どうせなら、笑っていようぜ。 作:インチネ・ズィ・マゼタルーノ
そろそろ地の文が、自我を持つ頃かな?
某所にて、浪漫を追い求める阿呆が集まっていた。
「第一の使徒、ヒマリンが捕まったようだな。この状況、第三の使徒、ウターハ…キミはどう見る?」
「所詮ヤツは我等の中でも最弱、四天王の面汚しよ…ところで第八の使徒、トュグロゥ。キミの仕事の進捗はどうだい」
悪の幹部ムーブをキメているのは、暴走組織の浪漫担当の赤蛇トグロと、暴走組織の浪漫担当の白石ウタハである。そして先程、暴走組織の浪漫担当をしていた明星ヒマリが捕まったとの連絡を聞いたのである。
浪漫担当しか居ないし、3人なのに四天王だし、使徒も番号も関係ない。これら全てに理由は無い。彼女達は、脊髄と口先だけで会話をしているのだ。
そんなバカみたいな会話をひとしきり堪能し、満足した2人は何時もの調子に戻る。
「それじゃ、そろそろヒマリを助けに行くか」
「それは私に任せておくれ。トグロには、我等が勇者に操縦方法を教えてあげてくれ」
「あーそうだな、よし!任せろ!」
ヒマリがシールドルームから出てくる、少し前の話である。
「お掃除しゅーりょー!ねぇねぇキミ、リーダーにここまで付いてくれるなんてスゴイね!」
「そういやそうだな、確かレイっつたか?根性あるなぁおまえ」
「ぜぇ…ぜぇ…あ、あざっす…はぁ、コヒュー……ゲホッゲホッ、はぁ…」
建屋内を駆け巡り、不審ロボットを破壊し、目に付いた生徒を片っ端から叩き潰して来た彼女達。
よーやったなぁ、とケラケラ笑うネルとアスナは、全力で息切れしているレイに関心を寄せていた。
「にしてもホント、やるじゃねぇか。援護射撃も結構上手かったし、鍛えりゃイイとこまで行くんじゃねぇの?あたしらが鍛えてやろうか?」
「はぁ、はぁ、いえ…自分、野球部なんで…はぁ…特訓とか、今はスミレ、はぁ…先輩だけで限界なんで…」
「あっ、なんだおまえトレーニング部か!どーりで体力あると思ったわ」
「スミレちゃんかぁ~、最近はスタジアムの方で見たよ。楽しそうにボール投げてた!」
「はぁ、はぁ〜って…私は、野球部ですっ!」
掃除を終えた彼女達は、割と気を抜いて部屋へ戻る。
戻るまでに、野球部であるとの主張は認められずレイはトレーニング部だという事になった。なんか本人も、最近ずっとトレーニングばかりで野球に触れていない事実に気付いて混乱している。アレ?ホームランを打つ為にトレーニングを…あれ?トレーニングの為にホームランを…ん?
「ふぅ~…あっつい…」
一歩離れて、エイミは空調服を使用して放熱していた。
「戻ったわね。悪いのだけれど休む時間はないわよ。これから、貴方達にはヒマリの確保に向かってもらうわ」
「仕方ねぇな」
“私も着いて行って良い?”
「構わないわ。ト…ユウカ、護衛を頼むわ」
「任せて下さい。さぁ行くわよ!」
「“おー!”」
「おまえが言うのかよ…」
「相手はあの先輩達ですよ?こう言うのは気持ちで負けたらズルズルとそのまま負けるんです、行きますよ!」
「“おぉーっ!!”」
一周回ったユウカは無敵だ。
相手が歩く指定暴力装置だろうと関係ない。気合い入れて行くぞー!おー!
この部屋に残っているノア以外の生徒達は、そんなユウカを可哀想なモノを見る目で眺めていた。ノアはニッコニコだった。
そんな風に見られていたとはつゆ知らず、先生とユウカを加えたアタッカー部隊はヒマリが居るであろう場所に向かって移動する。
幸いにもヒマリの車椅子には現在地を知らせる機能が、心配性な幼馴染の手によってこっそり仕掛けられている為、それをチョチョイとハッキングする事によって位置を割り出している。ヒマリ本人はこの機能の存在を知らないのだが、こちらは知らない事を知らないので十分に警戒している。
“それで、どうやってヒマリを捕まえるの?”
ふと、そう言えば聞いていないなと先生が問う。
自然とリーダーになっているネルも、そういや言ってねぇなと気付く。
「いつも通りっつても分かんねぇか。あたしとアスナが突っ込んで、そのままふん縛って確保。エイミとレイに周りの警戒は任せる。そー難しくねぇ内容だ、まぁ…あいつんとこに行くまでがメンドーではあるけどな。その辺はあたしより、エイミの方が知ってんじゃねぇか?」
「え?…あ、ごめん聞いてなかった」
「おい」
なんだかんだで最近はエイミもC&Cと行動する事が増え、何となくそれぞれの人となりが分かってきた。
初対面時はそれなりに気を使っていたのだが、先輩達は割と寛容であり、明らかに礼節を欠いていなければ結構許してくれる。そして噂以上にまともで、話が通じるのだ。
つまり、それなりに気を抜いても大丈夫なのである。
それが信用の証。今回のコレは礼節を欠いているのかどうか、まだ議論の余地が残っている。
「ったく…もっかい言うからよく聞いとけよ」
「うん」
「おまえら見張り、あたしら突入。分かったな?」
「ばっちり」
そして、ヤレヤレだぜ…とでも言い出しそうなネルはもう一度簡単に教えてくれる。優しい先輩だ。
「止まれ!」
先頭を歩くネルが突然制止を呼び掛け、一気に緊張が走る。
数秒程硬直すると、物陰から見覚えのあるロボットが現れた。
白いボディが照らされ輝く、雄々しくも美しいミレニアムの猛獣。自走するイス、
ネルは先生を、アスナがレイを引っ張り示し合わせた様に身を潜めて向うの出方を伺う。
「もう。遅いではありませんか!何故もっと早く助けに来てくれなかったのですか?お陰で危うく、暖かい毛布の中スヤスヤと美少女の寝顔を晒す所でしたよ」
「まぁまぁ、助けに来たんだから良いじゃないか。今頃はトグロがアリスに操縦方法を教えているハズさ、急いで拠点に戻ろう。待ちに待った試運転が始まるよ!」
「ふふっ、思えば長い道程でした…ですがついに、報われる時が来たのですね。こうしてはいられません!ウタハ、もっと急いでください!」
どうやら向こうはコチラに気付いて居ない様だ。
しかしそのまま2人が通り過ぎるのを待ち、姿が見えなくなると緊張を解いて各自が物陰から出て来て集まる。
“捕まえないの?”
「あの場でどっちも捕まえてぇんだが…向こうにはまだトグロがいんだろ?あいつが1人になると、本気になっちまうかも知んねぇからな…」
「本気のトグロちゃんって、すっごい捕まえにくいんだよね〜。もうね、大フィーバー!って感じ?」
「トグロ先輩って、真面目な時と遊んでる時の差が凄いからね」
「あの人、そんなに凄いんですか…?」
“あぁー…なんか分かるかも”
この場合、捕まえる順番も重要なのである。
あのクソは誰かと一緒なら足並みを揃えるが、1人になった途端好き放題する事は分かりきっている。しかも特に何も考えずに浪漫だのなんだのと言って、訳の分からないアイテムが大量投入されたらたまったものではない。
確かに、モノを作るだけならウタハの方が、電子戦や参謀をするならヒマリの方が厄介ではある。しかし、どちらも一定以上の水準で実行可能かつそれ以外にも守備範囲の広いトグロは、面倒臭さだけなら2人を凌駕するのだ。
ヤツが自由にならないように、ここではあえて2人を見逃した。
問題はない。
結果的に、1人目にヒマリを捕まえさえすれば良いのだから。
「で、とりあえずあいつらを追うぞ。1人になった瞬間に仕掛ける」
“でもヒマリも厄介なんじゃないの?”
「んー、別にそんなでもねぇな。ヒマリのヤツって、こーゆう騒ぎでは結構捨て駒扱いだし、割と簡単に捕まるぞ?」
“捨て駒!?”
「ああ。あいつが強いのは、騒ぎが始まる前の作戦を立てるとかだからな。今回はイレギュラーに強ぇトグロも居るし、メインはエンジニア部とかだし、もうあいつのやる事がねぇだろ」
“はぁ〜、なるほど”
先生は、思ってた以上にきちんと考えられていた事に感心した。何となく捕まえやすさ順かなと思っていた。別にそれも間違いではない。
説明を聞いて納得したので、そろそろ追いかけよう。
ついでに敵の拠点の場所を見付けられると非常に助かる。むしろ、こうなったからには何としてでも場所を確認するくらいの算段でいる。だいたい、相手の行動待ちってのが気に食わねぇ。なんであたしがあいつらに合わせてやんなくちゃなんねぇんだ…?
少しずつ、ネルのフラストレーションは溜まっていく。
既に2人の姿を見失っているが、チヒロとリオのナビゲーションによりヒマリを見失う心配は無い。
「じゃあ、行ってくるね」
“よろしくね”
ヒマリが移動を止めたので、突入可能かを確認するためにエイミが潜入に向かう。彼女は単独任務を多くこなした実績があり、こういった作業は安心して任せる事が出来る。ただし、C&Cではない。
数分後、先生の持つ端末にエイミから通信が入った。
『あ、もしもし先生?皆も居る?』
“うん。同じ場所で待機してるよ”
『部長、今目の前で寝てるんだけど、このまま捕まえても良い?』
カメラ通話に切り替えると、インカメラでエイミと眠っているヒマリが並んでいる光景が映った。
おもむろに視線をネルに向けると、大きなため息を吐いて頷いた。
“良いって”
『分かった。…「んぇ…?あれ、エイミどうしまし──モゴフゴー!…このまま持って帰るね』
“気を付けてね”
警戒していた罠等も無く、簡単にヒマリは捕まった。
しかもそのままエイミに持ち帰られた。
なんと呆気ない確保劇だろうか、数行のナレーションだけで済ませても良さそうなレベルの呆気なさである。いや、それ以下の文字数で十分な程の手軽さであった。
このままもう一度ヒマリをシールドルームに放り込んでも良いが、この子はこう見えて結構話が通じるタイプである。どうせ問題児側に居たのも、楽しそうとか誘われたのが嬉しかったとかそんな理由だろう。
ヒマリを連れて仮拠点へ帰還する。
お説教回避をチラつかせれば、多分スパイとかやってくれる。だって楽しそうだし。
「無事にヒマリを捕まえたようね。良くやったわ」
「モゴモ、モゴモゴ」
「敵の居場所を絞ったのも僥倖ね。次はトグロの確保に動きましょう」
「ムグー!モゴ」
“…そろそろヒマリを放してあげない?何か喋りたそうだよ”
「ぷはぁっ!全く、もうsゴ!??フゴゴゴゴゴ!!」
「ふふっ…」
“ちょっとエイミ!?”
後輩が反旗を翻しているが、周囲は特に止めたりしないし気にも掛けない。あの先生でさえも、突然の凶行に驚きはしたがそれ以上は何も言わないあたり、これは見慣れた日常の光景である。
エイミが良い仕事をしたな、と満足したので改めてヒマリを解放する。
「もう!いきなり何をするのですかエイミ!いくら心の広いこの私と言えど、何事にも限度と言う物があるのです。分かっているのですか?そもそも、人の話を遮るような子に育てた覚えはありません!何処でそんな野蛮な事を覚えてきたのですか全く!これだから最近の──…」
何か言っているが、ここでは聞き流しておこう。
「──という訳でヒマリ、やってくれるわよね?」
「その様に私は……おや、やっと話が終わりましたね。全くこれだから貴女はユーモアが欠けているのですよ、もう少し私を見習ってみるのはいかがでしょうか?あぁ、それが出来ないから──」
「返答は『YES』か『はい』の2択よ。協力しなさい」
「嫌だ、と言えばどうなりますか?」
「エイミ、後は任せたわ」
「うん、任せて」
「あ、ちょっ…せめて喋れる様にムゴ!モゴー!」
“よ、容赦無いね…”
「これ以上は時間の無駄だもの。そろそろチヒロ達がトグロの居場所を掴んでる筈でしょうし」
三度毛布に包まれ、今度はそのまま部屋の隅へ移動させられた。暫くはモゾモゾと動いてはくぐもった言葉を発していたが、数分後には沈黙していた。静かになって不安になったエイミが様子を見ると、穏やかに寝息を立てている。
どうやら疲れていたらしい。
「あっ!トグロさんから連絡が来ました。…ふむ。どうやら、東実験棟の地下に居るらしいです」
「トグロの端末の反応もそこにあるから、多分間違いないと思う。でも罠の可能性には十分に気を付けてね」
「しゃあ!あのアホをぶっ飛ばしに行くぞ!」
ピロン!と軽快な音を奏でたノアの端末に、トグロからメッセージが届く。先程、ダメ元で何処に居るか聞いてみたところ、普通に居場所を送ってきてくれた様だ。
大急ぎでチヒロが確認して、その情報がほぼ間違いないと分かる。
コレが罠なのか否か、まるで判断が付かない。
あの阿呆の事だ。
何も考えずに返事をした可能性と、様々な罠を張り巡らせてこちらを嘲笑う為のダミーの情報である可能性の両方が、ほぼ同確率で存在している。
ただしどちらにしても、その場には居るのだろう。アイツはそういうヤツである。
「必要な物があれば言いなさい。可能な限り手配するわ」
「ハイハーイ!トグロちゃんのケーキが食べたーい」
「…捕まえたら作らせるわ」
「おっ、じゃああたしも欲しいジャケットがあんだけどよ」
「……捕まえたら用意させるわ」
“1/16スケールの超精巧可動フィギュアが…”
「あの…捕まえる為に必要な物を言ってちょうだい。個人的に欲しい物なら、言えばトグロが用意するわ」
あわや大喜利大会が始まろうとするその瞬間、外からけたたましいサイレンが鳴り響く。聞くもの全てへ不安を煽るかの様に不気味な音色が、ミレニアムを覆う。
慌てて外へ注目する子と、システム確認に走る子、びっくりして固まる子に分かれて行動を開始する。
「やられた!一部のシステムが乗っ取らられてる!」
「そんな!?ヒマリ先輩は無力化したはずじゃ…」
「…ごめん、ヴェリタスは私以外皆あっちだから…」
「セミナーからもコユキが出ているわ。それに、システムのハッキングならトグロだけでも可能よ」
「昔、みんなで仕込んだからね…色々…」
何を隠そう、あのトグロにデジタル関連のアレコレを教えたのはこの子達である。めちゃくちゃ褒めてくれて認めてくれる幼馴染が、自分達の得意分野について知りたい教えてと言ってきたのだから、喜んで教えてしまうだろう。しかも、上達してきても良い感じに自分達よりは下手なままなのだから嫌いになれないし、それでまためちゃくちゃ褒めてくれるからモチベーションが上がるのなんのって。ねぇ?
ここまで出来る様になった事には素直に感動するが、やらかしている内容がコレなだけに複雑な心境である。
だがまぁ、知っていた事でもある。だってトグロだからね、仕方ないよね。
「おい、なんか出てきたぞ!……黄色い車?」
特に会話への興味が無く、外を見張っていたネルが声を上げる。彼女の視線の先には、様々な大きさのロボットがミレニアム研究地区を練り歩いていた。
その光景を窓から眺める一同。
先頭を走る黄色いスポーツカーは、突如として複雑な変形機構をクルクルと繰り返し、瞬く間に一体の人型ロボットへと姿を変えたのだ。
“トランス◯ォーマーだ!!トランスフォームしたよ!あっちのロボットは四脚、逆関節、強化外装、外骨格………ハッ!人型機動兵器だよアレ!!私も乗りたい!!”
「ちょっと先生!私達はアレを止めるんですよ!」
“何をいっているの?止めるなんてとんでもない。アレは人類の夢だよ!”
「先生こそ何を言っているんですか!?」
数多の作品から引っこ抜いて来ましたと言わんばかりのラインナップだ。しかし全く同じではなく、それぞれに新たな個性が見られ、多大なるリスペクトを感じずにはいられない。
コレには先生もニッコリである。
『あー…あー…テステス、イイねぇオッケー』
サイレンが止まり、次に響き渡るのはヤツの声。
『やぁ諸君。ワタシだ、赤蛇トグロだ。今からワタシを含めた【超浪漫連邦ミレニアム支部】はハイパーDXウルトラミラクルなパレードを行う。ぜってぇ乱痴気騒ぎになるから、みんな見に来てくれよな!』
その口振りは、とても機嫌が良さそうだ。
なんだその連邦って…ミレニアム支部って他にもあるのかよ…そのパレードって何だよなにも伝わらねぇよ…と、この場に居る非常に困っている生徒達の反応は、実に冷ややかであった。
ただ、コレから問題行動が起こる。
それだけは確かに分かる。
『やぁ諸君。私だ、白石ウタハだ』
放送はまだ終わらない。
第二の問題児がマイクを取り上げたのである。
何を言いふらすつもりだ、警戒度が更に上がっていく。
『私達【超浪漫連邦ミレニアム支部】は、たった今からセミナーへ侵攻する。要求は1つだ、良く聞いておいてほしい』
エンジニア部の部長による驚きの宣戦布告!
緊張が走る…っ!
『私達の要求は1つ!リオ会長、アビ・エシュフの仕様書及び図面の公開だぁ!!私達はあの素晴らしい強化外装を、更に良い物にしたい!作りたぁい!演算領域のブラックボックスを公開するんだぁー!!あと部費をもう少し上げてくれー!!』
少女達は察した。
あっ…これ、マトモに取り合わなくて良いやつだ。
なんも思い付かないから、参考までに……
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