女その後どうなったと思います?」

 

 「はぁ?普通に登校しているぞ。大方そこのジジイが記憶でも消したんじゃないか?」

 

 ため息をつきながら少女が答えたが、アルビレオは首を横に振った。

 

 「半分は、正解です」

 

 眉間に皺を寄せた少女に、言葉を続けた。

 

 「ハオが、もといハオの魔方陣を使用し私が完全に消したのは、ストーカーへ対する恐怖だけなのですよ。つまりネットへ対する恐怖は残したままだったんです。それもそうでしょう、ハオが乱入したころには被害者は襲われる直前だったと言う話ですしね……男性恐怖症になるよりマシという判断ですよ。とはいえこんな事を繰り返される訳にもいかないので、お灸と言う意味でネットへの恐怖だけは残したと」

 

 「だからどうしたと言うのだ?」

 

 説明ばかりで鬱憤が溜まり始めた少女を、男が諫める。

 

 「その少女……どうなったと思います?」

 

 「どうなった――「言い方を変えましょう」」

 

 「被害者の少女は恐怖で寝れないレベルまで達していました」

 

 まぁ、面白そうだったので私がそのように記憶を改ざんしたのですが。

 

 「最も頼れるのは、自分を救ってくれた人となるでしょう」

 

 この少女の記憶を見た時に、これは使えると思いましたよ……好意は本物でしたから、フフッ。いけいない、いけない。表情に出ないようにしないとハオにバレてしまいますからね。殺されてしまいます。

 

 「そして、ここに入り浸るハオ……想像できませんか?」

 

 少女の脳に電流が走る――

 

 「お、オイ、まさか……押し掛けられたのか?」

 

 精一杯、笑いの涙を堪え、肩を震わせる少女がいた。

 

 「その辺にしておけよ、ロリババア」

 

 ハオが睨み付けるが、既に手遅れだった。

 

 「ブハハハハハハ!!ハハッハ、アーッハハハハ!!」

 

 「寝かしつけた後、寝床を占領されるからとは言え、ここに来るのは止めてほしいですよ……」

 

 「ハハハハハハ!は、腹がよじれる。不死の私を笑い殺す気か?ハハハハハ!!」

 

 男がため息をつきながら首を左右に振り呟くと、少女は大粒の涙をこぼしながら、ヒーヒー言いながらのたうち回る。

 

 「生徒と同棲する教師がどこにいる!?」

 

 「ガキに反応しないとか言ってただろ。あれは嘘か?ロリコンジジイ」

 

 「反応しないのは当たり前だ!だが貴様の様な幼児とは違うのも事実だ!」

 

 「は?」

 

 あっ……これはダメな奴ですねぇ。キティの怒気が増しました。これは早めに撤収しないと飛び火しますね。

 

 「事実だ」

 

 「は?」

 

 こめかみに青筋を浮かべた両者が、互いの額のぶつかり合う寸前まで迫る。

 

 いやはや、本当に睨み合いで火花って発生するんですね……

 

 「今日という今日は、二度とナメた口をきけないようにしてやる、覚悟しろジジイ」

 

 「良いだろう、やれるものならやってみろ!」

 

 やはりこうなりましたか……さて、私はそろそろ――

 

 離席しようと立ち上がった瞬間、ローブに抵抗を覚える。原因を目で追うとスーツ姿の男の手中に、ガッシリとローブが握られている。

 

 嫌な汗がタラリと頬を伝う。

 

 「何をしているんです?ハオ」

 

 目線が下に行っているため表情が見えない少年に、声を掛ける。

 

 「誰が逃がすか……今日はお前もだ」

 

 顔を上げ、少年は笑顔で続ける。

 

 「千雨の件、よくも好き勝手やってくれたな?」

 

 「一体何の話です?」

 

 貼り付けた笑顔の仮面を崩さず、アルビレオが言った。

 

 「シラを切るとはいい度胸だな?お前が面白可笑しく記憶をいじったことくらい知っているんだぞ?」

 

 「嫌ですね、ハオ。彼女の好意は本物ですよ?」

 

 「ほぅ……『好意は』だと?」

 

 しまった!!!!

 

 「最近の千雨の様子を見ていて違和感があった『魔力の栓』の様な物……あれはやはりお前のものだったか。僕の完璧に編まれた術式に、妙なものがあるのでね?いや、まさかと思って鎌をかけたが……説明してもらおうか?」

 

 何か策を考えねばマズいですね。

 

 「大方戦闘に巻き込まれることが頭を過っていたのだろう?お前は、普段は決してボロを出さないからな」

 

 ローブを握る力が急激に増す。

 

 これはもう無理でしょうね。私も覚悟を決めて、久しぶりに運動するとしましょうか。

 

 「キティ、今日はあなたの味方ですよ」

 

 「その名で呼ぶなと言っただろう!!お前は燃やされるより凍らされる方がお好みのようだな?」

 

 流石にハオとキティの二人がかりは、命がいくつあっても足りませんね。

 

 「失礼、では私は貴女のサポートをさせていただきますよ」

 

 「ふん!」

 

 そっぽを向かれてしまいましたが、何とか化け物二人の相手はしなくて良くなりそうですね。

 

 え?これからの戦闘は大丈夫なのかですって?

 

 大丈夫な訳はないでしょう。死ぬ物狂いでやって、良くて半殺しでしょうね。今日は珍しく私がターゲットになりましたから……

 

 でも彼、ええハオの事です。随分と丸くなったんですよ?昔なら確実に命は無かったでしょうが、今は違います。広域指導で鈍ってしまっているでしょうから、少し運動をしたいぐらいの気持ちですよ。

 

 それに付いて行けなければ死ぬと言うだけなので、本人はじゃれてるくらいの気持ちしか持っていないでしょうね。

 

 ですが、今日はキティも味方ですからね、本当に心強いです。彼女もいつもハオと戦闘を繰り返しているので、相当強くなっているんです。最近はついに一矢報いたんですよ?ハオの『黒雛』を解除したのですから、彼女もまた化物です。

 

 とはいえ私が余計なことをしたから、こうなった訳ですし……そうですね、本日の教訓としては『一時のテンションに身を任せると大変な事になる』と言ったところでしょうか。

 

 ため息をつきながら、アルビレオはゆっくりとダイオラマ魔法球の中へ入ってゆく。

 

 『麻帆良老人ホーム』で不定期開催される運動会の始まりであった。

 

 修学旅行前夜の出来事である。




エヴァが強くなるのか(困惑)

つなぎ回でした。京都篇の投稿は何時になることやら・・・
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