魔法世界の陰陽師   作:おにぎり41

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自然にキャラ崩壊させるって無理じゃね?ハオの性格キツ過ぎんよ……

てなわけで3話目です。


シャーマンキング3

 大会で一人も死者を出さなかったのは大きいと思う。横で母上が常に見ていると思えば、無駄な殺生は出来なくなってしまっていた。

 

 そう、この世界に来てからというものハオは誰一人として殺していない。昔の彼からは考えられない状態であった。

 

 しかし、彼は別に殺すのが全て悪いことだと考えている訳でもない。

 

 拳闘大会はあくまでも試合である。仮に戦争で自分に危害を加えるものが居たであろうものなら、間違いなくこの様な結果ではなかっただろう。

 

 毎日のように拳闘大会の試合に出場し、気が付けば優勝していた。

 

 これである程度金銭面が楽になるはずであったが、運営は次のエクストラステージが終わり次第報酬を渡すと言って出た。

 

 「一体何を考えているんだ? これ以上続けても意味はないだろう……」

 

 エクストラステージに指定された場所は、生き物の気配がない荒野であった。

 

 その荒野へ向かう途中、馬車のような物の中で考えていた。

 

 馬車を引く少年が口を開いた。

 

 「あんた、確実に死んだぜ……」

 

 「どういうことだ?」

 

 少年の一言で、ハオの眉間に皺が寄る。

 

 「この戦いは今までの大会とはレベルが違うって話だ」

 

 「ほぅ」

 

 「大会運営側がお偉いさんに相当な金額積んで挑戦者を用意させたらしい。元々はお前が簡単に勝ち過ぎてたのが問題だ。それで客に試合がどれだけ盛り上がってるかも伝わらず、動員数が減って来たのを一発逆転したい、ってのが狙いらしい」

 

 「随分と詳しいな」

 

 「俺だって拳闘士の端くれだ、これ位の事は嫌でも耳に入ってくる。目的は試合を盛り上げる事だ、精々死なない様に頑張るんだな」

 

 そんな他愛もない会話をするうちに、目的地が見えて来た。

 

 

 

 

 

 

 荒野に一つの大きな結界が見える。

 

 東京ドーム三個分は有ろうかという大きさの戦場の周りには、十数個という羽の生えたカメラの様なものが飛んでいる。

 

 周りを見渡しながらハオは思う。

 

 シャーマンファイトでもこの大きさの結界・フィールドは中々見ないな……

 

 全く……面倒な事に巻き込まれたものだ。

 

 最初は路銀を集める手段のだったはずだが、気が付けばこんな状態になっている。

 

 何故神である僕がこんな思いをしなければならない。

 

 もっと別な手段にするべきだったな。

 

 内心ため息を吐くが、時すでに遅し――

 

 それよりだ、僕が客寄せパンダ扱いだと?

 

 ふざけるなよ――ハオの目に怒りの炎が灯った。

 

 結界の中に入ると、何時もの音声が流れてくる。

 

 選手紹介の甲高い声だ。

 

 基本的には挑戦者の方からの紹介のハズだが、観客動員数を減らした事が原因なのか盛り上がりに欠ける方からの紹介なのかは不明だが、ハオからの入場となっていた。

 

 とは言っても総動員数が減ったのみで、ハオのルックスが幸したことで今まで拳闘大会に興味が無かった女性ファンは増えていた。

 

 この試合がモニターされている所では、黄色い声が彼の入場とともに千の雷となっていた。

 

 紹介が終わったと同時に、逆側の結界が大きく開く。

 

 比喩では無く、ビルの様な大きさの切れ目が入った。

 

 モニター会場では驚愕の声の後、爆発的な歓声が広がる。

 

 拳闘大会を知らない者でも、魔法世界の者であれば誰もがその存在を知っていた。

 

 「挑戦者は何と何と! ヘラス帝国が誇る伝説が殴り込み!! 守護聖獣・龍樹だああああああああああ!!」

 

 二本の巨大な角に、鎧のような羽、そして何よりも驚かされるのはその大きさ。

 

 全長100mと言うその大きさは、ハオの使う巨大な炎の大精霊スピリット・オブ・ファイアの5倍近いものである。

 

 しかしーー

 

 「守護聖獣か、これは久しぶりに楽しめそうだね」

 

 彼は余裕の表情を崩さない。

 笑顔で答える彼の姿を見て、別な所では何故か失神する者まで居たという。

 

 「試合開始ィィィィイイイイイ!!」

 

 何時もの合図が聞こえる。

 

 掛け声と共にハオは高速で赤い巨人を実体化させた。

 

 「オーバー・ソウル『スピリット・オブ・ファイア』」

 

 ハオの声と共に赤い巨人が浮遊する龍樹の背後で実体化し、巨大な手が頭を貫こうと迫る。

 

 並の試合であればこの一撃で終止符が打たれるはずだが、相手は最強種の一角である。

 

 目にも止まらぬ速さで回避行動をとるが、その程度の速度には慣れている赤い巨人の手は突き進み、大きな羽を貫いた。

 

 「グゥウ……」

 

 「ほう……今ので仕留めきれないか」

 

 穴を空けられても龍樹は止まることが出来ず、そのまま移動したため片羽が二つに割れた。

 一瞬苦痛に歪んだ唸り声を出すが、巨体を捻り赤い巨人の背後を取ると、尻尾を使い弾くことで体制を崩させる。

 

 巨人がふらついているのを確認した瞬間、口を大きく空けエネルギーを集中させた。

 

 本体であるハオが射線上に入るよう、狙いを定め赤いレーザーが放出される。

 

 龍種特有の『火の息』のような物であるが、ここまで高密度に圧縮されたものであれば全くの別物と言っても過言ではない。

 

 口から放たれた赤い光線のあまりの熱量に龍樹の周囲が歪み、上空から赤い流星が落ちてくる。

 

 一瞬の溜でここまでのエネルギー量に流石のハオも目を開く――

 

 「これは――」

 

 走馬灯を見るような状態でハオの目の前に迫る物の動きが、スロー再生のようになった。

 

 回避は間に合わない、流石にマズいな――そう判断した瞬間に自身の前に巨人を移動させ盾にする。

 

 オーバー・ソウルはオーバー・ソウルでのみ崩す事が出来るハズだが……

 

 目の前が赤く光った瞬間、鈍い音が木霊する。スピリット・オブ・ファイアに熱線が直撃し、体制が崩れる。

 

 崩れたのは体制だけではない、一瞬オーバー・ソウルが解けそうになった。

 

 拳闘大会でも、前世のシャーマンファイトですら、ハオのオーバー・ソウルが強制解除されるような事態に至った事は一度もない。

 

 ダメージを受ける自身のオーバー・ソウルで確認し結論が出た。

 

 大会で色々な魔法を受けて来たが、この世界にある特殊攻撃全てがダメージの入るものと判断して間違いないだろう。

 

 それにしても、全ての炎を司るスピリット・オブ・ファイアに、熱線でここまでのダメージを入れるとはな……最強の守護聖獣と言うのは伊達じゃない。

 

 ハオ思考するその一瞬に龍樹次の一手を打って出る。

 

 歯を鳴らし開いていた口を全力で閉じた。

 

 それまで吐かれていた熱線が何かに着火されるように、光輝き――

 

 何ッ!?

 

 爆発した。

 

 「グウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

 

 爆発が巨大な結界内の全てを包み込み、龍が吠えた。

 

 熱線、爆発とこの僅かな間に、龍の巨大な羽の傷は完全に再生している。龍樹が最強種と言われる理由の一つがこの再生能力である。

 

 肉体が滅びようとも、魂がある限り再生し続ける破格の能力だ。

 

 爆発に包まれたモニターを見て司会が言った。

 

 「龍樹の攻撃がハオ選手の赤い巨人にクリーンヒットだ!! これは流石にダウンか!?」

 

 ハオのスピリット・オブ・ファイアは酸素を媒介にオーバー・ソウルする。

 

 地球上では無限のようにある酸素を使うため、どこに居ようと媒介には困らない。

 

 しかし、それは密閉させれていない空間での話だ。

 

 今のような結界の中で酸素を大量に消費させられるような爆発が起きると、オーバー・ソウルを維持することは困難である。

 

 結界内に充満していた白い煙が徐々に晴れていく。

 

 本来ならば絶望的な状態だった。スピリット・オブ・ファイアの唯一とも言っていい弱点だ。

 

 「ちっちぇえな」

 

 平然とした顔で佇む一人の少年、その背後には――

 

 「何と何と!! ハオ選手の巨人が青くなってしまった!! これは一体どういうことだ!?」

 

 下半身からは水が滝のように流れている、青い巨人が立っていた。

 

 「水剋火。水は火に強い、それだけだ」

 

 木は燃えて火になり、火はその灰で土を生み、土は金を作り出し、金の表面に水が付着する、そして水は木を生む。

 

 陰陽五行思想である。

 

 ハオは生粋の陰陽師であり、世界最高のシャーマン。

 

 自分の陰陽術で持霊の弱点を克服した。

 

 五行相生で属性を自由に変化させ、五行相剋で相手の弱点を突く。

 

 「次は僕の番だ。客が退屈しないよう、精々踊ってくれよ?」

 

 青い巨人の周りに無数の巨大な水の槍が並び、龍に向かって飛翔する。

 

 龍樹は弾き・防ぎ・回避をするが空気中の全ての水分を扱いこなす今の状態のスピリット・オブ・ファイアは止まらない。

 

 無数の水の矢が体を貫通し、地面に落下する。

 

 受け身も取れず、地面に落下した音が響いた。

 

 チッ、もう終わりか。

 

 ハオがそう思った瞬間、砂塵の突き抜け、龍樹が距離を詰めようと迫る。

 

 殴りかかるその寸前に青い巨人を自分の体と拳の間に入れた。

 

 青い巨人の体が弾け、ハオに大量の水が浴びせられるがその拳は少年の鼻先で止まっている。

 

 「なるほどな……」

 

 先ほど水の槍で貫いた龍樹の体が超速で再生される様子を見て、ハオの口元が三日月へと変化する。

 

 「グオオオオオオオ!!」

 

 龍樹が吠え、青い巨人の体から拳を引き抜こうとするが、体の水が渦潮のように締まる。

 

 「せっかく捕まえたんだ……逃がすわけないだろう?」

 

 獣が驚愕するような表情を浮かべる龍樹に対し、少年は笑顔で応えた。

 

 離脱を試みた龍樹が、再び口元にエネルギーを集め始める。

 

 エネルギーの収束が終わる瞬間、五本の長い指が顔から人間でいう鳩尾の部分を貫き、地面へ仰向けに押し倒す。

 

 「何度もやらせると思っているのか?」

 

 集まっていたエネルギーが霧散し地面に縫い付けられた状態の龍樹を、もう一方の片手が何度も何度も全身を串刺しにする。

 

 龍樹も負けじと体に埋まっていない方の手で青い巨人を殴りつけるが、水が飛び散った次の瞬間には青い巨人の顔が再生する。

 

 少しづつであるが、龍樹の抵抗が少なくなってきた。

 

 龍樹の体を再生する速度は明らかに低下しているのだ。

 

 ハオが、その状態を嬉しそうに見つめている。

 

 やはりか――もう十分だな、よく分かった。

 

 「終わりにしよう。水生木、木生火――」

 

 一瞬でスピリット・オブ・ファイアの体が本来の赤色へと戻る。

 

 「燃えちゃえ」

 

 刺さっていた指から火が溢れる。

 

 龍樹から聞いたことのないような声が出る。

 

 手加減はしない、最大火力だ。1200℃の炎で体の内側から燃やし尽くしてやる。

 

 嗅いだことが無いような匂いが結界内に充満し、龍の叫び声が木霊する中、体は一向に再生を始めようとしない。

 

 肉体がなくても魂があれば再生するのが龍樹だ。それは体を焼かれていても変わりはない。

 

 しかし相手はシャーマン。

 

 シャーマンとは魂を操る者たち、魂に直接ダメージ与える事で戦う者達。

 

 龍樹の超再生能力は図らずして、相手のもっとも得意なステージにあるものだった。

 

 「ハハハハハ!燃えろ燃えろ!!」

 

 少年が両手を大きく開き、あざ嗤う。

 

 龍が暴れるが指で串刺しにされ、縫い付けられた地面から動けない。

 

 再生も一向に始まらず、ただただ苦しみの声を上げるのみとなり、勝敗は決した。

 

 歴代最強の拳闘士が産声を上げる瞬間になったのである。

 

 

 

 

 試合が終了し荒野には帝国の兵士が大勢詰めかけ龍樹の回収・治療が行われていた。

 

 早く金を受け取り、姿を消したいハオからすればこれほど迷惑な事はなかった。

 

 羊のような角を生やした金髪褐色の大男が近づいてくる。

 

 「見事な試合であった」

 

 「誰だお前は?」

 

 「貴様ッ――「良い、黙っておれ」」

 

 取り巻きの鎧を着たものが喋ろうとした瞬間、金髪が手を出し制止する。

 

 「お主我が帝国へ来ぬか? 騎士の座も付けてやろうぞ!」

 

 大きな声で笑う金髪の男に対し即座に――

 

 「興味ないな」

 

 返答した。

 

 ハオも目の前の人物が発した『我が帝国』という言葉で、どれだけ上の地位にいる人物かは何となく想像できる。

 

 しかし、先にやるべき事が多過ぎる。

 

 何より誰かに使われるというのが気に入らない。

 

 一方ヘラス帝国皇帝からしても龍樹相手に圧勝する人物なら是非取り込みたい、取り込みが出来ないにせよ敵となることだけは避けたい。

 

 「分かった、ならばお主の望みをヘラス帝国は可能な限り叶えよう、その代わりにお主は帝国の騎士となる。どうじゃ?」

 

 皇帝は腹の内で考えていた。

 

 龍樹が倒れている今、再生させるまでにはそれ相応の時間が掛かる。

 

 龍樹が負けるとも思わず焼かれる姿を見ていたが、再生されないのを見て試合を止めて正解だった。

 

 国を預かる身として、また一拳闘ファンとしてこの様な人材は是非確保したい。

 

 「興味が無いと言っているだろう?」

 

 やはりの……無理で元々とは思っていたが、こうも簡単に断られるとは……

 

 「あい分かった、ではワシはこの辺りで退散するとしようかの。拳闘大会の賞金は後で部下を使わせる、もうしばし休憩しているが良い」

 

 大男は踵を返し歩を進める。

 

 「おお、そうじゃ。ヘラスは何時でもこの条件でお主の仕官を待っておるぞ」

 

 そのまま大男の姿は見えなくなって行く。

 

 そして、この戦いを見ていた一人の少年がいた。

 

 歳はまだまだ子供ではあったが、鋭い目、金色の髪に赤いバンダナを巻いた褐色の少年は、ハオをここまで連れてきた少年であった。

 

 結界の中で繰り広げられる激しい攻防、魔法世界の中で一番強いかもしれないという生き物に立ち向かう姿、一瞬の判断力、奴隷拳闘士として駆け出しの少年では有るがあの姿に憧れない者はいないだろう。

 

 ハオとか言ったなアイツの名前……

 

 見てろよ、俺がいつか絶対に倒してやる。

 

 覚悟しやがれ!!

 

 この少年は後に世界に名を馳せる男となる。

 

 『千の刃』ジャック・ラカン――

 

 その原点はここにあったという。




強さの基準が龍樹な件www

いや、ラカンも原作じゃWパンチとか言って吹っ飛ばしてたから、これくらい許されるでしょ?
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