どうせなら、笑っていようぜ。 作:インチネ・ズィ・マゼタルーノ
違う、僕はアンチノミー!
と、これをケイちゃんに言わせたかっただけのイベントでした。
(ネタバレですが、ケイちゃんはこんな事言ってないです)
今さらですが、誤字脱字報告はとても助かっています。
ありがとうございます!
モニターに齧り付いている阿呆共
『Justice Alert SCRAMBLE!』
「うおぉぉー!キタキタキタキター!最終決戦だぁー!」
「はぁ〜…エンジニアで、良かった…」
「ムゴゴゴゴ!???フゴー!?!!」
「Justice Alert SCRAMBLE!」
ケイは、自身の中にあるアプリを起動し、恥を忍んで高らかに宣言した。
が! しかし、何も起こらない。
フリーズ!
理解不能!なぜ?
ケイの中では思考が嵐を起こし、ヤツ等への怒りへ変換されていく。
「あのバカ共…!」
この怒り、一言伝えなくては気が済まない。
ケイは端末を操作して、阿呆共へ繋げようとする。
“な、なんだあれは!!”
突如、先生が上空を指差して大声を上げた。そのわざとらしさは、後世に語り継ぐべき大根役者っぷりである。自分を漫画やアニメのモブに見立てて、この状況をめちゃくちゃ楽しんでいるのだ。大した胆力である。
それに釣られるようにケイも空を見上げると、よく分からないコンテナがこちらに向かって飛んで来ているではないか。
「……チッ」
欠片も認めたくはないが、あれにはどうやら自分が乗り込むロボットが入っているらしい。忌々しげに睨みつけると、ケイは続けて言葉を紡ぐ。
「Booster…Check! Joint set…Check! System…ALL GREEN! C'mon! Everyone's HERO!」
ノリノリで起動口上を読み上げてる様に見えるが、本心はとても嫌がっている。恥ずかしすぎてヤバイ。ケイは意地でも表情を変えたりはしないが、耳は赤く染まっている。そこまでの気は回らなかったらしい。
飛翔するコンテナが徐々に高度を下げ、底面を開く事で中身をケイの下へお届けするゥ!
落下してきたのは1台の大型バイク!
そして何故か一緒にコンテナとそれを飛ばしていたブースターも落下してくる。普通に、あの質量に押し潰されれば無事ではすまない。ケイは青褪めてその場から離脱を試みた。
「は?え、ちょっと待ってください!危な───!!」
あわや地表へ激突するかと思われたその時、バイク、コンテナ、ブースターがそれぞれ変形し、流れるように再び結合する。
何故なら、コレは合体ロボだからだ!
取り敢えず、機械に圧し潰される心配が無いと気付いて胸を撫で下ろしたケイは、不快気な様子を隠すこと無く露わにした。
そりゃだって、無事なら無事で、コレに乗り込んでまだまだ起動口上を言わなければならないからね。不憫でならないね。
そんな感じで降臨したロボットは、オレンジとライトグリーンを基調に赤いランプや黒いラインで装飾され、全体的に丸みを帯びたフォルムをしていた。
更に透明感のあるオレンジ色のマントを翻すその姿は、主人公と呼ぶよりも、ヒーローだとか正義の味方と呼んだほうがしっくりくるデザインである。
そんなロボットは膝を付いてケイに向かって腕を伸ばし、胸部の乗り込み口を開いて待機モードになった。
「ここまで来たんです…やってやろうじゃないですか!」
ケイ、自身のボディに標準搭載されている機腕を2本展開し、どこぞの某クソ蛇の様な動きでロボットへ乗り込んだ。
「まぁ、乗り心地は悪くないですね」
シートへ座り展開した機腕で身体を固定。ケイの首周りに設置されている各接続ポートを開いてロボットと有線接続をする。これにより手動操作では賄えない、より細やかな動作を可能にするのだ。
「Mode:COMBAT! Settings Check…FULLARMOR! 悪逆に震える人々を守るため! 鋼鉄の体躯に心が宿る! GO!
言い切ったぞ…
言い切ったぞ!
ケイにとって、最大の山場は越えたのだ。
後はもう、消化試合である。
この状況を客観視すると羞恥で死んでしまうケイは、口上を言い切ると同時に背面のブースターをフル稼働させて
小手調べの右ストレートを、よく分からない角の生えた顔面に叩き込もうと意気込んでいる。
「むっ先制攻撃持ちですね、ですがアリスも負けません!」
アリスが狙ったのは同じく右のストレート、クロスカウンターである。両者の体格は、アリスの方が一回り大きく、このままではリーチの差によってケイが打ち負けてしまう。
「グラップアンカー!*1」
「あわわわ!?」
ケイの操るロボット〝JUSTIFY〟、正式名称は適応型武装兵機JUSTIFYだ。仕様書には書いてあるが、恐らく誰も覚えていないだろう。JUSTIFYでいいし、なんならジャスティファイで良い。ケイ専用に作っているから、ケイのロボットでも通用する。
そのジャスティファイの両肩から、振り被った
「まだです!」
腕がダメなら突撃あるのみ。殴れないと判断するや否や、戸惑うこと無く更に一歩深く踏み込んで体当たりを繰り出した。その思い切りの良さは評価に値するが、相手が悪かった。
アリスロボのコンセプトが大型人型兵器のロマンの詰め合わせなら、ケイロボは合体兵器のロマンの詰め合わせだ。
「カモン!リアクティブアーマー!」
アリスが一歩踏み出すのを見て、ケイはそれへの対応策をとる。翻るマントが身を包むと、そのままオレンジの鎧へと変化した。
「しばらく大人しくなさい!」
両者のヒト超えた反応速度対決は、ケイが制した様だ。アリスロボの横っ面に1発叩き込み、勢いそのままに当身も入れておく。
オレンジの鎧が接触と共に弾け、爆発の追加ダメージが入る。
その代わり、オレンジの鎧はポロポロと崩れ落ち、元の姿へと戻ってしまった。
「所詮は使い捨てですか…」
若干名残惜しそうに鎧の残骸に想いを馳せ、警戒を一層強めて殴り飛ばしたアリスロボに目を向ける。
ケイは何故か知っている。
人型ロボットは、ダメージを受けてからが、ボロボロになってからが強いのだと。
ゆらりと幽鬼の様に起き上がり、脱力のまま顔を上げてケイを見つめるアリスロボ。普通に怖い。
「ふーっアリス、行きます!輝け!勇者の
「く…猪口才なッ!」
いつの間にやら取り出していた、光る剣。特別な高エネルギーを持っている訳ではなく、ただ光るだけの、めちゃくちゃ硬い棒である。こういうのは気持ちが大切なのだ。
武器を持った動作を、事前に某クソ蛇と共に特訓していたアリスは淀みのない連撃を繰り出していく。光る棒を振る度に、ブォン…ブォン…と音が鳴るのは仕様である。色は薄青だ。
「ほっ、やっ、勇者・三連突き!」
それはもう楽しそうに剣技を披露するが、尽くを回避しているケイ。ロボスペック的に数発程度は当たっても問題ないが、彼女の高いプライドが被弾を嫌がっている。あと、このロボットそのものはそれなりに気に入ったので、あまりキズを付けたくないらしい。乗りはしないが、
「カモン!ハルバード&ランチャー!」
光る棒とステゴロでは流石に相性が悪い。懐にさえ入れば…と考えていたが、ふざけている様でアリスにも技術があった。
諦めて武器を呼び出したみたいだ。
「第二形態ですね、ケイ。ですが、最速で倒せば間に合いません」
「それを待つのが
「いいえ、コレはプレイングです!勇者・薙ぎ払い!」
横薙ぎに光る棒を振り回して追撃を行うアリス。
やめて!もう周囲の建物の耐久はゼロよ!
この子、
その攻撃が振るわれる直前、光る棒の進路上に障害物が現れた。上空から1本の棒が落ちてきたのだ。地面に突き刺さったソレは、上手くアリスの攻撃を受け止めた。
「どうやら、決着を付ける時が来たようですね」
コレはもう楽しくなってきたぞと、アリスは一度足を止め、その棒を拾う様に促した。気分は本気を出した魔王に挑む勇者だ。お互いに、好敵手として認め合うタイプのヤツだ。
「…そうですね、さっさと終わらせてお説教です」
棒を引き抜き掲げると、1台の大型ヘリコプターがその先端へ刃へと変形しながら取り付く。プロペラは刃へ、胴部は分割されて両肩へ取り付いて銃口を剥き出しにした。
初めての筈だが、堂に入った動きでハルバードを構えて好戦の意を示す。
世界が空気を読み、大きめの瓦礫が崩れ落ちて開戦の合図を行う。
「やぁー!」
大きく振り上げてからの振り下ろし。
最後の一撃とあればコレしかないだろう。アリスは全力で叩きに行った。
「……」
最後の一撃なら確かにそうかも知れないが、これは相手がこのノリに乗ってくれたらの話だ。ケイはパイロットでもロボット兵でも浪漫の使徒でもない、リアリストである。
「えっ…ケイ?」
アリスの振り下ろしに合わせて少し身を引いて躱し、生まれた特大の隙にハルバードによる重たい一撃を叩き込んだ。
最後の、困惑に満ちたアリスの呟きが哀しみを誘う。
そんな事を無視して、ハ/ンプになってしまった機体からアリスを摘み上げ、ジタバタするアリスが落ちないように気を付けながらリオへ報告する。
「リオ先輩。アリスを確保しました。コレで何とか事態の収拾がつきませんか?」
『本当に、良くやってくれたわね…助かったわ。他の機体も、もう残っていないわ。首謀者は捕まえているから、コレからは被害の確認と片付けだけよ』
「分かりました。では帰還します……アリス。今回ばかりは擁護出来ません。モモイ共々、しっかりと罰を受けて反省しなさい」
「うわぁぁん!負けてしまいましたぁぁ!アリスのハンプが…ハンプがぁぁぁ!!」
「はぁぁ〜…」
壊れたロボットを見て泣いているアリスは、今ちょっとそれどころではない。大切な仲間がやられてしまったのだ、この悲しみは何物にも代えられない。この子が割とちゃんと怒られるのは、もう少し先である。
さて、もう自分のする事は無いだろうとケイはジャスティファイから降りようとしたが……
『降りるのは待ってもらえるかしら?』
“ちょっと待った!!”
そこへ待ったがかかる。
リオと先生だ、先生のインカムは壊れてしまっているようで、リオの声が届いていないらしい。
『それだけの大きさと出力があるのなら、大きな瓦礫や壊れた機械の運搬を手伝ってほしいの』
“ねぇねぇ!そのJUSTIFY、私も乗れる?乗ってもいい?肩に乗せて写真、そうだ写真撮ろう!”
安心してほしい。
ケイは2人程度なら同時に話されても処理が可能だ。
「残骸の運搬ですね、どちらへ運びましょうか?」
『取り敢えず、大きいものは広場に集めてちょうだい。そこからは大型の重機で片付けていくわ』
「分かりました」
“アレ?ケイちゃん、ケイちゃーん!私も!私も乗せて!!”
ただし、反応するとは限らない。
色々な面倒から解放されたケイは、あの阿呆共…特に某クソ蛇にどんな仕返しをしてやろうかと考えている余裕がある。だから、関係のない事はスルーしてしまうのだ。あのテンションの先生が、なんか面倒だなと思っているのもある。
“あ、ユウカ?待って、せめて写真だけでも!あぁーー”
先生は安全の為、ユウカに引き摺られて戻って行った。
さて、瓦礫撤去でもしますか…と作業を始めたケイは、ピタリと動きを止めた。
「……停止コマンド…?」
なんとこのロボット、起動時だけでなく停止時にも口上を要求している。
瓦礫は頼まれたからやる。やると言ったからには、今さらやらないと言う選択肢は存在しない。
だが、撤去作業が終了した時にもあの口上を言うのか…と。そしてその場には、恐らく全員が、あの阿呆共も揃って居るだろう。
ケイは再び機嫌を悪くしながら、撤去作業を開始した。
勿論、作業終了時には羞恥で頬を赤く染め、キレ散らかしながら降りてきたのは言うまでもない。
お付き合いありがとうございました。
イベントのテーマは『何も思い通りにならない』でした、私は楽しかったです。
まだ小話を読んでないよって方は、ぜひこの後ろにくっついているはずの続きへ、もう読んだよって方は……特にやる事が無いので、熱中症に注意して1日を過ごして下さい。
なんも思い付かないから、参考までに……
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