どうせなら、笑っていようぜ。 作:インチネ・ズィ・マゼタルーノ
「連れてきましたよ、先生。この人です」
「何故か逃げ出してしまったので、少し時間が掛かってしまいました」
“ありがとう。ユウカ、ノア。…久しぶり、覚えてるかな?”
「んん〜…なぜぇ?」
良い子のみんな、こんにちは。
ワタシだ、赤蛇トグロだ。
両手両足を縛り付けられて、正座させられた状態で運搬されていますがワタシは元気。
手押し台車に乗っかって、気分は粗大ゴミ。
何時ものようにフラフラして、トレーニング部でスミレと汗を流して、シャワーを浴びてサッパリした所でチヒロから連絡があったんだ。
曰く、セミナーが凄い形相でワタシを探してるらしい。
なんかよく分からんけど、ユウカとノアは怒らせると怖いからな。逃げようした所で見付かった。そこからはエンジニア部とC&Cを巻き込んでの鬼ごっこよ。ついでにエンジニアの1年2人にはゲンコツを落としてきた。
ま、巻き込んだ割にはあっさり捕まっちまった訳で、逃走防止に縛られて運ばれたって寸法よ。因みに、この程度の拘束なら簡単に抜け出せるぞ。どうせすぐに捕まるからやらないだけで。縛ったノアも、多分これで拘束出来たとは思って無いだろうさ。面白がってるだけだろ、コイツは。
それより!
分からんのはワタシが連れてこられた理由。何で?なんかした?
………いや、してるわ。
トリニティで噂になるぐらいに通ってるし、ワカモの武器のメンテしてるし、ブラックマーケットで騒ぎ起こしたし、ゲヘナで温泉開発したし、ミレニアムの一角をぶっ飛ばしたし、アスナとアカネとカリンと一緒にゲリラメイドカフェ開いたし、エンジニア部でロボコンも開いたな。
おかしい、ちゃんと大きな騒ぎにならない程度で退散してるはずだけどな。
つーかこんだけ動いてんのにアリスとエンカウントしないのは何で?半分以上はソレが目的なんだけど。
だって会いたいじゃん。ワタシ以外みんな知ってんだぞ。口を揃えて可愛いって言うんだぞ?そりゃ会いてぇよ…
ユウカの写真でしか見たことねぇよチクショー…
「ワタシは悪くねぇ…ワタシは悪くねぇ!」
怒られるのはゴメンだぞ。
そんな悪いことしてないだろ。
ブラックマーケットは兎も角、ミレニアムとかでぶっ壊したモノはちゃんと弁償したぞ。自費で。
“…2人共、なんて言って連れてきたの?”
「へっ?…先生が呼んでるって言って連れてきましたけど?」
「『逃げても無駄』『直ぐに連行する』『強行手段は使いたくない』『諦めてお縄につきなさい』…まるで犯人を追い詰める様な言い草でしたね、ユウカちゃん」
「心当たりは全く無いが、絶対に怒られると思ったから逃げた。心当たりが無いのに怒られるとか嫌だからな、絶対に怒られると思ったし」
何だ普通に用があっただけかよ。ビビらせやがって。
また変な悪評が流れるじゃん、もうどんだけだよってくらいワタシは悪い噂持ってるからな。別にどうでもいいから無視してる、ここまで来たらどんだけ増えるか楽しみですらある。
「で、説教じゃないんなら何だ?用があって呼んだんだろ」
“遅くなっちゃったけど、あの時のお礼を言いに来たんだ”
「お礼?なんかしたか?あっ、お礼参りってなら受け付けてないから帰ってくれ」
いや覚えてるけどな?
ワタシの決めたキャラ付け的にも、ココはしらを切る1択だろ。そっちの方格好良さそうだし、覚えてるって言ったらなんか恩着せがましくて好きじゃない。
“エデン条約の時、大聖堂で助けてくれたでしょ。あの時はありがとう。助かったよ”
「あぁアレか。別に先生を助けたつもりなんか無ぇよ。ペロキチがくたばったら、貸した金が返ってこないしな。それにシスターフッドの連中と知り合えたんだ。あんないい子達に会えて、むしろ儲けもんだよ」
“それでも、助かったのは事実だからね”
「そうかい。ならその感謝は受け取っておくさ」
「トグロさん、珍しく照れてますね「照れてないぞ」」
“そうなの?「そうじゃないぞ」”
「はい♪「はいじゃないが?」」
アレッ?
ワタシの声ミュートになってる?
おーい、おーい。
ちゃうねん。
普通に正面からありがとうって言われるのに慣れてないだけだから。ここ何年も捻くれ者ばっかりを相手にしてたから、純粋な好意への対応に手間取るだけだから。しかも相手が大人で、先生だしな。
「トグロさんって、見た目の割に可愛いですよね」
「まあ…ビビらせやすい外見なのは自覚してる。だからお前らみたいな奴は貴重なんだ、ユウカもノアも、みんな可愛いよ。な、先生」
“そうだね、可愛いよね!”
「分かってんじゃん。なぁ?ノア、捻くれ者なのはどっちなんだろうな?まぁそれでも、素直なノアじゃなくて、今のノアがワタシは好きだけどな。余裕ぶった仮面で身を守っている君が、堪らなく愛おしいよ。ほら、ユウカもこっちへおいで。きっと先生に頼まれて、少し張り切り過ぎてしまったんだね。言い過ぎた、なんて気を落とす必要は無いさ。誰かの為に頑張れる君が、ワタシは好きだよ」
ははっ、愛い奴愛い奴。
普段ワタシが、誰を相手にしてると思ってんだ。ディベートじゃない日常の舌戦で、ワタシに勝てると思ってんのか?まだまだ精進が足りないな。
シレッと拘束を解いて、ユウカとノアの頭を軽く撫でておく。もうクセだな、昔から相手の頭を撫でる事が多かったんだ。あいつ等、態度の割に甘えん坊だから。
“お、女の子たらしだ…!”
「たらしって大げさな。この程度で靡くようなチョロい奴なんてそうそう居ねぇだろ」
たらし籠めるんなら何で下級生達にビビられてんだって話よ。それに、軟派師じみた発言の多そうな先生には言われたくないな。
「ところでさ、話ってこれだけなの?ワタシ、これからトリニティまで行くんだけど」
“私も着いて行ってもいいかな?”
「良いぞ。準備は…出来てそうだな。外で待っててくれ、すぐに用意する」
セミナーから逃げ出して、トレーニング部の部室へ。ワタシの荷物、置きっ放しになってるから。着の身着のまま逃げたんだ、銃だって持ってない。
そんでもって先生、なんか話しがあるっぽい。
ワタシの記憶通りに
あっ、悪い事に、心当たりが…
えぇ〜…でもあれじゃん、しょうがないじゃん。浪漫だもん。しょうがないって。それがバレた?何で?
まさかアイツ喋ったんか!?
釘刺したのに!?成り下った亡霊共の後に、注意しに行ったのに?
その前に先生が会ったってことか、何時?そんなタイミング……ワタシがシスターフッドと救護騎士団に絡みに行った時か!
「おまたせ」
“思ったよりは早かったよ”
「そこは待ってないって言う所だろ。んじゃ行くか。直ぐ側に車を停めてるから乗ってけよ」
さてと。
“2人っきりだね”
「何か用があるんだろ?」
コイツ、ふざけてんのかマジなのかよく分かんねぇな。
今も横でカラカラ笑ってるけど、はてさて何処まで考えてるのやら。これで真面目に考えてるんなら、ワタシ程度の付け焼き刃じゃあ意味がなさそうだ。
大人しく生徒に徹するとしようかね、今だけだけど。
“ゲマトリア”
「だぁー、やっぱソレかよ。何時知ったんだよ…それで、ワタシに何をさせたいんだ?」
“彼らがどんな大人なのか、知っているの?”
「知ってる。と言っても、断片的にだけどな。アイツ等が話さない事はワタシも知らないし、進んで聞こうともしてなかったからさ」
“どうして?”
「まどろっこしいな、遠回りする必要もないだろうに」
この人、全部ワタシに語らせるつもりかよ。
自分で話してやってる事を自覚しろってか?
ワタシは理解して自覚もしてるつもりだ。それでワタシが潰されるのなら、それはワタシの能力不足に他ならない。
それに、ワタシじゃ実験も捗らないんだろうしな。ドコかの、最高の神秘を持ったおじさんみたいに狙われる事もない。いや、自分から飛び込んで行っただけで実は狙われてたのかも知れないけど。
仮にそうだとしても、ワタシを使い潰すのに反対する奴居るから、無茶な事はされないだろうって打算もある。結果論だけど。
“じゃあ聞くけど、どうしてゲマトリアを知ってるの?”
「『神秘』の研究に丁度良かったからだ。まぁ、マエストロとは話が合うから、面白がって研究も実験も関係なく遊びに行くこともあるけどな」
“……厳重注意って事にしておく。気を付けてね”
「ん?それだけか?もっとこう…接触禁止令とか出されるもんだと思ってた」
“言いたいよ?出来るなら今すぐにでも手を引いて欲しいし、彼らとは関わらないでほしい。でも聞かないでしょ?その代わり、聞きたいことが沢山あるから。知ってることは教えてもらうよ?”
眼の前に情報源があれば、そりゃあ聞くわな。
スパイでもしてろってか。それも面白そうだけどさ。
良いよ、今度時間作るから好きなだけ尋問しなさいな。でもワタシの口は蛤のように固く閉ざされて居るからね、きっかり温めておくれよ?
それはそうとして。
なに?ワタシはそんなに不良生徒だと思われてる?
あの
「ふーん…分かった。そろそろ駐車場に着く、そっからは歩くぞ。」
“えっ、このまま入らないの?”
「この車、ワタシが改造しまくった武装車両だからな…カチコミなら良いけど、流石にこれで乗り込むのは非常識が過ぎる……何だ?これでもワタシは、キヴォトスではかなり常識寄りだぞ?」
喧嘩売ってる?
ワタシは常識人だぞ?
誰がヴェリタスの物理ストッパーをやってると思ってんだ、ワタシだぞ。チヒロが言葉と技術で、ワタシが暴力でアイツ等のクラッキングを止めてるんだぞ。ヒマリは役に立たん。布団に包んで捨てておけ。
“ありがとう。私はティーパーティーに呼ばれてるから、ここで”
「おう。ワタシは少し買い物してからシスターフッドんとこ行くから、帰る時に連絡してくれ。シャーレってのも見てみたいからな、送ってくぜ?」
“ならお願いしようかな”
「それと、これ持ってけ。防犯ブザーだ。鳴らせばワタシに繋がる。他にも何かあったら呼んでくれて良いぞ。アンタに何かあれば、ワタシがユウカ達にどやされる」
先生と別れて、トリニティの校舎からUターン…
…………え?
「あらあら、そんなに見つめられたら、照れちゃいます」
「ふ、不審者ぁ…」
いやね、ワタシもコスプレは好きだけどな?
流石にスク水で出歩くとかは違くね?
ワタシは学んだんだ、別に露出過多な服装でも制服なんだって。でもさ、スク水は違くない?それは用途外使用だろ、保険適応外だろ。
「貴女は…って、あら?」
「付き合ってられん!ゴメンな!」
三十六計逃げるに如かず。
君子危うきに近寄らず。
触らぬ神に祟りなし。
やってられっか!
ワタシはこの後サクラコ達に会いに行くんだ!
あの光属性達に浄化されにいくんだ!
これ以上汚されてたまるか!
「ふぅ……追っては来ないか。ん?水着でうろつく?アイツがハナコか、あぁ〜やっぱ名前は出て来ても顔がぱっと出て来ないのは問題だな。今更どうしょうもないけど」
過ぎた事は気にするな。
だいたい不審者には近付かないのが鉄則だろ。怖いだろうが。
さて、今日の手土産は何にしようか。
洋菓子は普通に喜んでくれるけど、捻りに欠けるよな。そろそろ奇を衒ったお土産を持っていきたい所存。
そんな感じでフラフラ歩いてたら、いわゆる材料屋を発見。
「イイネ、決めた」
白玉粉、上白糖、白あん、こし餡、優しさでできてる着色料。
簡単ねりきりセット。これだ。
ねりきりって知ってるか?
和菓子なんだけど、ワタシは結構好きで時々買ってたし簡単だから作ってた。そりゃプロが作った方が綺麗だけど、手作りも良いもんだぞ。楽しい。
すっごい簡単に言えば、求肥と白あんをこねて、こし餡包んで形を整えたお菓子だ。
食べれる粘土細工。
味は…ワタシは好きだよ、割と人による。
ワタシは白あんとかもち米の風味を感じるから美味しいと思うけど、ただ甘いだけでのっぺりしてるって言う時もある。
求肥も好きなんだよな、柔らかくてもちもちしてて。
そうだ、フルーツ大福でも作って見せるか。
「ありがとうございました〜」
結局買ったのは、求肥と白あんとこし餡と着色料とフルーツセット。
あの子達目の前で作ったら、どんなリアクションをしてるれるだろうかと、今からワクワクが止まらねぇ…!
そうしてやってきた大聖堂。
おん?あのお清楚な姿は!
「やぁマリー。また会えて嬉しいよ」
「あっ、トグロさん。今日も来てくださったのですか?」
「もちろん。また会いに来るって言ったから…ってのもあるけど、今日はサクラコに頼んでたブツが届いたらしくてね、どうだい?マリーも一緒に来る?」
「私も、ご一緒してもよろしいでしょうか?」
「まっ、またでたぁ…」
ビックリして心臓止まったわ。
襲来!2度目の不審者!
何でそんな絡みに来るん?
いやそれは良いけどさ、普通に話し掛けてくれよ。ワタシにだって許容出来る範囲には限界があるんだぞ。何で相変わらず水着のままなんだよ。
「ふふ…はじめまして、浦和ハナコです。サクラコさんの用意したブツに、ただならぬ興味があるのですが」
「興味…ねぇ、いいぜ着いてきな。あっ、お土産もあるから一緒に食べような。ハナコも食ってけ。よしマリー、案内頼んだ」
「…お土産……っ!はい。こちらです」
クックック…餌付けのしがいがあるのぅ…
遊びに来る度にチョット良いお菓子を配っていたのだ。もはやこの子達の脳内には『ワタシ=お菓子』の構図が出来上がっていることだろう。
別にヒナタちゃんとサクラコ以外の子達ビビられて遠巻きにされたのがショックだった訳じゃない。それでも勇気出して話し掛けてくれたマリーが可愛くて仕方ないとかは否定しない。
「サクラコ様は今出ておりますが、案内する部屋は用意しています。シスターヒナタがもう少しで来ますので」
「まぁまぁマリーちゃんや、他の人よりちょっと早くワタシと会った。その幸運を享受したって良いんじゃないかな。君が気に入ってくれるかは分からないが、少なくとも見て楽しめるモノだとは断言しよう」
テーブルが並べられた部屋まで案内して、そそくさと出ていこうとするマリーちゃんの肩を掴んで引き止める。
この子はきっと、お土産に喜んでしまうなんて…とかなんとか考えているんだろうけど、そうは問屋が下ろさない。
少なくともワタシ相手にしたときぐらい、もっと自由に自己中に大胆に振る舞ったってバチは当たらないさ。
ムムムッ、ねばるね。
「そうだね、どうしてもと言うならワタシも引き下がろう。けどね、ワタシは君が喜んでくれる事を願って用意したんだ。だからどうか、イヤではないのなら、そんなワタシの為に受け取ってはくれないかな」
「そう、おっしゃってくださるのなら」
「そうこなくっちゃ。さっそく準備するから、テーブルを1つ貸しておくれ。それと、ハナコだったね。まだ暖かいけれど、その格好のままは良くないだろう。ワタシの上着を羽織るか、今すぐに着替えて来なさい。じゃなきゃお土産あげないぞ」
テーブルを借りて、汚れ防止に大きめのビニールを広げながらハナコに目をやる。ワタシの精神衛生の観点的にも早急に着替えてほしい。
だって嫌だろ。同じテーブル囲むメンバーの1人かスク水とか、気になってしょうがないだろ。
ワタシは身長が高いからな、多少胸が突っかえても特に問題ないと思う。それにその上着、見た目以上に伸びる面白繊維を使ってるからな。心配はいらない。新素材開発部に、個人で出資してるからな。こういうのは優先して用意できるんだ。7割ぐらいの確率でなんの役にも立たないゴミだけど。
さて準備は出来た。
さっきのお店で殆ど下ごしらえをしてもらったからな。実質あとはこねるだけだ。
テーブルに軽く打ち粉をして、求肥、白あん、各着色料を並べる。
求肥と白あんを温めて…おお、まだ温かい。むしろ熱いぐらい。流石金持ちの店。保温も完璧だな、水分も飛んでないしこのままいけるな。そいつらを混ぜて馴染ませた。
あ、着色料は天然由来のものだぞ。
食べ物だからな、衛生面は勿論。材料にも気を付けてる。人によってはオーガニック食品しか口にしないってのもあるからな。面倒だからワタシは特に気にしないが、それを否定するつもりもない。
「2人共しっかり見てくれるね。やっぱり目の前で用意するってのは珍しいかい?」
「そうですね。そもそもトリニティのお茶会で、ねりきりを出す事もそうですが、目の前で用意するなんて事はまず無いですね」
「おっ、ハナコはワタシが何してるのか分かってたのか」
「まぁ、知っているだけですけど。食べるのは初めてなので楽しみです」
混ぜた生地を小分にして、それぞれ色を着ける。そして小さめに丸めたこし餡を包んでいく。
昔練習した甲斐があったな、ここで失敗せずに出来たのは格好良いんじゃね。ワタシが嬉しくなってテンション上がる。
なに作るかはもう決めてある。
マリーに兎、ハナコには鬼灯。
兎は作った事あるけど、鬼灯は見たことしか無いからな。呼び起こせ記憶、唸れイメージ。
「わぁ、ありがとうございます!とっても可愛らしいです」
おまかわ。
喜んでもらえてなにより。
でも食べてね?
「………」
「あれ、鬼灯嫌いだった?ごめん」
「っ、いえ、食べてしまうのが勿体ないなぁと思っていただけです。上手に出来ていますね、まるでお店のものみたいです」
「まぁ別に、ウソも演技も気にはしないさ。でも、ワタシ相手にまで取り繕う必要も無いだろ。思ったことは言えば良いし、ムカつくなら怒れば良い。今言えないならサシで会おう。君は今から友達さ。…さて、鬼灯は嫌いかい?」
「よく出来てると、思いますよ?」
あらら、警戒心の強い変質者だこと。
変な空気になっちゃったけど…良かった、マリーは平気そう。いや、気付いてないだけか。
ハナコもマリーを心配したみたいだな、中身はまともなのか?
何度も菓子切りを近付けては止め、近付けては止めている。
気に入ってくれたのは凄く嬉しいけど、なんかイジメてるみたいだな。そんなに崩したくないか、そうかそうか。
しょうがない、食べやすいの用意するか。
梅モチーフで良いだろう、作りやすい形してるし。
そうだ、フルーツ大福作るんだった。
苺をこし餡で薄く覆って、求肥で包むだけのお手軽大福。生クリームとか入れても良いが、持ってないから無し。
「マリー、こっちの梅と大福やるから、そんな泣きそうな顔しないでくれ。兎はまぁ、明日までには食べてやってくれ。ハナコも大福食うか?沢山作るつもりだから持って帰ってもいいぞ」
さてと、じゃんじゃん作ってくぞ。
約束してたサクラコとヒナタちゃんの分は先に用意して、配る用のねりきりとフルーツ大福を生産していく。
材料屋に包みも売ってて良かった。
大量生産だが、ぶっちゃけワタシからしたら大した事無いな。ワタシの速度がって言うより、何日も引きこもって同じ弾丸作ってた経験に比べれば百倍楽しい。あれはマジでデスマーチ。
つまり、マリーとハナコにお茶を煎れる片手間に大福生産は余裕。
「お、遅くなりました」
「来たな!ヒナタちゃん、イエーイ!」
「い、いえーい」
ヒナタちゃんとマリー、シスターフッドが2人…来るぞ!
癒やし…圧倒的癒やし…!
時間と暴徒に荒んだ心に染み込むオアシスよ…!
ここまで通い詰めるつもりは無かったが、この子達囲まれるのなら転校だってやぶさかではない!
いでよ!
「入りますよ、トグロちゃん。お待たせしました」
「明確な時間は決めていなかったからね。さぁお座りよサクラコ、ヒナタちゃんもね。先にお菓子を食べようじゃないか」
サクラコ!ヒナタちゃん!マリー!
眩しい!光属性が強すぎる!
くっ…直視できない。
怪我の功名だな、ハナコが居てくれて助かった。
心を浄化しに来たが、勢い余って消滅する所だった。
「サクラコには桜を、ヒナタちゃんには新芽をモチーフにしたモノを作ったぞ。食べてってくれ」
「よく出来てますね。ありがとうございます」
「可愛いです…」
違う形でもう3つずつ用意したからな、大福と一緒に持っていってくれ。賞味期限は短いが、冷凍出来るからな。
見た目には喜んでもらえたが…残念、サクラコはダメだったか。
「申し訳ありません…」
「気にすんな、好みはそれぞれだからな。こっちはどうだ?フルーツ大福セット」
ネットリ系の食感がダメだったらしい。
普通に食べれはするんだろうけど、好んで食べたいモノではないと。
前に、嫌なものは嫌だと言えって言っといて良かった。
ヒナタちゃんとマリーはまだ遠慮があるけど、サクラコは割とすぐに受け入れたからな。あれだ、頭の良い天然ってのはこういう子の事を言うんだろうな。
余計に気に入った。
フルーツ大福は美味しく食べてくれたみたいだ、良かった。
ワタシも配る用の大福を作り終えたし、テーブルの上のモノをカバンにぶち込んで片付ける。カバンの中は帰ってから考える事にする。
相変わらずハナコが浮いてるな、ワタシも浮いてるけど。
軽い挨拶と談笑を交える定型文を交換したら、本題だ。
「さてトグロちゃん。頼まれていたモノが用意出来ましたので確認してくれますか?…ヒナタさん」
「こ、こちらです」
シンプルながらに可愛らしい小箱。
丁寧に梱包を解いて…
「おぉ…」
「合わせや装飾は、ヒナタさんがやってくれました」
「ありがとうごぜぇやす!」
じゃーん!
シスターフッドの制服ワタシバージョン!
「着替えて良い?」
「向かいの部屋を使ってください」
さっそく着替えよう。
いやぁ〜気になってたんだよね、この制服。
少し前に着てみたいって言ったら、サイズが無かったらしくて駄目だったんだよ。そしたらサクラコが用意してくれるってなって、どうせなら装飾を付けてしまおうってなって、普通にデフォルトで良かったワタシを置いてサクラコとヒナタちゃんがデザインを考え始めたので、ワタシは流れに身を任せた。
なんて事を考えてたらお着替え完了。
可愛らしい装飾が、控えめに施されたシンプルな制服だった。サクラコとマリーの中間みたいな?露出は控えめにしてもらった。ヒナタちゃんみたいなのは…ね?1人で着るのなら良いけど、人に見られるのはちょっと…
それで、もう一着あるんだけど。
サイズ的にもワタシ用なんだろう、なんか世界観が違うんだよなぁ。
黒、灰、銀の3色で構成されてて、黒いベルトを身体中に巻き付ける感じのやつ。銃とか弾丸とか爆弾とかのホルスターもセットだ、これも着けてねって事だろう。
正直言おう。目茶苦茶格好良い。
いいよな、浪漫溢れるこっち着てもいいよな!?
「着替えて来たぜ!」
「「「「……」」」」
「あれ、似合ってない?」
「っ!ち、違いますトグロちゃん。とても…!とても似合っています!ただ少し、似合い過ぎているというか…」
「やったぜ。にしてもよくこのデザインが出てきたな。いやな、スゲェ嬉しいんだけどさ、仮にもアンタらシスターでお嬢様なんじゃねぇの?」
「「「スゥ~…」」」
目ぇ逸らすなよ。
ちょっと自覚してんじゃねぇか。
だよな、悪神信仰に宗派変えましたってデザインしてるもんな、これ。スゲェ格好良いけど。
いい感じに遠慮無くなってんな。
「始めは、もう一着のデザインだけだったんです。トグロちゃんに似合いそうなアクセサリーを、ヒナタさんと考えたり探したりしているうちに、何故かシスターフッド内で噂になってしまい…そうしているうちに、『これがトグロ様に1番似合います!』と草案を提出されまして…」
「折角なら着せて見ようってか?…控えめに言って、最高だな!それに良かったじゃんサクラコ。これでまた、他の子達との距離が縮まったんじゃないか?」
「ハッ!…確かに、少し会話が増えたかもしれません」
ワタシ?
ワタシは基本、面白ければそれで良いからな。元々がコスプレ趣味だし、着替えたり見せびらかしたりするのは苦じゃないんだよ。モノにもよるけどな。
なんにせよ、
この子達が、ワタシの為に、用意してくれたんだぞ。
もうそれだけで満足だよ。
それじゃ、これ着て練り歩くか。
「トグロちゃん…あまり言いたくはないのですが、シスターフッドの長として、そちらの2着について話さなければいけない事があります」
「なに?あくまで制服だから、悪目立ちするような事は止めろって?それとも、これ着る時はシスターフッドの活動に参加するとか?」
「…おっしゃる通りで、後者については自由にしてくださってかまいません。それと、そちらの2着は差し上げます」
「ありがとう。ってか参加して良いんだ」
「?慈善活動に条件などありません。それこそ、シスターフッドでなくとも、行っている方はいらっしゃいます。シスターフッドだからやる、というものでもございません。やるべきだと思った方が、たまたまシスターフッドに集まっているにすぎません」
こういうところは、ちゃんとしてるよな。
公私の切り替えがキチンとしてるのは良い事だ。そのせいで余計に変な噂が立つんだろうけどな。最近になって、シスターフッド内では割と軽減されたんだとかなんとか。
「シスターとは本来、修道生活からなるものです。経典はおろか教義すら曖昧な今のトグロちゃんは、見習いと呼べるものですらありません」
辛辣じゃない?
「よろしければ、これから本当の『シスター』を目指してみませんか?」
「ありがとう。ムリだね」
「ふふっ、また振られてしまいましたね」
「シスターにはならないけど、ワタシは会いに来るし、呼ばれれば何時だって君の下へ駆けつけるよ。それじゃあ不満かい?」
「いいえ。とても嬉しく思います」
少し前から、お前もシスターにならないか…?って誘われるけど、悪いね、本当になるつもりはないんだよ。名前だけ載っけて所属ぐらいならしてみたい気もあるけど、修道生活に耐えられそうにないぐらいにワタシは俗物だから。
それに何より、ワタシはミレニアムを離れるつもりがないからね。
「うん。そろそろいい時間だし、お暇させてもらうよ。サクラコ、ヒナタちゃん、マリー、ハナコ。楽しい時間をありがとう」
「ヒナタさんとマリーさんでトグロちゃんを送ってあげてください」
珍しいね、いつもは見送りなんて付けないのに。まぁワタシが断ってるからだけど。サクラコがわざわざ言うんなら、ギリギリまで2人を独占しておこうじゃないか。
ハナコはまだ何かあるっぽいしな、
でも先に、この服を脱いで来るから少しまっててね。
「おっとゴメンよ。怪我はないかい?」
「は、はい!申し訳ありません」
着替えて部屋から出ると、人とぶつかった。この程度で揺らぐ体幹じゃないから、ワタシは良いけどね。でも相手が小柄だと反動であっちが吹っ飛ぶんだよな。
それにしても珍しいね、シスターフッドの子が走るなんて。何かあったのかな?
「何か、あったのでしょうか…?」
「と、とても焦った様子でしたね…私、話を伺ってきます。トグロちゃん、今日はありがとうございました。マリーさん、後はお願いします」
「またね、ヒナタちゃん」
「ええ、また」
ヒナタちゃんと別れて、マリーに見送ってもらった。
もう車に戻るか、充分に心が満たされた。
欲を言えばスズミにも会いたかったけど、パトロール中らしい。まぁ、偶然出会うってのが楽しくて、わざと連絡先を交換してないからな。むしろ会わない方が自然なぐらいだ。
会うとその日ギリギリまでずっと一緒に居ることが多いし、仲は良いと思ってる。時々話に上がるトリックスター…スーパースターだっけ?には会えてない。そのうち会えると信じてる。
のんびりと、先生を待つとしますか。
気付いたら、もとに戻ってるけど
なんも思い付かないから、参考までに……
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