どうせなら、笑っていようぜ。 作:インチネ・ズィ・マゼタルーノ
気が向いたので書きました。
「良いな?範囲はこの区画内、30分の準備時間を設け、時間経過後に再度合図を出したら戦闘訓練を開始する。…2人とも、分かったな?」
「ええ、理解しております」
「あいよ」
「そして、どちらかが戦闘不能になるか、私から見て戦闘の続行が不可能だと判断した時点で終了。戦闘不能の相手への追撃は無し。また、生死に関わる危険がある場合は私達が介入する」
「よろしく!」
「…仕方ありませんね」
良い子のみんな、こんにちは。
ワタシだ、赤蛇トグロだ。
ナニしてるのって?
戦闘訓練さ!
今日はいつもより気合入ってるけどね、理由はない。たまたまそんな気分だったんだよ。
さてさて、ワタシの戦闘スタイルを誰よりも熟知してるのは誰だと思う?
ヒマリでもネルでもなくて、ワカモなんだぜ?
ある程度ワタシが戦えるようになってから、1番戦闘回数が多いってのと、最近解放した神秘関連のアレコレを遠慮なくブッパしてるのがコイツだからだ。
コイツを相手にしてる理由は、マジメにあるにはあるが今は関係ないから置いておこう。
今考えるべきは、どうやってワカモに勝つかってコト。
ちなみに引き分け2、負け7、ギリギリ勝ちと言っても許されるのが1って感じの戦績になってる。
ワタシが何か手札を縛ってるとだいたい負ける。
え、ネル?
ほらアイツ、ワタシが手札を切る前に意識を持って行くから…開幕の先制攻撃を耐えられないとそのまま負けだし、耐えたトコロで速攻で次が来るからマジクソゲー。
でも舐めプして手を抜いた攻撃(ワタシには致命傷)から始まるコトも多いから、割と最近はなんとかなってたりする。勝てないけど。てか、ネルに勝てるビジョンがまるで見えない。どうやったらアイツ倒せるんだよ、怪物かよ。
「良いな、2人とも理解したな?追撃は無しだぞ?良いな?殺す気でやるのは構わないが、殺そうとするんじゃないぞ?分ってるな?……それではこれより、準備時間に移行する。30分後の合図をもって戦闘訓練を開始する。一時解散!」
さて、今から30分の準備時間なワケだが…
…逆に聞きたい。
あのワカモが、大人しくルールに従うと思ってるのか?この訓練に、一切先生が関わっていないのに?
「あっははははは!さぁ蛇、構えなさい。今日こそ徹底的に躾て差し上げますわ!」
「でしょうねぇ!!」
速攻でルール違反をしでかすワカモから全力で逃げる。
そりゃあ逃げるでしょ、捕まったら半殺しよ?ワンチャン死ぬよ?
確かに先生はこの訓練には関わってないけど、ワカモのモチベーションの為にご褒美を約束してる。そんで、今あの子の頭ん中はたぶん、ワタシをボコって景品ゲット!しかないんじゃないかな。
「見逃すな、白閃の瞬きを──簡易解釈:三の浪漫」
「あら、逃げられるとでも思っているので?」
「逃げなきゃ負けちまうからなぁ!心配すんなよ、すぐにそっちに行ってやるから……惑い誘われ、船は揺れる──簡易解釈:六の浪漫」
「そんな及び腰で、何が出来ると?その擬態も、
あぁ通じないさ、初見の時ですら通じなかったんだ。それから何度も見せてるんだからもう見慣れたもんだろう。
だからって使わない理由にはならない。
なぜなら、負けたくないからなぁ!!
さぁ始まりますは全力の戦闘。
いつもみたく逃げてばかりじゃあいられない。
てなワケで、取りに来たのは起動装置だ。
ワカモがルールを無視してくるのは分かってたからな、事前に色んなモノをそこかしこに仕込んである。そもそもだが、ココ、エリドゥの中だから。ルール違反じゃない、ステージギミックみたいなもんさ。
「それで、本日は何を魅せてくれるのかしらぁ?」
「見たきゃ引きずり出してみな。──1番、穿つ白」
「うっふふふ…いいですねぇ、その厄介な脚から落として差し上げましょう」
回収した起動装置を動かしてから、とりあえずワカモに一発撃ったんだけどね…当たらないよねぇ、知ってた。
避けるとかじゃなくて、銃剣で弾丸を叩き落としてんの。どんな目ぇしてたらそんなんできんの?そういやネルも鎖で弾丸弾いてたなぁ…
せめて手でも腕でも痺れてくれたら助かるんだけど、うん。そんなコトなさそうだ。
おかしいなぁ…これ、60口径あるんだけど…なんならバカみたいに改造してあるし、威力だけなら対物ライフルよりも威力あるんだけどなぁ…それを平気で……化け物がよぉ
もうしばらくすればステージギミックが起動するだろうから、ひとまずはその時間稼ぎだな。その後は、その後になってから考えよう。
「せめて銃を撃ってくんないかな?斬られたら死ぬよ?」
「それで死ぬのならその程度。事実、蛇…貴女には当たっていないではありせんか」
「避けたからねぇ!!?」
返す刀でそのまま斬り込んでくるワカモ。反撃しながら距離を取るんだ、死にたくないから。
ワカモはネルと違ってイカれた耐久をしてないってのは助かる。しっかり当てればダウンが取れるだけマシだろう。そう思ってないとやってらんないからな、マジで。
まぁ当たらんのだけどね。
ワカモが厄介なのは、攻撃でも速度でも防御でも体力でもない。いや全部平均値よりも圧倒的に上なのはそうだけど、コイツが厄介なのはその戦闘センスだ。なんなら指揮…いや、戦力配置か、それも出来るから恐ろしいもんだ。戦い方の方向性がワタシと近いから、これで得るものは多い。ただ、訓練になるか蹂躙になるかはワタシの頑張り次第だけどな。
味方なら心強いのに。
「蛇!その程度ではないでしょう?さぁ早く、かかって来なさい」
強いヤツってさ、平気でこういうコト言うよな。ワタシがどんな思いで訓練相手を頼んでるのか分かってんのか?分かってねぇだろ。
ワタシの苦労を思い知れ!
「蹴っ飛ばせ、跳ねて空へ──簡易解釈:一の浪漫」
「うふふ…そうこなければ」
「ドローン現着確認。1番装填、煙幕散布。掃射開始」
まだ機腕は壊されてないから、序盤はヒット&うぇーい!でなんとかなる…なんとかするしかないな。エリドゥのびっくりドッキリな絡繰トラップの起動を待たないと、戦う以前にワタシがやられちまう。
さてさて、先ずは挨拶程度にドローンからの一斉掃射。
キリングマシーンワッカーモからすれば当たりどころが悪いとダメージになる、あんまり当たりたくない程度の威力だが、数は力だ。多少は削れてくれるだろうと祈ってる。
祈ってるんだけどさ。
なんかね、手応えっていうの?攻撃した感じがないんだよね、空振ったとは思えないけど。煙幕と土煙が晴れるのを待って確認したいトコロだが、そんな余裕はないだろうな。
「ドローンによる掃射、蛇と相対するのに超えるべき最初の障壁。…この
「えぇ…やだもぉ…」
ほら、全弾を避けられました。
無傷のワカモが斬り掛かって来たぜ、やってられっか!
せめて銃撃てよ!斬られたらシャレになんねぇんだぞ!
おかしいなぁ、360°からの全方位掃射なんだけどね、
ぜんぶ、よけられちゃった…
どぉしてぇ…怖いよぉ…
イカれてやがる。
どんなファンタスティックな動きしたら避けきれるんだよ!?ネルですら迎撃して対応したんだぞ、あの!ネルが!迎撃を選ぶ物量だぞ!
なんで避けきれるんだよ…
「『白閃…瞬き…』成る程、感覚は掴みました。蛇らしい小細工ですが、悪くはありませんね」
「まぁ、こんだけ見せてりゃ覚わるか。…上位層は天才しかいねぇのかよ…」
「貴女が言ったのでしょう。
「たしかに言った。が、出来るとは思ってなかったさ」
「そうですか」
足止めの役割は果たしたから、まぁ許そう。
この訓練終わったら、ワカモにちゃんと神秘関連の技術を教え込むと心に決めた。百鬼のニンジャ達もそうだが、潜在能力秘めすぎてんだろ…面白くなりそうだ。
んで、ただでさえ強いヤツがさらに強くなるとかコレ…クソゲーか?まあいいや、なんとかなるやろ。
さて、エリドゥの絡繰トラップが動き出したぞ。
こっからはワタシのホームだ、全部壊される前に大公開してやろう。
「これはッ!」
「避けるんなら、避けきれねぇ範囲でってなぁ…ほぉーれ、起爆ゥ!」
ワタシのメイン射程は中距離とはいえ、コレでもワタシ、そこそこ近接に自信ネキだからな。斬り掛かるワカモをいなす程度は出来るのさ、めっちゃ怖いけどな。小さな怪獣との戦闘経験が活きる。あの速さに比べたら、まだカワイイもんだ。怖いけどな。
なんとか間合いを取り直して、大量のドローンをワタシ達の間に並べて壁を作っておく。
ワタシもうね、逃げる。
あっ言い忘れてたけど、今ワタシ達の居るビル、爆発するから。そんじゃあワタシ、一足先に脱出するから。せいぜい頑張って脱出するか耐えるかしてくれ。
ついでに、建屋内の通路とか部屋とかの配置を全部バラバラに組み替えといたぜ。ワタシって親切ぅ〜
「ハッハァ!イイ眺めじゃねぇか、壮観だねぇ」
一応、改めて言っとこうかな。
このエリドゥ、ワタシの物だから。どんだけ改造しても良いしどんだけ壊しても良いし、どんだけ騒音を出しても良い。せいぜいユウカとかノア辺りから小言を言われるか、エリドゥ内に居るであろう黒服が苦情を入れる程度だ。なんの問題もない。
だから、ビル1棟くらい爆発させたってイイじゃない。
結構ハデに爆発させたぞ、気分爽快だ。
発破解体じゃなくて、そのまま、ビル1棟を爆発させてるぞ。そりゃあもう大爆発よ、周囲の建屋も巻き込んで一帯全部更地よ更地。最っっ高だな、日頃のストレスもまとめて吹っ飛ぶってもんよ。
ン気持ぢぃ〜
やっぱ爆発は…芸術やな……
「…分からなくもないと言うのが、何より無性に腹が立つ。蛇、そろそろ本気を出しなさい」
「ははっ、多少はダメージ入ったみてぇだな」
「まぁ、流石に驚きましたね………この程度で、
ひぇっ…煙幕やら土煙やら爆煙で見えない中から、凛とした声だけが静かに響く。声が届いて影が見える。カツ…カツ…と足音が、確実に近付いてくるのが分かる。
ヤツは多少煤けた様子で、普通に歩いて来た。
す、すげぇ…ラスボスだ、やべぇカッケェ…
私も銃に剣付けようかな、あれ肩に担ぐシルエットカッケェ…え、ワタシもやりたい!あれやりたい!やべぇカッケェ!ワタシもやりたい!
「先ずはその、目障りな脚から捥いで差し上げましょう」
「あ、ヤベ…」
あ、ヤベ…
機腕が2本やられた、完全に油断してたわ。
分かっちゃいるんだけどなぁ…反省しねぇといかん。
蜘蛛には成れないが、自分の足に沿わせて補助は出来るからヨシ。
蛇とか蜘蛛とか、なんかややこしいなおい。いや、蜘蛛の方がワケ分かんねぇか。蛇の使う蜘蛛だもんな、テキトウなのもたいがいだろ。
ワタシが、ワカモよりも弱いのは分かってる。
未だに銃を撃たずに剣だけの近接で戦ってるのは、ワカモなりの手加減だと思いたい。そんな手加減をしているであろうワカモに、ワタシだけ頑張るのは何となく悔しい。
そう、悔しいんだよ。
だから、全力で応戦はしてるが、本気では戦っていない。
なぜなら、そう!悔しいから!
そしてソレが、ワカモを苛立たせる原因になってるのは悲しいかぎりだ。因むとネルには初めから本気だぞ。アレは向こうからの依頼だからな。今回のはワタシからの依頼だ。絶妙にニュアンスが違うから、間違えないで欲しい。
「相も変わらず、蛇は動じませんか。それではギアを上げていくので、せいぜい死なないように」
「それはご丁寧にどーも」
やっとこさ撃ってきたな。
そんじゃあワタシも頑張っていこう。ここまでは前座、いざいざ訓練開始。
っても、ワタシの動きはあんまし変わんないんだけどね。
近接なら殴る蹴る、中距離なら銃撃とドローン、距離があればドローンと罠って感じで、やってるコトは別に珍しくないんだ。
銃の威力と弾の種類、それとドローンの量は自慢デキる部分か。あと機腕くらいか、ワタシの珍しいトコロは。それ以外は結構ありふれたステータスしてる。あ、神秘のアレコレは別な?珍しいと言えば珍しいが、アレは別技能だもん。
「先ずは、コレを凌いで見せなさい?」
「クッソがよぉ!」
「あっははははは!踊りなさいな!」
撃ち込まれる弾丸から必死になって逃げ惑うワタシと、割りとご機嫌なワカモの対比よ。悪意を感じちゃうぜ、誰だよコイツに戦闘訓練を依頼したやつ。頭おかしいんじゃないの?
あ、審判のサオリだ。ヤッホー
すっごい苦い表情してる。だって誰もルール守ってないもんね、しかも使ってる道具類が全部実戦用。これに掛かってる費用を想像したんだろうな、既にサオリの数ヶ月分の給料はブッ飛んでるから。
完全詠唱の自己解釈を使えばもう少し戦いやすいが、まだその段階ではない。だってコレ、戦闘の訓練だから。
その戦闘も、どちらかと言えば防御とか回避の方に力を入れてるんよね。攻撃の勘を鍛えるんだったら、訓練の相手にワカモは間違ってるだろう。
たしかに、ワタシの防御力はクソ雑魚と言われても仕方がない。事実だ、認めよう。だからこそ、やられる前にやるってスタンスで火力至上主義を掲げたバカの武器を担いでる。
でもね、同時に理解しちゃってるのさ。
ワタシが出せる最大火力じゃあ、キヴォトス上位陣を仕留めきれないって事にね。ネルはクリーンヒットしてもノックバックしないし、ツルギちゃんには回復されちゃったし、ヒナちゃんはびっくりして痛いで終わった。
悲しいなぁ、対物ライフルよりも威力が出るハズなんだけどなぁ…なんでかなぁ…ワタシが悪いのかなぁ…?
まあそれでも、ノックバック無くてもダメージ入ってるし、撃ち込み続ければ回復速度を上回れるし、小さくてもダメージは入るから希望はある。
でもワンパン食らえばワタシはそこまで。
うーん絶望。相手が弱けりゃ良かったが、ワタシが仮想的にしたのはネルで、知ってる限りアイツがキヴォトス最強だ。アレと勝負が出来なきゃ舞台にも上がれないだろう。
だから、防御と回避の術が必要だったんですね。
「逃げるだけでは終わりませんよ。さぁさぁ、楽しみましょう!」
防御と回避がメインの訓練です。
ワカモには事前に伝えてあるんよ、回避主体で立ち回るからって。もう忘れてるだろ、コイツも割りと戦闘狂だもんな。それかご褒美に気を取られてる。
そうそう、ワタシがどんな訓練してるかって言ってなかった気がするな。毎回同じってワケじゃあないが、今回なら防御と回避がメイン。
防御に関しては肉体的に耐えるんじゃなくて、相手に攻撃をさせない立ち回りだと思ってほしい。例えば姿を眩ませたり、的を増やしたり、死角に入ったりだな。
それでも攻撃されれば、いなして躱して相殺して。それでも手が足りないならコッチからも攻撃する。あ、ドローンは別な?攻撃ってのはワタシの行動だけを指してるから。
「あぁ…楽しいですね、蛇。ですがそろそろ、本気を出しなさい」
「いや別に、ワタシは楽しくないが?」
「あらそうですか、それは楽しいですね」
「楽しくないが?」
まぁほらコノ狐、反抗期で天邪鬼でサディストの恋する乙女だからね。仕方ないね。
それに、ワタシも我慢ができなくなりそうだ。
だってワタシ、守るよりも攻める方が性に合うんだもの!
「笑え、嗤え、咲え──簡易解釈:五の浪漫」
「初めて聴くモノですね…何を見せてくださるのでしょうねぇ!」
初めてワカモ相手に使うからね、コノ簡易解釈。
聞いて驚け。
コノ祝詞には、とんでもない効果が隠されている。
ただし、1回こっきりの使い捨てだ。同じ相手には今後一切通用しないだろう。さらに前提として、相手がワタシの祝詞を知っていて、ソレが厄介だと認識しているのが条件になる。
そこまでやって初めて使えるこの祝詞、
なんとその効果は…
『相手は少し警戒する』だ!
自己強化?ありません。
認識阻害?ありません。
神秘操作?そもそも使ってません。
ただそうやって言っただけ、相手に聞こえるように言っただけ。
どうだスゴいだろう。
ショボいだろう。
有用だろう。
これからしばらく、ワカモはドコかにナニかが変化していると思って行動する。ワタシからすれば、動きが固くなって読みやすくなるってコトだ。
何も意味のない言葉の羅列が、力を持って相手に作用する。
ソレってとてもカッコいいと思わないかい?
ワタシは思う。コレも浪漫だ。
「見せてやろうじゃねえか、今日こそ潰してやんよクソ狐ェ!」
「上等…優しく撫でて差し上げますわ!」
結局、エリドゥは半壊して、ワタシはボコボコにされ、サオリにはルール違反を怒られ、クロコちゃんには呆れられ、黒服には小言を言われ、リオにも小言を言われ、チヒロには普通に説教され、ウタハとケイちゃんには笑われ、ワカモにはめちゃくちゃ煽られた。
また負けた………
く゛ や゛ し゛ い゛ぃぃ!
ちゃんとした戦闘描写を書く予定はありません。
だって、小話だとトグロがボコボコされるだけで面白みがないんですよね…トグロがボコボコにされるのは気分が良いので、そのうち挑戦するかもしれませんね、面白みはないかも知れませんが、私が楽しく書けそうなので。
なんも思い付かないから、参考までに……
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