修羅がダンジョンで冒険を求めるのは間違っているだろうか 作:赤城灯火
「お前はこの都市に何しに来た?」
冒険都市オラリオの玄関口では何度も繰り返される質問。
「冒険だ!ダンジョンに興味がある。」
「はぁ~、お前は冒険者か?」
これも繰り返される質問で、意味が分からないものなどめったにいない。
恩恵を持っているのか、またはどこのファミリア所属かなどの答えを門衛は待っているのだが、今日この日、質問の意味が分からない田舎者がいた。
「しいて言えば、これからダンジョンで冒険するのだから、これから冒険者になるな。」
「こんな時期に都市に来る奴だ、世間知らずでお決まりか、、、そら、恩恵を確認するから背中を出せ。」
そういって門衛の男は背中に何かを押し当てた。
「ん?立派な剣を持ってるから冒険者かと思ったが、違ったか。まぁ問題ないだろうさ。せいぜい死ぬなよ小僧。」
俺は押し退けられるように都市の中に入った。
「なんか感じ悪いな~、それに腹減った、腹ごしらえといきたいが。」
この街は感じが悪い、活気がなく、人の視線も沈んでいる。
そして、都市に入ってから、いや入る前から下卑た視線を集めていた。
視線を集めるのは背中に吊るしてある立派な得物だろう。
「おい兄ちゃん、あんた冒険者だろ?ちょっと依頼があんだが、こっちの路地で話しでもしね~か?」
声をかけてきたのは武装した男4人組。
俺が冒険者とやらではないという門でのやり取りを見てたやつらだ。
「ちょうどよかった。金がなくて困っててな。」
◇
「ッソ!、つえーお前っ、冒険者じゃないんじゃ、ねーのかよ!」
「どうやって、恩恵を隠しやがった、クソ」
「銅のコインが4枚。これで飯は食えるのか?」
4人に連れられて裏路地に着くと始まったのは、話し合いではなく殺しと盗みだった。
当然、百も承知で路地に入った俺は、問題なく4人の武装した男たちを叩きのめして懐を漁っていた。
田舎すぎる故郷では狩猟と物々交換が基本だった。
つまりは貨幣の使い方を知らんのだ。
「お前らみたいな奴に絡まれるのも面倒だ、これで剣の鞘は作れるのか?」
立ち上がることが出来ない男たちに貨幣について聞くが、返ってくるのはうめき声だけだった。
「40ヴァリス、今のオラリオじゃーお腹いっぱい食べるのは難しいかな。そ・れ・に、お金は自分の手で稼がないとだめだよ。」
「そうか、おれはカムイ、あんたの名前は?」
「ふふん、よくぞ聞いてくれました。品行方正で人懐っこくてシャクティお姉ちゃんの妹で、第二級冒険者のレベル3のアーディ・ヴァルマだよ!じゃじゃーん!」
かわいいヒューマンだ。
明るい水色の髪を短く切りそろえた女の子は、暗い都市の雰囲気を跳ね除ける元気な自己紹介をしてくれた。
これは郷に入っては郷に従うしかあるまい。
「あー、ご丁寧にどうも。こほん、俊敏剛剣で実直素直でオーガ山で大活躍して、」
「わぁーあーあ、真似しなくていいから!すっごい恥ずかしくなっちゃうじゃん。もー」
暗い都市に合わない可愛らしい女の子に出会って浮かれていたか、郷に入ることは失敗だったようだ。
「あはは、冗談はおいといて…襲われたところを返り討ちにしたって感じでいいのかな?」
「そうだな、依頼があると路地に入ったら剣を抜かれた。この金はこいつ等から奪った。」
「うん、嘘はなし!素直なのは本当だね。じゃーそのお金は返そっか。お話したいからこっちに来て。」
◇
武装した4人組はガネーシャファミリアいわゆる憲兵に捕まって牢屋に入れられ、俺はアーディに連れられて詰所まで来ていた。
「時間取らせちゃってごめんね。これからどうするか決まってるの?」
「剣を収める鞘が欲しいからな、ダンジョンとやらに入って金稼ぎだ。あと宿代も。飯食わせてくれてありがとうな、これで元気いっぱいだ。じゃじゃーん!」
「わーあ、もうそれはやめてって、乗っかて来られるの恥ずかしんだからー。」
周囲の憲兵の視線が冷たい、やはりこれはこの都市ならではのあいさつではないようだな。
でも、アーディの反応が可愛いからたまにやろう。
「それに、私たちもあの4人組捕まえるの手伝ってもらっちゃったし、ご飯はそのお礼だから気にしないでね。え!お姉ちゃんが?やば、勝手に持ち場離れたの言ってなかった。」
周囲の憲兵の一人が俺と話していたアーディに近づいて耳打ちすると、アーディはまた可愛らしく慌てている。
「じゃあねカムイくん、私はとーても優秀で忙しいからもう行くね。初めてのダンジョンは危ないから気を付けてね。」
アーディはぴゅぴゅーぴゅーんと音が鳴りそうな忙しなさでデカい塔のほうへ走っていった。
きっとその手前にある煙が上がっているところに向かったんだろう。
この都市は大丈夫なんだろうか。