どうせなら、笑っていようぜ。   作:インチネ・ズィ・マゼタルーノ

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エイプリルフール、2日目。




ワタシは、がんばったぞ

 

 

「もしもし先生?あのさ、この前──…」

 

 

 クロコちゃんを急遽ワタシの店で雇うコトになって数日、倉庫管理と商品の発注を教えて、今は任せてみようってトコロだな。

 普段店を任せてるミサキ達との顔合わせも済ませて、突撃してきたワカモとも軽く話して、サオリはさっき顔合わせてた。これなら問題ない。

 

 クロコちゃんの扱いは、職業体験ってコトにしてもらった。

 完全にワタシの自己満足なんだけど、クロコちゃんには店よりもアビドスに行ってほしいんだよ。もっかい青春してこい、やり直せ。あそこならみんな受け入れてくれる。クロコちゃんの知ってる先輩後輩じゃなくても、新しい仲間になれるハズさ。

 

 てコトで、クロコちゃんはアビドス生になりました。今は休学中ね、タイミングをみて学校へ放流する予定。

 そもそもキヴォトスでは、どっかの学校に所属しとかないと不便で仕方ないからな。学籍がないと実質人権ないみたいなもんだし。

 アリウスの子達も、ほとんどは名前だけトリニティになってるしな。拒む子はシャーレ経由で別の学校に転校扱いになって学籍を取得してるはず。ワタシはそう聞いてる。詳しくは先生に聞いてほしい。ゲマトリア関連のアレコレはよく聞いてるけど、そうじゃない学校間のアレコレは聞いてないからな。興味ないし。

 

 

『“──あの子の希望でね。だからよろしく、ちゃんと紹介状も書いたでしょ?”』

 

「ちゃんとしすぎてるから問題なんだ…まあいまさら1人増えたって関係ないけどな。満足いくまでウチで預かるよ」

 

『“ありがとう。お礼は何がいい?”』

 

「別に要らんが…もえるならもらっとく。1番ほしいのは、D.U.かトリニティでの開業許可だ」

 

『“それはちょっと…”』

 

「ならこんど、みんな誘ってご飯に行こう。先生の奢りで」

 

 

 今は先生への定期連絡中。

 クロコちゃんもそうだけど、サオリ達についても様子を聞かれるからな。だったらコッチから定期連絡をしてやろうと思って、いきなり聞かれても返答に困るんだよ。

 

 それと、色々あったゴタゴタが落ち着いたから、ウチの従業員のワケありっ子達に勉強を教えてるぞ。ちょうど今は小テストを解かせてる。あの子達さ、頭は悪くないんだけど、勉学に致命的な問題があったんだよ。特にアリウス組。クロコちゃんは忘れてるっぽいから、復習しててくれ。

 

 アレはたしか…ワタシがドローンをイジってる時に、噛ませる抵抗の大きさを計算しようとして、たまたま近くにいたアツコに頼んで、計算式が分からないって言われて気付いた。日常的な計算は出来てたから、発覚が遅れた。

 まあ電気系の計算とか、使わなきゃずっと使わないだろうから別にいいけどさ、こういうのは使う使わないじゃなくて、今までに勉強をしてきたかどうかの問題だろ?

 

 頭が良い悪いはどうでもいいけど、必要な時に必要な情報を効率よく脳みそに叩き込む方法は知っておくべきだと思う。

 

 あと教養だな。

 これは付けろと言って身につくもんじゃないだろうけど、意識してるかどうかは別問題だ。物事を知ってるだけじゃダメだからな、それをどうやって繋げて活かすかだ。テストの点数も大切だけど、そっからの考え方と思考の柔軟性が重要だと思う。

 ワタシだって理想とはほど遠い。

 認めたくないが、黒服を筆頭にゲマトリア連中は結構参考になる。認めたくないが。

 

 なにはともあれ、土台は知識だ、学校の勉強だ。

 この子達はシャーレ経由の通信教育とかいう措置が取られてるからな、ワタシと違って学校に通わなくてもBDと問題集を解けば何とかなるらしい。うらやましい。

 

 でも、ワタシはそれだけだとヒトに聞く能力が育たないと思うんだよ。自分が分からないコトをヒトに説明するのって、難しくない?自分が知りたいモノじゃない答えが返ってくるコトあるでしょ?

 まずは自力で調べろって言ってあるけどな、参考書とか辞書とか辞典とかいっぱい持ってるから、それ使えってな。インターネットで答えを検索するのは禁止だ、でも解説とか論文を探すのは許可してる。そういうフィルターをかけといた。

 

 

「おし、テスト回収するぞ〜」

 

 

 いっきにみんな机に突っ伏したな。

 色々大変だけど、こういうトコロは学生だよな。

 

 回収したテストに○×を付けて返却していく。

 なにげにアツコが1年だったんだよなぁ、落ち着いてるし2年だと思ってたわ。サオリとミサキも2年、3年だと思ってた。ヒヨリも2年、1年生だと思ってた。

 コイツ等、見た目と態度がズレてね?学年が分からなさすぎだろ。

 

 クロコちゃんはもう全部忘れたって言ったから、1年の内容からやってもらってる。意外と出来てるぞ、素晴らしい。

 

 

「いいね、全員合格だ。自由にして良いぞ」

 

「分かった」

 

 

 真っ先に部屋から出ていったサオリとそれに続くアリウス組、今日はみんなで出掛けるんだとさ。楽しんで来るといい。あの子達ならブラックマーケットのクソみたいな治安でも問題ないからな、心配はしてない。それに、この辺なら顔も売れてきたし、突っ掛かってくるヤツも少ないだろ。

 

 

「そんじゃ、お喋りしよっか」

 

 

 ワタシはクロコちゃんとお喋りタイムだ。カウンセリングとも言うが、カウンセリングとかワタシは知らん。出来るワケなくない?素人ぞ、ワタシ。

 でも先生達に頼まれたからな、本人も希望してワタシのトコロに来たワケだから、やるだけやってみよう。

 

 

「聞きそびれてたんだけど、なんでワタシのトコロに来たんだい?あ、迷惑とかじゃなくて、純粋な疑問な。ホシノちゃん達はアビドスに来てくれって言ってたし、先生はシャーレに居てもいいって言ってただろ」

 

「それは…どの世界線とも違う行動を取ったのは、貴女だけだったから。…ん、先生とは違うイレギュラー」

 

「ほん?他の世界線のワタシ、生きとったんか?どんなだった?」

 

 

 なんだよ、どうしたって死ななかったんじゃん。色々焦らせやがってよぉ、やっぱどこの世界でもワタシはワタシだな、生き汚いぜ。ちなみに所属は?ワイルドハントか?ゲマトリアか?

 

 

「えっと、無所属の……世界の敵?」

 

「詳しく」

 

 

 なにそれ?

 ワタシ、なにやらかしてんの?

 でもどうしよ…多分そのワタシの気持ちが分かる。

 

 

「ん。私とか、色彩とか、無名の司祭とか、ゲマトリアとか、世界の危機とか、何もかも関係なしに暴れ回ってた。たまに色彩の味方とかしてた。居ない世界もあったし、居る世界はだいたい指名手配されてた」

 

「oh…だいぶイカれてんじゃん」

 

「ん、でもそんなに強くなかった」

 

「そりゃワタシ1人でやれるコトなんか、たかが知れてるからなぁ…味方もいなけりゃザコだろうよ。逃げ足だけか」

 

 

 マジでか…イカれてるわ。しかも強くなかったとか言われたし、なんかちょっとショック。

 まぁ、冗談抜きにミレニアムに来てなかったら、今のワタシもそうなってただろうな。ミレニアムに来てたとしても、ヒマリと最初に会わなきゃ大差ないだろうし。 

 

 

「だから、この世界も同じだと思って放置してた。けど貴女が先生の味方をしてたのを知って、すごく驚いた。ミレニアムに居るのもそうだけど、この世界は細かい部分が他と違ってる」

 

「なるほどね。でも、悪くないだろ?イレギュラーも1つなら偶然だろうが、重なりゃ必然だ。キミも巻き込まれるといい」

 

「……うん」

 

「あっ!これワタシとアビドスの子達からね、プレゼント」

 

 

 実はプレゼント用意してました。

 そりゃあ渡すでしょ、だって新人だぜ?世話焼きたいじゃん、日用品だの服だの自転車とかは必要なもんじゃん?渡して当然じゃん?キャンピングカーは移動手段だから必要じゃん?この子指名手配とかされてないから、移動とか自由だし、車って便利じゃん?

 

 

「ッ!…これ」

 

「新しいマフラー、シロコちゃんが激推しして決まったんだぜ。忘れろとも気にするなとも言えないが、ココにはキミを責める罪が無いからねぇ。アビドスの子達からの伝言で『何時でも帰ってこい』ってさ、もう身内認定されてるみたいだぞ」

 

 

 良い意味で言葉が出てこないのか、悪い意味でなにも言えないのか…ワタシには分からん。前者であるコトに期待してるよ。

 

 

「うん、…うん…」

 

「ここ数日、気ぃ張ってたろ?…うぬぼれんなよ、キミはどこにでも居る普通の女の子だ。泣きたいなら泣いて、怒りたいなら怒って、笑いたいなら笑えばいい。ワタシでよければ、トモダチとしていくらでも話しを聞こう。イレギュラーなんだろ?ワタシは。特にキミと因縁があるワケでもないし、無関係なヤツなら話しやすいんじゃねぇの?」

 

 

 

 

 

 

 

 ワタシが見てる中で、1番泣いてた。

 今回だけは、落ち着くように手を握ったり撫でたりしたぞ。

 

 こんな時、先生が居てくれれば、ワタシよりも上手い言葉をかけてやれるんだろうか。もっと穏やかに、この子の心を救ってやれるんだろうか。

 

 まあ、ワタシは先生じゃないからな。

 どうなろうとも、やれるコトをしてやるしかないさ。

 

 まずは、もうすぐ完成する新しいドレスを着てもらおう。絶対に綺麗なハズだ間違いない。ワカモと対になるデザインにしたからな、2人に並んでもらって…グヘヘ、グヘヘヘへへ……フヘヘへへへ…!

 

 

 

 


 

 

 

「はぁ…はぁ…ま、まって……も…むりぃ…」

 

「あれ?ごめん、少しペース落とすね」

 

「はぁ…ちがっ、き…きゅぅけ……休ませて…」

 

 

 良い子のみんな、こんにちは。

 ワタシだ、赤蛇トグロだ。

 

 疲れて死にそう。

 

 

 

「ん、もうすぐチェックポイントだから、頑張って」

 

「んなぁぁ!」

 

 

 今ね、クロコちゃんと一緒にツーリングしてんの。分かるか?サイクリングでもポタリングでもなくてね、ツーリングなのよ。分かるか?分からんなら調べろ、その違いにワタシは殺されかけてる。

 

 分かってたコトの1つとして、クロコちゃん、めっちゃ体力多い。ちなみに、力も普通に押し負けたぞ。シロコちゃんにも負けてるから、予想はしてた。……なんで?体格的にも付けてる筋肉的にもワタシの方が上なハズなのに…神秘か!?神秘が悪いんか!!ネルもそうだよな!ちっこいクセに肉体スペックが全部ワタシより上だもんな。チクショウめが!!!

 

 

「ん!まだ元気みたい。やっぱりペースを上げる」

 

「ぬわぁぁぁああ!!」

 

「私も、負けない!」

 

 

 ヤメて!ペース上げないで!

 マジ、マジで死ぬ!!

 

 自転車ナメてた、こんな体力使うんだな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、着いた」

 

「むり、しぬ」

 

「あ、座っちゃダメ。ちゃんとクールダウンしないと」

 

「ひっぱって〜」

 

 

 クロコちゃんに引っ張られながらストレッチをして体をほぐす。もう、動く気力がねぇ…

 

 

「ん、水分とエネルギーの補給もする。こういうのはタイミングが大事」

 

「うめぇ…うめぇ…」

 

 

 なんでワタシが自転車乗ってるかって?そりゃ誘われたからな、こんどシロコちゃんとツーリングするんだとさ。久しぶりの自転車だから、感覚を取り戻したいんだって。それに誘われたんよ。

 

 いやぁ~、結構メンタル安定してきてるぜ。

 元の性格がクール系だから、そんな表情が変わるワケでもないけどな。それでも日常を楽しんでくれてるんじゃねぇの?

 今じゃ普通にアビドスに遊びに行ってるからな。

 

 ウチの店の常連が増えたぜ。

 

 

 

 それはそれとして

 

 

「これでチェックポイントはラストだっけ?」

 

「まだ1つ目。今日はあと2箇所行って、一泊したら来た道を戻る」

 

「にゃぁぁぁあああああああああ!!?」

 

 

 割と真剣に、ここからの記憶がない。

 ワタシに分かるのは、なんとか帰ってこれたってコトだけだ。一泊した覚えもないし、マジでどうやって帰って来たんだワタシ…

 

 

 

 筋肉痛に呻きながらあちこちにシップを貼って、店のカウンターで休んでたら、倉庫の在庫確認をしてきたクロコに声をかけられた。赤と錆色のエプロンを付けてもらってる。この店の制服代わりだな、この前作ってみんなに配った。

 

 

「ん、トグロ。この前のツーリング、久しぶり走れて楽しかった。また一緒に行こう」

 

「おう!でももう少し優しくしてくれ…」

 

「善処する。…所で、表に武装した集団がいるけど」

 

「頼んでいい?」

 

「ん。先手必勝!」

 

 

 あの子、強いんだよなぁ…

 最近気付いたんだけどさ、いや、目を逸らしてただけなんだけどさ…この店で1番弱いの、ワタシなんだよなぁ…

 もちろん、なんでもありなら結構イケる。でも、例えば準備なしに戦闘が始まったらクロコちゃんに勝てねぇ。アリウスの子達は、純粋に戦闘スタイルの相性がいいから通算勝ち越しぐらいか。一対一の場合な?あっちが2人以上になると、途端に勝率が悪くなる。特にサオリかヒヨリが居るとまず勝てねぇ。

 

 いい訓練相手だよな、自分よりも強いヤツと安全に戦えるって、環境的に最高じゃね?ゲリラ戦とかはアリウス組が強いから、細かいポイントとかを聞いて教わってる。そのおかげで、安定してネルを撒けるようになってきたぜ。あいかわらず勝てる気はしないけどな。

 

 

「終わったよ。手応えなかった」

 

「ありがとね、おつかれ」

 

「ん。それで、次のツーリングの予定なんだけど」

 

「うん。行ってらっしゃい」

 

 

 なんか考え事してんなって思ってたけど、それ考えてたんか。ずっとぼんやりしながら戦ってたもんな。ようそれで被弾なしで制圧できるな、素直にスゴイ。

 

 

「一緒に行こう」

 

「ワタシ、イマ、キンニクツウ」

 

「ん。良いことを聞いた。これなら、次はもっとたくさん走れる」

 

「うっそぉ…」

 

 

 この瞬間、()()()()()()()過酷なツーリングが開催されるコトが決定しました。しかも定期的に…

 

 

「車じゃダメ?」

 

「……一緒に行こう」

 

「自転車整備しとかねぇとな!」

 

「ん、今から準備してくる」

 

「いや、仕事中は働いてくれ」

 

 

 クロコちゃんも、なかなか愉快な性格してるよな。なんていうか、こう…アウトロー?こりゃ自由人か?

 

 それに今日は、他にも予定があるだろうがよ。

 時間的にそろそろ…

 

 

「おぉ~い、迎えに来たよ〜」

 

「クロコちゃんや、お迎えが来たぞ」

 

「ん。ホ…ホシノ先輩、今行く」

 

「トグロちゃんも行く?」

 

「行かなぁ〜い」

 

 

 クロコちゃんはアビドス組とご飯食べに行くらしい。柴関だったか?話だけは聞くんだけど、場所が分かんねぇから行ったコトない。そのうち行こうと思ってる。

 

 もうすぐ予約客が来るし、アリウス組は今日みんな出かけてるし、帰って来るまでは店に居ないとな。これさえなけりゃワタシも行くのに!

 

 

「ん、行ってくる」

 

「またね~」

 

「いってら〜」

 

 

 2人を見送って、カウンターに突っ伏した。

 筋肉痛がツラい…でもみんなでご飯行きたい…

 

 許さねぇぞ、今日を予約しやがった陸八魔アル…!

 

 

 

 

 

 

 余談だけど、ワタシは卒業したらこの店を辞めるつもりだからね。オーナーの座をミサキに譲ろうと思ってる。そっから先はそん時に考えりゃあいいだろう。キミ達でどうにかしてくれればいいさ。

 まだ誰にも言ってないけどね。

 引き継ぎが居なけりゃ、店はそのまま畳む。

 

 

 




クロコエミュもそうだけど、そもそもあの子口数少いよね…?てかクール系アウトローのシロコちゃんも少ないのね…?
あれ、あの子達ってそんな喋ったっけ?
ま、所詮は小話ですし?
事件よりも、まったりした日常の話しですし?

そんな事より、そろそろプレイアブル化してくれても良いんやで…セイアとニヤも待っとるで…

なんも思い付かないから、参考までに……

  • トグロだけの小話
  • 本家イベント
  • オリジナルイベント
  • 先生視点
  • 別キャラ視点
  • よく名前の上がるキャラとの小話
  • その他
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