誰も私を追わないでください(涙目) 作:明負悟
プロット無しの弊害やねごめんなさい
夕方に差し掛かった裏路地にて二つの存在が相対する。戦鎚を消滅させ、回避された先を仇を見る目で睨むボロボロな少女と間一髪回避し、深く帽子を被り直す人型の異形
(なんでこうなったぁぁぁっっーー!?!?)
テメーのせいである
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聳え立つ巨大な門その前に立ち、興奮を抑えながら院長ロールをする男が1人
彼は顔を見られるわけにはいかないので黄色のマフラーと帽子を深く被り一般観光客を装っていた
「おぉ!かっこいいじゃぁないか……
わざわざ正門を見にきた甲斐があったなぁ」
いいじゃないか、こういうのは一度見ておきたいよな!
門一つとっても国の特徴がでてるねぇ〜
さっき一般人からスッた金で買った観光案内によると、この国を寄せ集めの集落から発展させた英雄の能力である「鉄球」がシンボルとして幾つもあしらわれているみたいだな
こういうの知ってると何倍も楽しめるってもんだ
ガッツリ観光を楽しんでいる様だが、彼は一度自分がした「死」の経験を再び味わうつもりはさらさらないので、万が一を想定して厄災は自身への攻撃行動のみに限定して既に発動している
「ふむ……これでこの地区を後腐れなく離れられるという物……
今更だがこの地区に長居するのは危険だなぁ…
さっさと別の地区に移動して仮面でも買うとするかな?」
(この国自体にあんまり長居するのはアレだし……
次に国の都心を軽く見て回ったら外の世界を見て回ってから別の国に行くとしようかなぁ)
そんなことを考えながら一度今日は活動拠点に戻ろうと歩を進めていたんだけど……
その刹那、鳴り響く金属音と共に後方上部から衝撃波が放たれる
「え?」
絶望と驚きを含んだ声を聞いた彼は振り返りながら両手を杖に預けて少女に語りかける
「ふむ……初めましてかな?お嬢さん」
さっきの衝撃波で隠れていた顔部分が顕になり、人ならざる姿がハッキリと見える
「きっと君が私の事を一方的に知っているだけだと思うのだが……
自己紹介をしてもらえないかな?」
口調こそ丁寧ではあるが相手を格下であると思っている事を微塵も隠そうとしない雰囲気
そしてそれが間違いでは無いと思わせるオーラが彼にはあった
「いや…折角だ、私が名乗らせてもらうとしよう。」
「私はワンダー・オブ・U
厄災の流れが君を襲う」
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アンナside
見つけた
ヤツを見つけた……
無敵にも思えるヤツの能力を突破するには「発動させなければいい」私はそう考えたの
私の能力は「鉄を生成する能力」だ。
一度に生成できるのは156kg、私の身長=kgに変換した値なんだけど…まだ伸び代はある…っす……
生成する際の形はある程度自由に決めることができるけど、そこまで細かく細工を施したりできるわけじゃぁないかな
生成した鉄はいつでも消せるし、30分後に勝手に消滅する。
だけど戦闘中に壊れても幾らでも供給できる武器と防具ってかなり強いって自覚してるっす
そして今私は……
ヤツが向かってる通路に先回りして屋根の上で潜伏してる所っす!!
そこは華やかな雰囲気の大通りから3本ほど外れた通り道、民衆の声はもはや聞こえてこず夕方なのも相まって廃びれた建物群が不気味に思える
(ここで待機して通り過ぎる瞬間に背後から飛び掛かり奇襲、空中で鉄の巨大ハンマーで一撃で仕留めるッ!)
「ッ!来たッ!!」
眼下を通り過ぎようとする、ぱっと見普通の老人にしか見えない彼を少女は敵意を持った瞳で捉える
(まだだ……チャンスは一度だけ……もし失敗したら恐らくもう2度とヤツからこんなチャンスが溢れることはないっす……)
闘志を抑え、自身の潜伏している建物の正面を通り過ぎた瞬間アンナは飛び出した
「ッッ!!!」
(声を殺せッ!!ギリギリまで気づかれるなッ!!抑えろッ!!これで終わらせるッす!!)
空中で丁度少女の身の丈ほどの戦鎚を生成し、全くこちらに気づいてもいない老人に振りかぶった
相手がただの魔族や能力者であればここで決着がついたのかも知れない。どれだけ強い能力を持っていようと発動できなければ無意味であり、暗殺の強力さは歴史が物語っている
だが相手は厄災だった
乗り越えるだとか倒すだとかを考えることすら烏滸がましい災害。それを前に出来ることはただ祈り、去ることを願いながら震えることだけだと知るべきだったのだ
カァァァァンッッ
「え?」
ドッッガァァァァァンッッ!!
振るった一撃は突如視界外から隕石の如き速さで乱入してきた大通りのパン屋の看板によって武器もろとも少女は吹き飛ばされる
「がぁッッ……おっ、、ん、はぁ……」
降ってきた看板が直撃し、武器に体を振り回され、強烈な勢いで壁に叩きつけられた少女は頭から血を流して立っているのもやっとな姿を晒した
(なんで……能力の切り替えは私みたいに生成系統の場合を除いて0か100かだけの筈、、今の一瞬で気づかれたとでもいうの?)
そんなことを頭に巡らせているとヤツがこちらに体を向けながら、客人に挨拶でもするかのような調子で話しかけてくる。
「ふむ……初めましてかな?お嬢さん」
ふざけるな……先輩を…チームのみんなを苦しませた貴様を忘れたことなんて一度も……!
「きっと君が私の事を一方的に知っているだけだと思うのだが……
自己紹介をしてもらえないかな?」
(もうだめだ……出来る限り抗おうと思っていた……だけど…さっきの一撃が重すぎる…とても走れない…)
「いや…折角だ、私が名乗らせてもらうとしよう。」
「私はワンダー・オブ・U
厄災の流れが君を襲う」
彼女が意識を失う最後に見たのは先程の戦鎚と厄災によって崩れ、こちらに倒れてくる建物と両手で杖を持ち中腰でこちらを覗く厄災だった。
アンナちゃんかわいいね……
いつもお世話になってる先輩の為に命をかけて挑んだんだね…
今までの魔族との戦いとか訓練が自信を育んできたんだね…
でもね?
地震に勝てる人間も台風に勝てる人間も津波に勝てる人間も存在しないんだよ