修羅がダンジョンで冒険を求めるのは間違っているだろうか 作:赤城灯火
アスフィは本日退院のカムイを迎えに来ていた。
「本当に、誰か分からないレベルで変わりましたね。」
「あぁ!なんかすっごい調子良い、体が超軽い。超痛かったけどアミッドって凄いんだな。ありがとう!」
「いえ、何分初めての処置ですのでしばらく経過観察を続けます。ダンジョンの後は必ず来てください。」
「え、いや、その、それは、まぁ、怪我した時は頼むよ。」
「必ずですよ、絶対ですよ。」
「ひぃ!はい、すぐ来ます!その目怖いよ!目のハイライト早く戻してくれ!」
「はぁ、私達も彼の面倒は見ますのでご安心を。これからも彼の治療をお願いします。」
「ええ、代価は既に受け取っているのでお気になさらず。それに、私としても彼の治療で得られる経験値は多いので助かっております。」
「じゃあ、俺はダンジョンに行ってくるな。」
「待ちなさい。今日は我々も同行します。」
◇
治療院から釈放された彼は、二度目のダンジョン攻略をしている。
今日は一人ではなくアスフィをはじめファミリアが同行していた。
カムイの倒したモンスターのドロップアイテム回収と実際のレベルを見極めるためだ。
「20階層のモンスターは既に敵ではありませんね。このまま下へ進みましょう」
「じゃあ、右に進もう。」
「そっちは正規ルートではありません。カムイ待ちなさい!あぁもう人の話を少しは聞きなさい。急いで後を追います。」
一体どんな感覚を持っているのか、先ほどから正確にモンスターの居場所へと進んでいっている。
感覚の鋭さは第一級冒険者に届き得るかもしれない。
「んな!通路を埋め尽くすモンスターの群れ?追われているのは、アストレアファミリア!」
「ックソ。イヴィルスの連中め、あたしらの遠征帰りを狙ってやがったか。」
「本当にくそ面倒なことを、青二才!魔法はよせ!私たちごと吹き飛ばすつもりか。」
「ですが、このままでは!」
「どっちみち正規ルートに戻る前にどうにかしないと!え?男の子?こっちに来てはダメ!逃げて!」
モンスターに向かって走る少年にアストレアファミリアが危険を知らせるが、聞く耳を持ずに突っ走るカムイ。
【この手を零れた光は白く、残る白さは褪せることなし、欠けたこの身は手を掲げ、白い彼方へ我を導く。】
「詠唱?馬鹿があっちにもいたか。」
「見殺しにはできないわ。みんなやるわよ。」
丁度カムイとアストレアファミリアがすれ違ったタイミングで、正義の眷属はそれぞれ迎撃体勢を整え、合わせるように雷の魔法が炸裂した。
【カムア・スレイン】
「雷の斬撃!デカい、彼は一体。」
「モンスターの勢いが止まった。今よ皆!【花開け(アルガ)!】」
先陣切って次々とモンスターを切り伏せるカムイに負けじと、アストレアファミリアが巧みな連携で打ち漏らしを仕留めていく。
それから程無くしてモンスターパーティーは全滅した。
「ふぅ―、力出過ぎて疲れたー、アミッドはほんとに凄いな。自分の体じゃないみたいに動きやすい。」
「ねぇ君!凄く強いのね!君名前は?君のレベルいくつ?まさかのレベル4?私の名前はアリーゼ、アリーゼ・ローヴェル!清く美しいレベル3よ!」
「おう、カムイだ。よろしく。」
「アリーゼ、少しは警戒を!」
「はぁ、大丈夫ですよリオン。彼の名はカムイ、我々と同じヘルメスファミリアの一員です。」
「アスフィの仲間でしたか、ですが聞いたことが、」
「彼は最近都市外の任務から帰って来たんです。」
彼女たちは信用出来る派閥とは言え目立ちすぎる。
主神の意向で彼の事を然るべき時まで隠し通すと決めた以上、信用できる派閥といえど広めるつもりはなかった。
「へぇあたしらよりつえぇ冒険者が都市外にね、信じられるか輝夜?」
「レベル3以上の冒険者であることは確実。私の故郷に似た響きの名前ですけど、年端も行かない少年がそない強くなれる場所が都市外にあるかどうか。ほとほと信じがたい話ですねぇ。」
彼女たちは今まさに伸びている武闘派の中堅ファミリア、さすがに隠くし通すのは厳しいか。
◇
ヘルメスファミリアとアストレアファミリアは18階層に場所を移していた。
アスフィの必死の弁明と男女という兼ね合いもあり、野営地は互いに離すことになった。
「しっかし不思議なやつだったな。あれだけ強い冒険者がどこから現れたのか。」
「悪い子じゃないみたいだし、隠したい理由がある以上簡単に聞き出せそうにないわね。今は難しいことは考えずにゆっくり休みましょう。ん~~、ここは変わらずきれいね。」
「ええ、本当に心地良うございますね~この泉は。」
アストレアファミリアの水浴びは男子禁制の秘密の花園。
初々しい妖精、起伏にとんだ丸みのある肢体、野性味のある健康的な焼けた肌。
多種多様な見目麗しい花々が咲き乱れる桃源郷であった。
「まったくだ、一生ここでゆっくりしてたいところだぜ。」
「ライラ、何を言ってるのですか!今も助けを待ってる者がいるかもしれない。準備が整ったら即刻地上に戻るべきだ。」
「うるせーなリオンは、真に受けんな冗談だよ。、、半分はな。」
「乳離れできぬ青二才のエルフめ、アストレア様が心配過ぎて夜も眠れないと見える。はぁ、休む時はしっかり休め!そして疲労をとっとと癒せ、そんなことも分からんから貴様はいつまでたっても青二才なのだ、このポンコツエルフ。」
「な、なんて言葉を、それに私を愚弄するのか輝夜!」
「まぁまぁ、言い方は輝夜らしいけど、ただリオンに休んでほしいだけよ。私もリオンと一緒に水浴びしたいわ!さ!脱ぎましょ!」
「な、何を、アリーゼ!少しは体を隠して、あぁーパンツは自分で脱ぎます!だから手を離しなさっ!ひゃっ!!」
「フフン、清く美しい私にやましいことなんてないわ!さぁ、リオンも大人しく私に洗われなさい!ふぅー。」
「耳に息を吹くな~~~~!!」
「団長さんの変態は本当に極まっておりますなー。正義の団長が鎖で牢屋に繋がれないか心配になりますね。」
「いつものことだろ。それにお前も人のこと言えねーだろ。裸でうろつきやがって。」
「それはホームの中だけの話でしょうに、金に汚いライラには言われとうありんせん。」
遠征で疲労がたまっていたのか、恒例になりつつある花々のじゃれ合いはいつにも増して激しかった。
「アリーゼェェーー!」
「エルフが逃げた。」
「逃げましたなー。」
「リオン待ちなさい!それじゃあ、エルフじゃなくてエロフよ!」
「くはっはっはっは!誰かに素っ裸見られて顔から火吹いて戻ってくるとこまで見えるぜ。相変わらずだな―リオンは。」
「どうしてああも後先考えないで動くのか、あの青い尻を拭うのも面倒だというに。」
「良いじゃない!リオンらしくてとっても好きよ。私はリオンならおしめだって変えたげるわ。」
「「それは流石に退く。」」
団長の変態にドン引きしたライラと輝夜の代わり、リオンの行く先を気にした正義の乙女達が声を漏らす。
「でも、リオンが走っていった方向は?ヘルメスファミリアの野営地が近くないかしら?」
「もしかしたら、今日の剣士の子とばったり出くわしたりしてぇ。」
「ありそう!あの子の顔、鋭い系のイケメンだからそのまま押し倒されるかも!」
「あらあら、それは神様のいうところのフラグいうなるものですねぇ。」
「違いねー。それにあいつとは、これからも何かと縁がありそうだしな。」
「確かにあの強さは只者じゃないわね。悪い子じゃないけど、話題が尽きなそうだわ!」
「男なぞ皆獣だ。あれは中でもとびっきりの猛獣、いや鬼に違いない。」
「どういうこと輝夜?」
アリーゼが輝夜の気になる発言を問いただそうした時、初心ななエルフの悲鳴が森に響き、件の少年の絶叫がこだまする。
そして、皆がため息をこぼす。
アストレアファミリアの会話を書くのが難航しました。
作品の都合上、登場人物をアリーゼ、輝夜、ライラ、リオンに絞ることをお許しください。