どうせなら、笑っていようぜ。   作:インチネ・ズィ・マゼタルーノ

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 クソ蛇呼ばわりしていて、普段の小話はコイツの良い所ばっかりでしたからね。
 クソ蛇は、伊達にクソじゃないんです。ちゃんとクソなんです。


イベント!【オマエ、あの祠を壊したんか…】その2

 

 

 

「まぁまだ慌てる時間ではないさ、アレが本格的に動き出すのは……どれくらいだい?」

 

「あくまで推測になるが、早けりゃ今夜、長くても3日くらいか?オマエん時は一晩くらいだったか、イタコ先輩がいりゃあ分かるんだけどな…」

 

「あの人か…良い先輩ではあったけれど、私は苦手だったよ」

 

「感謝しとけよ?あのヒトが封印直してくれたんだからさ」

 

「それは勿論」

 

 

 なんてユウカの前で、ワタシとウタハが存在しない記憶を話してると、トキが帰ってきた。お、エイミも連れてきたんだ。この子も仕掛け人側だ、特異現象捜査部だからな。ヒマリと並んでこの茶番の重要参考人になってもらう。

 

 

「あ、居た。ユウカ、これ部長から。じゃあ私はこれで」

 

「ありがとうございました、エイミ。こちらは任せて下さい」

 

「……ほどほどにね、みんな」

 

「ちょっとエイミ、これはなんなの?」

 

「あー、トグロ先輩の方が多分詳しい。ごめん、急いでるから」

 

 

 エイミはユウカに御守りを渡して出て行った。

 多分、あんまり関わりたくないんだろうね。ホドホドにって釘を刺されちゃった。まぁでも、糠に釘って言うじゃん?

 

 御守りは、手の平サイズの濃い灰色の長方形に、青い眼が1つ描かれただけの板。

 あれは、ワタシが昔作ったスピリチュアル風テクノ小物!青い瞳は、イラストじゃなくて超高解像度で表示してるデジタルデータだ。たまに瞳が動く。

 

 

「それか…まぁ、しばらくは持っといてくれ。出来れば肌身離さず、それこそ風呂ん時も……うん、まぁ、御守り…みたいなもんだ」

 

「トグロ先輩?こっちを向いて下さい、何なんですかこれ!?」

 

「…バケモンにはバケモンをぶつける理論だ、コイツに悪意はないし、守って()くれるから安心しろ」

 

「何でこんな物がミレニアムにあるのよ!??」

 

  「こっちを見て」

「ひっ、ま…また声が」

 

 

 ちょいと御守りを借りて、スピーカーを取り付けて返す。こんなコトもあろうかと、超小型化をしておいてよかった。これでワタシがいなくても声を掛けられる。動作確認、ヨシ!

 

 と、ここでユウカの端末に着信が入る。

 

 ナゼか普段と違う音で、ナゼか普段よりも爆音で。黒電話って怖いよね、静かな場所でイキナリ鳴るとビクッてなるもん。わかってるな、ヒマリのヤツ。

 

 

「えっコレ、出ても良いんですよね…?」

 

「あー…代わりに出てやるよ。コレからは出ない方がイイかもな、サスガに分からん」

 

『もしもし?私です。透き通る夜空を彩る星さえ霞む輝きの一等星にして、虹のカーテンを開き微笑む神秘の美少女。明星ヒマリです。どうです?折角ですので、状況に合わせた着信音にしてみました』

 

「ユウカ、見なよ。ホンモノのアホだ」

 

『おや?トグロでしたか。自己紹介ですか?』

 

「自己紹介だ。よろしくな、クソガキ」

 

『おやおや…こほん。改めまして、ユウカ。無事なようで何よりです。一安心、と言った所でしょう。エイミから御守りは受け取りましたか?』

 

「は、はい。この…よく分からない目のヤツですよね」

 

『えぇそうです。事態が解決するまでは、肌身離さずに持っていてください。たまに瞳が動きますが、こちらから目を合わせなければ問題ありませんのでご安心を』

 

「分かりま……ん?目を?待って下さい!どういう事ですか!!?」

 

 

 ヒマリもこーゆう悪ふざけに強いからな、話をよく聞いて、そっから戯言を広げられるように考えておこう。それと、ヒマリはずっとワタシの端末越しに話を聞いていただろうから、茶番のシナリオは矛盾しないだろう。

 

 何かヒマリに振り回されてるな、ボケに回ったヒマリは手強いぞ。頑張れ。

 

 

「トグロ、私は何をすれば良いんだい?」

 

「まだいたんだ…ヒマなの?」

 

「それは酷くない?ここ、エンジニア部なんだけど」

 

「ココをキャンプ地とする!バーベキューやろうぜ」

 

「だから気に入った、実は既に準備は出来ている」

 

「「ハーッハッハッハ!」」

 

「こんな状況で何言ってるんですか!」

 

 

 ユウカ帰ってきたわ。

 話の内容は、要点を纏めてヒマリから共有されてるから知ってる。仕掛け人のグループがあるからな、さっき作った。3年生はほぼ全員入ってる。

 みんなノリノリだぜ、ちょっと将来が不安になってきた。

 

 

「それで、ヒマリはなんて?」

 

「この御守りの説明と、明日部室に来て欲しいと。その…なんでそんな余裕そうなんですか?」

 

「自分より焦ってるヤツがいると、なんか冷静になるよな」

 

「余裕なんてないさ。単純に、思い出したくないだけで…見てくれ、手が震えてる」

 

「す、すみません…」

 

「良いとも。ところでトグロ、イタコ先輩の連絡先は知っているかな?」

 

「それが誰も知らねぇんだ、ナゼかデータも残ってない。フシギなヒトだったからなぁ…」

 

「えっ?じゃあ誰が封印するんだい?あの人の代わりなんて務まらないだろう」

 

「そーなんだよなぁ…その辺も考えねぇとやべぇわ」

 

 

 さっきからちょくちょく名前が出てるイタコ先輩だが、ちゃんと存在はしてる。ワタシ達の2コ上の先輩で、今は無きオカルト研究部の部長だったヒトだな。部活はもうなくなってるけど、調べりゃ当時のデータは残ってるハズだ。連絡先が消えてるのも事実で、卒業間際に先輩が自分で消してた。

 今思えば、その時点で既に仕込みを始めてたんだろうな。サスガ、ミレニアムサイエンススクール。アタマの良いアホの集団。尊敬するぜ。ワタシもそーなりたいもんだ。

 

 そろそろ移動するか。

 エンジニア部は建屋そのものがデカい部室だから、他の細かい仕込みが難しいんだよ。セミナーの部屋へ行こう。普段使う場所で、普段と違うコトをした方が怖い(盛り上がる)だろ?

 

 

「ユウカ、そろそろ移動しようか。この場所は既に見付かってるし、防衛手段も足りないからね。…ホイ、手を出して」

 

「は、はい」

 

「それじゃあ、私も……はい」

 

 

 ユウカの両手をワタシとノアで握って、いざ出発だ。

 なんで握るかって言うと、怖がってるユウカがカワイイってのと、こーしてた方が目立つだろ?ワンチャン他に何人か釣れないかなって。

 ノアは…コイツ、ユウカと手を繋ぎたいだけだな。間違いねぇよ、イイ笑顔だ、ユウカに見えない角度で。表情の切り替え早いな、やるじゃん。悪魔かな?心強いぜ!

 

 3人で手ぇ繋いで歩けば、勿論目立つ。

 何より、もうすぐお昼だからね。そろそろ早めにお昼ご飯にしようかって子達が動き出す頃だし、セミナーの部室に着く前には昼休みになるだろう。

 

 え?授業?

 フッフッフ…聞くな。今年はちゃんと出席日数考えてるから、サスガにもう留年しないから。その辺、ちゃんとやってるから。まあそれは冗談として、授業自体はBD消化して課題クリアしてたらオッケーだからな、やるコトやってりゃ毎回教室に行く必要はないのさ。やめろ、行かなきゃいけない日に行ってなかったせいで留年したって言うな、気にしてるんだ、ヤメロ。

 

 

あっ、師匠!こんにちは!

 

「ん~、ん~~……惑い誘われ、船は揺れる──簡易解釈:六の浪漫

 

「トグロ先輩?」

 

「振り向くなよ?」

 

 

 イイ感じのタイミングで、ユウカにも聞こえるように音声を流す。目標はワタシ。延々とユウカだけを狙ってもイイんだが、この子はとんでもなく優しい子だからな。相手を他人を巻き込んだ方がきっと、愉快なリアクションが見られるだろう。

 

 ちゃんとアトで怒られるからね。

 みんな、その辺はカクゴしてふざけてるからね。うん、ごめんね。キミがカワイイのがいけない。大丈夫、似たようなイタズラを、過去にウタハもやられてるからね。被害者の会を作ろうね。ワタシ達は加害者の会を作るから。

 ごめんね、今めっちゃ楽しい。

 

 取り敢えず、それっぽい祝詞で簡易解釈を使う。コレの効果とかは知らないだろうが、ワタシがナニかをしたのは分かるだろう。特等席でユウカにイタズラする理由を、今ここで付けさせてもらう!

 

 

「その声はアリスかい?悪いね。ワタシ達みんな寝違えていて振り向けないんだ。前に回ってくれるかな?」

 

……

 

 

 トーゼン、どれだけ待てどもアリスの姿は見えない。

 辺りにいないコトは確認済みだし、声はスピーカーから流してる。

 

 

「今のは、もしかして…」

 

「あぁ、間違いないな。何度も言うが、返答には気を付けておくれ」

 

「トグロさん…ユウカちゃん以外も狙われるのですか?」

 

「まあね、言ってなかったっけ?」

 

「言って……いますね…すみません。私も気が動転していたようです」

 

 

 絶対に覚えているノアが、話の内容に気付かない。

 うんうん、普段と違うよね。余裕がありそうに見えて、実はいっぱいいっぱいアピール。10トグロポイントをあげちゃおう。

 

 ワタシもそのうち退場するとして、ユウカを守るポジションはまだ続けたい。

 

 

「あの!トグロ先輩は返事して大丈夫なんですか!?」

 

 

 食いついたぜ!

 そうだよな、サンザン返事をするなって言ったもんな。

 

 

「オマエ達よりは大丈夫だ。怪奇現象には多少の耐性があるからな」

 

「多少、ですか…?」

 

「心配ムヨーさ!それまでには解決してやるよ」

 

 

 ワタシ達、イイ感じの寸劇できてない?

 ノアの引っ掛かったみたいな言い方に、ワタシの空元気みたいな笑顔。今、ユウカの心は不安でいっぱいだろう。

 

 マジでゴメンね。

 このイタズラに、一枚噛みたいアホが多いせいなんだ。長引きそうだけど許してクレメンス。

 

 

「ふぅ…なんとか着きましたね。ユウカちゃん、大丈夫ですか?」

 

「え、えぇ何とか。もう…何をどうしたら良いのか分からないわよ…」

 

 

 とーちゃくー。

 ここまでに2回ほど声を掛け、道中の3年生は何気ない日常会話の中に『祠』『封印』『壊した』『呪い』みたいなワードを紛れ込ませて聞こえるようにすれ違った。

 コレで、ユウカが壊した祠は、知ってるヤツは知っているヤバいオブジェクトだってのが伝わったコトだろう。

 

 意外とそんなモブ役をやりたがるヤツが多くて、すれ違ったヤツ等は選び抜かれたラッキーガール達だ。ワタシもやりたかった。が、ワタシはワタシでオイシイ役だから譲らねぇぞ。

 

 

「──ッ!」

 

「…これは?」

 

 

 ワタシが先陣切って部屋へ入って、ユウカがそれに続く。

 そして気付く、いつもの部屋の違和感とナゾの気配!

 

 まずは照明、ミレニアムの照明はほぼ人感センサーで、扉を開くと勝手に点いて、部屋にヒトがいる間は灯り続けるタイプだ。この部屋も例外じゃない。

 それが点かない。なんでだろうね?

 

 仕方ないから、少し進んでセンサーへ向けて大きく手を振ってみる。ヨシ、点いたな。

 最後尾いるノアが、直接電源を触ってたのが答えだよ。結構バレないもんなんだよ、ヒトって単純だからな。

 

 

「何か変な感じがします…普段と違うと言うか、とにかく違和感が」

 

「ユウカちゃん、落ち着いてください。確かに違和感はありますが、1つずつ確認していきましょう」

 

 

 これは、リオとトキとエイミの仕業だな。ここまではやってくれる約束だからね、リオとエイミはもう手を引いている。

 

 

「私達が部屋を出た時と違うのは、椅子の数、棚に並ぶファイルの順番、ペン立てに入っているペンの種類、開けていた筈の窓が閉まっている。くらいでしょうか?」

 

「充分な怪奇現象じゃない!どうするのよ!?」

 

 

 えっノア、ホントに全部覚えてんの?

 覚えてると思い出せるは別もんだぞ、すげぇな…

 

 違和感を覚えさせる程度の変化を言い当てられると…燃えてくるぜ。

 

 

「それに加えて、ユウカちゃん気付いていますか?」

 

「この違和感以外にもあるっていうの!?やめてノア、もう言わないで!」

 

「私達……見られています…!」

 

 

 ユウカが泣きそうになってる。カワイイね。

 でもホラーは始まったばかりだからね、ここで少しだけ安心をあげるよ。やったね、休息がとれるよ!

 

 

「ほら落ち着け、ユウカ。ノアも、あんま追い詰めるようなコト言ってやるな」

 

「トグロ先輩…」

 

「見られてるのは事実だが、ソレはその御守りの効果だ。不気味だろうが気にするな。それと、窓が閉まってるのは好都合だ。戸の開閉とかナニかを越えるってのは意味を持つからな。拒絶デキるんならその方がイイ」

 

 

 とりあえず、今ユウカをビビらせてる原因は、不気味だけど味方だと言っておく。あとついでに口からデマカセも垂れ流す。それっぽい理由ではあるだろうからヨシ!

 

 もう少し、ユウカには心の平穏を取り戻してもらおう。

 安心と恐怖、緊張と弛緩の繰り返しが、このイタズラの肝だからね。肝試しだけにw

 

 

「よし、設置カンリョー。ユウカ、ノア、少し休もうか」

 

「トグロさん、何を置いたんですか?」

 

「簡単な魔除けだ、しばらくヤツが入って来ないようにね。2人とも、お昼ご飯は食べたかい?」

 

「あっ…そう言えば食べてませんね」

 

「不安なんてのは、メシ食って寝れば大体ナンとかなる!」

 

 

 セミナー部室。ミレニアムのデカい部活の部室は、大体給湯室が併設されてるんだよ。セミナー(生徒会室)に、それがない理由はない。

 それに、ワタシ含めた過去のセミナー役員の一部が、ゴネにゴネまくって給湯室は立派なキッチンに変貌している。ほら、たまに部室に住んでるって言えるぐらい忙しい時あるから…少しでも快適にしたくて…

 

 カンタンにお昼ご飯を用意して食べさせて、お腹も膨れて気持ちに余裕が生まれたのを確認。ユウカの顔に、笑顔が戻る。

 

 それじゃ、曇らせよっか。

 

 

「ユウカせんぱーい!ノアせんぱーい!居ないんですかー?」

 

「きゃ」      

 

「っ……」

 

 

 ここでナイスタイミング、コユキが扉を雑に叩いて外から声を掛けてきた。内側から鍵を閉めてるからね、そりゃそうするだろう。仕掛け人の子は先に連絡してくれるからね、つまりコユキは運悪く巻き込まれる第2ターゲットだ!

 心地良い悲鳴を聴かせてね。

 

 そしてノア、オマエ気ぃ抜いてたな。

 演技じゃ出せないような、素でビクッて肩が震えてた。イイね、オドロきが恐怖になってユウカに伝播してるよ。

 

 戻ってきた笑顔が凍り付いてるもん。

 

 

「せんぱーい?居るのは分かってるんですよー開けてくださーい!」

 

 

 バンバンドンドンと扉を叩くコユキ。

 ホントにこっち側じゃないんだよな?あまりにもサイコー過ぎる、全ての動作が完璧だよ。花丸をあげちゃう。

 

 コユキがホンモノだって分かってるワタシは、喜び勇んで戸を開けてあげたいが、ここはぐっと我慢だ。ユウカに見せつけるように、端末を取り出してコユキに連絡する。

 

 

『……もしもし!トグロ先輩、どうかしましたか?』

 

「コユキってさ、今ドコにいる?」

 

『私ですか?セミナーの前にいるんですけど、ユウカ先輩が扉を開けてくれないんですよー酷くないですか?私、もしかしてまた何かやっちゃったんですかね?』

 

「ホンモノだ、開けてあげよう」

 

 

 そして自然な流れで、ユウカに扉を開けるように促した。

 ホントにコユキはファインプレーしかしないな、誘導もなしに電話口でユウカの名前を出すし、自分が悪いのかもってビビって反省しようとする。ユウカは優しいからね、怒ってないよって自分が迎え入れようとすらしてくれる。

 

 こんなにもイイ子を、これから恐怖のドン底に叩き落とさなきゃいけないなんて、いくらワタシでも心が痛むよ。ゴメンね。

 でも、ユウカがカワイイのがいけないんだよ、反省してね?

  

 

 ワタシとノアは無言で頷き合った。

 

 

 

 

 第3フェーズに移行するぜぇ〜、ウヒャー!

 

 

 





 普段は面白くて、頼りになる人です。仕事でもプライベートでも、一緒にいて苦にならない距離感を保ってくれる人。でも、時々問題を起こすんです。良い人ではあるんですが、素直に尊敬させてくれないんてす。
   
 トグロへの評価は、大体こんな感じです。
 特に、素直に尊敬出来ない部分…クソな部分がクソすぎるのでクソ蛇ですし、クソトグロです。

 ほら皆さん、石を投げましょう。



なんも思い付かないから、参考までに……

  • トグロだけの小話
  • 本家イベント
  • オリジナルイベント
  • 先生視点
  • 別キャラ視点
  • よく名前の上がるキャラとの小話
  • その他
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