どうせなら、笑っていようぜ。 作:インチネ・ズィ・マゼタルーノ
「どうしたらって、そんなの簡単さ」
まったくねぇ、頭が良いヤツほど単純な答えに気付かないもんだよ。
良い子のみんな、こんにちは。
ワタシだ、赤蛇トグロだ。
「いいか、リオ。よく聞け……『ごめんなさい』だ」
「……は?」
餓鬼でも分かる対人の基本。
それを忘れた幼馴染に困惑を隠しきれないがワタシは元気。
「は?じゃねぇよ、迷惑かけたんなら謝る。当然のことだろうが」
「そんなことで私が──」
「そんなことだよ。自罰的になるのは結構だが、罪も罰も決めるのは被害者だ。テメェが勝手に決めていいもんじゃないだろ。……って、ワタシが言えた義理じゃないけどな」
ワタシ達がすべき事は1つ。
誠心誠意、謝ることだけだろ?
許すも許さないもワタシ達がどうこう出来る問題じゃないから、何を言われようとひたすらに頭を下げるだけさ。
「まあワタシも一緒に謝りに行く、その辺は任せろ。舞台のセッティングはほぼほぼ終わってるからな、チヒロとノアに感謝しとけよ。それとだな、菓子折り持って謝罪もするが、ワタシ達からの誠意として1つ作りたいモノがあるんだ。協力してもらうぞ?」
「…何を、させる気なの?」
「AL-1Sを作る」
「ッ!貴女!」
「まぁ待てよ。作るのは人型ロボットで、兵器じゃない。『鍵〈Key〉』に身体を用意しようと思ってる。そのために揺り籠でアリスを解析したわけだしな……おっ、動ける」
ちょっと待ってね〜。
そん時のデータが……おん?身体動くようになってんじゃん。
チャチャッと端末を操作して、リオにも同じデータを送りつけた。それ見て話すぞ。
「アリスの中にある終末装置は、別に消えたわけじゃないのは理解してるだろ?」
「ええ、勿論よ」
「権限はアリスが持ってて、その補助に『鍵』がある」
「そうね」
「今回の件で、アリスには権限を行使するつもりはない事が分かったな」
「…ええ」
「『鍵』も、何があったかワタシは知らんが、無害化したと言ってもいいだろう」
「……」
「そこから導き出される答えは、もう分かるだろ?1つの身体に心は2つ、それはとても不便な事だろう。ワタシ達でボディを用意しよう!」
「理解出来ないわ…」
理解なんてしなくて結構。
ワタシはただ、アリスとリオが並んでゲームしてる光景が見たいだけだから。どうせならケイちゃんにもボディを用意して、一緒に居られるようにしてあげよう。
ヒマリのおばあちゃんみたいな面倒見の良さを考えれば、間違いなく楽しい事になる。
それにだ。ここまで着たし、来れたんだ。
面白くなりそうな方を選ぼうじゃないか!
みんな笑顔でお家に帰れるような未来を、徹底的に、完膚なきまでのハッピーエンドを求めたい。
「さてと、1週間だ。1週間でボディを作り上げる。リオには、おおよそ全体的な構想と設計を頼みたい。ワタシは神秘系統からアプローチをかけるから」
「その様子、既に用意していたわね?…まあいいわ、任せてちょうだい。トグロの事だから、ある程度のベースは出来ているのでしょう?」
「人型の骨格と、人工タンパク質は作れるが、どうしてもナノマシンが上手く出来ないんだ。手伝ってくれ」
ナノマシンって何なんだよ…
そんな小型して作れねぇんだ、どうしろってんだよ。
さぁ、頭を捻るぞ。
知恵熱出るまで考えよう。
「あの…トグロ?言い難いのだけど、現代の技術ではナノマシンは作れないわよ?」
「ふぇぇ…?」
「なに、その反応は…トグロが欲しいのはアリスの様な物でしょう?あるとすれば古代の遺物、オーパーツぐらいの筈」
「えぇ…」
えっ?そうなの?
ナノマシン作れないの?
流体金属は?
Tシリーズ作れないの?
溶鉱炉にサムズアップしながら落ちれないじゃん。
あいるびーばっく出来ないじゃん。
「ふふっ…何よその顔。まぁ同じでなくても構わないのでしょう?なら人工タンパク質を加工したほうが自然ね。骨格ベースに種類もあるようだし、数パターンは考えるとして……そうね、ヒトに近いモノから、ヒトに見えるだけのモノ、これなら一晩で設計出来るわ」
「まかせます。おなしゃす」
そう言って部屋に引き籠もるリオと、それに続いたトキがこの場から居なくなった。
メイド部の面々、他人の会話には滅多に口出ししないからな。かと言ってジッとしてるわけでもなく、適当に何かしてる。
「アカネ〜動けるようになったし、ワタシも工房に籠もる。ここに残るなり帰るなりは好きにしてくれ、来てくれてありがとな」
「いえ、私がしたくてしている事ですので。ネル先輩の様子も気になりますし、一旦ミレニアムに帰ります。明日…もう今日でしたか、夕方頃にまた来ますね」
「おう、気を付けて帰れよ」
アカネを見送って、最初にすること。
トキの買ってきたケーキのつまみ食いだ。
ワタシはな!
甘い物が食べたいんだ!
コーヒーを淹れて、ケーキを食べたい。
「トグロ先輩」
「まだ食べてないから!」
「駄目です。先に朝ご飯を食べてからです」
「トキ。ワタシはな……甘い物が…食べたい…ッ!!」
「朝ご飯はフレンチトーストですよ」
………………ヌゥゥ…。
それは食べたい。
仕方ないから我慢するか。
「ベーコンとチーズを挟んでホットサンドにもしたいですね」
「バターにハチミツ、ジャムに練乳。全部乗せのゲロ甘トーストをくれ」
「ワガママ言うと唐揚げと餃子を出しますよ」
「それはそれで欲しい」
ほらまぁ、トキってこういう子だから。
ダメって言ったらダメなんだよなぁ…
だったら自分で用意するって言うと怒るし、気難しいお年頃なんだろうな。
そして、ワタシはケーキを食べ損なったが、美味しい朝食にありつけた。やっぱり他人が用意した料理はいいもんだ。後片付けまでしてくれるとか、トキは天使だったか。
リオは部屋に引き籠もってる。
明日ぐらいには出てくるんじゃない?一晩って言ってたし。
だから、ワタシも工房に籠もって骨格のブラッシュアップを、神秘に耐えられる装置を仕込んでおこうと思って働いてたんだけどさ……
「トグロ先輩、暇です。もっと私に構って下さい」
トキに邪魔されてる。
こうなったトキはしつこい、そしてグイグイ来る。普段ならリオに任せるところだが、今日ぐらいは良いだろう。コイツ自身、ずっと頑張って来たわけだしな。ネル相手に良い勝負したんだから、褒めてやっても良いか。
「はぁ…トキ、おいで」
「えっ、デレ期ですか?」
「はいはい、デレ期ですよ〜。ほらそこ座れ」
なんだよそのリアクションは。
今日は無視しない事にした。
覚悟しろ。今夜は寝られないぜ?
今から寝かしつけてやる。
ソファに座らせて、ワタシもその隣に座る。
こうして見ると華奢な体してんな、ちゃんと食って…る、な…うん、図々しいぐらいに食ってんなコイツ。体質か、ちょっと羨ましい。
ワタシは縦に伸びたからなぁ、顔怖いらしいし……
そんなに威圧感ある?怖がられるのは慣れたけどさ、悲しいもんは悲しいだろ。まぁ、それを武器にすることも多いけど……なんならそれで受けてきた利益の方が大きそうだな。
ソファに並んで、軽く肩を抱き寄せてからの…くらえワタシ流褒め殺し。
「よしよし。トキはえらいな、普段から頑張っていて。君にはいつも助けられてばかりだ。ありがとう。今日…さっき?は特に活躍してくれたね、武装を使いこなすトキはとても格好良かったよ。勝負には負けてしまったのかも知れないけれど、その後の君達を見比べてごらんよ。今こうして動けている君と、入院して動けないネル。どちらが優勢だったのかは一目瞭然さ。すぐに復帰出来るトキの方が、総合的には勝っていると、ワタシは思うよ」
「ンフッ…もっと褒めて、甘やかして下さい」
「戻って来てくれてありがとう。トキがここに来てくれたと知った時、ワタシは本当に嬉しかったよ。リオも同じ気持ちだろう。恥ずかしがり屋な彼女では、遠回しな言葉しか言えなかっただろうけど、トキの存在に心から救われているよ。ありがとう。君が期待に応えようと努力を惜しまないことを、ワタシは知っているよ。それをおくびに出さず淡々と任務を遂行している姿は尊敬している。強く美しい有様だと思っているからね」
「満足しました。……離してもらっても?」
はぁ?イヤだが?
ワタシはトキを寝かしつける気でいるから、軽く肩に添えていた手を回し掛けて一気に頭を引き込む。
「あのっトグロ先輩、これは…」
ひざ枕だな。
安心して良い、このソファは長いから足を伸ばせるぞ。
人体ってのは不思議でな、重心を押さえられるとまったく立ち上がれなくなっちまう。諦めて寝てな。
「落ち着いて、ゆっくり呼吸をして。大丈夫…大丈夫…安心して良いよ、気を抜いたって良いんだ。心配はいらない、君は愛されている。躓いたって良いし泣いたって良い、失敗なんていくらでもすれば良い。ワタシ達が付いているから。君を愛しているのだから。怖がらなくたって良いんだ、拒絶なんてしないから、ワタシ達が一緒にいるのだから。……目を閉じて、力を抜いて。疲れただろう、緊張しただろう。今はお休み、ワタシ達が守ってあげる。…大丈夫…大丈夫だから、ワタシ達は君を愛しているから。安心して、ゆっくりお休み」
手のひらで目を覆い隠して、空いた片手で頭を撫でて言い聞かす。リオもヒマリも、チヒロすらも小さい頃はこれで眠らせた、素晴らしい実績を持つ睡眠導入だ。
ワタシのちょっと高めの体温も役に立つ。
静かに囁きながら、トキ撫でて数分。
計画通り…パーフェクトだ。
無事に寝かしつけ成功。
誤算があるとすれば、ワタシの右腕がホールドされてることぐらい。それはつまり、ワタシがこの場から抜け出せない。
ま、片腕動けば十分だな。
ホントは毛布でも掛けてやりたいが、あいにく手の届く範囲にはワタシの上着しかない。無いより良いか、改造して肌触りは最高だしな。
移動できずとも、今のワタシは頭脳労働がメインだから影響は少ない。右利きだから若干不便さは感じるけど、そのうち慣れるでしょうよ。
とりあえずは神秘の器をどうにかしたいんだ。骨格はリオの設計を見てからしか触れないからね。
神秘の器?
ほらアレだよ、ヘイローを持たせる為に必要なんだ。その品質次第で逸品にも凡品にもなるからね。
逸品を用意して最高を狙うか、量産して安定を狙うかの2択から入るんだけど、やるからには逸品だ。素材の関係上、量産は難しいってのも大いにある。むしろそのせいで逸品を目指すしかない。
すでにある手札から切るなら、偽装神秘か、自己解釈の応用になるかな。
安定性を重視するのなら偽装神秘の方が良いけど、拡張性を持たせるなら自己解釈に軍配が上がる。
……いや、安定性を取ろう!
自己解釈は下手したら反転しちゃうからな、あれば自力で身に付けるべき技術だ。うん。
ワタシの使った偽装神秘も、
反転した相手にも赤色のカードが使えたら良かったんだけど、多分使えないんだよねぇ…黒色のカードが、安定していないエネルギーだから変換できてるだけ。理論上、既にそうなったモノには効果が無い。
ただまぁ、今回は普通に正のエネルギー、神秘をそのまま宿した核を作れば良いから難しくない…わけじゃない。反転した神秘をカードに宿したのは、その方が簡単だったからだ。
神秘をそのまま込めると、少しずつ霧散していく。
まだ検証も出来てないけど、キヴォトスそのものに神秘が溶けていくんじゃないかって考えてる。逆に、反転した神秘は異物化、混ざりあえずに固定されるんじゃないかな?
今は黒服が実験してるよ、ワタシも協力してる。
神秘が反転して恐怖だと?
そんなん浪漫に溢れてるだろうが、ワタシも気になる。
で!
神秘を安定して固定させるための器を作ると決めたわけよ。
これも選択できるだけの方がある。
真っ先に思い付くのは間違いなく最悪な手法で、実行すれば間違いなく汚い方のゲマトリア認定されるだろう。ざっくり言えば、ヘイローを持ったヒトを纏めて捏ねて1つにすれば良い。うん、外道。実はワタシ自身を使って似たような実験をしたことがあるから、実現性だけはあるのは秘密だ。
2つ目に、ワタシのカードと同質の物を作る。
そのための材料のストックはあるけど、神秘を貯蓄できる構想を作り直さなきゃいけない。でもこれが1番現実的。
3つ目がオーパーツ探し。
欲しい物が見付かる保証はないし、そもそも存在してるかも分からないから却下したい。でも見付かればそれで1発クリアになる博打だな。
まだまだ出るぞ、4つ目。
機体そのものを神秘の宿る素材で作ること。メリットは、欠損に強く全体的なスペックが高くなりそうな事。デメリットは手持ちの素材ではどう頑張っても作れない事。さらに込める神秘を別途用意しなければならず、相性が悪いとやり直しが発生する。ワタシの技術じゃムリ。
キヴォトス中から技術者を集めるか、ゲマトリアに投げるしかない。後者なら実行できるけど、先生にバレたらどうなるのか、考えたくもない。
アイデアだけなら5つ目。
『鍵〈Key〉』を1つの概念、形式的な記号と捉えて機体へ神秘を貼り付けること。これならワタシでもギリいけそう。ただ、その後どうなるかが分からない。暴走とかされても困るし、最終手段になる。
……考えたけど、まぁ無難に2つ目の案を使うか。
貴重な素材を使うから、調達しないといけない。手持ち分では万が一の時に足りないかも知れないからね。
ワタシ、無駄に金は持ってんだよ。
使い道も多いけど、入ってくる額が頭イカレてる。
ブラックマーケットで悪人相手に足元を見まくったぼったくりショップを開いてるし、どこかの厄災の狐さんが略奪してきた物品を綺麗にする手数料も取ってる。大丈夫大丈夫、悪人相手なら何しても良いのがキヴォトスだから。うん、倫理観とかクソ喰らえだしな、大丈夫大丈夫よゆーよゆー。まだ1回しかバレてないし。
これが収入の2割。
残りはおなじみゲマトリア産だ。
特に大きいのは黒服とマエストロだな、マエストロとはちょいちょい合作とか作ってて、その報酬を受け取ってる。本人がお金要らない派だから、ほぼ全部がワタシに流れてるぞ。なぜかアイツの作る普通の芸術作品の販売もワタシがやってて、売れた金額の9割ぐらいがワタシの物になる。なんで?
これが収入の3割。
そして全体のほぼ半分を占めてるのが黒服。
黒服はなぁ…実験の協力とかの報酬もあるけど、見付けたオーパーツとかを買い取って貰ってる。今回のホドも、アイツが引き取ったしな。毎回、振込額をみて冷や汗流すぐらいには入ってくる。正直、怖すぎる。札束で殴られてる気分だ。マジでどこにそんな金あんのってぐらい振り込まれるんだよ。前に減らしてって頼んだら増えた。ありがた迷惑だ。それ、先生に使ってあげろよ。
そんなわけでワタシは、人生数回分ぐらいの貯蓄がある。どうだ、凄いだろう?出どころが怪しい事に目を瞑れば最高の資産家だ。
表の市場だけじゃ、素材は多分揃わないからブラックマーケットでも探しておく。
今欲しいのは鉱石類と薬液の一部神秘伝達が可能な素材達。それと、神秘を貯蓄なり別で保存できる方法について、役に立ちそうな論文があればそれも。
「おっと…ウデ抜けたな。ちょいと失礼」
「…ぅんっ……んん〜……?」
「ごめんな、まだ寝てて良いよ」
トキから離れて、一旦リビングへ戻る。
思ったよりも時間が経ってた、もう昼じゃん。
適当に準備するか。
ワタシはまだ甘い物が欲しい。糖分が足りない。いっそのこと砂糖を直食いしてやろうかってぐらい甘味が欲しい。
それはそれとして、お昼ご飯には肉を食いたい。
そうだ、ケバブが食べたい。ドネルケバブしたい。ホントは肉を漬け込んで一晩置きたいけどな、我慢しきれない。下味強めにすればいけるやろ。
でも少しは漬け込んでおく。今から調理マシンを用意だ、あるもん使えば1時間はかからんだろう。
肉漬けて〜置いといて〜
モーター持ってきて〜回転台作って〜
電熱ヒーター持ってきて〜
リミッター壊して火力を上げて〜
心棒消毒して〜肉乗っけてぶっ刺して〜
「オイオイ、天才かよワタシ」
ものの1時間と少しでドネルケバブマシンの完成だ。しかも2台。
我ながらデザインだけは完璧だな、デザインだけは。
換気はぁ…なんとかなるか、窓開けて扇風機回しとけば大丈夫大丈夫。
それぞれに肉をセッティングしたら、いざ回転!
ちなみにだが、使った肉はだいたい15㎏ある。絶対に余る、絶対に食べ切れない。間違いない。でも作る。余ったら知り合い達に配るから。
「おはようございます……何してるんですか?」
「おはよ、今からケバブ作るぜ」
「???」
寝起きで肉はきついか?
でもトキ、ワタシの朝ご飯にTボーンステーキ出してきたしイケるだろ。
2台ある片方を、倒さないように気を付けながら移動させていく。そのために足に車輪を付けた。
そして、なんの為に2台作った思ってる?そんなの決まってる。
「リオー!扉の前に昼ご飯置いとくね!火ぃついてるから、火事になる前に消して食べてねー!」
マシンを自動運転にしたし、自動で削ぎ落とす機構もちゃんと動いてるな。指差し確認、ヨシ!
ワタシはリビングで、トキと一緒に食べよう。
「トグロ先輩、お客様です」
「またアカネか?」
「いえ、チヒロ先輩とノア先輩です」
「あっ、やべ」
「既にこの家の前まで来ているそうです」
やっば、忘れてた……
この場所知ってるのはチヒロ。
ノア連れて凸…に、逃げてぇぇぇ……
多分…間違いなく、絶対怒られるだろうなぁ。
完璧にワタシが悪いから言い訳できねぇし、甘んじて怒られよう。
「入るよ、トグロ」
「お邪魔します」
「「何して
「ドネルケバブを作ってた。一緒に食おうぜ」
「トグロ先輩、付け合せの用意が終わりました」
「おう、ありがとな」
コイツ等、ワタシもだけどさ、食事中は喋らないんだよなぁ…
どうせこの後怒られるんだろうし、沈黙がツライ。でも肉は旨い。スパイスの調合が上手く出来てたみたいだ、いつもならガッツポーズして調合レシピを保存してるところだよ。保存したレシピを使ったことはないけどな。
「ごちそうさま。じゃあトグロ、そこに正座して」
「お説教の時間ですよ、トグロさん?」
「お手柔らかにお願いします」
「リオ様が呼んでいる気がするので、私は席を外します」
うん、まぁ…トキは関係ないもんね。
「さて……トグロ。私達が来た理由は分かるよね?」
「チヒロとノアを使うだけ使って、結局なにも起きなかったから………かな?」
そうなんだよ。
この2人をさんざんこき使って働かせて、結局ほとんど無駄に終わったんだよ!
ごめんて、ワタシの行動そのものがリオとヒマリの保険だったんだからしょうがないじゃん。保険の保険は使わない越したことなくない?そんなもんだって。
「違いますよ。私達は、トグロさんを労いに来たんです」
「ほう…ほぅあ?」
「あのさ、トグロ。私達は報酬を貰ったから味方な訳じゃない。自分の意思で、助けになりたいからトグロに協力したんだ」
んん~…んんん~……
つまり怒ってないのか、良かった。
「まあ、お説教しようとは思ってたけど……いざトグロを前にしたら、何よりも伝えたい事があってさ。トグロ、長い間頑張ったね。お疲れ様」
「んなぁぁぁ……」
やめれ、撫でるな。
ワタシはそんなキャラじゃないぞ。
まあ別に振りほどいたりはしないがな。チヒロが頭撫でてくれてるんだぞ、嬉しいに決まってるじゃないか!
「燃え尽きたように無気力になってしまわないか心配でしたが、取り越し苦労でしたね。もっとも、そんなトグロさんは想像もつきませんが」
「無駄な心配させたな。やってやったぜ感はあるけど、まだ終わったわけじゃない。むしろこっからが本番まである。ワタシの理想はもう一歩先だからな」
おおう…まさか普通に心配してくれてたとは……
ヤベェ嬉しい。
ワタシは2人を信用して仲間になって貰ったから当然だけど、2人からしたらいきなり声掛けられてさんざん働かされたようなもんだからな。
最悪、クソ上司として嫌われるぐらいは覚悟してたもん。
覚悟はしてたけど、嫌われてたらマジ凹みする自信がある。ワタシは2人のことが大好きだからな。
チヒロに関してはヒマリに続いて付き合いの長さランキングの第2位だから、嫌われてたら人間不信になる。ノアは2年くらいか、ワタシがセミナーに誘ったのをキッカケに話すようになった。ユウカはリオが連れてきた。
「はぁ…まったく……トグロ、ちゃんと帰ってくるんだよね?」
「モチロン。ワタシは寂しがり屋さんだからな」
「これなら安心ですね。…ふふっ、後でユウカちゃんからお説教を受けてくださいね」
「またね、トグロ。顔見れて良かった、遅くならない内に戻って来なよ」
「おう、心配かけて悪かったな。来週か再来週を目処に戻るから安心してくれ。それと、送ったリストのメンバーを気にかけてやってくれ、ワタシ達が迷惑かけた一覧だ。それとなくスケジュールを流してくれると助かる」
2人には最後の仕事を頼んでおく。
これでこの件に関しては、ワタシから頼むモノは無くなった。
さっさと義体を作って、謝罪行脚に行かないとな。早くしないと誠意に欠けるだろう。
「ああ、うん…多分誰も気にしてないけど、気にしておくよ。じゃあね、また」
「早めに戻って来て下さいね。それでは失礼します」
「気ぃ付けて帰れよ〜……あっ待て!肉持ってけ!」
「はっ?えっ、いらない」
「いいからいいから、ノアも持ってけ!」
無理矢理ケバブを2〜3㎏ずつ持たせてから帰らせた。
これで半分は消費したな、ヨシ!
かなりの気分転換になったし、また工房に籠るか。
やってるときは楽しいんですけどね
なんも思い付かないから、参考までに……
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