どうせなら、笑っていようぜ。   作:インチネ・ズィ・マゼタルーノ

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 ふとした瞬間、自分が何をしてたか分からなくなる時ってありますよね


悪役ってカッコイイよな

 

 

 

 

「……時間切れ、ですか…?」

 

 

 小さな勇者が眠りから覚めて、小さく呟いた。

 強制ログアウトさせられれば、そう思うのも仕方のない事か。

 

 良い子のみんな、こんにちは。

 ワタシだ赤蛇トグロだ。

 

 

「いいや、そんな事はない。むしろ猶予が伸びたぐらいだ。………ここからはワタシのターンかな…

 

 

 不思議そうにこちらを見るアリスは、とても可愛かった。

 この子はワタシの娘かも知れない。

 

 

「今のアリスを処分するには情報が足りないんだ。『鍵』の隔離が出来てしまったから、今は君の安全性を検証しないといけない」

 

「そうなんですね…でも!」

 

「『鍵』を仲間にするんだろう?」

 

「──はいっ!」

 

 

 パァっと顔を明るくさせるアリスは、多分ワタシの娘だ。

 このままじゃ絆される、決意が揺ら…揺らいでる?もとから歪んでるしこんなもんか?

 

 なんかこのアリス、ワタシの記憶(原作)よりメンタル強い気がするな。なんで?なんかイベントあったか?分からん。

 

 

「なら作戦を考えないとな。敵キャラを仲間にするには、弱らせてからってのは定石だろ?」

 

「はい。それと状態異常も有効です」

 

「ボールでも投げるのかい?」

 

「いいえ、アリスはスカウトがしたいです」

 

 

 よ~し、お母さん頑張っちゃうぞ。

 ミレニアム各所で、アリスちゃんかわいいやったー教団の皆さんが居る意味を、心で理解した。

 

 なんていうんだろうね、こう…真っ直ぐなんだ。

 ヒトなんて大抵生きてりゃ性根が曲っていくモノだけど、この子はひたすらに真っ直ぐなんだ。

 誰が最初に出逢ったのかで全てが決まるタイプの純真無垢。コレは恐ろしい。最初に出逢ったのがゲーム開発部と先生で良かったね。

 

 

「アリスちゃん。知恵を借りよう。ワタシにアテがあるんだ」

 

「参謀ですね、ぜひご一緒したいです」

 

 

 リオ、ここに召喚します。

 

 何処に居るか〜…おう、マジ?目の前に先生達いんじゃん。

 

 ウッソだろお前ホントにアビ・エシュフ倒したんか!?

 ネル、こっっっっわ……

 

 先生の指揮もあるんだろうな、良くやったなぁホントにさ。トキ達を撮影しといて良かった、後でC&C誘って動画見よ。めっちゃ気になる。

 これで褒めまくったらネル、照れるだろうな、よしやろう。

 

 

「呼んで来るから待っててくれるかな?お茶とお菓子はあそこのテーブルに置いてあるから、好きに食べてておくれ」

 

 

 さて、召喚キャンセルだ。

 ワタシが行こう。

 

 全力ダッシュは疲れるからね。通話しながら行こう。

 

 

「こちらはワタシ。計画は少し変更するけれど、いい方向に転がりそうだから結構元気。リオリオ?聞こえてる?」

 

『…何かしら?今忙しいのだけど…』

 

「アリスと『鍵』が分離した。もしかしたらもしかするかも知れないよ」

 

『どういう事?トグロ、詳しく説明しなさい』

 

「今そっちに向かってるからちょっと待って。先生達も居るでしょ?纏めて説明する」

 

 

 

 なんでこういう時って上に行きたがるんだろうね?下の方が便利で良くない?屋上も良いけど、ワタシは地下の方が浪漫を詰め込みやすくて好き。

 

 道中で、軟禁してた……部屋でリラックスしてたC&Cを引っ張り出しておいた。働け、なに寛いでんだよ。まだ終わってないぞ。部屋の掃除?うんありがとね、でもオマエら一応捕虜だからな?

 

 あっ、そうだ。

 こっちも呼んどかないと拗ねる。

 

 

『おかけになっている通話は現在も使われていますが、今は出られません。超天才清楚系病弱美少女ハッカーは忙しいので「じゃあいいや、またな」えっ?ちょっ』

 

 

 連絡はしたしいいだろ、これで。

 チヒロとノアにメッセージだけ入れておけば後はどうにかしてくれる。まぁヒマリに関してはエリドゥに居るし、C&Cけしかけたしエイミも居るしでそのうち合流するだろう。

 …ヒマリは昔から変わんねぇな。可愛いヤツだ。

 

 

「待たせたな!リオ、先生」

 

「やっと来たわね。早く説明してちょうだい」

 

「オーケー。まずは今の状況からな。アリス…『名もなき神々の王女』と、補助システムの『鍵〈Key〉』が分離してる。ただ、『鍵』の方に関しては時間稼ぎにしかならないだろうね。例の馬鹿プログラムで出来てる揺り籠に閉じ込めては居るけれど、突破されるのは時間の問題だ」

 

「なら、早く処分してしまいましょう」

 

「おや?リオ、まさか忘れたとは言わないよな?」

 

「………」

 

「覚えているようで何よりだ。予定外の切り札まで使って、しかもそれを潰されて、まだ計画が成功するつもりかい?」

 

 

 さぁ気張って行こう。

 ここからがワタシの正念場だ。

 

 ワタシの描く理想のハッピーエンドの為に、積み上げた山札を崩して行こうじゃないか。

 

 

「ここからはワタシが引き継ぐ。そういう約束だ、異存無いね」

 

「…分かっているわ……その、──」

 

「それ以上は、言う相手が間違っているよ。大丈夫、ワタシを信じろ。だから、力を貸してくれ」

 

「格好つかないわね。でも良いわ、次は私がサポートしてあげる」

 

 

 格好悪いのは分かってるけどさ、頭脳的に勝ち目がない訳ですし…そもそものスペックがワタシはリオの下位互換ですし…何より相手は機械系な訳で、リオの方が圧倒的に適正が高いんです。だから仕方ない。

 

 ところでリオ、なんか割り切ったみたいな顔してるけど、後で関係者各所に謝罪行脚に行くからな?あれやこれやをウヤムヤにしても、ワタシ達が殺人計画を立てて実行しようとしたのは事実だからな?

 

 

「それじゃ、先生達。キミ達が知りたいであろうアリスの安否だが。心のキズは申し訳ないが、外傷は1つもない。…まぁアレコレ言う前に、ネルの手当てしてしまおう。ワタシが気になって仕方が無い」

 

「あ"ぁ?んなもん良いからさっさとチビを返しやがれ」

 

「はっ、支えられなきゃ立ってられない奴が吠えんなよ。…怖いだろ」

 

 

 取り敢えず、ドローンに応急キットを持って来てもらったから手当するよ。大人しくしてね。

 

 

「テメェがやるんじゃねえぇ!」

 

「痛っ!ちょっとイタいって、叩かないでよ痛いんだってもう!あとちょっとだから!」

 

 

 やめるのだ、叩かないでほしいのだ。

 変な意地も張らないでほしいのだ。

 

 見てみろよ、先生達が微妙な顔で見てるぞ。

 これだから脳味噌ヤンキーはまったく…根性だけで矜持を通そうとしないでほしいな。分かってるのか、今の自分の状態をさ。満身創痍って言うんだぞ? 

 

 

“えっと…トグロ達が味方になったって事で良いんだよね?”

 

「多分そう、部分的にそう。今のワタシはアリスを殺さないけど、これからのワタシは分からないよ。直近の目的が似てるだけさ……応急処置、ヨシ!ネルは早めに病院へ行こうな?」

 

「ケガ人扱いすんじゃねぇ!」

 

「怪我人だろうが!」

 

 

 はぁ~…やれやれ、手間のかかる怪獣だよ。

 

 

「ほら見ろネル。キミが馬鹿みたいに騒ぐから、シリアスな空気が壊れてしまったじゃないか。まったく馬鹿なんじゃないのかい?」

 

「テメェ…殺されてぇみたいだなぁ…」

 

「それだよそれ、ゲーム開発部の子達はきっと怯えてるよ?夜も眠れないかも知れない。ねぇ、もう少し大人しく出来ないのかな?」

 

「今すぐぶっ殺してやらぁぁぁ!」

 

“ネル!?落ち着いて!!”

 

 

 あーオモシロ。

 弱ったネルはおちょくるに限る。

 

 ははっ、報復?

 ちょっとなに言ってるか分からない。

 煽れる時には、煽っておくのが礼儀だろう?相手が強者かつ比較的親しいのなら尚更だよ、常識さ。

 

 

「さて、ネルは放ってお「あ"ぁ!?」いて、これからのお話をしよう。現状、多少の時間的余裕は確保出来てるからね。落ち着いて話し合おうじゃないか。良いかな?ゲーム開発部の諸君」

 

「は、はい……」

 

「……分かりました」

 

「まず先にアリスを返して!話はそれからだよ!」

 

“そうだね。まずはアリスを返してほしいな”

 

 

 な、なんて聞き分けの悪い…

 いやね、アッチの言い分だって分かるよ。理解するよ。モモイはともかく、先生は()()()()を救う気でいる。コレは関わりの少ないワタシでも分かる。あの人はそういう人だってね。

 

 だからこそ、大切な生徒の安全を確保してから次へ進みたいんだよね?

 

 

「すぐには返せないし、今の状況なら返す気は無いかな。その辺りも説明するから、まずはワタシの話しを聞いておくれよ」

 

“聞いた後なら?”

 

「ワタシに協力してほしいな」

 

「ダメだよ先生!こんな人とっとと倒してアリスの所へ行こうよ」

 

 

 ヒドイな、さっきいい人って言ってくれたじゃないか。手の平を返されたよ。

 キミ達が聞いて無くても良いけれど、話はさせてもらう。先生だけでも聞いていてくれれば、打てる手は多少でも増えるだろう。

 

 

「ワタシの指針は、『鍵』の破壊もしくは制御下に置く事。先生達がどう動こうがコレは変わらない。そして、今のアリスの目標を伝えてあげよう」

 

“アリスの目標?”

 

「そうさ、今はもう目覚めていてね。ワタシが彼女を殺さない為に働いてもらっているんだ。それでアリスの目標なんだけど、それは『王女』の為の補助AIである『鍵』の無力化。ざっくり言うのなら魔王を仲間にしようって所だ。……どうだい?協力する気になっただろう?」

 

 

 もう数分、優しく見積もって十分かそこらのうちに防壁が突破されてしまう。

 揺り籠は所詮閉じ込めるだけの装置だから、それは問題無い。問題があるとすれば、その次。『鍵』の行動運しだいのお祈りゲーが待ってるところ。

 

 朧気な記憶と無能(ワタシ)が書いたメモ、それらを踏まえたワタシが弾き出した答えによれぱ、十中八九、手頃かつ膨大な情報と戦力のあるエリドゥを奪おうとする。

 

 メモによれば電力を遮断して乗っ取りを阻止したんだったと思うから、チヒロにはエリドゥのバックドアを、ノアにはエリドゥの主要施設の配置と回路をそれぞれ渡してある。

 これはリオにもヒマリにも話してない、ワタシの手札の1つ。2人には計画の成功失敗関係無く、リオの味方で居てもらえるように説得をした。結構な無茶振りだし、しっかりとやり返されたけど承諾してもらえたのは大きな収穫のハズ。

 

 

「それじゃあ、アリスの下へ向かおうか。あっ、まだ返すつもりは無いからね?」

 

 

 リオと並んで先頭を歩いていると、小声で話しかけてきた。

 リオって歩くの少し遅いよね。昔ヒールで転んだの、まだ気にしてるの?流石にもう慣れたでしょ、走っても問題無いぐらいには。

 

「まだ何か企んでるわよね。私が失敗した場合はトグロに権限を譲渡し、保険を実行する。…計算では失敗する確率は限りなく低かったし、トグロが味方になる利点が大き過ぎて気にも止めなかったわ。トグロ…貴女、何を企んでいるの?」

 

 

 企んでるなんて人聞きの悪い事は言わないでほしいな。ワタシはワタシの描くハッピーエンドが欲しいだけさ。

 

 願わくば誰一人欠ける事無く。

 円満なハッピーエンドを。

 

 でもワタシは、最上位にリオの計画を置いただけ。そしてその次が、大切な幼馴染が壊れてしまわない事。

 そのためにアリスのヘイロー破壊が必要なら、ワタシはそれを実行するって決めたのさ。

 

 

「色々さ、ワタシは色々企んでいるよ。厄災を呼び寄せる最悪な結末が近い今の状況は、ワタシにとって最高のハッピーエンドに最も近いんだ。…リオが願ったキヴォトスの未来。叶えてやるのが親友だろう?」

 

「あたしの上で……格好つけてんじゃねぇぇぇぇ!降ろせクソトグロォォオ!」

 

「本当、格好つかないわね」

 

 

 だってネルを抱えて歩く余裕のあるヤツ、ワタシしか居ないんだもん。しかも暴れまくるオプションも付いてるし、それでいて何時倒れてもおかしくない致命傷持ち。

 

 ワタシ、自分のキャラは胡散臭い道化師だって信じてるんだけどさ、最近自信が無くなってきた。

 

 

 

「ところでよぉトグロ。あたしのツレも返してくんねぇか」

 

「あれ、返さなかったっけ?まあすぐ会えるよ、もう解放したし」

 

 

 

 

 

 

 

 うわ出た、全恥。

 

 

「なんですかトグロ、そのリアクションは。ミレニアムが誇る『全知』の学位を持ち、()()()()()()の為に戦地へと飛び込んだ一輪の花であるこの超天才清楚系病弱美少女ハッカーを前にしたのですよ。そこは旧友への再開を喜び、手を振り笑顔で駆け寄るくらいはするべきなのでは?」

 

「超ポンコツ脳味噌お花畑クソガキハッカーがなんだって?」

 

「ですから、ミレニアムで『全知』の学位を有する唯一の頭脳にして無二の輝きを有する宝玉。囚われた後輩を救い出すために戦場へ訪れた高潔で清廉な心を持つ超天才清楚系病弱美少女ハッカーです」

 

「はいはい、頼りにしてるよ。ヒマリ」

 

 

 わー、リオが渋い顔してる。

 ヒマリはすっごいいい笑顔してる。まだ終わってないからな?言うまでも無いだろうけど、気を抜かないでおくれよ?

 

 こいつ等、昔から相性悪いんだよなぁ。

 同族嫌悪なんだろう。

 

 お互いに高いレベルの頭脳を持ってても、物事の捉え方に世界の見え方、趣味に興味の方向性、考え方そのものが違うせいで互いの事が理解出来るのに納得出来ないんだって。

 

 でもワタシ、2人の考え方も分かるんだよぁ……

 だって、ワタシが学んでいた知識の多くは2人から教わったモノだから。思想や趣味興味を含めて知っているから、どちらも肯定するし、どちらにも理解を示すよ。

 

 

「あれぇ?どうされましたか、リオ。貴女の計画とやらは終わったのですか?それにしては呑気そうに歩いて居ましたが、一体どのような悪巧みをしている事やら」

 

「……私はもう終っているわ。最大の切り札すら潰されて、これ以上何をしろと言うのよ……今の私は、トグロに協力するだけよ」

 

 

 やめてやれよ……ヒマリ、どんだけ煽りたいんだよ…

 今はワタシが居るから多少は精神的に余裕があるだろうけど、後で一人反省会するヤツだぞ。

 リオは時間を掛ければ掛けるだけ自分を追い込むんだぞ、少しずつ心の傷が深くなっていくタイプなんだぞ。知っているだろうが。

 

 まあでも今回に限れば、ワタシ達の自業自得だしな。

 分かってるから、何も否定はしないんだけど。

 

 

「着いた。先生達、ここがアリスの居る部屋だ、覚悟は良いかな?」

 

 

 ヘラヘラしてそうなゲーム開発部のピンクまで真剣な表情をしてる。まあそうだよね、これから最終決戦って雰囲気出してるからね。

 その通りではあるんだけど。

 

 扉を開けて、目に入る光景は──

 

 

「はい。アリスちゃん、あーん」

 

「あーん」

 

「どう?おいしい?」

 

「はい!とっても美味しいです!」

 

「紅茶を淹れましたよ、ご一緒にどうぞ」

 

「向こうの掃除は終わった。アカネ、私の分はある?」

 

「用意してありますよ。ありがとうございます」

 

「私が気になっただけだから。それにしても…よく用意してるな」

 

「あっ!トグロちゃんだ、リーダーもいるー!」

 

「ん!…んぐっ、待ってました!アリスの準備は万全です、何時でも行けます!」

 

「ふふっ、クリームが付いていますよ」

 

 

 あれ?

 この扉、異世界に繋がってたっけ?

 

 やさしいせかいが広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 




 後で思い出して、スッキリします

なんも思い付かないから、参考までに……

  • トグロだけの小話
  • 本家イベント
  • オリジナルイベント
  • 先生視点
  • 別キャラ視点
  • よく名前の上がるキャラとの小話
  • その他
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